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108.悪役令嬢の愛犬

テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—


※最後はルイス視点です。

※流血表現があります。苦手な方は閲覧にご注意ください。


エリザベスの幸せと、その周囲を描きたいと思い書いている連載版です。

ルイスとの新生活としては、これで46歩目。

引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。



  「このままじゃ、いけないわ」



 ぬいぐるみ受注後のお茶会も終え、皇城から退出してきた私は、帰りの馬車に乗り込むまで、貴族的微笑みを(たも)ち、車内でも無言のままだった。


 タンド公爵邸に到着し、残してくれている私の部屋に入ると、大きく深呼吸する。

 そして鏡に向かい、自分と相対する。



 そう、このまま、引きずってはいけない。


 せっかくの大きな機会なのだ。

 自分のためにも、エヴルーで頑張ってくれてる皆のためにも、明るい気持ちで仕事に取組もう。


 こういう時は、お風呂だ、お風呂。



「マーサ。お風呂の用意をしてくれる?

こんな時間から贅沢(ぜいたく)だけど、妙に肩が凝っちゃったの」


「かしこまりました。すぐにご用意いたします」


 私に黙って付き添っていたマーサの表情も、ぱあっと明るくなる。


 うん、馬車の中で、殺気に近い緊張感、漂わせてごめんね。

 昨日で終わったはずなのに、って思っちゃったんだよね。


 ただ、皇妃陛下や皇女母殿下にとっては、全く違うのだ。

 そして、『事実を告げる必要はない』と判断したのは帝国騎士団捜査本部であり、皇帝陛下も承認した。


 そして、私自身もそう決めたのだ。



 で、あれば、“アレ”は皇妃陛下や皇女母殿下にとっては、我が子を腕に(いだ)くこともなく、天に召された、愛しい息子であり、夫である。

 ああいうご注文は、これからも入る可能性がある。


 公的な皇太子殿下と、“アレ”を、私も使い分けよう、そうしよう。



 ハーバルバスの香気に包まれる中、気持ちの整理がついて、顔をぱしゃぱしゃ洗っていると、髪の手入れをしていたマーサが話しかけてきた。



「エリー様。よろしければ、皇女母殿下が最後にご注文された、三毛猫の発注、いえ、エヴルーとのやり取りは全て、私にやらせてくださいませ」


「え?!」



 まるで私の心を読んだような申し出に、つい驚きの声を上げてしまう。


「皇女母殿下のお気持ちもお立場もわかりますが、皇太子殿下は、ルイス様とエリー様のお邪魔ばかりしておいででした。

それにご冗談とはいえ、ルイス様のご結婚の申し込みをエリー様が断れば、自分の側室にするなどとも仰っていて、正直、気持ちの良い方ではございません。

いえ、不敬を承知で申し上げれば、私は嫌いでございます。

亡くなったとはいえ、そのような方に関わるご注文を、エリー様が直接処理される必要はないかと存じます」


「マーサ……」


「お辛うございましょう?私にお任せください。

エリー様の専属侍女でございます。

皇妃陛下が、誕生時の身長と体重も教えてくださいました。

書類の扱いには慣れております。

ご不安なら、最後の確認だけなさってくださいませ」



 マーサは表面上のことしか知らない。

 “アレ”が陰に回り、ルイスに何をしていたのかも、私に何をしたのかも知らない。

 それでも、表面上のことだけでも、忠義者のマーサは心中にこれほどまでの怒りを(かか)えてくれていたのだ。



「……ありがとう、マーサ」


「当たり前でございます。私はエリー様の専属侍女でございます(ゆえ)

