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異世界美容院Angeli  作者: イタズ
第1章 創成期 髪結い組合編

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お守りの効果

ふうー、良かったー。

女神様グッジョブです!

明日のお供えは豪華にしないとね。

女神様の大好きな甘味を大量に準備しよう。

シュークリームかな?

そう考えていると、頭の中に声が響き渡った。


(イヤッホウ!期待しておるやえ!丈二!)

このタイミングで止めてくれよ。

空気読めっての・・・

あんたの出番じゃないでしょうが。


(ちょっと・・・お守りが良い仕事してくれましたから今回は見逃しますけど・・・また俺の心を読んでますよね!)

女神様が怯んだ気がした。


(それは・・・心配になって・・・上から見ておったらつい・・・)

本当か?・・・違うよね・・・只の興味だよね・・・まあいいや。

次やったら訴えてやる。

マジで。


(次やったら絶対に訴えますからね!)


(ご、ごめんなさい・・・して、明日のお供えは大量にしてくれるのかえ?)

ほんと必死だよね。

そんなに甘味が食べたいのかねえ?


(大量を考えてましたが、その半分にします)


(そんなあー・・・・許してくれやえ・・・)


(無いより益しでしょうが!)


(は、はい・・・すいません・・・)

今は構ってられないんですってば。

勘弁してくれよ。

せめて空気を読んでくれって。




実は昨日の朝のお供えの時に、こんなやり取りがあったのだ。

振りかえってみよう。


この日のお供えの品はイチゴ大福だ。

時々コンビニでも買うことが出来る。

シルビアちゃんも大好きな一品だ。

神棚にお供えのイチゴ大福を置いたところ、珍しく女神様から話し掛けられた。


(丈二や、ちょいとよいかえ?)

急な話でちょっと身構えてしまった。


(め、女神様、ど、どうしましたか?何かリクエストでも?)

若干キョドってしまう俺。


(そうそう、あのシュークリームというやつをお供えしてたもれ・・・じゃなくて・・・ああ、もう・・・)

じゃない?


(ん?)


(丈二は神札と共に神主から貰ったお守りを、財布に入れておるのやえ?)


(ええ、そうですが?)

駄目なのか?

やっぱり息苦しいとか?


(今日からは紐でも通して、首からかけておくが良いやえ)

何でだろう?これ単純な疑問。


(どうしてですか?)


(そのお守りは悪い事を跳ね除けることが出来るやえ)


(へえー、そうなんですね。じゃあそうします・・・)

たまには役立つ事出来るんじゃないか、女神様よう。


(お主、いま不敬な事を考えておらんかったか?)


(はあ・・・また読心術ですか?)


(違うやえ、要らん間があったからやえ)

少しは空気を読めるみたいだな。

ちょっとは成長したのか?

駄女神さんよ。


(ならいいですけど・・・)


(次やったら訴えると言うんじゃえ?)


(当然ですよ・・・まあそれは良いとして。因みに悪い事とはどんな事でしょうか?)


(それはあれじゃえ、魔法とか魔物とかじゃえ)

魔法はともかく、魔物?


(魔物っているんですか?)


(おるやえ、知らなんだか?)


(知らないですよ・・・)

この世界ってそこまでファンタジーなのか?


(でも魔物は殆ど絶滅しておるから、そう心配する事はないやえ、そうそう出会う事もないやえ)


(本当ですか?)

この女神の話は信じられないのだけれども。


(余は嘘はつかぬ)

はあ?真に受けることは出来ないな。

でもここは従っておこうと思う。

何となく・・・


(分かりました、では直ぐにお守りを準備します。あと明日はシュークリームを用意しますね)


(本当かえ?イヤッホゥー!)

なんだかな・・・まあいいか。

早速俺はお守りに紐を通して首から下げることにした。

たまに見かける首からお守りを下げているおじいさんになった気分だ。

行きつけの銭湯にいたような・・・いたな。

見た覚えがあるよ・・・




腰が引けたフェリアッテ夫人が俺を睨んでいた。

屈辱で顔が歪んでいる。

眼鏡の女性が思わず声を漏らす。


「フェリアッテ様のチャームが効かないなんて・・・」

驚愕の表情を浮かべていた。

その他の者達は驚きと共に、固唾を飲んで見守っている。

どうしていいのか分からないのだろう。

中には目を見開いている者もいた。

もしかしたら夫人のチャームを始めて見たのかもしれない。


「貴様・・・何をしたんじゃ?」

はい?俺は何もしていませんけど?

