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南木アヤネ3

「降りてこいクソ女!ボコボコにしてやるよ!」


下品な女の声がする

南木アヤネだ

彼女は小柄な体に似合わず

不自然に足音を響かせ浮遊する母娘に近づいた

光は彼女に届かないらしい

黒い瘴気を漂わせ

歩むごとに瓦礫が窪む

尋常ではない重量を感じさせた


アヤネは両腕を突き出し拳を握る

空に浮いていた母娘は強い重力を受けて

穢れた大地にゆっくりと引き戻される


女は赤子を片手で支え

もう一方の手をアヤネに向ける

凝縮された光が質量化し

その塊を彼女に叩きつけた


両腕を交差、むき出しの顔を守るアヤネ

とはいえ質量化は不完全であり

硬質化した黒い血の装甲に傷もつけられないどころか

立ち位置を押し戻すことすら出来ない


南木アヤネ前進

大地を揺らし

大振りに構え

母娘をぶん殴る

女はともかく赤子でも容赦しない


光が壁となり母娘を守る

耳を突く金属音が響く

先ほどまで街を焼いていた女が叫ぶ


「どうしてこんな酷いことをするの!」


「うるせえ!黙って死ね!」


アヤネは光の壁を殴る

容赦なく躊躇なく殴る

覚醒して最初に一組の家族を焼いた女が叫ぶ


「おねがい!娘には手を出さないで!」


「うるせえ!そいつを殺しに来たんだ」


女の形相が一変する

自らの羽を引きちぎり

アヤネを目がけて投げつけた

光をまとい運動エネルギーを増した羽は

女の重い憎悪を加えて大質量となりアヤネに襲いかかる


吹き飛ぶアヤネ

さらに女は瓦礫を拾い叩きつける

黒い血の装甲は、瓦礫程度なんということもないが

娘を守りたい母の情念と

尋常ではない救世心が

黒い血の耐衝撃値を超える打撃を実現した


「あんたが!あんたが泣くから!あんたが泣くから悪いのよ!」


アヤネは泣いていない

赤子とそれを抱く女が泣いていた

泣きながら鬼の形相で

あんたが泣くからと叫び、瓦礫を執拗に叩きつけていた


アヤネの顔と頭は黒い血の装甲が薄い

黒いナノカーボン状の装甲は相当な防御力を誇るが

アヤネが全身の装着を許可しないため不完全であり

今現実に相当なダメージを負っている


頭蓋が割れ

黒い血を吐き

頸椎に亀裂も入っている

意識も既に朦朧とし

もはや猶予は無いと黒い血が判断した


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