165.悪役令嬢のパレード
テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—
エリザベスの幸せと、その周囲を描きたいと思い書いている連載版です。
ルイスと小さな小さな家族との生活としては、41歩目。
引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。
「このままでは主治医として許可できかねますな」
朝食の席でパレードの参加について話すと、クレーオス先生が厳しい表情を見せる。
「先生。対策は立てます」
ルイスが語るところによると、私とエヴァ様は全ルートは同乗させないと話す。
帝都民が多い部分のみで、かつ聖堂に犠牲者のため花輪を捧げる儀式の際にお花摘みに行く予定だ。
「ルイス、いろいろ考えてくれてありがとう」
「姫君。よく考えてのことかの?騎士団の意向やルイス様に遠慮してござらぬか?」
「遠慮はありません。帝都の民達がエヴルー公爵である私を心配して花を持ってきてくれた。今も心配してくれている。
その心は本当でしょう。
エヴルーでもすごかったでしょう?最初は正門越しに会わなければならないほどでした。
領民、国民に慕われていれば、それだけ“安全”です。手が出せませんもの。民心を敵に回すのは、最悪に近い悪手でしょう」
「それはそうじゃが……」
「それにエヴルー“両公爵”は序列第1位。帝室の藩屏です。最低限の義務は果たして、エヴルーに引きこもります」
冗談でも反乱を疑われたなど口にはしないが、余計なことを言われないためには仕方ない。
これを機会にしたいこともある。
「ふむ。義務を果たさぬと気掛かりとな?誠に無理はしておられぬか?
帝都民に寄り添うお心はさすがじゃが、沿道からは『ご無事な出産を』などと声が掛かりますぞ。余計なご負担で、出産前の不安を大きくはしたくはございませぬ」
「クレーオス先生、主治医としての、先生個人としてのお心遣い、深く感謝します。
ただ、私とルイスの子供というだけで、充分な期待を背負わされた子と母親です。
王国ではそれこそ王妃教育で、『国王を産む身だ』と嫌というほど、さまざまに圧迫され続けました。
それに比べれば、この子には皇位継承権はありませんし気楽です」
ここで私は声を潜める。給仕はちょうどいなかったが、念のためだ。
「王国には絶対に戻りません。
秘密裡ですが、私と私の子孫には王位継承権は与えないと約定が交わされています。お父さまがしてくれました。
元々私に流れている王家の血は、数代前に臣籍降下された王女殿下のもので薄うございます。
ソフィア様とメアリー様にもお子が生まれました。私が継ぐのには無理がありすぎます」
二人とも落ち着いてはいたが、多少の驚きはあったようだ。私は優雅に微笑むと、元の音量に戻す。
「先生、ルー様。民達の声は応援であって、あの圧迫とは大違いですわ」
エヴルーでの生活、ルイスとの歩みを知った今では、国を動かす機械の一部にされそうになっていたことに改めて気付かされた。それも歪んだ形でだ。
もうすぐ“珍獣化”に近づく条件の一つも成立する。私の夢には少しずつ近づいている。
「そこまでのご覚悟ならわかりもうした。ただし付添いますぞ。儂もすぐ後ろに騎馬で参らせていただこう」
「それは何より安心ですわ。ね、ルー様?」
「ありがとうございます、先生。クィントゥスはエヴルーから連れてきます」
「それは助かりますわい」
クィントゥスはクレーオス先生と相性のよい馬だ。安心だろう。
私はそれでも心配そうなルイスの頬に唇を捧げ、笑顔で見送った。
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時は遡り——
ウォルフがあいさつ回りの最後に向かったのは、皇帝陛下の執務室だった。
茶菓が用意されると、すぐに人払いされる。
「遠路、ご苦労だったの」
「労ってくださるくらいなら、もう嫁いびりはやめませんか?
皇妃陛下がエリー閣下を大のお気に入りでも仕方ないではありませんか?
あなたもそれほど嫌ってはいなかったでしょうに」
「儂よりエリーを大切にしておる気がしてならぬ。エヴルーへ“里帰り”だと?
