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異世界美容院Angeli  作者: イタズ
第4章 変わりゆく異世界編

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夢の続き

亜紀が至極当然の疑問をぶつけてきた。

「ママ?ララって誰?」


焼けた肉を口に運びつつも、軽快に答える美幸。

「ララはねえ、ママが小さい時に飼っていたワンちゃんのことじゃんね」


「へえー、ワンちゃん飼ってたんだ・・・いいなあ・・・」

物欲しそうに美幸を見る亜紀。


「過去の話だ、でも・・・もう家ではペットは飼わないからな・・・」

叔父が下向き加減で吐き捨てる様に溢していた。


「そうね、私もペットを飼うのは懲り懲りだわ」

この二人も俺と一緒か、そうだよな・・・

やっぱり同じ気持ちだったということだな。

そりゃあそうなるに決まってるよな・・・ララとあんな別れ方をしたんだからさ。

あんな気持ちにはもうなりたくはないよ・・・

にしても困ったな・・・ララさんや・・・やってくれるねえ・・・


「それで?・・・どんな夢だったんだ?」

ここは聞かざるを得んだろう。

少々怖い気もするが・・・


「それがさあ・・・ララって分かるんだけど・・・犬じゃないじゃんね・・・なんて言うかさあ・・・霊魂?人魂?みたいな感じでさ・・・美幸、会いに来ちゃったって・・・」


「本当か?俺もそんな感じだったぞ・・・おやっさん元気にしてた?ってよお・・・」

完全にやっちまってくれてますね・・・ララさんや・・・お前ぐらいだぞ、親父の事をおやっさんて呼ぶのは・・・


「ブッ!・・・ララは親父のことをおやっさんって呼んだの?笑える!」

美幸が噴き出していた。

俺には笑えなかったけどね。


こうなると打ち明けるしかなさそうだ。

そこまでしてララはこの二人に会いたいってことだろうしね。

もう充分にその気持ちは伝わったよ。

それに勘の鋭い美幸は、いい加減なにかを察してそうだしな・・・

俺も腹を決めるか・・・

それにしてもどうしてこうなった?




