114.悪役令嬢の閲兵式祝賀会
テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—
エリザベスの幸せと、その周囲を描きたいと思い書いている連載版です。
ルイスとの新生活としては、これで52歩目。
引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。
「行進、再開ッ!」
閲兵式を終えたエヴルー騎士団は、皇城前の広場を出て、定められたルートを通り、帝都邸へ帰還した。
貴族の邸宅街を抜け、商業地区に入ると、通り沿いの店舗などには、帝国旗とエヴルー公爵家紋章旗が飾られていた。
通りの両脇には多くの帝都民が見物しており、その中には籠を持ち、花びらをまく者達もいる。
「みんな、かっこいいな」
「軍楽隊まであるなんて。さすが序列1位の公爵様だ」
「ルイスさま〜」
この手配の内、二種類の旗は、私が帝都の商工連盟に許可を得て、エヴルーの商会や取引先の商会が共に設置した。
花びらは、取引先からのサービスだ。
思わず手を振りそうになる騎士もいたが、鬼団長のルイスが許す訳はない。
帝都民の歓声の中、軍楽に合わせ、一糸乱れぬ行進を最後まで行い、帝都邸に辿り着いた。
「皆、ご苦労だった。
素晴らしい行進、素晴らしい閲兵式だった。
まずは着替えて、騎馬の手入れを頼む。
俺たち以上に疲れてるはずだ。充分に労ってほしい。
今夜は騎士棟で、ゆっくり休み、たっぷりある美味い料理と酒を楽しんでくれ。
騎士棟の中は無礼講だ。
総じて、お前達は最高だった!
以上!」
「ルイス閣下に敬礼!解散!」
『はッ!』
本隊の副団長の号令に騎士達は一斉に従い、ルイスと敬礼を交わす。
終わったと騒ぐ者、周囲の団員達と興奮気味に話す者、すぐに馬を厩舎に連れていく者、さまざまだ。
ルイスは副団長達に指示を出し後を任せると、愛馬を厩舎へ連れて行く。
団長室で着替えると、自分で愛馬の手入れを始める。
厳しい条件下でよくやってくれた、と何度も褒めて、ご褒美のにんじんや角砂糖を与えた後、厩番に引き継いだ。
一方、私は『家宝第一号』の佩刀を持ったまま、皇帝陛下に再度のお礼言上を行った後、退出される帝室の方々を見送る。
第五皇子殿下と第四皇子殿下は、佩刀に興味津々のようだった。
挨拶した公爵家や騎士団幹部の方々からも、祝福の言葉を寄せられるが、中には嫉妬の眼差しを向ける方もいた。
ここでもタンド公爵たる伯父様と伯母様に助けられる。
「エリー閣下は今夜の祝賀会の支度もあるでしょう。早めに帰邸なさい」
「ありがとうございます、伯母様」
「そうだぞ、エリー。
ご下賜された佩刀に、何かあったら大変だ。
すぐに宝物室に仕舞うように」
「ご助言、ありがとうございます。伯父様、伯母様」
私は馬車に乗り込むと、帝都邸に帰邸する。
執事長に経緯を話し佩刀を見せ、寸法を測ると一旦宝物室に仕舞い、鍵をかける。
「展示・保管ケースを速やかに調達してね。
宝飾店に当たるのが早いと思うわ。
あれは剣というよりも宝飾品だもの。
準備する手間賃も入れて、謝礼はたっぷり渡してください。
落ち着いたら、皇城の宝物担当に相談して、研ぎとかにも出さないといけないでしょう。
諸々よろしくね」
「かしこまりました」
私が家政婦長と打ち合わせしていると、ルイスが顔を出す。
「おかえりなさい、ルー様。大切なお役目を無事に果たし、おめでとうございます」
「ただいま、エリー。
いや、俺よりエリーだよ。本当に苦労をかけた。
あんな時にああいう風に持ちかけてくるなんて、いったい何を考えてるんだ」
「まあ、結果的には“エヴルー脅威論”とかに対しても、反駁の材料が立派にできたし、良しとしましょう。
『終わりよければ、全て良し』になるまで、あと少しね」
「エリー様、ルイス様。こちらはもう大丈夫でございます。お支度にかかられてください。
マーサ殿から、『エリー様はお早めにお返しするように』との依頼もございます」
家政婦長がマーサの伝言を伝えると、ルイスが小さく笑う。
