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ミニSS 小さな贈り物

テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—


●本日1月31日は『チューリップを贈る日』。

エリーとルイスと読者の方々へ贈らせていただきます。


引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。


「エリーに見せたいものがあるんだ」


 ルイスに誘われ、帝都邸(タウンハウス)の温室に向かう。

 窓や換気、日よけシェードで調節し、夏に向かうこの季節でもある一定の温度に(たも)たれ快適だ。


「まあ、季節外れなのに……」


 そこには鉢に植えられた色とりどりのチューリップが並べられていた。


義父上(ちちうえ)の育児日誌を読んでたら、エリーが『チューリップ、大好き。かわいいもの』って話してくれる、って毎年書いてあったんだ。

そういえば領 地 邸(カントリーハウス)には無かったなと思ってさ。

庭師に相談したら、『クレーオス先生にちょっと“協力”していただければ』って」


 そう、チューリップは大好き“だった”。


 『あなたを一生愛します』『誠実な愛』


 これを意味する4本のピンクのチューリップを、あの、王立学園の入学記念の時計のデザインにするくらいには——


 踏みにじられた記憶は薄れても、どこかで無意識にこの花を避けていたと自覚する。


 でもわざわざ用意してくれたルイスの気持ちはとても嬉しく、柔らかな扉へのノックのように、心にゆっくりと響いてくる。


 そして傷つけられた奥にある、大切な場所と人との愛しい記憶のページをめくり、連れてきてくれる。


 ——ベッドのお母さまの元へ持っていったときに、受け取ってくださった微笑みと白く優しい手。


——多忙なお父さまと庭園を散歩した朝に、「とってもきれいに咲いたのよ」と先に立って歩く私を、「エリー、転ばないように。前を見て」と抱きかかえてくれた力強く安心できる腕。


 その色鮮やかさと、まろやかな曲線でできた花びらの美しさは、懐かしさと包まれていた豊かな愛情を呼び起こす。


「…………ありがとう、ルー様。とってもかわいらしくて綺麗だわ。

でもクレーオス先生に“協力”って?」


「チューリップはある期間、寒くないと花が咲かないんだ、って“おじじ”が、庭師が教えてくれたんだ。

それで“あの研究室”で……」


「あら、まあ。氷室の使い方もいろいろあるのね。

ふふふ……」


 今はクレーオス先生の書斎となっている、“旧執務室”にある“抜け道”からつながる“氷室”や、“発光きのこ”を育てる研究室などを利用したらしい。


 そうまでしてくれる気持ちこそが何よりの喜びで、私にとっては金銀財宝に勝るものだ。


「本当に嬉しいわ、ルー様。こうやって眺めるのも久しぶりかも。

ピンクのチューリップの花言葉は、“誠実な愛”。

今の私にとって、ルー様そのものよ」


 凛々しい横顔を見上げる私の頬と額に、ルイスは優しいぬくもりを落としてくれる。


「……俺にとって、エリーこそそうだ。

俺のために心を尽くして、ヴィアにも会わせてくれた。

ありがとう、エリー」


「ルー様……」


 ベンチに座り二人でしばらく眺めたあと、どちらともなく、『明日はオリヴィアと三人で見にこよう』と話す。


 私がお母さまやお父さまと紡いだ記憶の花に、新たにルイスやオリヴィアとの体験がふんわりと優しく重なっていく。


 まるでチューリップの花びらのように——


「ヴィアに会いに行きましょうか」


「ああ、そうだね。小さな姫君は起きてるか、眠ってるか」


 隣りを歩きながら、我が子を想い優しい表情を浮かべるルイスの愛情こそ、(かたく)なな(つぼみ)となっていた私を綻ばせた、唯一無二の贈り物だった。


ご清覧、ありがとうございました。

主人公エリザベスとその周囲を描いている拙作です。

誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。

★、ブックマーク、いいね、感想などでの応援、ありがとうございます(*´人`*)


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悪役令嬢エリザベスの幸せ
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