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異世界美容院Angeli  作者: イタズ
第4章 変わりゆく異世界編

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相談事

俺は伯爵から営業が終わったら、相談があるので時間を貰えないかと言われていた。

正直言って面倒臭い。

俺になんの相談があるってんだよ、まったく・・・

何度も言うが俺は只の美容師だっての・・・国政に関わる事なんて知らねえっての・・・

無下に断るのもどうかと思い、時間を作ることにしたよ。

ああ、早く帰ってララと一緒に一杯飲みたいな・・・


呼び出されたのは温泉宿の一室だった。

そこに伯爵と二人して向かう事にした。

其処にはヘンリー国王と、北の蛮族と言われているロシエメイトの女帝こと、ビクトリア・イム・ロシエメイト。

そして隣国リッツガルドの王フランク・レド・リッツガルド。

三人がソファーに腰掛けて俺の到着を待っていた。


部屋の前には屈強な兵士が並び、入室を制限しているのが分かった。

中に居るのが国王ともなればそうなるに決まっている。

その兵士達も心なしか緊張している様子。

俺を見るなり眼を見開いていた。

どうしてなんだ?俺はそんな緊張される様な者ではありませんよ?


兵士が扉をノックして、

「参られました!」

中の者達に俺の到着を報せていた。


「入ってくれ!」

ヘンリー国王の声が扉の向こうから聞こえた。

俺は兵士達に軽く会釈をしてから部屋の中に入った。

入室するタイミングで全員がソファーから立ち上がる。

特にフランク国王は緊張しているのがよく分かる。

それはかつて、無遠慮に美容院に踏み込んで来た時に、俺から追い出されたことが未だに尾を引いているみたいだ。

ちょっと悪い事をしたのかもしれないな・・・国王に緊張されるなんて柄じゃないんだけど・・・しょうがないか・・・お店ファーストですからね、俺は。


「ジョニー店長、呼び出してすまぬな」

ヘンリー国王が隣の座席を手で示しながら声を掛けてきた。

隣に座ってくれということだね、はいはい。


「ほんとうですよ、早く帰ってララと一杯やりたいんですけどね」


「ハハハ!そう言わんでくれ」

俺はヘンリー国王相手に遠慮は皆無だ。

ここまでくると友人と対して変わらない。

当の本人も嬉しそうにしているのだから、問題はないだろう。

このやり取りを見て女帝ビクトリアは顔を引き攣らせていた。


「ジョニー店長、その説は大変申し訳ない事をした!」

フランク国王が深々と頭を下げていた。


「もう、何度も謝らないで貰えますか?水に流すって言ったじゃないですか!そう何度も国王に謝られるってのも返って嫌なんですけど?」


「そう言って貰えるのか、恩に着る」


「はいはい、いいから頭を上げて下さい。いい加減座りませんか?」


「おお!そうであった」


「お気遣い感謝する」


「・・・」

国王達を座らせてから俺と伯爵は腰かけた。


「ひとまず、お土産です。どうぞ」

リュックからお土産を取り出した。

今日のお土産はポテチだ。

塩味とコンソメ、更には海苔塩味だ。

全部ビッグサイズですよ、多人数で食べるならこれでしょう?


「おおっ!これはポテチですな?」


「ウッソ!」


「美味しいですよねー、ポテチ!」

嬉しそうにしている三人、中でも女帝ビクトリアの反応は凄まじかった。

相当好きみたいだね、もしかして塩分が足りて無いとか?


「好きに食べてください、手持ち無沙汰もなんなんでね。この方が話も弾むでしょう?」


「嬉しい計らいに感謝する!」


「では遠慮なく」


「海苔塩!始めてですわ!」

でしょうねえ、ここぞとばかりに取って置いたんだからさ。

でも実はまだ一つ隠し持ってるんだけどね・・・フフフ・・・


「「「いただきます!」」」

合唱している三人、まあこれも有かと首を捻るベルメゾン伯爵。

袋を開けて好きにポテチを楽しみだしていた。


「それで?相談とは何ですか?よりによってなんで俺なんですか?ジョルジュとかララじゃなくて?」


「それは・・・国政に関わることでな、ジョニー店長・・・ララ様にはお尋ねするには気が引けるというか・・・ジョルジュ氏には、自分達の国の有り方には自分達で考えろと言われておってな・・・そうなるとジョニー店長にしか相談できぬと考えたのだよ・・・ジョニー店長も我が国の国民であるからな」

申し訳なさそうにしているヘンリー国王。

ここぞとばかりに国民としての義務を押し付けようってか・・・しょうがないなあ・・・


「そうですか、でも俺は只の美容師ですからね?何度も言ってますけど」


「分かっておる、しかしジョニー店長には他の者には無い知恵があるではないか、私はそう見込んでおるのだが・・・」


「そうですか・・・それで相談とは?」

俺もポテチを楽しむことにした。

うす塩味をパクりってね。

うん、安定の味だね。


「実はな・・・申し上げにくいことではあるのだが・・・ロシエメイト国は広大な面積を有してはいるものの、土地は不毛で食物が育たない、外交をしようにも外貨を稼ぐ手段がないのだ・・・何か良い知恵を与えては貰えないでしょうか?」