「クックックッ……。エリー。マーサが手ぐすね引いて待ってるよ。早く行ってあげなさい」
「ルイス様もでございます。執事がすでにお部屋に待機しております」
ルイスは『げっ!』という表情を浮かべ、逃走態勢に移ろうとするが、私が逃がさない。
「ルー様、これも“両公爵”の務めですわ。
さあ、祝賀会でも押し出しがいいようになってきてくださいませ。
家政婦長、あとはよろしくお願いします。
何かあったら、遠慮しないですぐに相談してね」
「かしこまりました」
私はルイスの背中を押すと、私室まで送り届け、執事に預けた。
ドアが閉まる直前のルイスの顔が、もう、お留守番に残されちゃうワンコみたいで、すっごく可愛かったのは秘密です。
私もマーサの、「本日は腕によりをかけさせていただきます」に身を任せる。
『あれ?今朝も早起きして、美容プランフルコース受けたはずなんだけどなあ』という思いは、バスタブの泡の中に溶けて消えていった。
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その夜—
帝都邸の大広間で開催された、閲兵式祝賀会では、皇帝陛下に下賜された佩刀が、やはり注目の的だった。
さすが我家の執事長は、まず第一に、帝室御用達でもある、老舗宝石店へ使いを出し、協力を求めた。
マダム・サラを通して、私の宝飾はほぼここで調製している。
宝飾店もしっかり、“マダム・サラデザイン”で、お求めやすい価格の品を販売している。
得意先からの依頼に、本店の中で、サイズが合う最も格式の高いガラスケースを、予備のガラスケースと取り替え、貸し出してくれた。
これは仮の処置なので、貸し出し料金とは別に、展示・収納ケースを、この宝飾店を通して注文しておく。
多少、割高になるが、これからも融通を聞いてもらうための先行投資と思えば、安いものだ。
また、『宝飾は宝飾業に任せろ』といった感じで、剣の装飾の手入れや、展示台、裏側も見える鏡の設置まで、博物館並みに設えてくれた。
得意先になっておいてよかった、としみじみ思った。
ガラスケースに鎮座する、皇帝陛下の佩刀は、帝国の威信、そのもののような豪華さだ。
鞘には、帝国の紋章が象嵌細工と金細工で刻まれ宝石も配され、また柄の先や鍔には大粒の宝石が散りばめられている。
やはり戦うためでなく、象徴としての剣だ。
現役騎士のルイスは、苦手な部類だと思う。
だって、いくら刀身が業物でも、あの柄を持っては振るえない。
握ると宝石が手のひらに食い込んで、ものすごく痛そうだし邪魔だ。
大広間の中央に設置された展示ケースの両脇には、物々しいが、警備の騎士団員が2名、立哨する。
万一に備えなくては、何かあった時には大問題だ。
貴婦人やご令嬢は、立哨にもめげず、品性を保ちつつも、目はしっかり宝石や細工に釘付けだった。
男性も、『ほう、これが』といった風に覗いていく方々も多い。
お客様を迎える主催者のルイスは、黒の夜会服に、真紅のサッシュにガーディアン三等勲章と胸に星賞を着ける。
宝飾はエヴルー公爵家紋章の金細工で、ピアスと、左手小指のシグネットリングだ。
胸のポケットチーフは、私の瞳の緑色だ。
その隣りに、同じく主催者として立つ私の衣装は、右肩ワンショルダーのAラインの緑色のドレスだ。
小ぶりな青色系のハーブの花輪を散らし、実際の色合いで刺繍してある。そのため、華やかかつ上品な仕上がりとなっていた。
そしてルイスと同じく、真紅のサッシュにガーディアン三等勲章を、胸に星賞を着ける。
宝飾は、『エヴルー・シリーズ』に合わせた、エメラルドの二連に、葉を思わせるカットのダイヤモンドと、花を思わせるカットの大きなサファイアを金細工で連ねたネックレスだ。
同じデザインのイヤリングと、結い上げた金髪に髪飾りのサファイアの花が揺れる。
こういう場での私は、“広告塔”であり、エヴルー“両公爵”家の豊かさの象徴で、円満な夫婦関係の体現者だ。
財政バランス上、健全な範囲で、社交の場で広く宣伝する必要があった。
六家の公爵家以外に、“中立七家”の三家を始めとした侯爵家、ウォルフ帝国騎士団長を始めとした、帝国騎士団や各公爵家騎士団関係者の諸家などを招待している。