でもここはかましておこうか。

この流れはこっちのターンだろうし。

ここはせっかくだから大見えを切ってやろう!


「フフフ・・・ハハハ!・・・ナハハハハハ!!!」

尊大に立ち回ってやる。


「ククッ!」

歯を食いしばるフェリアッテ夫人。

ほれほれ、ビビれビビれ!


「俺には魔法なんて効かねえんだよ!」


「クッ!何故じゃ・・・」

悔しがるフェリアッテ夫人。

良い顔してますねー。

この表情が見たかったー!

そして眼鏡の女性も悔しがっている。

なんでお前も?まあいいか。


「浅い浅い!俺を籠絡しようだなんてちゃんちゃら可笑しい!美容師を舐めんじゃねえよ!美容師は鉄壁なんでね!」

ちょっとかまし過ぎか?


「・・・」

唇を噛みしめるフェリアッテ夫人。

護衛兵やお付きの者達は戸惑うばかりだ。


「俺を舐めて貰っては困るな!俺の大親友は偉大な大魔導士なんでね!」

ここは他人の褌で相撲を取ってやろう。

ええ!俺は他人の褌で相撲を取れますよ!一向に構いませんよ!

そんなプライドは当に捨てていますのでね。


「何と!大魔導士とな?」

たじろぐフェリアッテ夫人。


「その大魔導士から身を守る魔道具を頂いてるからな!俺には俺に不利となる魔法なんかは効かねえだよ!俺を誘惑しようだなんて、ちゃんちゃら可笑しいぞ!ガハハハハ!あんたなんかに心奪われるかってんだよ!舐めんじゃねえ!」

俺の威勢に青筋を立てるフェリアッテ夫人。

今にも飛び掛かってきそうだ。


「糞う!ジョニー!認めんぞ!」


「何を認めないと?」

騒げ騒げ!

面白くなってきましたよ。


「お前は私の物に成るんじゃ!」


「嫌だって言ってるだろうが!しつこいぞ!婆あ!」

もう言葉使いなんてどうでもいい。

いい加減しつこいんだよ!この婆あは!


「いい加減煩せえぞ婆あ!俺がお前の物になるなんてあり得ねえぞ!ふざけんな!美容師を舐めんな!」

この発言にひたすら睨みつけてくるフェリアッテ夫人。

俺を我が物に出来なくて歯痒いのだろう。

今にも地団駄を踏みそうだ。

現に唇の端から血が滲んでいる。


「さあ・・・どうするつもりだ?・・・頼みの誘惑の魔法は効かないみたいだぞ?」

更に歯を噛みしめるフェリアッテ夫人。

歯ぎしりの音が聞こえてきそうだ。

俺は視線を下げてみるとフェリアッテ夫人は拳を握りしめていた。


「不敬であるぞ!」

眼鏡の女性が騒いでいる。


「煩せえ!眼鏡カチ割るぞ!てめえ!」

勢いの儘に言ってしまった。

しまった、この人に当たってはいけないよね。

これは不味ったかな?


「そんな・・・ウフ・・・」

マジかよ・・・

どうしてだ?

眼鏡の女性はうっとりとしていた。

あり得ねえ・・・勘弁してくれよ・・・

こいつ・・・只のドMなのか?

変態じゃんよ・・・構ってられないぞ。

眼鏡の女性は身体をくねらせていた。


「ジョニーよ、許さん!わらわを罵倒した上にわらわの思う儘にならんだと?そんな者はこれまで誰一人としておらなんだ・・・伯爵ですらも籠絡出来たというのに!・・・」

フェリアッテ夫人が地団駄を踏んでいた。

それを俺はニンマリ笑顔で見つめてやった。

万策尽きたってか?

