150.悪役令嬢の本当の贈り物
テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—
エリザベスの幸せと、その周囲を描きたいと思い書いている連載版です。
ルイスと小さな小さな家族との生活としては、27歩目。
引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。
「天使の聖女修道院による“炊き出し会”です。
神のご恩寵と尊きお方のご慈愛です。
健康でなければ、畑も耕せません。遠慮せずにおいでなさい」
「お〜い。天使の聖女修道院様の“炊き出し会”だぞ〜。
穀類入りの小麦パンもある。肉や野菜入りのスープもあるぞ〜」
もう、何ヶ所目か——
旗竿にたなびくは、天使の聖女修道院の紋章旗、皇妃陛下と第一皇女の《御印》旗、そして帝国旗だ。
治安の悪さに、念のため用意していた帝国旗を加えた。
連合国の国民向けには外す予定だ。
院長は南部でも被害が大きかった村や町の近く、それも弓の射程距離以上はある開けた場所で呼びかける。
護衛する調理役もだ。
建物に囲まれていると、“不心得者”達による略奪などの危険があるためだ。
南に行けば行くほど人心は荒れていた。
エヴルーと帝国の騎士達がいなければ辿り着けず、安全な炊き出しもできなかっただろう。
列の中には“影”も混ぜ、大声を上げ難癖をつけたり、食料を奪おうとする演技をし、騎士が扮した運搬役などに取り押さえられる、といった“実演”をして見せておく。
トラブル発生前の予防は肝心だ。
そして、シスターが諭し、反省を見せて許す。
改心して、手伝うという筋書きの場合もあった。
「院長様、明日はいよいよ連合国向けですね。
来てくれるといいのですが……」
片付け終わり移動中の馬車の中、シスターが不安を口にする。
「来なければ来ないで、方法も考えています。
安心しなさい。大丈夫です。
毎日のご奉仕、ありがとう。あなたの笑顔で人々はほっとしてましたよ。
何よりも神が見守り、恩寵を与えてくださいます」
「院長様……」
涙ぐむシスターの横で、院長自身は神に祈りを捧げつつ、明日以降の“炊き出し会”への加護も願っていた。
〜〜*〜〜
その頃、南部の連合国内の国境地帯沿いの村々や町では、行商人に扮したエヴルーの“影”達がある噂を流していた。
起点は噂好きの女性だ。放っておいても女達の井戸端会議で広まっていく。
「天使の聖女修道院の院長様が、帝国南部を炊き出しで回ってるらしい」
「え?あの、聖者様が?」
「ああ。なんでも帝国の皇妃が支援してるんで、配り物もいろいろあるらしいぜ。
塩漬けだが肉もあるってさ」
「肉なんか、最後にお目にかかったの、いつかしら……。うちの子にも食べさせたいよ」
「俺も同じさ。で、その炊き出しが“あっち側”の村の近くでもやっててさ。うまかった。“米”って雑穀で作ったスープみてえだったが、細切れでも肉や野菜が入っててよ」
「あ、あんた。“あっち”の村に、国境越えて行ってきたの?ほんとに?」
「当たり前だろう?このごろは買い取りばかりで、ちっとも売れやしれねえんだ。
あんたに渡したその雑穀パンも帝国で仕入れてきたんだぜ」
村でも噂好きで評判の女は、きょろきょろと周囲を見回すと、声がさらにひそやかになる。
「ど、どこから、行ってきたのよ?」
「あんたも知ってるくせに。“抜け道”があるだろうが。領主様もなんか揉めてて、街道沿いに兵士を集めてんだよ。ゆるゆるだぜ〜」
「バレたらヤられちまうよ」
「もう20回以上、行ってんのに?」
「に、20回!」
「しぃ〜。声が出けえよ。お得意様のあんただから話してんのにさ。
俺がどこから食いモン、仕入れてきてるか不思議がって、何度も聞いてたじゃねえか」
「本当にいないんだよね?」
「いたら引き返してくりゃいいだけの話だ。
『野草取りに来ました』ってな。野草を取ってるうちに迷っちまったって言えば、お咎めなしだ。