クレーオス先生にエスコートされた、マダム・サラもいる。
エヴルー騎士団の騎士服のデザインは、マダム・サラが引き受けてくれた。
機能性重視で改良していくためだ、とルイスに説明したら、納得してくれたのだ。ありがとう、団長閣下。
エヴルー騎士団からも隊長以上は参加していた。
騎士棟は騎士棟で、一部を除き、盛り上がっていると、ルイスが耳打ちで教えてくれた。
「エリーは明日行って、労るといい」
「え?今夜じゃなくて?」
「明日だ。今日は立入禁止」
ああ、そういうノリになってるんだな、と思う。
花街に繰り出すのは、今夜は禁止したらしい。
何か問題を起こす、もしくは相手から意図的に起こされても、せっかくの閲兵式成功に水を差す。
招待者が揃ったところで、エヴルー騎士団長であるルイスに、顧問の私が寄り添い、挨拶をする。
「今夜は私どもエヴルー公爵家騎士団の閲兵式祝賀会にお越しいただき、感謝いたします。
なにぶんにも、産声を上げたばかりの公爵家騎士団です。お引き立てのほどを、よろしくお願いいたします。
全団員が、帝国と帝室への忠義を胸に、日々、切磋琢磨しあい、帝室の藩屏にふさわしい騎士団へと成長できるよう、努力する所存です。
どうか見守りいただけるよう、よろしくお願いいたします」
ていねいな物言いと凛々しい微笑みの下に、『余計な口出しは不要』という意図も見え隠れして、私は心中、頼り甲斐がある旦那様だなあ、と思っていた。
次は私の乾杯の挨拶だ。
「帝国と帝室、帝国騎士団を始めとした、各家騎士団の繁栄と発展を願って、乾杯!」
『乾杯!』
エヴルーと口にしなかったのは、驕りと受け取られないためだ。
私は手にしていた赤ワインを、ルイスと掲げ合い飲み干した。
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そこから、歓談と飲食、主催者への挨拶が始まる。
料理と飲み物は、エヴルー産の素材を帝都風に生かした、料理長渾身の品々が並ぶ。
飲み物は、タンド公爵領産のワインやシャンパン、エヴルーの果実水、ミント水、冷したハーブティーなどが供される。
一方、私とルイスは、各家のご挨拶を受ける立場だ。
最初の公爵三家は、“中立七家”の内なので問題ない。
タンド家を始め、皆様、和やかな雰囲気だ。
その後の降格され、序列第五位、横並びの公爵家三家は、面倒だが、やり過ごすのが一番だ。
前もって皇城の儀礼官に、三家内の序列を確認し、執事長に案内させていた。
そこでも文句を言っていたのが、一番最後となった、皇妃陛下のご実家、ルイスの伯父の公爵一家だった。
「ルイス様、閲兵式、ご苦労でありましたな」
いきなりの上から目線だ。
この性格だと、これから変わるのは無理だろう、年々、ひねて行くのだろうと思う。
ルイスは余裕を持ち、微笑んでゆったりと返す。
「いえ。苦労したのは、我が団員達です。
かなり鍛えましたので。
その甲斐あって、彼らにとって閲兵式は、皇帝陛下の玉顔を拝し、お言葉を賜る、素晴らしい経験となりました」
皇帝陛下を持ち出され、ぐっと一瞬詰まった表情となる。
これくらいで顔色変えてて大丈夫かしら。
「本当に。皆、感動しておりましたわ。
陛下から、忠誠を受けとってくださった証に、素晴らしい佩刀を下賜されたのですもの。
臣下として、帝室と帝国をお支えせねば、と改めて思いました」
私が会場中央に置かれた、展示ケースにちらりと眼差しを配ると、さらに、『ぐぬぬ』といった表情になる。
そこに夫人を追い越し、令嬢二人が全く別の話題を出す。
「エリザベス閣下は、エヴルーがお好みで、月の半分はエヴルーにいらっしゃるとか?」
「そうそう。ルイス様を放って行かれるなんて、よっぽどお気に入りの方でもいらっしゃいますの?」
よりにもよって、祝いの席にふさわしくない話題だ。
そうか。喧嘩を売ってきたか。
では、お高く買わせていただこう。
ルイスの怒りにも触れたようだが、視線で宥める。
私は自然な範囲で、声の音量を上げ、周囲に響く発声に切り替える。
「お気に入りの方、ですか?
