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小話 7  100回記念SS⑥綺麗な薔薇と見えない棘(とげ)

テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—



 ※※※※※ 『100回記念SS』の掲載について※※※※※


ご覧いただいてる皆さまへ


 ご愛読いただき、誠にありがとうございます。

 皆さまのおかげで、100回を越え、連載を続けさせていただいています。


 こちらは『100回記念SS』の6作品目で、本編の番外編です。

 『その後のアルトゥール王子と薔薇妃様について。特に薔薇妃様は出てきてないので、どういう人か』と『あの鉱山送りになった令嬢と子息達のざまぁな現状を、閑話として』についてですが、内容については、作者にお任せとなっています。


また、最後はラッセル公爵視点です。


これからもよろしくお願いいたします。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



※※※※※※※※※※ご注意※※※※※※※※※※※※※


本日は2話更新(本編1話と小話1話)しています。

本編の更新は『112.悪役令嬢の領歌と儀式』で、

小話の更新は、『小話 7100回記念SS⑥綺麗な薔薇と見えない(とげ)』です。


こちらは、『小話 7』です。

前話、『112.悪役令嬢の領歌と儀式』の読み飛ばしにお気をつけください。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。



「あれから、もう、二年経ちますのね……」



 王城の後宮に与えられた、日当たりの良い部屋で、ソフィアはひとり(つぶや)く。


 その手には親友エリザベスからの手紙があった。

 何度読み返しても美しい筆跡から浮かぶ優しさに、胸が温かくなる。

 ほのかに、ゆかしく漂うラベンダーの香りさえ、懐かしく思う。


 背中に流れる銀色の髪には、白金の薔薇(ばら)が美しく咲き誇る、見事な金細工の髪飾りが上品に輝く。

 エリザベスからの、出産の祝いの品だ。


 懐妊中のお悩みと、ご出産の痛みに耐え抜いたご苦労には、とても足りませんが、と(いたわ)りの言葉と共に贈られた。

 ソフィアの銀髪とエリザベスの金髪のようで、お気に入りとなった。


 産後1ヶ月の身体を預けたソファーの横で、乳母がゆっくりと揺籠(ゆりかご)を揺らしている。


 夫・アルトゥール王子との男児、フレデリックがすやすやと眠っていた。



「わたくしが正妃、それも二人の内の一人だなんて、話が違いましてよ。エリザベス様」


 手紙に向かい、親友を前にしてのように、何回目かの抗議を、(ささや)き声で語りかける。

 責める言葉に反し、口調は甘やかだ。



 『覚悟の上です。私は重責に耐えうる器ではありません』


 冤罪(えんざい)を追及されていた、王立学園の生徒総会の壇上から、ソフィアにこう答えた親友は、1年と数ヶ月で、帝国の公爵となり、臣籍降下した第三皇子殿下と結婚していた。



 本来なら、エリザベスを王太子妃として、ソフィアとメアリーが側室として、三人で支え合い、薔薇(ばら)妃、百合妃、と呼ばれていたはずなのに—


 アルトゥールが、エリザベスにあんな仕打ちをしなければ、あの男爵の私生児が勝手に自滅しただろうに。



 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜


 あの鉱山の強制労働に送られた私生児は、本当にしぶとかった。

 声も出ないのに、“夜の世話係”を勤める間に、涙や表情、仕草で周囲を籠絡(ろうらく)し、他の強制労働者達に反乱をそそのかして、自分は新たな“お気に入り”と逃亡を図った。


 当然、王家に“仕込まれていた”者達に密告され捕縛、鉱山送致から三ヶ月後に処刑された。

 鉱山の出入り口に肩まで埋められ、反乱計画に加わり、罰則を受けた仲間達に、『お前のせいだ』と罵られながら、一人につき一回、首が切れるまで鋸引(のこぎりび)きにされたと報告を受けた。