しっかり野草も持っとけよ」
「なあるほど!野草取りね!あんた、頭がいいねえ。
やってみるわ。本当に炊き出しやってんのね?」
「ああ、しばらくやるって言ってたぜ。
『国境に引き裂かれたご親族も友人もいらっしゃるでしょう。神のご加護を』って言ってたから、“こっち側”ってバレてもくれるだろうよ」
「さすが聖者様だわ。何もしてくれないどころか、持ってくばかりの領主様と大違いだわ」
「しぃ〜。俺の話もここだけの話、あんたのその話もな。じゃ、毎度あり〜」
“影”達は“炊き出し会”と連絡を取り合いながら、種を植え付けていった。
〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜
南部国境地帯——
“影”や騎士達が周囲を探索し、安全と見極めた上で、細い道の側で炊き出し準備に追われる。
ここでは旗竿からは、帝国旗は外していた。
準備が整うと、シスター達は歌を歌い始めた。
よく知られた聖歌で、神にその日の糧を感謝する内容だ。
他に連合国でも知られた、神の加護を讃える聖歌を歌い続ける。
それから、どれぐらい経っただろう。
道の先に人影が見えた。
こちらの様子を窺い、いつでも逃げられるような身構えだ。
院長が笑顔を向け、大きくゆっくりと手を振り、呼びかける。
「天使の聖女修道院からきた、“炊き出し会”です。お腹が空いてる人にはどなたでも配ってます」
それでも動かない。
院長は鍋から木の椀に“米”入りスープを注ぐ。
「今から、あなたと私の真ん中くらいまで置きに行きましょう。
帰らないでくださいね」
そう言うと、細道をゆっくり歩き、ひと口自分で食べて見せたあと、そっと地面に置いて、元の位置に戻る。
人影は近づくと、女性とわかった。
頰がこけ衣服のサイズが合わないほど痩せた身体が痛々しい。
そして、院長達を見ながら碗に近づくと、さっと拾い上げ、くんくんと匂いを嗅いだあと、ひと口食べた。
そこからはかき込むように口に運ぶ。
あっという間に食べた女性に、院長は呼びかけた。
「ずっと食べてないなら、急に食べるとお腹を壊します。今日は白湯を飲んで休むといいでしょう。
明日もここにいますよ。またいらっしゃい」
女性は頭を下げると、連合国側に戻っていった。
これが始まりだった。
その日のうちにぽつぽつと現れたが、似たり寄ったりで警戒感丸出しだった人間が、翌日は数人でやってきた。
昨日の碗が置かれた位置まで来ると、院長の呼びかけに答える。
「つ、捕まえたりしませんか?」
「しませんよ。男の人には離れてもらいましょう」
女装した“影”以外、炊き出し鍋から距離を取ると、ようやく近づいて、椀を受け取るとむさぼり食う。
「少しずつ、少しずつでないと、お腹を壊しますよ」
シスターの呼びかけに、素直に従う者もいれば、キッと反抗する者もいる。
「腹が減ってるんだよ!もう一杯くれたっていいじゃないか?!」
「お腹が驚いて吐いたりします。それでもいいのですか」
院長ががらりと雰囲気を変え威厳ある声を出すと、怖気付く。
そこに優しく微笑みかける。
「この“米”で作った雑穀蒸しパンもあります。
ご家族がいたら、持っていきなさい。
ゆっくりゆっくり、ひと口30回ほど噛んでから、水と一緒に飲み込むんです」
「わ、わかったよ!」
他の女達も持ち帰ったが、院長の言いつけ通りに食べなかった者達は、胃腸の不調に苦しんだ。
その姿を見た翌日——
“炊き出し会”の指示におとなしく従う者達が列をなした。
〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜
ウォルフも連合国との丘陵地帯から潜入し、傭兵を装い、首都へ向かった。
きな臭くなってくると、彼らは集まってくる、
連合国側はお得意様だった。
首都に到着後は二手に分かれ、ウォルフ達は宿に入ると、連合国代表モランド伯爵家に潜入している“影”と連絡を取る。