えぇ、たくさんいらっしゃいます。
エヴルーの殖産興業に、大いに力を貸してくださっている方々ですの。
天使の聖女修道院の院長様を筆頭に、多数いらっしゃいますのよ。
でも、エヴルーだけではございません。
エヴルーの殖産興業で生まれた品々を、とても気に入ってくださってる方々もいらっしゃいますのよ」
「へえ、そうなんですか」
話の筋を変えられ不満顔だが、戻す話術もないらしい。
「はい。皇妃陛下や皇女母殿下を始めとして、ああ、そうですわ。最近では、第五皇子殿下や第四皇子殿下もお気に召してくださっていますの」
「こ、皇妃陛下が?ハーブの調合師だけじゃなくて?」
「はい、エヴルーの新しい品々をお気に入りくださり、臣下として、またマルガレーテ皇女殿下の乳母兼教育係としても、嬉しくも誇らしゅうございますわ。
そちらの公爵領の品々も、さぞや素晴らしいものでございましょう」
この公爵家は、広大で豊かな領地に安心し切って、領地経営らしい経営をせず、長年代官任せで、一年中、帝都邸にいる、との調査結果だった。
「も、もちろんだッ!皇妃陛下にもご愛用いただいている!」
「さようでございますか。近々、出仕の予定がございますので、その時に教えていただきますわ」
私は上品な微笑みを浮かべる。
見栄を張ったはいいが、皇妃陛下に嘘がバレると思ったのか、顔が青くなり慌て始める。
すぐバレる嘘はつかなきゃいいのに。
「そうなさるがいい。では失礼する!」
やっと去ってくれて、私もルイスも、貴族的微笑みで見送る。
その後は、皇女母殿下のご実家の侯爵家や、アンナ様のノックス侯爵家、ウォルフ騎士団長を始めとしたゲール侯爵家の皆様方など、短いながらも、有意義なやり取りをし、ご挨拶を無事に終えた。
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残りの時間も、さまざまな方々と歓談をしていると、大広間の扉の方が騒がしくなった。
すぐに執事長が私とルイスの元へ来る。
短い報告に、頭が痛くなった。が、顔には出さない。
適切な解決のため、素早く何点か指示する。
大広間の招待客達が左右に分かれ、招待していない高位の方々が、颯爽と歩いてくる。
タキシード姿の、第五皇子殿下と第四皇子殿下だ。
「ごきげんよう、兄上閣下。エリー閣下。
閲兵式成功、おめでとうございます」
「ごきげんよう、ルイス閣下、エリー閣下。
急に申し訳ありません。皇帝陛下のお許しを得たお忍び、です」
二人で顔を見合わせ、『悪戯、成功!』といった表情だ。
「兄上閣下、ってなんですか」とツッコミを入れたくなる。
ルイスが騎士礼を取り、私が深くお辞儀をした後、貴族的微笑みを浮かべ、ルイスが尋ねる。
「帝国の輝ける星たる第五皇子殿下、第四皇子殿下。
拙宅にお越しいただき、光栄ではございますが、いったいどのようなお忍びでございましょう」
「父上の佩刀を拝見しにきました。
まだ一度も見たことがなかった品だったので、是非近くで拝見したい、と思い立ちました。
父上に聞いたら、『早い方がいい。ルイスとエリー閣下はしっかりしてるから、すぐに専門家に手入れに出すだろう。しばらく見れなくなるぞ』って、許可も出してくれたんです」
「あの、ボケ」
ごくごく小さな、私にしか聞こえない囁き声で、ルイスが呟く。
思いっきり不敬なんですけど。気持ちはよぉくわかります。
「まあ、さようでございましたか。ではこちらへどうぞ。
今、ケースの鍵を開けますわ」
すでに来てしまったものを、追い返す訳にもいかない。
私はにこやかに微笑み、別室に控えていた宝飾店の担当者を急遽呼びよせ、『専門外ではありますが』と、断りを入れた上で、外装の宝飾の説明をしてもらう。
その後、白手袋をしたルイスが、佩刀を抜き放ち、どういう業物か、ざっと伝えた後、鞘に収め、二人の皇子殿下に持たせる。
