表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/9

琥珀紗音

発光する飛翔体を下から見上げる者もいた


琥珀(こはく) 紗音しゃのん

彼女は本名で呼ばれることを嫌う

常にこのペンネームを名乗っていた


売れない同人作家でもある彼女は

常にゴシックロリータのスタイルを貫いていた

黒いワンピースに白いレースが襟元を飾り

黒い眼帯が片目を覆う


「あかんわ、増殖始まってますやん」


紗音はお揃いの眼帯をしたウサギのショルダーバックから

愛用の万年筆を取り出し

鋭くとがったペン先で

傷だらけの手首を切りつけた


タラタラとだらしなく流れる赤い血はそのままに

眼帯を外しその眼球に万年筆を


刺す


仰け反る琥珀紗音

噴き出す黒い飛沫はインクか血か

ともかく彼女は歯ぎしりを立てて痛みに耐える


「うぎぎ……はよせえ……はよせんかい!」


装甲を急かしているのか痛みを取り除きたいのか

ともかくとして黒い血はボダボダと真下に落ち

黒い夜の黒いアスファルトに黒い文字を描く


「…………………………………」


「見えへんわ!読めるか!黒い所に黒い字書くな!」


キレる紗音

痛すぎて何を見ても腹が立つのだ

眼球を突きさしたわりには余裕があるようにも見えるが

とにかくナノマシンは注入された


姫カットされた長い金髪を残し

黒い血が体を覆う

全身装甲しないのは危険だからという理由もあるが

お金と手間をかけてセットした自慢の金髪を残したいからでもあった


目の痛みが一瞬で甘い痺れに代わる

黒い血が全身を巡る感触が切なさを帯びる

全身に装甲しろ、全てを開放しろ

そうすればもっと……

抗しがたい欲求が紗音を侵食する


「いやや……うちは……こんなん…いやや……」


アスファルトに爪を立て耐える紗音

抗えば抗うほど分泌される得体のしれない物質に

うずくまり悶えるほか成すすべを持たない


「やめて……おねがい……いや……」


装甲が完了し体内の再構築も終了した紗音は

紅潮した顔も装甲に覆われ

長い金髪をなびかせ立ち上がる


「………ほな、いこか」




飛翔体は急速に分裂をして目視で数は計り知れないが推定200体以上

しかしまだ本体ほどの能力と思考を有さないものと判断する

紗音は絶叫する


「落ちろボケー!」


分裂したばかりの飛翔体が数十体落ちる

重力波で踏みつぶしながら紗音は本体に近づく

まだまだや、気合が足りん


「くぉらー!」


周辺のビルが崩れ落ちる

相当数の飛翔体が地に落ち

踏みつぶすまでもなく重力で弾け飛ぶ

あと少し、本体まで、届け


飛翔体が落とした分裂の中には意図的な個体が紛れていた

本体を地に落とすことに集中していた紗音

その死角から飛翔体が束になって彼女の体に飛び掛かり


貫通した


右わき腹より左下腹部への貫通

飛翔体は小さく質量化したため銃創のような穴ではあったが

胴体をつらぬいた時に人体で広がる衝撃波は

通常人間を死に至らしめる

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