一人旅など初めてだったのだ。その後もだ。
エリーを『お義母様と呼んでくれた。目にも入れても痛くないほどかわいい』などと言ったのだぞ。
儂も言われたことがないのに……」
「いや、普通、おっさんには言わんでしょ。
俺だってエヴァから言われたら、ちょっと引きますよ?
それにそこまでお気に召したのは、エリー閣下がいろいろと“大変”だった皇妃陛下に寄り添った結果でしょう?
“大変”だった原因の大半を作り、ダメ押しされたあなたが何を言われる?」
ウォルフに遠慮なく指摘され、皇帝陛下はがっくりと肩を落とす。
「……あれは、どうしても、皇妃に贈りたくて、この世で最も希少とされてる美しさだ。似合うと思ったのだ」
「ねばりますねえ。ピンクダイヤモンドの件は数年は諦めたほうがいい。それもエリー閣下が持ち込んだと調査までさせていた。本当に付き合いきれません。
それよりも今は花でしょうが」
そう言いながらも、皇帝陛下の前で茶菓を飲んで食べる。こういう遠慮のなさが気に入られてもいる。
「花は本当にわからぬ。もう一つずつ記録で当たっておるわ。それも、あの、タジ?とかいう貧相な花束のせいじゃ」
「はいはい。息子にまで当たらない。
いい加減にしないと全部バラしますよ。
これでもギリギリの線で綱渡りなんです。
あなたの焼きもちの代行なんか、引き受けるんじゃなかった。
それを約束に暴走しないと誓ったのに、人が離れてる間に領地や勲章とか言い出すし。
まあ、正直ここらが引きどころですね。
この後、皇妃陛下に呼ばれました。おそらくはお説教でしょう。一緒に来ますか?」
皇帝陛下の顔色が変わる。ウォルフは素知らぬ振りだ。したくもない憎まれ役をやったのだ。少しは慌てろ、とも思う。
「ウォルフ。お前、話すのか?」
「どうしましょうかねえ。あなたは人間関係で“多少”の匙加減も、ギリギリの見極めも苦手だ。いや、できない。
だから代わりにやりましたが、俺もエヴァにこれ以上嫌われたくないんです。本当に酷い目にあったし、疑われてもいる。
『身籠ってる方にあなたがするとは思えない』とね。嬉しい限りですが。
俺もエリー閣下には恩があるし、ルイスを支えてもくれている。
本当にあなたを恨みたいくらいですよ?」
「……お前にまで見放されたら、儂は誰もおらぬ。皇妃にまで見放されているのだぞ」
皇帝陛下がポツリと口にした。
王者の寂寥感がにじみ出ている。ウォルフは大きくため息を吐く。
「いったい何年のお付き合いだと思ってるんですか?
あなたと帝国のために、四度も命をかけて子どもを産んでくださったんですよ。
離婚届は暴走しがちなあなたの手綱です。実によくお考えだ。離婚する気はありませんよ。あなたが約束を守っていれば。
だから私は皇妃陛下にお叱りを受けてきます。あなたの代わりにね」
「ウォルフ……」
「はいはい。俺にも領地や勲章は不要です。
それよりさっきの花ですが、記録よりご自分の日記を読まれた方がいいと思います」
意外な言葉に皇帝陛下は首を傾げる。
「日記だと?」
「そうです。日記です。新婚の時は特に皇妃陛下とのやり取りを細かく書いてたじゃありませんか。我々側近にのろけるくらいには。
あの頃の皇妃陛下はまだ皇太子妃殿下で、義母の皇妃陛下からかなりうるさく言われていた。
そんな時、庭園で話を聞いて慰めて、咲いていた花を渡して、喜ばれたとか、泣いてたのに笑ってくれたとか、嬉しそうに言ってました。俺はきちんとした花束よりもそっち系だと思いますよ」
「そうか?!そちらか?!」
疑問から歓喜の表情に変わった皇帝陛下にウォルフはさらに続ける。せめてこの“花の件”だけでも早期解決して欲しい。
皇妃陛下も想定していたとはいえ、『まだ思い出せないの』と少しはイラついてもいるだろう。
「まあ、花の名を日記に書いてなければ、必死で思い出すか、その頃いた庭師に聞くんですね。