白手袋をした上で、大喜びで持って触れて間近で見た二人は、興奮冷めやらない状態だ。
切りのいいところで、佩刀は無事に、展示ケースに戻され、鍵をかけられた。
「さあ、お二方。お忍びはここまでです。
今からご自宅にお送りします。私と共にお越しください」
「え?でも、あにう、いえ、ルイス閣下は、その、お忙しくて……」
ルイスの迫力ある微笑みに、第五皇子殿下が口ごもる。
「殿下方を無事に皇城に送り届ける以上に、重要な仕事はございません。
さあ、参りましょう」
「はい、ルイス閣下。エリー閣下、他の列席の方々、失礼します」
「はい、ルイス閣下。エリー閣下も他の皆様もお騒がせしました。失礼します」
「エリー、後を頼んだ」
「かしこまりました。
ルー様、実はね」
私が耳元で囁くと、ルイスは目を見開き、青い瞳が楽しそうな光を帯びる。
「では、第五皇子殿下。第四皇子殿下。
お気をつけてお帰りなさいませ。
ごきげんよう」
叱られた子犬二頭が、大型犬に連れて行かれるさまを見送ると、私は招待客に呼びかける。
「ご来賓の方々にお願い申し上げます。
お忍びをされた方々については、何とぞご内聞に願います。
そろそろ、お開きとさせていただきます。
本日は、エヴルー公爵家騎士団閲兵式祝賀会に、足をお運びいただき、誠にありがとうございます。
これからもどうかよろしくお願いいたします」
私は招待客の皆様に、深いお辞儀で謝意を表す。
大広間の出入り口に立ち、最後の一人まで見送ったのだった。
〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜
皇城、後宮内—
皇妃陛下の私室では、第五皇子殿下、第四皇子殿下、そして皇帝陛下が、ソファーに横並びに座り、皇妃陛下と相対していた。
「いったい、何を考えているのです。
閲兵式に祝賀会で、大変な臣下の家に、いくら身内とはいえ、連絡して許可も取らずに、いきなり押しかけていくなんて」
「申し訳ありません」「本当に申し訳ありません」
二人の皇子殿下はすっかりしょげかえっている。
「まあまあ、そんなに言わずとも。ルイスが送り届けてくれたのだろう?」
「えぇ、エリザベス閣下は礼儀正しく先触れを出してくれましたわ。
もう、恥ずかしくて。
あなたが一番悪いんですよ!
拝見するなら、今日手紙を届けて、手入れに出すのを待って貰えばすむことなんです。
お忍びと言っても、お忍びになってません!」
そう。
私は皇妃陛下とも顔見知りになっているマーサを先触れに出して、事情を“きちんと”説明しておいた。
その上で、ルイスにこの二人の皇子殿下を皇妃陛下の元に送り届けるよう告げたのだ。
「いや、ちょっと、その、ちょっぴり、驚かせようと、思って……」
「あ・な・た?
ルイスとエリー閣下を最初から困らせるおつもりだったんですか?!」
皇妃陛下の雷が落ちる。
皇帝陛下の言葉は、皇妃陛下の怒りに油を注ぎ、三人はこの夜、遅くまで、みっちりお説教されたのだった。
ご清覧、ありがとうございました。
エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作です。
この『悪役令嬢エリザベスの幸せ』の世界を借りて、
小説投稿サイト「小説家になろう」様が主催する、夏季の期間限定企画「夏のホラー、テーマはうわさ」に参加させていただいています。
夏っぽい、怪談仕立てのお話です。
【ここだけの話】
https://ncode.syosetu.com/n7906jj/
お盆になっても猛暑が続いています。
残暑お見舞い代わりに、よかったらお楽しみください。
ヽ(´ー`)
誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。
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