彼は執事長お気に入りの侍従となっていた。
先回りして仕事を真面目にこなし、するべきご機嫌取りをした結果だ。
ウォルフは“影”の幼なじみで、両親が死んだあと、喧嘩には強かったので、村を出て傭兵になったという設定だ。
髪を染め、額に傷を巧妙に作り、その上から額と右眉下を覆うようなバンドを付ける。
干し肉を行儀悪く噛み、印象もガラリと変えていた。
今回は警備の増強のため、雇い入れるという。
「執事長、ウォーリーです。無口ですが、役には立ちます。バンドは私が付けるように申しました。
傷痕があるもので……」
「ふむ、取ってみよ」
ウォーリーことウォルフが黙礼し黙って外すと、額中央から右眉上を通りこめかみの生え際まで、ほぼ一直線に赤黒く盛り上がっていた。
そして、執事長に威圧感のある眼差しを向ける。
「…………」
「わ、わかった。もう付けてよい。物静かなのもちょうどいいか。前に雇ったヤツは騒がしいだけで役立たずだった。
今は油断ならぬのだ。帝国に対し団結せねばならぬ時に、副代表のダートン家は虎視眈々とこのモランド伯爵家の皆様のお命を付け狙っている。
腕は試させてもらうぞ」
ウォーリーは、こくりと頷く。
警備責任者の命令により試合をした相手は、モランド伯爵の10歳になる長男の護衛役の一人で、同じく傭兵だった。
試合は何合か切り結んだ後、剣を弾き飛ばしたウォーリーの勝ちとなり、負けた傭兵は邸外の警備に回された。
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私の寝つきは珍しく悪かった。
いつもは眠たくて仕方なく、ベッドに横になり、マーサのマッサージを受けながら眠ってしまうくらいなのに。
こういう時は焦っても仕方ない。
クレーオス先生が仰るには、胎児の成長が進むと、眠たくても眠れない夜になるが、目を閉じていれば、睡眠時の7割の休息効果があるらしい。
深い呼吸をしていると、さまざまな思いや考えが浮かんでは消えていった。
近日中に迫った出発準備のため、今夜はもう帰らないか、と思ったルイスは、いつもよりさらに遅く帰ってきた。
眠っていた時には感じられなかった隣りの居室の物音も、わずかに聞こえてくる。
そして、二人の寝室につながるドアが静かに開けられた時、私は思わず声をかけてしまっていた。
「ルー様、お帰りなさい。お疲れ様でした」
「ただいま、エリー。起きてたのか」
正直に言えば心配をかける。出発前にそんなことは嫌だ。
「ううん、さっきお花摘みに行ったの。それで……」
妊婦は諸事情でお手洗いも近くなる。
ルイスも皇妃陛下直々の皇子教育で知っており、申し訳ないが活用させてもらう。
めまい防止にゆっくりと起き上がった私に寄り添うように、ルイスがベッドに腰掛ける。
「エリーこそ、お疲れ様。
エヴルーと帝都をとんぼ帰りで“ユグラン”のこともあるのに、今日は本部にまできてくれた」
「すぐに届けなきゃって思ってたの。
あれは……。ソフィア様から渡されたの」
「え?」
私の言葉に、ルイスのサファイアの瞳がくりっと丸くなる。
もう、今はきゅんきゅんしてる場合じゃないのに。
気を引き締めなきゃ、私。
「こんな時期に、エヴルーに寄ってごめんなさいね、って。
『“ある方”からの匿名の寄付なのよ。
帝都ではなく、復路でエヴルーに寄ることにして、そこで渡した方がいい。変な腹も探られずに帰国できる。
パリュールを売り飛ばされたら、泣くに泣けない。エメラルドでも、真珠でも』ですって」
もう、答えを言ったも同然だ。
そう、あの懐中時計はお父さまからルイスへと託されたものだった。
「エリー。それって……」
答えをさとったルイスを前にして、私も本音を語る。
「もう、はっきり仰ればいいのに。
こういうところは、娘にも少し意地悪でいらっしゃるのよ。