まったく。調印後とはいえ軍事郵便でこんな相談してこないでください」
「皇帝と皇妃の仲が麗しくないのだぞ。一大事ではないか」
「隣国の第一王女殿下を嫁いびりする皇帝陛下のほうが、一大事です。
皇帝と皇妃は内政問題で済むが、この嫁いびりは外交問題で、内幕を知られればラッセル宰相が帝国に攻めてきますぞ。脅しではありません。お手紙をお見せしたでしょう。
皇妃陛下のお気持ちに寄り添うことです。
陛下は元々エリー閣下にご好意をお持ちだったでしょう。皇妃陛下をよく支えてくれていると。
あの“里帰り”の話を皇妃陛下がよくするようになるまではね」
「…………わかった。すまぬことをした」
「そう思うなら、やきもちをやめますね?このパレードが最後ですよ」
「わかった」
「その後の戦勝祝賀会では気持ちを切り替えること。
懐妊中の、それも自分の孫をお腹で育ててくれている嫁は大切にすること。いいですね?」
「くどい!わかったわ!」
「くどいくらい言わないとわからないからこうなってるんでしょうが。
皇妃陛下に全部バラされたいんですか?」
「ちょっと待て!それは困る!」
「だったら言うことを聞いてください。では失礼します」
ウォルフはすっと立ち上がり敬礼すると、執務室を出て行く。
それを見送る皇帝陛下は深く自省するが、自分だって好きでこうしたい訳ではない。
だが、『エリーがこうしてくれた』『優しかった』という愛妻の表情が、自分といるよりもずっと楽しそうに見えたのだ。
今もミネルヴァ勲章の件で、エリーの賢さを褒めて同意を求めてくる。
この気持ちを話せるのはウォルフしかいなかった。タンド公爵には絶対に話せない。
他の側近にもだ。下手をすると、エリーの排除にかかる。そんな事をしたい訳では絶対にない。
ウォルフの言う通り、皇妃の妊娠の時を筆頭に感謝していることも多々ある。
“熱射障害”対策も、今回の“直筆の手紙”もだ。
「あの時はああ言われはしたが、もう一度あの医師に、じっくり話を聞いてみるかの……」
皇帝陛下は独り、皇妃陛下に限っては気持ちの制御が難しい自分に、小さなため息を吐いた。
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パレード当日——
私は突貫工事のように調製してくれた、マダム・サラの手によるエンパイアドレスに、エヴルー騎士団の腰丈の肩掛けマントを羽織っていた。
マントには大きくエヴルー公爵家の紋章が刺繍されている。
青いベルベットのエンパイアドレスは、寒さを考えタートルネックに長袖だ。
タートルの襟と、肩から胸下の切り替えラインの中心部に向かう、逆三角形には、白に緑のレースを重ねていた。
妊娠により豊かになっている胸を強調するデザインでは、と躊躇した私に「絶対お似合いです」とマーサも後押ししてくれた。
「普通のエンパイアにサッシュも付けると、お胸を強調してしまいますが、これですと真紅のサッシュが逆に目を散らします。
ご覧くださいませ」
鏡の中の自分を確認し、マダム・サラの言葉通りだと安心する。
マーサが結い上げてくれた髪にはパールのピンが幾つも飾られている。
タートルネックの襟下に、中央には大粒のサファイアが輝く、大粒の真珠の二重の連なりのネックレス、真珠のイヤリングも身に付けていた。
これで準備は整った。今日で帝都の人々とはしばらくお別れだ。
私は元気だ、と伝えようと、鏡の中の自分に気合いを入れる。
「エリー、そろそろ時間だが……」
迎えに来たルイスは、今日は帝国騎士団の黒の正装だ。真紅のサッシュにガーディアン三等勲章と胸に星賞を着け、膝丈の肩掛けマントをなびかせていた。
うん、文句なしにかっこいい。きっと、きゃ〜きゃ〜言われるんだろうなあ。