 その私生児と肉体関係を持ち、ベッドで主人(あるじ)であるアルトゥールとエリザベスを(あざけ)っていた子爵令息は、元々軟弱だった。

 去勢され喉を潰され、手足の指を落とされた、諸々の苦痛に耐えきれず、疲弊しきっていたためか、送致から1ヶ月と保たずに早々に死亡した。

 最後は労働もできなかったため、“夜の世話係”をさせられていたらしい。


 副団長子息だけが、その無駄に頑健な身体(ゆえ)に生き残り、黙々と労働に従事していた。

 私生児から反乱に誘われたが、“見張り役”に陰で密告し、動きを逐一知らせ、難を逃れていた。


 だが、送致から1年後、強制労働者達の間で流行った病に罹患(りかん)した。

 衰弱していたところに配られた薬などを、密告され恨んでいた者に奪われ、誰にも気づかれず、苦しみながら死んでいった。

 裏切り者同士、最後まで裏切りあった末路だ。


 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜



 ああ、嫌なことを思い出してしまったわ、とソフィアは、手元の手紙から薫るラベンダーの香りを(たの)しむ。

 まるで心身が浄化されていくようだ。



 一方、ソフィア自身は、あの“騒動”直後に、エリザベスの父・ラッセル宰相から、メアリーと共に呼ばれた。


 そこで前例のない“二人の正妃”として、王太子から降格されたアルトゥール王子を支えるように告げられた。

 すでに二人の父親は了承しており、王国の高位貴族の令嬢として、務めを果たす道しか残されていなかった。


 いや、実際は、穏健派・革新派の代表として、後宮から王家と王国を支えるよう、ラッセル宰相直々に、丁重(ていちょう)に要請された時の驚きは、今でも鮮明に覚えている。


 あのラッセル宰相が、小娘二人に頭を下げたのだ。


 その時、明かしてくれた。


 これがエリザベスの遺した献策であったことを——



 だからこそ、ここにいるのだ。


 アルトゥールとではなく、“王国”と婚姻を結んだのだ。



 ソフィアは改めてそう思い、自分を誇り高い薔薇(ばら)のようだ、と、ずっと(たと)えてくれていた親友を想い、心を慰める。


 王太子妃となられたエリザベス様のお姿を拝見したかった。

 きりっとして、お美しくて、お優しくていらっしゃる。


 昔からずっとそうで、子どもの社交のころ、引っ込み思案だったソフィアをよく(かば)ってくれていた。

 相談相手にもなってくれ、社交の場で橋渡しもしてくれたお陰で、今のソフィアの地位がある。


 そのころ、目の(かたき)にされていたメアリー様と、エリザベス様を通して仲良くなるなんて、ソフィアは夢にも思わなかった。


 エリザベス様と一緒だと、そんな風に思っていたことが現実になっていく。

 その頭脳と努力と、国と民への献身に、心から尊敬し慕っていた。


 エリザベス様の、あの凜とした(たたず)まい、本当に好きでしたわ、と懐かしい想いに(ふけ)るソフィアの元に、アルトゥールの先触れを告げる侍従が現れた。



 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜



 帝国への弔問団の務めを終え、帰国して以降、しばらくして、アルトゥールは公務や帝王教育の合間を縫って、ソフィアをよく訪れるようになった。


 帝国で“やらかし”た帰国後に命じられた、無期限24時間監視付きの帝王“再”教育と、ラッセル宰相が監修した“精神鍛錬メニュー”からの息抜きだろう。

 24時間の監視も、正妃居室の滞在時は除かれるのだ。

 エリザベスを忘れ、二人の正妃との信頼関係を築くというのは、表向きの理由だろう。


 特にソフィアへの訪問は、出産間近、もしくは産後の妻と息子を、夫が見舞うという格好の理由があった。


 ここがまだ甘い。

 どうして、政略結婚の妻達が、自分を監視していると思わないのだろう。


 ましてや、ソフィアは、王立学園在学中、エリザベスの監視をしていたというのに。

 それを、“あの生徒総会”で、エリザベス自身が口にしたことを、もう忘れているのだろうか。


 ソフィアは王妃からの命令で、やむなくエリザベスの王立学園在学中、『言動履歴書』を報告させられていた。


 エリザベスも察知しており、“影”とも交渉し、「これは王妃様には内緒になさってね」と、たまに互いの息抜きの、“お(しゃべ)りタイム”のお茶会をした。

 メアリーも引きずり込み、秘密裡に楽しみ、可愛らしいエリザベスとメアリーを堪能したものだ。



