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183.悪役令嬢の義母と伯母

テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—


エリザベスの幸せと、その周囲を描きたいと思い書いている連載版です。


ルイスと小さな小さな家族との生活としては、59歩目。

引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。


「ようこそ、お義母(かあ)様と伯母様のおいでを(たまわ)り誠に光栄でございます」

「母上、タンド公爵夫人、遠いところをおいでくださり、ありがとうございます」


「ルイス、エリー。こちらこそお出迎えありがとう。

お忍びなのよ。よろしくね」

「お忍びのお供ですわ。エリー、ルイス様。よろしくお願いしますね」



 皇妃陛下と伯母様、お出迎えの私とルイスで、微笑みあう。

 今回は“皇妃陛下のお忍び”ということで、いつものエヴルー流は封印し、アーサーとマーサ、クレーオス先生など数人が後ろに控えていた。


 お二人とも、まずはオリヴィアの顔が見たいと、子供部屋にご案内する。

 オリヴィアは起きていてご機嫌だった。

 お二人に抱っこされても、泣きもしない。


「オリヴィアちゃん、おばあちゃまでちゅよ〜」

「おおおばちゃまでちゅよ、オリヴィアちゃん」


 さすがお二人とも抱き慣れ、あやし慣れをされていて、オリヴィアも「あ〜」「う〜」と楽しそうだ。

 複数の人間が関わっているためか、知らない人が抱いても、今のところは物おじしない。

 人見知りが出るのはまだ先なためもあるが、とりあえず泣かないでくれ私もルイスもほっとした。


「可愛くてずっと見てたいですが、オリヴィアも眠らないとね」


〜〜*〜〜


 伯母様が切り上げてくださり、昼食を摂るため、朝食室へお移りいただく。こじんまりとした部屋で、距離も近くお話しできる。

 エヴルーの季節の素材を味わいながら、話題はすぐに私に及んだ。



「エリー、元気そうでよかったわ」


「本当に。やっぱり顔を見ないと、手紙だけではね。うちの人も安心するでしょう」


「クレーオス先生やルイス、領 地 邸(カントリーハウス)の皆のおかげもあり、回復も順調です。

お心遣い、ありがとうございます」


「母上。夫人。エリーは元気だとお伝えしたではありませんか」


「それでも顔を見ないと、なの。

あなたもオリヴィアから1週間も離れたらわかりますよ。2、3日でもそうではなかった?」


 皇妃陛下がルイスに指摘すると、少し考えたあと頭を下げる。


「失礼しました。エリーから毎日手紙で『二人とも元気だ』と言われても、確かに顔を見るとほっとしました」


「そうでしょう。それが愛情、子どもに対しては親心というものなのです」


「はい、しかと(うけたまわ)りました」


 ルイスのかしこまった態度と言葉が微笑ましくて、笑いが起こり、一層空気が柔らかくなる。

 帝室やタンド公爵家の様子を聞くと、皆、元気で変わりはないようで安心だ。



「そうそう。オリヴィアとエリーの顔を見るのが第一の目的ですけれど、大切なことを相談しにきたのよ。

オリヴィアの受洗式は来月の初旬でしょう?」


「はい、母上」


「数日後に帝都邸(タウンハウス)でオリヴィアのお披露目会をして、第五皇子の立太子の儀が6月でしょう。

こまめな往復をするか、気になっていたの。

だったら、1日でも早く“帝都・エヴルー間特別道路”を開通させないと、と思って……」


 皇妃陛下、褒賞とはいえ、国家事業を私用目的で督促しないでください、と思わず言いそうになるが、柔和に微笑み答える。