俺は打ち明けることにした。

この決断によって俺だけでなく、家族も大きく人生が変わるかもしれない。

どうなってしまうのかははっきり言って分からない。

全く予想も出来ない。

でも、俺はララの気持ちを優先することにした、それに美幸も親父もララに会いたいだろうし、もうララは犬ではないけどさ。

そんな事には拘らないだろうと思う。


焼き肉は佳境を向かえていた。

もう締めの味噌汁に差し掛かっている。

味噌汁を口にしながら美幸が言い出した。


「そういえばさ、味噌汁ご飯ってララの大好物だったよね?」


「そうだったな、ガツガツ食ってたな!あいつ、ハハハ!懐かしいな!」

親父が大声で笑っていた。

今でも旨そうに食ってるっての。


「なあ・・・そのララなんだけどな・・・」


「ん?ララがどうしたの?」


「もしだぞ・・・もし会えるとしたらどうする?・・・」

親父が眉を顰めてこちらを見て言い放った。


「丈二・・・お前大丈夫か?・・・何言ってやがるんだ・・・」


「兄貴・・・そりゃあ会えるなら会いたいでしょう、それ以外の答えなんてないじゃんねえ」


「だよな・・・あのララだもんな・・・」


「なんだよ丈二、唐突に・・・ちょっと怖いぞお前・・・」

何かを感じてとっているのだろう、珍しく親父も身構えている。


「実はさ・・・二人に話があるんだ・・・」


「ほう・・・」


「何よ・・・」

意味深に俺を見つめる美幸、やっぱりこいつ何かを勘づいてやがるな・・・


「これから突拍子もない事を言うけど、ちゃんと証明するから口を挟まずに聞いてくれないか?」


「ああ・・・」


「いいわよ・・・」

さて、洗いざらい話しましょうかね。

どうなるかなんて、もうどうでもいいや。

なるようになるだろう・・・


「俺の美容院は異世界に繋がっている・・・」

ああ・・・遂に言ってしまった・・・

一瞬眼を大きく広げると、一転して座った視線を投げかけてくる二人。

そうなるよな・・・やっぱり・・・

疑って当然だよな。

こんな荒唐無稽な話は漫画や小説の世界だしな。


「最初のきっかけは神棚を着付け室に設置した時だった・・・」


こうして俺はこれまでの出来事を全て詳らかに話すことになった。

こう言ってはなんだが、ちょっと肩の荷が降りた様な気がする。

どうやらそれなりにストレスになっていたみたいだ。

家族に秘密を打ち明ける、逆を言えば家族も知らない秘密を抱えていたのだしね。




一通り話すのにそれなりに時間が掛かってしまった。

最初は疑心暗儀の二人であったが、話のクオリティーが高い為、途中からは身を投げだす様にして聞いていた。

だって話の細部までが真実なのだから。

嘘ではこうはならない、どこかにボロが出るだろうしね。


亜紀も空気を読んでか、黙って話を聴いていた。

そしてララの件に話が及ぶと、美幸は無言で涙を流していた。

こうして、俺の美容院が異世界に繋がってから、ララが二人に会いたいと言い出した処までの話は終わった。


はあ・・・全部履き出してしまったよ・・・

スッキリしたな・・・ふう・・・


「事実は小説よりも奇なりとはこの事だな・・・」

そう親父が呟いていた。


「ああ・・・本当にララに会えるんだね・・・」

美幸は涙を拭おうともしない。

その様子を亜紀が心配そうに見ていた。


「じゃあ、お店に行こうか?」

証明するが早いからね。

親父が手を出して制する。


「ちょっと待て!丈二!心の整理がまだだ!」

心の整理って・・・ビビり過ぎだろうよ。


「いや!私は直ぐに行くよ!早くララに会いたいわ!」

こちらはやる気満々だな。


「あっ!いや!美幸・・・ちょっと待ってくれ!」

親父を一人置き去りに美幸は席を立っていた。


「親父!さあ行くぞ!」

尻込みする親父を無理やり立たせて、美容院を目指した。

そう身構えるなっての、おやっさん!


バックルームに繋がる扉に鍵を挿して、捻ると俺は裏口の扉を開けた。

異世界にようこそってね。

妙な緊張感を伴って、美幸と親父は裏口の扉を潜っていた。

亜紀はいまいちよく分かっていない様子。


実はこれまでに家族が美容院の中に入った事は何度かあった。

その時は美容院の定休日であり、なぜかその時は異世界に繋がらなかったのだ。

おそらく女神様の気遣いだろうと思う。

始めて美容院に家族を入れた時にはひやひやしたよ。

異世界に繋がったらどう言い訳をしたらいいのか、真剣に考えたよ。

家族がお店に足を踏み入れたのは簡単な話、髪を切る為だ。

そりゃあ身内の髪ぐらい切ってあげないとね。

勿論料金なんていただきませんよ。

大体の美容院はこんなものだろう。

身内は無料ってね。


そしてそこには見慣れた異世界の美容院『アンジェリ』があった。

庭先にはライゼルが手入れしている花が可憐に咲いていた。

俺は先ず入口の扉を開いて、庭先を見せた。

これが一番分かり易いだろうと思ったからだ。


「おおっ!・・・・」


「ここが異世界・・・」


「ここどこ?・・・」

驚く家族を眺めつつも、ここはプチマウントを取らせて貰う事にしたよ。


「な?本当だろ?」


「ああ・・・こんな事があるなんてな・・・」

親父が口をポカンと空けていた。

一転美幸は興味深々な様子で異世界の星空を眺めていた。


「綺麗な夜空ね、日本ではこうはいかないわ」

確かにな、この世界の夜空は星がいっぱいだからね。

つられて星空を眺める亜紀。


「ほんとうだー、お星さんたくさんだー!」


「さあ、店に入ろうか」


「そうね、早く会いたいわ」


「だな・・・」

お店に入ると念じてララにメッセージを送った。


(ララ、おいで!)


(うん!)

元気な返事をすると俺の肩に転移してきたララ。

一瞬の出来事に息を飲む親父。

美幸は腹が座っている、ララを見ると万遍の笑顔で両手を広げていた。


「ララ!おいで!」


(うん!美幸!久しぶり!)

ララは一度美幸の正面でホバリングしてから美幸の肩に掴まった。

そして美幸に頬ずりしていた。


「ララ!本当にララじゃんね!」

笑いながらも涙する美幸だった。

ララも嬉し気だ。


「ああ・・・本当にララだ・・・ララ・・・」

美幸は言葉になっていない。


(僕も嬉しいよ!)

その様子を羨ましそうに見つめる亜紀。


「ママ!私にも鳥さんをだっこさせてよ!」

それに反応するララ。


(ん?君は何ちゃんかな?)


「私は亜紀だよ!」

元気に腕を拡げる亜紀。


(亜紀ちゃん!始めまして僕はララだよ!)


「亜紀は私の娘よ、ララ」


(そうなんだね!よろしくね)

そう言うと今度は亜紀の正面に降り立つララ。

一切怖がること無くララに近寄る亜紀。

目の前に立つとララを抱きしめていた。


「おっきい鳥さん捕まえた!」


(アハハ!捕まっちゃった!)

ララも嬉しそうだ。

ここまで来ると観念したのか親父が声を挙げた。


「ララ!久しぶりだな!」


(おやっさん!会いたかったよ!)


「おやっさんって・・・」

下を向いて呟く親父。


「ハハハ!おやっさんって、笑える!」


「だな!」

美幸と俺は爆笑していた。

それを不思議そうに眺めるララ、首を傾けている。


「いや・・・まあ・・・いいか?」

無理やり飲み込んでいる親父。


(おやっさん、元気だった?)