 アルトゥール(いわ)く、メアリー百合妃と頻度は同じと言うが、滞在時間がソフィア薔薇(ばら)妃の方が長いため、何度か“お願い”し、時間も公平にしてもらった。


 後宮バランスは、(おもて)の政治バランスにも通じる。

 フレデリックが生まれてからは特に、慎重にならなければいけない。


 エリザベスの父・ラッセル宰相からも、『くれぐれもご留意を』と“依頼”されていた。


 それに加え、一番は、“自身の負担軽減”もあった。



 侍女達がアルトゥールを迎える場を整える中、ソフィアは緩やかな、私室で(くつろ)ぐエンパイアドレスのままだ。

 親友が残してくれた、『後宮運営手引書』には、産後2ヶ月は、コルセットは避けた方が良い、と書かれていた。

 医師も同じ見解で、ありがたく従っている。



「やあ、ソフィア。フレディは元気かな」


 アルトゥールが笑顔で現れた。

 それでも声は小さい。

 自分の声でフレデリックが泣き出して以来、声を小さく抑えるようになった。

 それ以前から“お願い”していたのだが、この人は体験しないと分からないのだ、とソフィアは思う。


「えぇ、(すこ)やかにしておりますわ。

先ほどお腹いっぱい飲んだようで、よく眠ってますの」


「そうか。顔を見てもいいか?」


「起こさないようにしていただけるなら、喜んで」


「ありがとう。うわあ、何度見ても、可愛いなあ」


 『何度見ても』って、我が子なんだから、せめて『会っても』という言葉の選択をしてほしいけれど、アルトゥールに細かいことを言っても仕方ない。

 これは報告書に上げなくてもいいだろう。



 それよりも大切な事がある。

 メアリー百合妃から、頼まれていることだ。

 しばらく、フレデリックの寝顔を眺めた頃合いで、紅茶とハーブティーを用意させる。


 ハーブティーは産後のソフィアのために、エリザベスが考えてくれたレシピだ。

 侍医が調合して、毎日飲んでいる。


 その香りに引き寄せられるように、アルトゥールがソフィアを振り向いた。



「良い香りだ。飲んでいってもいいか?」


「はい。アルトゥール様のためにご用意しましたの」


「たまには、そのハーブティーを飲んでみたいんだけどな」


「申し訳ありません。前にも申し上げましたが、これは産後のためのレシピで、一般の方向けではないのです。

侍医にも止められております」


 一度説明して納得したはずなのに、繰り返す。

 『エリザベスのレシピだ』と察知しているのだろう。

 無意識にまだ執着している。この報告書記載は必須だろう。


「そうだったね。うん、紅茶も良い香りだ」


「よろしゅうございました。

フレデリックは、日に日にアルトゥール様に似てまいりますわ」


「え、そうかなあ」


「目元などそっくりですわ。先が楽しみですこと」



 アルトゥール様のようには、絶対に育てませんけれど——



 その決意は内に秘め、ゆっくりと優雅にハーブティーを味わう。

 味と香りのバランスが素晴らしい。効能も産後の女性にとっては嬉しいものだ。

 親友の心遣いをありがたく思いつつ、盟友の頼みも聞かなければならない。



 ソフィアは、優しく思いやり深い正妃として、飲んでいる最高級の紅茶を美味しいとも言わない相手に、すまなさそうに話しかける。



「アルトゥール様。お忙しいところ、申し訳ありません。

実はお願いがあるんですが……」


「なんだろう。ソフィアのお願いなら、なるべく聞いてあげたいな。できる事と出来ない事はあるけれど……」


 わりと“適切な”受け答えになってきましたこと。

 『何でも聞いてあげるよ』なんて言われたら、ラッセル宰相への報告書が面倒極まりなくなってしまう。

 その返信である、指導依頼書を書くラッセル宰相もそうだ。



「実はメアリー様から頼まれましたの。

本当に心苦しいけれど、差し入れやお土産は、しばらくご遠慮したい、と伝えていただけないか、と……」


「え?だって、メアリーは美味しい、美味しいって食べてたんだよ」


「それは、アルトゥール様をお慕いする女心と、現在の欲求に負けてしまわれたそうですの。

今、食べ悪阻(づわり)で、クッキーを好まれてらっしゃるでしょう?」


 ソフィアの出産後、2週間ほどして、メアリーの懐妊が、侍医達から報告された。

 悪阻(つわり)を乗り越え、安定期に入ってから、公表される予定だ。



「ああ、そう聞いたから、飽きが来ないよう、王都で評判のものを何種類か、視察に出たついでとかに持っていったんだよ」


「えぇ、とてもありがたくて嬉しくて、食欲も増して、つい止まらずに、食べ過ぎてしまったとの仰せで……。

後から胃がもたれて、さらに気持ち悪くなってしまったとお困りでしたわ。