「少なくとも、オリヴィアは8月までは帝都にいます。

こまめな往復はオリヴィアにはまだ無理ですので」


 これはクレーオス先生に勧告されていた。

 受洗式のための帝都までの移動も、オリヴィアは救急馬車に乗る予定だ。移動中の万一の出産に備え特注した馬車で、横になり医療行為も受けられる。揺れも少なかった。


「そうなのよね。綺麗に並んでしまいそうで、申し訳ないのだけれど……」


 伯母様が少しすまなそうに仰る。

 そう、お義姉様がたの出産予定が、5月と6月で、7月と8月にはカトリーヌ嫡孫皇女殿下とマルガレーテ皇女殿下の誕生祝賀会が開かれる。

 これには親族として、出席しない訳にはいかない。

 最低3回出席すれば、という社交計画は、おめでたいことで、変更を余儀なくされていた。


「オリヴィアがもう少し大きくなれば、1週間ほどの滞在ですむでしょう。どうかお気になさらずに。おめでたいことですもの」


「エリーもこう言ってます。自分達は妹や姪、ピエールやデュランの子どもは祝いたいので、あまりお気になさらないでください」


 わざわざお二人で来られたのは、このことを気にされてか、と()に落ちた。

 お二人とも私の“珍獣”化には理解を示してくださっている。


 これらのお祝いに出ても、2月から5月下旬、9月から11月はしっかりエヴルーにこもっていられる。

 1年の半分はエヴルーにいられるし、お子様方が成長すれば、出向かなくともすむようになる。

 タンド公爵家にはまだ祝事が続きそうだが、嬉しいことなのでよしとする。


「そういえば、あなた達の元にも釣り書きが届いてるんですって?」


「“も”ということは、母上やタンド家にもですか?」


 皇妃陛下と伯母様が顔を見合わせる。


 オリヴィアの誕生が報道された際、祝いの品はごく親しい間柄以外は断ると、記事の中で掲載した。

 お祝いの手紙は山ほど届いたが、侍女や補佐官達、ルイスで(さば)いてくれ、私は療養に集中できていた。


 そうすると、生後1か月を過ぎたころから、釣り書き付きの婚約の瀬踏みが舞い込み始めたのだ。

 これはアーサーと協議した結果、記録だけは取り、すべてていねいにお断りし、釣り書きごと返送させていただいた。


 『全く興味はございません』との意思表示で、本文は補佐官、サインのみルイスの対応だった。

 “中立七家”の皆様方は私達の方針を知っており、もちろん送ってきていない。


 その余波が帝室とタンド公爵家に行くとは、読みが甘かったと思う。

 ただ0歳児は早すぎる。

 カトリーヌ・マルガレーテ両殿下も、縁談話はまだ聞いてはいなかった。


「カトリーヌは先行きがまだ不透明でしょう?

次の皇太女に選ばれるか、それとも結婚して臣籍降下するかわからない。

様子見をしている貴族がほとんどなのよ。

それとマルガレーテは恐らく国外に嫁ぐでしょう」


「ちょうどいいのが、オリヴィアだったと」


 うわあ、ルイスが怒ってる。お二人の手前、抑えてはいるが静かに怒っていた。

 隣りの私にはガンガン伝わってくるし、お二人も苦笑いされ(なだ)めにかかる。


「ルイス様、仕方ありませんわ。オリヴィアの夫はおいしすぎる立場ですもの。愚かにも運がよければ、と思ったんでしょう。

そんな家の者を婿に招き入れると思われたのが、(しゃく)(さわ)りますけれどね。

我が家に来た分は、うちの人が威嚇付きで送り返しておきました。

しばらく静かにしてるんじゃないかしら?」


 伯父様とルイスを怒らせて、下手を打った家のリストを思い浮かべ、ため息が出そうになる。


「タンド公爵はとても良識をお持ちな大伯父様で頼もしいわ。それに比べて……」


「……皇帝陛下が“また”何か?」


 ルイスの声が1トーン低くなる。

 あれ?心を入れ替えたんじゃなかったんだっけ?