私も桟敷で心の中で思いっきり言いたかったな、と思い見つめていると、ルイスの耳が赤くなり、口元に黒い手袋をした手を当てる。
やだ、もう、それだけでカッコかわいい。誰にも見せたくない。
「いや、その、久しぶりに、エリーの正装を見たら、前より、ずっと可愛くて、綺麗になってるなって。
このまま家に閉じ込めて、誰にも見せたくないよ」
期せずして同じことを考えていたとわかり、思わず小さく笑ってしまう。
「うふふ。ルー様。私も同じことを考えてましたのよ。
今日は特別公開いたしましょうね。皆が待っててくれてますもの」
「ああ。そうだね。同乗パレードの終着点はホテル前で、エヴルー騎士団と馬車が待ってる。
お花摘みにも行ける。安心してほしい」
さらに対策をしてくれていた。本当に優しい。
「ありがとう、ルー様。最高の旦那様だわ」
私は優美に微笑み、お礼を言うと、エヴァ様が待つ同乗の出発点へクレーオス先生達と共に向かった。
〜〜*〜〜
そこにはやはり正装のドレスに身を包んだ、ウォルフ騎士団長夫人・エヴァ様がいらした。
直接お会いするのは久しぶりだ。
笑顔で迎え入れてくださってほっとする。
出発点も小さな高級レストランで貸切となっていた。
「本当に申し訳ありません、エリー閣下。
ったくウォルフったら、本当に何を考えているのかしら。
戦地の夫を支えた夫人の代表なら、私だけで済むのに、お腹の大きくなったエリー閣下まで連れ出すなんて。
問い詰めても口を割らないし、今度だけだと言い張るし、子供みたいで……。
誠に申し訳なく思っています」
エヴァ様が深く優雅にお辞儀をなさる。
いや、エヴァ様も被害者だろう。
エヴァ様こそ、婦人会を取り仕切ってはいるが、それほど表に出たがる方ではない。
人気もあり、忠臣であるウォルフ騎士団長の妻として、公では堂々とされてはいるが、それ以外は家庭的で、騎士団以外の社交はさほど熱心ではない。
お家で家族のために刺繍などの手芸やお料理をされてるほうが楽しいという、一般的な貴族夫人とちょっと違うところが私は好きだった。
「どうか、お楽になさってください。エヴァ様も気乗りはなさってはいらっしゃらないのでしょう?
ただやるからには、夫を支えた妻として堂々と参りましょう」
「えぇ、仰るとおりですの。他の方々の代表として今は振る舞います。
それとあの人には、後日お仕置きを用意してますの。
私、身籠った女性を大切にしない、今の騎士らしくないあの人に魅力は感じませんもの」
エヴァ様のお顔がお綺麗なのに冷た過ぎて恐い。
うわ、皇妃陛下に続き、第二の家庭争議になりそう、と思いつつ、そこは触れずに柔和な微笑みを浮かべる。
「エヴァ様。そろそろ時間です。私、お花摘みに参りますわね」
「私も念のために。大聖堂でも一緒に参りましょうね」
私のためだけに、と周囲に思わせないようにしてくださる。
ありがたいと思いつつ準備をすませ、案内の騎士に従い、馬車に乗り込むと足元が暖かい。
座席シートの背もたれもだ。
「ルイス参謀のご指示で、懐炉を仕込んでおります。分厚い布袋に入っておりますが、熱い時は仰ってください」
「ありがとうございます。まるで春の心地がいたしますわ」
お天気も良く、絶好のパレード日和だ。
私と一緒に付き添ってくださるクレーオス先生は、以前変装したエヴルーの騎士ではなく、帝国騎士団の軍医の服装だった。これならお髭を切らずに済む。
クィントゥスも鬣を編み込まれ、飾りをつけ愛らしい。
「姫君。実にお美しい。ただ無理は禁物ですぞ。今のご気分はいかがじゃな?」
「申し分ありませんわ。水分も取りお花摘みにも参りました」
そこに遠くから、歓声が聞こえてきた。マーサは先回りするためここで別れる。
「クレーオス先生、エリー様をよろしくお願いします」
「マーサ殿、お任せあれ」
私の『目指せ、安産チーム』は優秀だなあ、と心強く思った。
〜〜*〜〜