また懐妊中は体重が増え過ぎたら、難産になりやすく、とても大変ですの。


それにクッキーなら全部、お好みという訳でもございません。

メアリー様の場合、少なくはございますが、苦手なお味もございます。

今はメアリー様のお好みにも応じた、王城のシェフが作ったものが、一番よろしいそうですの」


 申し訳なさそうに、事情を説明する。

 決して上から物申してはいけない。

 プライドだけは高いのだ。


「……そうなんだ。わかったよ。

でも、僕に直接言ってくれればいいのに」


 ここですねる気配を出すなんて。

 せめて、『この話がソフィア経由になった理由を教えてもらえないだろうか』でしてよ。

 産後1ヶ月の私への配慮がございませんわ。

 はい、2件目。

 また報告書の事項が増えてしまいましたわ。



「アルトゥール様。食べ悪阻(づわり)でも吐き気が強く、話すのも難しい時がございます。

健気なメアリー様は、アルトゥール様の前では、お元気に振る舞っていらしたのです。

ご心配をおかけして、帝王教育や“ご公務”のお邪魔になりたくないという、百合妃としての誇りですわ。

ただお身体優先の時でございましょう?」


 “ご公務”とは、例のラッセル宰相が監修した“精神鍛錬メニュー”のことだ。

 直接言うと、不機嫌になるのは目に見えているので、アルトゥールを立てる言葉を選ぶ。


「そうだね。今が大切だ、と侍医からも聞いてる」


「私も聞いております。

ですので、ご機嫌伺いのお手紙で、『私にできることはございませんか』とお(たず)ねしました。

そのお返事に、『できれば、アルトゥール様を傷つけないよう、お伝えいただけたら』と、お願いがございましたの」


「そうなんだ。わかった。クッキーは持っていかない。

ただ花とかも、香りで難しいだろう?

何がいいと思う?」


 ここで斜め上で、また困ったものを差し入れられても、大変ですものね。

 この相談は及第点でしょう。


「お手紙はいかがでしょう?

何度も読み返せますし、アルトゥール様のお気持ちも伝わるかと存じます」


「手紙か……。いいかもしれない。

ただ書く内容が毎回同じになりそうで……」


 公務に関するお手紙なども、エリザベス様がてきぱきと処理されてらっしゃいましたものね。

 図書室にでも行かれて、『お見舞いの手紙百選』でも読まれればよろしいのに。

 これも報告書記載でしょう。3件目ですわ。ふう。


「アルトゥール様のお仕事の内容を、差し支えない範囲で、短くまとめられてはいかがでしょう。

お慕いするアルトゥール様の日常を、お知りになりたいでしょうし、悪阻(つわり)を乗り越える励みになると思いますわ」


 今のメアリー様なら、そう思われるでしょう。

 帝国からお戻りの後は、すっかり仲がおよろしくて、とても助かってますもの。


 私は、“本当に”きりっとしたお方が好みですの。

 そういう方が、ごくたまに甘えられた時に胸がときめくというのに、アルトゥール様は比率が全く逆なんですもの。


 エリザベス様は、よく“お()り”をなさいましたこと。

 まあ、帝国から“素直になって”お戻りになられて、随分と楽にはなりましたわ。


「なるほど。参考にしてみるよ。

僕たち三人は、それぞれ励ましあって、仲良くしていこう」


「えぇ、素晴らしいことと存じますわ」


 数年後には、後宮でも、表の政務でも、“本当に”励まし合っていきたいものですわ。

 必要以上に、仲良くすることはございませんけれど。


 ソフィアはゆったりと上品に微笑み返し、優しい口調で、アルトゥールが“ご公務”に戻るよう、さりげなく尻叩きをした。



 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜



【ラッセル公爵視点】



 ソフィア薔薇(ばら)妃殿下から、報告書が上がってきた。

 いつもながら優秀だ。

 簡潔で読みやすい。

 私もソフィア妃殿下も、おバカ(=アルトゥール王子)には極力、時間は割きたくはないのだ。

 やる事は山ほどある。


 おバカ(=王子)も、少しずつ進歩はしているようだ。

 これもソフィア薔薇(ばら)妃殿下の、粘り強い“ご指導”の成果だろう。


 エリザベスが、『ソフィア様なら手のひら転がし』と評していた通りにやってくれている。


 実にありがたい。


 上品で清楚な容貌、柔和で優しく、おっとりとした雰囲気に、舐めてかかった者は、洩れなく言葉と所作の(とげ)で、ゆっくりと選択肢を封じられ、妃殿下の望むように動かざるを得なくなる。