「ああ、ルイス。

私への相談で済んだから、安心して。

人払いをした上だったし、すべて差し戻しました。


『エヴルー“両公爵”家オリヴィア公女のお相手は、ラウリカ王国とも関わってくる。

王国ではオリヴィア公女にも“殿下”の称号が贈られた。

エヴルー“両公爵”家はもちろん、帝室も加わり、ある年齢に達したあとに、じっくりと検討する。早計すぎる者と思われたくなければ、言動を慎んだほうがよかろう』


この内容の教書も付けて送り返したわ。

しばらくは売り込みもやむでしょう。

皇帝陛下もこの方針に従って対応します。


すぐに縁談が舞い込んだ、さすがルイスとエリーの子どもだ、って単純に喜ばれただけなのよ。

よく聞いたら、『まだ早すぎる。王国の意向もある』ってそこはきちんとされてたわ」


 私とルイスもほっとする。

 皇帝陛下も、皇妃陛下や伯父様達側近に手綱を任せていれば大丈夫なようだ。


 ただ情報収集は欠かせない、とも思う。

 伯母様と伯父様は意図的にこの話を我が家には伏せた。

たぶん私の体調に配慮してくださり、こうして時がくれば、伝えるおつもりだったのだろう。



「ご配慮、ありがとうございます。

母上、夫人。エリーとも話し合っているのですが、オリヴィアのお相手はできれば“中立七家”の中に良い方がいらっしゃれば、と考えています。

あくまでも、ゆくゆくは、で、ご縁があれば、ですが……」


「それが無難でしょうね。

王国からオリヴィアへ“殿下”が贈られたのも牽制でしょう。

他国の王族を婿にしたら、さらに複雑になってしまうもの。

ラッセル宰相閣下もよくお考えですこと」


 皇妃陛下がお父さまのお考えを()めつつも、チクリと刺してきた。

 魔除けのピアスでも譲らなかったお二人だ。

 オリヴィア愛が早くも競い合っているようだ。


「ほほほ、無理もありませんわ。

ラッセル公にとっては、目に入れても痛くないエリーの子どもで初孫ですもの。

ちなみに我が家も、“ほぼ初孫”ですからね。

エリー、ルイス様。覚悟しておきなさい。あの人の愛も重そうよ?」


 伯母様はすっかり楽しんでいらっしゃるが、タンド公爵家の当主夫人としてもしっかりとお考えだろう。

 タンド公爵家にこれから生まれてくる子ども達、特に本家の跡継ぎでないピエールの子が男子なら、オリヴィアの婚姻相手として有力候補になるためだ。

 子ども同士は又従兄弟で、血の近さもさほど問題にはされないだろう。


「皆様から愛してくださり、本当に嬉しく思っております。

重たい愛は適度に加減していただければ、大歓迎ですわ」


 重たく歪んだ愛に支配されかけていた私は、念のため釘は刺しておく。

 あの王妃陛下のような人はいないだろうが。


 その後も帝都の噂や情報を教えてくださり、本当にありがたかった。

 私達も帝都邸を中心に独自に集め、定期的に報告を受けているが、こうして照合できれば精度も上がる。


 昼食の最後を飾るデザートは、ハーブティーと果物を添えたチーズスフレをお出しすると、喜んでくださった。


 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜


 皇妃陛下が帰る前に、エヴルー騎士団の私的な閲兵式(えっぺいしき)を行いたいと仰り、ルイスが準備に取りかかる。


 予定になかったことを仰るなんて珍しい、と思いながら、三人でサロンで待っていると、皇妃陛下に問いかけられる。



「エリー。オリヴィアとの距離感などで、考えることはない?

悩みがあれば、なんでも相談してほしいの」


「そうですわね。“テルース”の本の助言は、当主夫人の立場が多く、それも親子でさまざま、さらに“当主”であるエリーとは違ってくるでしょう?