勝ったな。




ふう、終わったな。

俺は満足しましたよ。

もう付き合う必要は無さそうだな。


「失礼、俺は帰ります」

俺は退散することにした。

よく分からんが、これが正解だと思う。


「待て!ジョニー」

振り返ると必死な表情を浮かべるフェリアッテ夫人が居た。

どうしても俺を帰したくないみたいだ。

もういいでしょうよ?


「ジョニー、許さんぞ!絶対にわらわの物にしてやるぞ!」


「凄んでも何にもなりませんよ、そんな事も分からないと?」

屈辱で顔を歪めるフェリアッテ夫人。


「ジョニー、お前がハサミを使う限り髪結いさんであることに違いはない。わらわの全ての力をもってでも、お前を髪結さんとしてやろうぞ!」

しつこい・・・またこれを持ち出すのか・・・

こうなってくると哀れみも感じかねないのだが・・・


「だからさあ・・・俺は美容師であって髪結いさんでは無いって言ってるだろうが?!」

目が据わったフェリアッテ夫人が呟いた。


「ほう・・・ならば証明してみせよ」


「証明?・・・」


「そうじゃ、髪結いさんではなく美容師だと証明してみせよ」

そう来たか。

しめしめだな。

待っていましたよその言葉を。

フフフ。

掛ったな。


「分かった、いいだろう。証明してやるよ」


「どうやってじゃ?」

余裕の表情の俺に訝しがっている夫人。


「簡単なことだ。俺はハサミを一切使わない。カットはしないという事だ」


「ほう?」


「その状態であの女性を十歳以上若返えらせてみせる!」


「はあ?」

呆れた顔をするフェリアッテ夫人。

俺の指さす先には、あの馬車で迎えに来てくれた壮年メイドさんがいた。

そして俺の発言に固まる一同。

眼鏡の女性は眼鏡がずり落ちそうになっていた。

よしよし、想定通りの反応だな。


「これは美容師の技術であって、髪結いさんには出来ない芸当だろう?違うか?」


「それはそうじゃが・・・」

フェリアッテ夫人はまだ呆れた顔をしていた。


「であればそれは俺が美容師であるという証明になる筈だ、そうだろう」

フェリアッテ夫人は気を持ち直して鼻で笑うと、


「アハハハ!・・・認めよう・・・墓穴を掘ったなジョニー!・・・しかし、そんな事が可能なのか?あり得ぬぞ!アハハハ!」

傲岸不遜な口元が戻ってきた。

再び見下す視線が俺に向けられる。

哀れだとでも言いたげだ。


「ああ、出来るさ、俺は美容師なんでね!」

美容師の本気を見せてやる!

美容師の本気を舐めるなよ!

さて状況は整ったな。


「・・・」

自信満々の俺の発言に表情が揺れるフェリアッテ夫人。

外の者達もそんな事が可能なのか?という顔をしている。

そんな事が出来る筈がないと、俺をオオカミ少年扱いしている視線も感じた。


「やってやるさ、3日後の正午に俺のお店に来い。証明してやるさ!」

勝ったな!


「ジョニー・・・」

今度は睨みつけてきた夫人。

この勝負に乗った時点で俺の勝ちは確定していた。

さて、どう料理しましょうかね。

いくらでもプランはあるのだが・・・

楽しくなってきましたよ。




こうしてこの場は終息した。

にしても、何でこうなった?

ちょっとは俺も冷静に成らなくては・・・

さあ、盤石のプランを練り上げようか。

殆ど出来上がってはいるのだけどね。




噂が広まるのは早い。

翌日、お店を無遠慮に覗きに来る者が後を絶えなかった。

店の中には入れなかったけど・・・暇な奴らが多い様である・・・

仕事しろ!仕事!

いい加減迷惑だ!

どっか行け!


そして俺は事の顛末を話しに、商人ギルドにやってきていた。

報告を終えると、ギルドマスターのバッカスさんは膝を叩いて笑っていた。


「ギャハハハ!お前!あの夫人に婆あって言ったのか?ギャハハハハ!これは面白い!最高だぞ!アハハハハ!」

笑い過ぎて泣き出しそうだ。

バッカスさんは腹を抱えている。


「いや・・・俺の店を寄越せとか言うからさ・・・」

そんなこと言われたらブチ切れるでしょうが?