 それも本人が自覚しない内に、だ。


 ご本人は、『エリザベス様、直伝(じきでん)ですのよ』と仰るが、愛娘(まなむすめ)のためにしてくださった、ご自身の工夫と努力の結果だろう。



 メアリー妃はメアリー妃で、悪阻(つわり)の苦しい時期にも関わらず、無期限24時間監視付きの帝王“再”教育と、私が監修した“精神鍛錬メニュー”に弱音を吐いた、おバカ(=王子)を叱咤激励してくださった。


『私も母親として、まだ自信はございませんが、アルトゥール様が授けてくださった、大切なお子様の生命を守るため、母親として必死で頑張りますわ。


アルトゥール様も、父親として共に頑張ってくださいませ。

尊敬する大きな背中を、生まれる子どもに見せてくださいませんか』


 この言葉に、あの、おバカ(=王子)がやる気を継続しているとの報告が入っている。

 どこまで持つか、お手並み拝見だ。


 エリザベスの評価、『悪役ノリ』とまではいかないが、その系統で適度に(かつ)を入れてくれる。

 この時の報告書も、ありがたく拝読させていただいた。


 悪阻(つわり)の時期はお辛いだろうと、お二人に報告書のお休みを伝えたのだが、向こうから断ってきた。

 また帰国後、共寝した際には、おバカ(=王子)が就寝中にうなされた時、水に薬を混ぜて飲ませ、侍医へ報告することになっており、これもきっちりと守ってくださっている。


 あのおバカ(=王子)の正妃にはもったいない。

 いや、万一、あのおバカのまま国王になった時、この二人でないと国を支えていけないだろう。


 そういう意味でも、エリザベスの慧眼(けいがん)には、父親の私も恐れ入る。


 薔薇(ばら)妃殿下も百合妃殿下も互いに励まし協力し合い、その関係は実に麗しいものだ。


 我が娘・エリザベスが植え替えた苗は、後宮ですくすくと育っている。


 薔薇(ばら)も百合も共に咲き誇り、それぞれが産んだ王国の後継者候補を、健康的に(はぐく)んでくださるだろう。

 それを助けるのが私の新たな勤めだ、と報告書を机に置いた。


ご清覧、ありがとうございました。

エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作の小話、番外編です。


本編に出てきたソフィア薔薇(ばら)妃にまつわるお話のため、2話更新とさせていただきました。


前話は、『112.悪役令嬢の領歌と儀式』です。

読み飛ばしにお気をつけください。



また、この『悪役令嬢エリザベスの幸せ』の世界を借りて、

小説投稿サイト「小説家になろう」様が主催する、夏季の期間限定企画「夏のホラー、テーマはうわさ」に参加させていただいています。

夏っぽい、怪談仕立てのお話です。


【ここだけの話】

https://ncode.syosetu.com/n7906jj/


暑熱が続く中、もしよかったらお楽しみください。

ヽ(´ー`)


誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。

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悪役令嬢エリザベスの幸せ
― 新着の感想 ―
[一言] 薔薇には棘があるし、百合には毒がある… つまりはそういうことなんですよね、これは。 文句つけられてるアルトゥールのやらかしの数々、妊娠時やられると腹立つ夫の言動集みたいですね〜!なんだよその…
[一言] リクエスト叶えていただきありがとうございますm(_ _)m 薔薇妃様もステキな方ですね。 百合妃様と力を合わせて王国を盛り上げていただきたいと思います。 バカ王子は……このまま大人しく傀儡に…
[良い点]  お父さま、 >バカ(=王子)  って仰っていたのに(悪役令嬢のお父さま 5)、今話では、 >おバカ(=王子)  と丁寧? になりました♢ アルトゥール王子くん、凄い前向き評価を頂きました…
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