なんでも話してちょうだい」


 ああ、ルイスに用事を言いつけて、私が話しやすくしてくれたのか、と思うだけで、瞳が潤みそうになる。


「お心遣い、ありがとうございます。

やはり……。ずっと側にいてあげたい気持ちと、領主の仕事を両立しなければ、とせめぎ合います。

お父さまの育児日記も参考にしてますが、やはり同じ悩みがあり、会える時にたっぷりと愛情を注ぐことは実践しています。

ただ、乳母や世話役をうらやむ気持ちもあって……。

とてもよくしてくれているのに、と申し訳なく思っています……」


 皇妃陛下と伯母様は黙って優しく(うなず)いてくださっている。


「そうね、ラッセル公がエリーの立場に近いので、参考にはなるでしょう。

アンジェラも療養中で、エリーとの触れ合いが少なかった、という意味でも似てるかもしれないわ」


 お父さまはひょっとして、そこまで考えてあの育児日記を送ってくださったんだろうか。

 天に召されたら焼いて欲しい、とまで大切にされていたものなのに。


「宰相閣下とは似ているけれど、やはり母親は生理的なものもありますものね。断乳は辛かったでしょう」


「はい、ただ仕方ないと思ってます。

乳母の授乳の時にタイミングがあえば、げっぷを出すのはさせてもらってます」


「そう、とてもよくやってること、エリー」


「よくがんばってるわ、エリー。うらやましさも当然よ。

私は『委ねている乳母や世話役ごと、子どもだ』と考えるようにしてました。しばらくかかりましたけどね」


「乳母や世話役ごと、子ども、ですか?」


 私の疑問を汲み取ってくださったように、伯母様が言葉を続ける。


「えぇ、乳母や世話役がいなければ、まだ赤ちゃんは生きていけないでしょう?

子どもが生きるために必要な存在、命を守る存在、と捉えれば、子ども自身とも言えるわ。

もう少し育てば、それを自分でできるようになるんですもの。

ただそういう存在が、よけいなことを考えないように目を配るのも、私達の立場なの」


 これは“テルース”のガイドブックにも書いてあることだ。

 乳母や世話役が、子どもの養育に入れ込んでしまい、母親のように振る舞ったり、酷い時は夫を誘惑し浮気に及ぶケースもあるのだ。


「まあ、ルイスにはありえないことでしょうけれど。エリーを深く愛してますものね」


 皇妃陛下は察して、優しく微笑まれる。


「その点、乳母も世話役も二人以上にしたのは、いいと思うわ。子どもと誰か一人が濃密すぎる関係になりすぎるのを防げるの。

私も母に言われてそうしていたわ」


「クレーオス先生が助言をくださって、主に体調面ですが、病気や怪我もあるだろうから、と」


「そうね。その面も大切ね。

貴族家の母親は、大らかにどんと構えていれば大丈夫。

会える時にたっぷり可愛がり叱るべきは叱る。

でも領民の子どもも似たようなものなのよ」


「え?」


「二番目以降は特にそうだけど、兄弟や近所の子ども、お年寄りが子守り役になることがとても多いの。

母親も家事や農作業、商いなどにとにかく忙しいのよ。合間におっぱいをあげて、あとはまた子守り役。

母親だけがずっと面倒をみてるのは珍しいでしょうね」


「まあ、そうだったの」


「私も領地から来た乳母に聞きましたの。子どもと離れて大変でしょう、と。

そのついでに、話を聞き込みましたの」



 確かに視察の時に、赤ん坊を背負っている子どもがちらほらいた。子ども達を遊ばせているお年寄りたちも。

そうか、そういうことか、と理解する。


 アーサーの初等学校についての報告書にも、『家族状況により、初等学校に就学前の弟妹を連れてくることを許可した。もしくは集落の高齢者に有給で保育させる』とあったことを思い出す。