私が気づかないか、もしくは、政治バランスで装備できないか、って思われたんでしょうね。
『なぜあのような多大な寄付を、とご下問があった時には、『王国の第一王女としての歳費で賄いました。昨年分は一切使っておりませんでしたので』って言えばいい』とも言われたの。
ソフィア様ったら、ず〜〜〜っと笑ってらしたのよ。
久しぶりにそんな顔を見たって。
もう、枕合戦になっちゃったわ」
親友の様子を思い出し、子どものように頬を少し膨らませてしまう。
「ブフッ、クックックックッ……」
ルイスまで笑い始める。ひどい。ひどすぎる。
私は思わず、抱きぐるみをかかえていじける。
「ルー様、ひどい……」
「クックッ……。ごめんよ。エリーがあまりにかわいくて。
なんか、昔、庭で見た、ドングリを頰ばったリスみたいでさ。
妃殿下と初めて意見が一致した気分だ。
そうか、義父上だったのか……」
ルイスはベッドに入ってくると、ひょいと私を抱え、自分の膝に乗せ、後ろから抱きしめる。
二人がお気に入りの姿勢の一つだ。ルイスに包まれているようで安心する。
「うん、そう。戦闘開始や合流の時刻は海軍のほうが切実なの。常備してるわ」
「ああ、なるほど。そういうことか」
耳元に響くルイスの声が、すとんと胸に落ちたような調子になる。
「だから時計産業は王国の方が進んでるわけだ」
「始まりはそうだわ。
あ、海軍常備とかは機密じゃないのよ。
『ドラコ提督、首切った。5分遅れた海兵を、時計を見ろと、首切った』なんて、港町で子ども達に歌われてるくらいだから」
「ホントに首切るのか?」
あの男ならやりかねない、という口調だ。確かにおじ様は豪放磊落でも軍規には厳しい。
「まさか。懲戒除隊です。
これ以来、海軍では『時計を取り上げられる=懲戒除隊』って隠語になっちゃったの、ってこんなコト話してる場合じゃないわ。
ルー様、早く眠らなきゃ」
「大丈夫。エリーと久しぶりに長く話せた気がする。明日からの元気になるよ」
ルイスの言葉に私の身体が少しだけこわばる。
「……明日、行くの?」
「エヴルー“両公爵”なら知っておいておかしくはないか。
明後日にはって陛下に言われたが、早く行ったほうがいいと、協議で一致した結果だよ」
「陛下のご下命が出たの?」
「今回は執務室に呼ばれた。『生きて帰ってこい』とも言われたが、あれは母上の伝言だな」
「ルー様……」
「余計なコト言う前に、あんたに言われなくても、エリーがいるから当たり前だって言っといた」
ルイスこそ子供のように、少し早口になる。何か言われたんだろう。あの人のことだから。
今は聞かない。帰ってきた時に、笑い話で聞けばいい。
「ふふっ、ありがとう。ルー様。
何時?エヴルー騎士団顧問なら話せるでしょ?」
「エリー。13時だ。だが団員の家族の見送りは禁止なんだ。目立つからね。表面上は単なる“遠征訓練”なんだ。
引き継ぎのあいさつは、副団長がやるよ」
「……はい、ルー様」
「こうしていつまでも抱いていたい。今夜は思いっきりエリーの香りを堪能しとくよ」
「私もそうする。あのね、ルー様……」
私はルイスの膝から立ち上がると、サイドテーブルの引き出しから、あるものを取り出す。
剣帯だ。
ウォルフ夫人、エヴァ様に教えてもらった、帝国騎士団の習慣にならった紋様を刺繍している。
独特の魔除けと幸運を願う紋様の細かさに、一針ひと針、祈りを込めるのだ、と図案と一緒の手紙には書かれていた。
「エリー、ありがとう。今あるもので十分なのに」
定期的に替える剣帯は、それこそタッジー・マッジーのような魔除けのハーブをモチーフに刺繍したものだった。エヴルー騎士団にはぴったりだった。
「今回は帝国騎士団を率いるでしょう。
いつもの剣帯は戻ってきて、エヴルー騎士団を率いる時に使ってね」
「わかった。ありがとう。皆に自慢しとく。
さあ、もう眠ろう」
ルイスと二人、ベッドに横になると、『明日は新しい剣帯の騎士達が多いだろう。その分の祈りもこの肩は背負うのだ』という思いがよぎり、ルイスの肩や背中をそっとなでる。
