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本当にいいのね?

作者: あやとり

短編に挑戦してみました。

アホの子をよろしくお願いします。


作者はお豆腐メンタルですので合わない方はブラウザをそっとお閉じください。


「ベアトリス!君との婚約は・・・解消したい・・・」


隣にそこそこ可愛い令嬢を連れた婚約者は、私の名を呼んだ。


「そう。いいのね?」


「ああ。このフロアが僕の事を好きだというからね」


4歳の時から婚約を結んで、13年。

あと一年ほどで学園を卒業する。卒業したら私たちは結婚することになっていた。


同じ伯爵家でお隣の領で親同士が仲が良く、シリルの兄、シリル、私が仲良くなるのも必然だった。

同じ歳だということと、私が跡取りであるということから次男であるシリルが婿入りするという話で両家纏まっていた。


喧嘩もほとんどなく、学園にも一緒に通っていた。

2年生になり、シリルとはクラスも違っていたけれどお昼はできるだけ一緒に取るようになっていた。

だけど、ここ3ヶ月ほどシリルの予定が合わなくなり噂によると私以外の令嬢とお昼を食べていたということだった。




「もう二度と一緒に学園へは通わないし、一緒にご飯だって食べないし、一緒にお茶だってしないし、一緒に勉強もしないわ。

本当にいいのね?」


頷くシリル。


「私がシリル以外の人の手を取ってもいいってことね。ふぅん。わかったわ」



「べ「軽々しく名前を呼ぶのはやめていただける?アルダン伯爵令嬢とお呼びになって。アンクール伯爵令息様」」


「その令嬢との結婚に何のメリットがあるのか全く皆目見当もつきませんがお幸せに。ジャック!!聞いていた?とりあえず家に帰るわ」

私の従者のジャックは同じく学園に通っており、シリルが嫌なのが分かっていて私はジャックのエスコートを受け家へ帰った。


「お帰りなさいませお嬢様。こんな時間にお帰りとは、何かございましたか?」


「そうね。お父様はいるかしら?」

家令に案内され父の執務室に入る。


「ベアトリス、何かあったか?」

「シリルが婚約を解消したいんですって」


「ええ?何だって?嘘だろう?」


「だって、本人がそう言うのですもの。隣にそこそこ可愛いご令嬢を連れてたわ。彼女と婚約したいのですって」

侍女が持ってきたお茶とお茶菓子を食べる。


「そんなのんびり。いいのか?お前たちは相思相愛だっただろう」


「そうね。でも、そろそろじゃないかしら」


「何がそろそろなんだい?」



執務室のドアがバァンと開き

「ベアちゃん!!!!!」

とシリルが転がり込んできた。


ほらね。


「アンクール伯爵令息様。何か御用かしら。何の連絡も無く人の家に来るのも勝手に部屋へ入るのもマナー違反でしてよ」


「ベアちゃん!!ごめんよぉ!!ごめんよベアちゃん」

と抱き着いてすりすりしてくるシリルに


「シリル、ベアトリスに婚約解消を迫ったのだろう。どうしてここにいて、ベアトリスを抱きしめている!!」

ベリッと私達を引き離すお父様のこめかみに青筋が見えるわ。


「だってベアちゃんが悪いんじゃないか!あの女に引き止められてお昼を一緒に食べれなくなった時、迎えに来てくれなかった!」


「そういう気分の時もあるかもしれないでしょう?」


「僕はベアちゃんに、「わたくしの婚約者に手を出さないで!!」っていってほしかったのに」


「わたしがそんなセリフ言うと思う?」


「・・・思わない・・・。けどもしかしたらって・・・」


そうシリルは私に嫉妬して欲しがためにあの令嬢を利用した。

あのおん、令嬢も私がいるのを知っていてシリルに言い寄っているんだからクソだ。

シリルは外見が整っている。金髪に紫目のキラキラだ。

それで私の見目が劣っているから付け込まれたのかというと、私の顔も整っている。

薄いパープルの髪にやや茶色味かかった金目である。



「ねえ。シリル、よく考えて?私があの子に嫉妬する理由ある?」


「・・・」


「爵位も、見た目も、成績も。どこにあの子に嫉妬する要素があるの?」

にっこり尋ねる。