違うかい?


「ジョニー!お前結構武闘派なんだな!無茶苦茶笑えるぞ!ガハハハ!」


「ちょっと・・・」

笑い過ぎですって。


「ああ、すまない・・・はあ、こんな面白いことは久しくないからな。それで商人ギルドにどうしろと?」

バッカスさんは涙を拭いていた。

泣くほど笑えるって・・・平和ですね。

ハハハ・・・


「簡単な事です、俺は公平を規したい。今回の対決は壮年のメイドさんを若変えさせる事、そこに不正を挟ませない様に、勝負を商人ギルドに仕切って欲しいんです」

ここは公平な第三者に委ねたい。

当事者同士では事が収まらないだろう。

公平なジャッジを望む!

それにあの婆は何をやってくるのか分からない。

ここは関係者以外に裁きを求めるべきだろう。


「なるほどな、要はフェリアッテ夫人の手の者が紛れ込まない様にしようということだな?」

このギルマスは顔の割には理解が早い。

その通りですよ。


「そうです、あの婆あは何をしでかすか分からない。万全を敷きたいのでね」


「ガハハハ!婆あってか?ジョニー、お前相当腹が立っているようだな?」

また笑ってますがな・・・


「当たり前ですよ!あの婆あだけはここで終わらせてやりますよ!」


「ジョニー・・・お前凄いな・・・ここまであの夫人に迫った奴はこれまで一人もいないぞ・・・」

あれ?今度は引いてる?

緩急が激しくないか?


「あっそう・・・」


「あっそうってお前・・・少々怖いぞ・・・」


「いやいやいや!だって俺のお店を寄越せって言われたんですよ!そりゃあブチ切れるでしょうが!」

ああ!思い出すだけでも腹が立ってきた。

あの婆あ!

坊主にしてやろうか!

しまったー!負けた方が坊主になるとしとけばよかった・・・

詰めが甘かったな・・・俺もまだまだだな。


「まあいいさ、ジョニー!任せておけ!この勝負は商人ギルドで仕切らせて貰う!公平を規す様にさせて貰う!思う存分やってくれ!」

バッカスさんは鷹揚に頷いていた。

よし!これで舞台は整ったな。

後は・・・


俺はライジングサン一同に救援を求めた。

要は警護と不正が無いか見回って欲しいということだ。

あの婆あはどんな事をしでかすか分かったもんじゃないからな。

もっと万全を敷かないといけない。


ライゼル曰く、

「そうなると俺達だけでは難しい、信頼のおける冒険者パーティーに声を掛けてもいいか?」

ということだった。


俺は全面的にライジングサンに任せることにした。

最早こいつらは身内と言っても過言では無い。

信頼のおける仲間だ。

ライゼルはアホだが、リックやメイランがいる。

特にリックは深謀遠慮に長けている。

そしてメイランも直感が強い。

モリゾーは・・・よく分からん。

まあ、迫力は人一倍あるのだが。


何にしても頼れる仲間だ。

ここぞとばかりにライジングサンの軍師リックが、何かと手配をしてくれていた。

有難い限りだ。

そしてメイランが抜け道を塞いでいく。

報酬は俺の作る飯とワインでいいらしい。

安上がりで助かる。

まあここでこれまでの借りを返して貰おうか。

これでいいよね?


何故だか一際気合の入ったシルビアちゃんが、鼻息を荒くしていた。

フンス!フンス!と力が入っている。

シルビアちゃんよ・・・君だけはいつも通りにしていておくれよ・・・君もやる事があるんだからさ・・・

シャンプーは任せたよ。

ここは若気の至りと受け止めておこうか。

なんでこうなった?

まあこの子もお店を守りたいんだろうね。

ありがとう、シルビアちゃん。


そして対決の準備が整えられていく。

これで髪結い組合とは終わりにしてやるぞ。

俺の店を手に入れる?ふざけんな!

ここで仕留めてやる!



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