パレードの先頭は副団長が単騎、悠々と進んでくる。
ここに騎士達が整然と並び、駒を進め、沿道の群衆の声援を浴びていた。
沿道の建物には、帝国の国旗と、帝国騎士団の団旗が多数飾られ、声援に揺れている。
建物の上から、色とりどりの花びらや紙吹雪などをまく者もいた。
そんな中、一際声が高まる。
行進のほぼ中央に、単騎のウォルフ騎士団長、その後ろにルイスが並んでいた。
ウォルフが笑顔を浮かべる一方、ルイスは凛々しく引きしまった表情だ。
やっぱりこの二人の人気は高く、沿道からの声も大きくなる。
同乗地点で馬から乗り換え、私が待つオープンタイプの馬車に乗ってきた。
「お疲れ様です、ルー様」
「エリーこそ大丈夫か?痛みは?気分は?」
真っ先に私の心配をしてくれる。
凛々しくて、強くて、そして何より優しい私の自慢の旦那様だ。
「どっちも大丈夫よ。懐炉まで準備してくれてて、ありがとう。
それと手を振る時はにこやかにね。眉間に皺は今は作らないの」
指で眉間を指摘すると、小さく破顔する。
私だけに向けてくれる爽やかな笑顔に、胸がパレードの歓声よりも高鳴る。
「わかった。エリーと一緒だ。いい記念と思うことにする。何かあったらすぐに言うこと。いいね?」
「はい、ルー様」
御者の掛け声と共に、馬車が隊列に戻る。
帝都の民衆の声が聞こえる。
「ルイス閣下とエリー閣下だ!戦争勝利、おめでとう!」
「勇敢なルイス様に神のご加護を!」
「知恵の女神の申し子、エリー様に祝福を!」
「お幸せに、お子様がご無事に産まれますように!」
「かっこいい〜!ルイス様!」
「エリー様、きれいっ!」
私は王妃教育で叩き込まれた優雅な微笑みと手の振りで、帝都民に応える。
それだけで『わぁあっ』と歓声が高まる。
青空の下、花びらが舞い散る。ルイスと結婚したあの日を思い出す。
沿道の両側の人々に手を振りながら、『あの時は、殿下って呼びかけで祝福されてたんだよね』と懐かしく感じる。
手を振るルイスが顔を寄せ、私の耳許で囁く。
「エリー、警備は万全だから安心してくれ」
あの日も警備を心配してくれていた。
安定のルイスに、今日の私は経済効果は気にせずに、手を振りながら柔和に微笑み返す。
「ありがとう、ルー様。凛々しいルー様に守られてるんですもの。ここが一番安心できるわ」
「それは何より光栄だ。
エリー、きれいだよ。結婚式の時も女神みたいだって思ったけど、今はもっときれいで、かわいい」
ルイスの言葉に熱くなった耳に、冬の微風が心地いい。
馬車は結婚式を挙げた大聖堂に、騎士団を代表して祈りを捧げるために到着する。
あの時とまったく異なる神妙な心持ちの私に、先に降りたルイスが手を差し伸べエスコートしてくれる。
「エリー、ありがとう。おかげで皆も祈ってくれてる」
確かに大聖堂の周辺の民衆は、声を上げる者はなく、祈りのために両手を組むなど殊勝な振る舞いをしている者が多い。
「私こそ、勇敢なる騎士の御魂に、花輪を捧げる栄誉をくださり感謝します」
ルイスにそう応えると、私は石畳に降り立ち、大聖堂の扉へ向かって歩んだ。
ご清覧、ありがとうございました。
エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作です。
誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。
★、ブックマーク、いいね、感想などでの応援、ありがとうございます(*´人`*)
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序章後の1話からは、魔法のある日常系(時々波乱?)です。
短めであっさり読めます。
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