「うぅ・・・だけど僕といるだけでもやもやした気持ちにならない?」

ほぼ泣いているシリルはさらに言葉を重ねる。


「ならない」


「なんでえ」

俯くシリルの顔を顎に手を置き私の方に向け優しい顔をする。


「はあ。シリル、あのね。シリルは私のことが好きでしょう?大好きでしょう?違う?」


「違わない」


「ほらね。私はシリルを信じてるもの」


「・・・ベアちゃん・・・」

感動した表情のシリル。



一気に表情を消す。

「けど、シリルは私を信用していなかった。私を試すようなことをした。さらに衆人環視の中私の令嬢としての人生を汚した。

お父様、婚約解消の手続きを」


「ベアちゃん!!ごめん。婚約解消しないで!!」


「何を甘い事言ってるの?今日までに考える時間はあったはずでしょう?考えた末に私に婚約解消を叩きつけた。謝って済む段階はとうに過ぎてるのよ。わからない?

シリルは私ならきっと許すだろうって思ってたんでしょう。

もう帰って!」


「シリル、あとは両家で話し合うから今日はもう帰ってくれ」


「申し訳ございませんでした」

と床に頭をつけ泣きながら謝ったシリルは、トボトボと帰って行った。




「ベアトリス。よく頑張ったね」

と抱きしめてくれるお父様の優しさに涙が零れる。


「お前はシリルのことをずっと好きだったからねえ。私が嫉妬するぐらいに。

きっとシリルはもっとベアトリスからの愛情が欲しかったんだろうね。

その気持ちはわからないでもないけど、試すのはいけないよね。ベアトリスともっとちゃんと話すべきだった」


「お父様、婚約は解消しておいてね。あと一年の学園生活は留学することにする」


「・・・そうか。わかった」


お父様の胸でひとしきり泣いたらスッキリした。


シリルから『ベアちゃん』と呼ばれるのが好きだった。

そのシリルから「ベアトリス」なんて呼ばれてびっくりした。

私だってわかっていても傷つく。


だから婚約解消はけじめ。


あれを無かったことにはできないから。





その後、通っていた学園は休学し留学した。


「ベアちゃん、ベアちゃん」

と声を掛けてくるのは、もちろんシリルであるがどうして留学先にいるのか。


「僕も誠意を見せないといけないから学園を卒業試験受けて、卒業してきたんだ。ベアちゃんに悪い虫が付くといけないから新学期が始まるまでに終わらせてきたんだよ」


そう。実はシリルは頭がいい。

そしてさっさと飛び級して卒業までして付いて来たのだ。


どうしてその頭の良さをあの時発揮できなかったのかと思わざるを得ない。


あの後、シリルは当たり前だがこっぴどく両親に怒られ母や兄には虫けらを見るような目つきで見られるようになったのだとか。


「ベアちゃん!僕はベアちゃんを諦めないよ!僕はベアちゃんの愛情にあぐらをかいてた。よく思い出してみたらベアちゃんは確かに愛情を持って接してくれてたのに、僕ったら馬鹿だよね。

一生をかけて償っていくからね」


重い誓いを聞いた私もちょっとだけ嬉しかったりしたのだから、自分も馬鹿だなと思う。


シリルは今日も元気に男子生徒を威嚇している。

私に好意を持とうが持つまいが、お構いなしだ。




「ベアちゃん、ベアちゃん。僕と結婚して欲しい」


あれから約一年後に私にプロポーズした。


「・・・まだしない」

「まだ!ってことはいずれ僕と結婚してくれるんだね!ベアちゃん愛してる!」


つい言葉に出てしまった『まだ』。それはシリルが言質を取るには十分だったようだ。


毎日毎日「ベアちゃん愛してる」を聞いてると絆されないわけが無く。

二年後に陥落した。



だけどね、シリル。

次は無いよ。


元サヤに戻ると思っていた両親は実は婚約は保留にしていたり、あの令嬢がなんだか可哀そうになったベアトリスが平民(お金持ち)でそこそこイケメンなお相手を斡旋していたり。

シリル視点を書いてもいいかなとも思ったのですが短編にしてみました。


作者はシリルの『ベアちゃん』が大好きです。

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