「とにかく思い詰めずに周囲に相談すること。何かあったら、手紙をよこしなさい。

あなたは娘同然なのよ。嫁達が妊娠したから、遠慮してたでしょう?」


「伯母様……」


「私にも相談してね。特に社交関係はどうとでもします。

母親としては失格だけれど、良いお祖母ちゃんにはなりたいの」


「お義母様……」


 お二人の気持ちが嬉しくて、胸がいっぱいになり、(うなず)くしかできない私を、伯母様が背中を優しくさすり、皇妃陛下がハンカチを渡してくださる。


 しばらくして気持ちが落ち着いたころ、きびきびとした足音が近づきノック音のあと快活な声が響く。


「母上、夫人。準備が整いました!」

「そう、ありがとう。ルイス」

「ありがとうございます、ルイス様。さあ、エリーも行きましょう」

「はい、ご一緒させてくださいませ」


 私は笑顔を取り戻すと、四人で訓練場に向かった。

 皇妃陛下と伯母様は、見事な訓練の成果に満足され、最後にもう一度オリヴィアを抱っこすると、満足そうに帰途につかれた。


 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜


 その夜、二人の寝室でソファーに座ると、ルイスは私に問いかけてきた。


 2週間ほど前に夜泣きで起きていた私に気づき、ルイスが寝かせつけてくれたのがきっかけで、また二人の寝室で眠れるようになっていた。



「エリー。俺が離れてた間、母上達から何か言われたのか?

少し泣いてただろう?」


 ルイスは私に関しては(さと)い。目元などで気づいていたのだろう。


「言われた、というよりも話を聞いてくださったの……」


 私は話した内容をかいつまんで伝える。

 ルイスは黙って聞いてくれていた。


「お二人は、特に伯母様はすごいなぁって。

包容力がある方だと思っていたけれど、ひよっこの私とは大違い。お手本にしたいなって思ったの」


「ん〜、手本にしたい気持ちもわかるし、良いと思ったところは取り入れればいい。

ただエリーはエリーだ。ヴィアの母親はエリーだよ。エリーらしくやっていけば良いと思う。

俺と二人でね」

「ルー様……」


「クレーオス先生も仰ってるじゃないか。エリーはよくやってるよ。

『ヴィアと離れたくない』とは言っても、乳母や世話役を責めたり、攻撃的な態度は一度も取ってない。

『よろしくお願いします』ってていねいに託してる。

『エリー様には良くしていただいてます』って言ってたよ」


「それは……。うらやましいとか言っちゃったら、やりにくいでしょう?特に乳母は自分の子どもを置いて、ヴィアのために来てくれてるのに」


「その優しさがエリーなんだよ。大丈夫。少しずつ親子になっていこう。

まだこのころの記憶はあんまり覚えてないらしいし、良いとこどりをさせてもらおう」


「良いとこどりって?」


「俺とエリーには領主の職務、領民の生活と安全を守る義務がある。

その義務を果たした上で、私的な時間は、世話役に養育を依頼しているヴィアと過ごす。その時間を大切に過ごそう。

養育も任せっきりじゃなく、きちんと監督しよう。

ラッセル公爵夫妻の育児日記を読んで思った、俺なりの方針だけどどう思う?」


 ルイスは私よりもずっと理性的、かつ客観的に考えていた。


「良いと思う、わ……」


 同意する私をそっと抱きしめてくれる。


「エリーが十月十日、お腹で育てて命がけで産んだヴィアなんだ。

俺よりも思う気持ちがずっと強いのは当たり前だ。

少しずつ、少しずつだよ。

エリーなら大丈夫。いつか夫人や母上とはまた違う、エリーらしいお母さんになってるよ。

俺はそう思う」


「ん、ありがとう。ルー様」


 遠くでオリヴィアの泣き声が聞こえてくる。

 行ってあやしたかったが、明日の仕事量を考えると無理だった。

 ルイスの背中に両腕を回し、抱きつくように抱きしめる。


「ヴィアは大丈夫。一緒に眠ろう」

「……はい、ルー様」


 心の中で子守歌を歌いながら、オリヴィアの安らかな眠りを祈るように、ルイスの胸に額を預け、溶け合う心音を聞いていた。


ご清覧、ありがとうございました。

エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作です。

誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。

★、ブックマーク、いいね、感想などでの応援、ありがとうございます(*´人`*)


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コミカルなファンタジーを目指した作品を連載中。

精霊王、魔術師とその養娘を中心にしたお話です。


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