女帝ビクトリアは縋る様な視線を投げかけてきた。


「気温が低いってことですか?」


「そうなのだ、国の北部に行けば行くほど気温が低くなる。村によっては一年の半分の期間が雪に埋もれていることもあるぐらいですわ」


「なるほど・・・」


「ジョニー店長どうであろうか?」


「これまではどうやって暮らしていたのですか?」


「それは・・・産業の中心は放牧、他にも不毛ながらも細々と農業を行ってきた・・・正直に言えば盗賊紛いの事を何度も行ってきていて、凌いでいたのも事実です。しかしこれからはそんな不届きな行いは許されない・・・そんな事をすればララ様に見放される・・・」

訥々と語りながらもポテチを食べる手は凄まじく動いているぞ!

そんなに好きなんだね・・・


「であれば寒い国でも育つ野菜や果物を育てたら良いのでは?それこそ今食べているポテチは北国でも育つ野菜ですよ」

俺の発言に手が留まる一同。

全員フリーズしていた。


「どうせなら自分達で育てたジャガイモでポテチを作ればいいじゃないですか?」

安易な発想だが、そうなるよね。

だってジャガイモと言えば北海道だし。


「そんな・・・可能なのですか?・・・」


「ええ、難しい事ではないと思いますよ」

確か埋めるだけだしね、違ったかな?

後は確かジャガイモが日に当たらない様に土を盛るぐらいだったはず・・・


「ああ・・・我が国は救われる・・・」


「そんな大げさな・・・それにジャガイモ以外にも寒い土地で育つ作物はいくつもありますよ、それに温室を造れば・・・これは資金が必要か・・・まあ、どうとでも成るかと・・・」


「ジョニー店長!感謝する!」


「今度色々と種芋とかを準備しておきますよ、育て方も教えます」

パァっと明るくなる一同。

早くも相談事は解決してしまったみたいだ。


「なんと!ジョニー店長は博識であるな!」


「それに親父に相談してみますよ、あの人は植物を育てるのが好きみたいなんでね」


「なんとありがたい!おやっさんの盆栽はいいぞー、情緒と言うらしいが、あんな育て方があったのかと驚かされたものだ」

ヘンリー国王は腕を組んで頷いていた。


「私もあのお方の盆栽は好きです、一鉢譲ってもらえないだろうか?・・・」


「今は盆栽の事はおいといて、今度色々持ってきますよ」


「ありがたい!」

膝を叩いているフランク国王。


「何とお礼を言ったらいいのか・・・」

女帝ビクトリアは涙ぐんでいる。


「そうだ!ジョニー店長に勲章を与えましょう!」

その発言に一気に無表情になる俺。

それを察したヘンリー国王が制止に入る。


「そっ・・・それは・・・止めておいた方がよいでしょうな・・・」


「うっ!・・・それはどうして?・・・」

戸惑う女帝ビクトリア。


「ジョニー店長はそう言う事を嫌うのだよ、ですよね?ジョニー店長?」


「よくお分かりで、勲章も褒美もいりません。もし勝手に送り付ける様でしたらこの話はなしです!」


「どうしてでしょうか?ジョニー店長は我が国にとっては救世主です。勲章では物足りないと思えるのですが、其れすらも辞退されるなんて・・・」

分かってないなあ・・・


「うーん、まずは要らない注目は浴びたくないということと、俺にとっては手助けでも何でもなく、できるからする。それだけなんですよ」


「・・・」

的を得られず困った表情のビクトリア。


「それを感謝して貰えるのはいいですよ、しかしそれ以上は不要です」


「・・・分かりました」

何とか飲み込んでいる様子。


本当の所を言うと、マジで要らない注目を浴びたく無いのだ。

最初の頃はフェリアッテの一件では、店の前の土地を貰ったりしたものだが、今は事情が変わっている。

これまでにも何度か伯爵やヘンリー国王から褒章や報酬、終いには爵位を与えると言われたことがあった。

しかし全て断っている。


どうして注目を集めたく無いのか・・・

それは俺の事や俺達の家族の事を詮索されたくはないからだ。

只でさえ俺達は注目の的である。

でもそれは美容師の俺であったり、ネイリストの美幸であったり、庭師での親父である。

それ以上を深堀されたくは無いのだ。

要は異世界人である事を今はまだ悟られたくはない。


今回の話も、地球の物品をある意味無制限に俺達はこの異世界に持ち込むことが出来ている。

それを知られたらどうなってしまうのか?・・・

そこに不安が付きまとっているのだ。

だからと言って、何もしないであったり、見て見ぬ振りは俺には出来ない。

これは性分だからしょうがない。

困っている人がいれば、無条件で手を差し伸べたい。

俺は母親にそう育てられたのだから。

そこに理由や意図など存在しない。

これは当たり前の行動であると魂に刻まれているのだから。


「まあ何にせよ、問題が解決できて何よりですな」

ヘンリー国王のこの一言で相談は終了した。

最後に意味深に俺はあるポテチを差し出していた。

それはカラムーチョであった。

全員が身悶えしながら辛みを堪能していた。

あー!カラムーチョ!辛れぇーーー!!!



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