「ああ、元気だけが俺の取柄よ!」


(ハハハ!相変わらずだね)

今度は親父の肩に乗っかるララ。


「おおっ!それなりに重いな!ララ!」


(エヘヘ、これでも鳳だからね)

親父に頬ずりするララ、幸せそうにしている。

親父も嬉しそうだ。


「ここに来れば、今後はララに会えるんだね?」


(そうだよ、たくさん会いにきてね?)


「勿論よ!」


「ねえママ、私もいい?」

亜紀は美幸の服を掴んでおねだりしていた。


「いいわよ、ねえ兄貴?」

当然だよなと俺に視線を向ける美幸。


「そうだな、好きにしてくれ」

今後は間違いなくしょっちゅう来るんだろうな、まあいいけど。

亜紀は既にララをペット扱いする気満々みたいだし。

俺達にとっての幸せな時間を過ごしていた。

ここまでの幸福な時間を、俺達家族は感じた事は無かったかもしれない、そう思える程の充実した時間だった。




何かを決意した美幸が不意に言い放った。


「ていうか、決めた!兄貴」

閃いたと美幸の目が光る。


「ん?何をだ?」


「私この店で働くよ!」


「はあ?何言ってやがる?」

唐突に何なんだよ、好き勝手言うんじゃないよ。


「前に言ったじゃない、私ネイルの資格を取ったって」

確かにそんな事を言っていたな、それに美幸の爪はバッチリときめ込んでいる。

デコレーションがガチャガチャついている・・・


「この店でネイルをするのか?」

美容院のサービスとしては悪くはないが・・・どうなんだろうか?


「それにまつ毛パーマもね、いいでしょ?兄貴?」

まつパもか・・・どうしたものか・・・

あったに越したことはないが・・・


「いいでしょって・・・お前なあ・・・」

急すぎるだろうが・・・


「せっかくだから良いじゃない、それにこの世界にはネイルやまつ毛パーマなんてないんでしょ?絶対に流行るって!」

だろうけども・・・


「そりゃあそうだが・・・何処で施術するつもりなんだ?着付け室は無理だぞ」


「なんでさ?」


「神棚だよ!見られる訳にはいなかいだろう?」

ここは流石にさあ・・・何かと問題になりかねないだろうしね。

だってこの世界には、何かしらの宗教?信仰?があるみたいだし・・・


「ああ・・・」

そうだったと項垂れる美幸。


(それなら僕に任せてよ!)

ララが割って入って来た。


「ん?」


(この世界の人達に見えなければいいんでしょ?)


「まあ、そうだけど・・・」


(そんなの僕の魔法でちょちょいのちょいだよ)

マジか!?・・・流石は伝説の聖獣だな。

魔法って・・・何でもありかよ?・・・都合がいいことで・・・

それにしても急展開が過ぎるぞ・・・

ちょっと引きそうなのだが・・・


「これで決まりだね!さあ明日から忙しくなるよ!」

漲る表情で美幸は言い放っていた。


「ちょっと待て!明日からだって?準備期間は無いのかよ?施術用のチェアーすらないんだぞ?」

性急すぎるだろうが・・・ちょっとは考えなさいよ・・・


「そうだった・・・」


「美幸、興奮し過ぎだぞ・・・せめて施術用の椅子ぐらいは無いと話にならんだろう?」


「だね・・・」


「俺が手配するからそう焦るなよ・・・」

明日にでも森君に電話しよう、彼ならどうにかしてくれるだろうしね。

それはいいとしてどうなっているんだ?

急展開過ぎないか?

もう投げ出したい俺がいるのだが?


不意に親父が気になったのか庭先を眺めていた。

おいおい!あんたもマイペースだな!


「なあ丈二、この庭先はまさかお前が造ったんではないよな?」


「ああ・・・」

俺が手を出したのは最初だけで、後は全てライゼルの仕事ですよ。


「いい手入れをしている、それにあそこにある盆栽はお前が持っていった物だよな?」

持っていっただと?ぼったくったのはどこのどいつだ!

返金を要求しましょうか?


「そうだが・・・」


「ふむ・・・」

意味ありげに庭先を親父は眺めていた。


「どうしたってんだよ?・・・」


「この庭を手入れしている人物を紹介してくれ」


「はい?なんでだよ?」


「ちょっと気になってな・・・もっと良く出来る筈だ・・・」

親父もかよ・・・美幸に次いで親父まで異世界に興味を示したってか?

勘弁してくれよ・・・


「はあ・・・」


「よし!俺の盆栽をいつくか運んでこよう!いいな?丈二!」


「好きにしてくれ・・・」

ライゼルが小躍りしそうだな・・・

なんかいろいろ渋滞している気がするな・・・

もうお腹いっぱいです・・・いろんな意味で・・・

それにしてもどうしてこうなった?



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