「ハーブのサシェも持っていってね。よく眠れるように」
「ん」
「識別票は今まで通り、肌身離さず持ってるわ」
「エリー、愛してる……」
「ルー様、愛してる……」
『あとね、あとね』という思いが口からあふれそうで、私は「おやすみなさい、ルー様」と返して自分の口をふさぎ、逞しい胸に頬を寄せた。
〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜
翌朝——
ルイスはいつも通り、朝食を早めに食べ、騎士団へ出勤した。
いつもの抱擁、いつもの淡い接吻、いつもの声、青い瞳に宿る優しさ——
私もいつもの微笑みで、少し違う見送りの言葉を紡ぐ。
「気をつけて行ってらっしゃいませ、ルー様。
御武運をお祈りしています。無事なご帰還をお待ちしています」
「ああ、行ってくる。エリー、よく眠って食べて、もっとかわいくなって、待っててほしい。
俺の居場所はエリーの元だ」
「はい、ルー様」
いつものように手を振って見送った私は、クレーオス先生と朝食を食べたあと、副団長の許を訪ねた。
〜〜*〜〜
13時前——
“遠征訓練”に出発する帝国騎士団を、帝都にいた公爵家騎士団の幹部達が引き継ぎのあいさつを兼ねて見送る。
初めてのことでもなく、実務者協議はすでに終わっていた。
その中には、今は国務大臣としての姿が多い、久しぶりに公で騎士服を着たタンド公爵の姿もあった。
帝都騎士団の代わりに、持ち回りで帝室と帝都の守護となるのだ。
「ルイス閣下、御武運を」
「公爵、帝都をよろしく頼む」
「お任せあれ。エヴルー騎士団は常駐してくれてますしな。心強いことです。
のお、副騎士団長殿」
「はっ、タンド公爵閣下。こちらこそよろしくお願いします!」
副騎士団長に付き添った少し小柄な部下が、このやり取りを真面目に見つめている。
「ルイス閣下。お留守はお任せください。
このエリオットもおります。エヴルー領だけでなく、帝都を皆様と協力しあい護ります」
エリオットと呼ばれた薄茶色の巻き毛がかった短髪の騎士が、エメラルドの瞳を輝かせ、ぴしりと美しく敬礼する。
「はっ!おふたりの副騎士団長の下、タンド公爵家騎士団を始めとした他家の方々とも協力し、帝都を、そしてエヴルーをお護りします!
後顧の憂いなく、任務にお励みください!
帰還された団長閣下に成長した我らをご覧いただきます!」
テノールより少しだけ高い声、何よりこの瞳——
俺の最愛は、思わぬ喜びと元気をくれる。
その言葉と行動で、俺の心と身体を温かい愛情と優しさで満たしてくれる。
「副騎士団長。エリオット。よろしく頼む」
ルイスは白い歯を見せ快活に笑う。
一転、表情を引き締めると、帝国騎士団を整然と率い、南部への“遠征訓練”に出立した。
ご清覧、ありがとうございました。
エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作です。
誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。
★、ブックマーク、いいね、感想などでの応援、ありがとうございます(*´人`*)
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コミカルなファンタジーを目指した新作を公開中です。
精霊王、魔術師とその養娘を中心にしたお話です。
【精霊王とのお約束〜おいそれとは渡せません!】
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序章後の1話からは、魔法のある日常系(時々波乱?)です。
短めであっさり読めます。
お気軽にどうぞ。
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