さあ、あの可愛らしいご注文だけをきっちり済ませて、今日は好きにお過ごしなさいませ」


「そうね。久しぶりにピアノを弾こうかしら。

アンナ様から、お手紙でピアノに誘われてるの」


「アンナ・ノックス侯爵夫人様ですね。

サロンコンサートで、エリー様のお歌に伴奏してくださった……」


「えぇ。エヴルー公爵領の歌も勧めてくださって、そのお話をお手紙でしているうちに、『お時間ができたら、ピアノでご一緒しませんか』って、お誘いくださったの」


「“ピアノでご一緒”でございますか?」


「そう。連弾ではなく、2台のピアノで一緒に演奏する曲があるの」


「まあ、それは豪華そうでございますね」


「そうでしょう。連弾も楽しいのだけど、2台だと向かい合って演奏するから、目と目が合う時があって、音の響きも厚みがあって、何より会話してるみたいで、それもまた楽しいの。

王国にいた時は、時々ソフィア様と演奏してたわ……」


「ソフィア薔薇(ばら)妃殿下でいらっしゃいますね」


「とても素敵なお友達だったのよ。

そうだわ。ご出産されたお子様、フレデリック王子殿下が誕生されたお祝いで、お手紙とご祝儀を送ったきりになってたわ。

お祝いの品に、ぬいぐるみを贈ろうかしら。

ソフィア様のお部屋に、可愛い羊のぬいぐるみがあって、かなり傷んでいたけれど、大切にされてたの」


「羊は群れで仲良く暮らすので、家族円満、平穏さを表すとも言われます。

よろしいのではないでしょうか?」


「そうね、考えてもらうよう、エヴルーに頼まなきゃ。

マーサのお陰で、元気をもらったわ。ありがとう」


「専属侍女として、当然のことでございます」



 そこからマーサはスペシャルケアをしてくれて、私にやる気と元気を取り戻させてくれた。


 マーサ、ありがとう。大好きよ。


 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜



 午後の幸せな入浴後、ハーブティーとタンド公爵家のお菓子でさらに元気をもらった私は、元々のぬいぐるみの注文、12種類の処理をする。


 ミスがないよう何度も確認し、立ち会ったマーサや、帝都邸(タウンハウス)から来ている補佐官の確認を経て、エヴルーへ送る書類箱に入れる。


 また、ソフィア様とフレデリック王子殿下のお祝いのための、羊のぬいぐるみの依頼も、丁寧に説明した手紙を書き起こす。


 そこまですると、マーサに音楽室に送り出され、久しぶりにピアノを心ゆくまで練習した。


 まずは気持ちを整理するため、『幻想曲風ソナタ・月光』に手を付ける。

 私にとっては、馴染み深い曲の一つだ。

 曲風がサロン向きではないので、あくまでもプライベートで、自分のためだけに弾いていた。

 現実の生々しい感情のまま、演奏するとは、芸術としての音楽を侮辱する行為かもしれないが、王妃教育のころからこうして、重く苦しい想いを発散してきた。


 第1楽章で繊細にかつ荘厳に歌い、続け様に始まる第2楽章では、軽やかかつ大胆に、花が咲くように華やかに刻んだ後のお目当ては、第3楽章だ。

 噴き出すようなアルペジオの激しい繰り返しに、自分の感情、怒り、苦しみ、悲しみ、悔しさが自然と引き出され、のめり込んでいく。

 そして、いつのまにか『楽聖』とも称された作曲者の音楽の構築に、感情も自分自身さえ飲み込まれ、昇華されていく。

 演奏を終えた時は、疲れてもいたが、かなりすっきりし、音楽を楽しむ余裕が生まれていた。


 次は、お誘いを受けている、明朗な響きと軽快で清らかな旋律の『2台のピアノのためのソナタ』だ。

 懐かしい友人との触れ合いを思い出させ、心を晴れやかにしてくれる。

 また美しい分散和音の練習曲『風の琴』も(かな)でる。

 風雨を避けた洞窟に響くような、部屋に満ちるふわりとした音響の中に、浮かび上がってくる美しい旋律を味わった。


 ルイスが言ってくれたように、タンド公爵家で癒され、夕食のために着替えていた私に、残念な知らせと良い知らせが届いた。


 残念な知らせは、ルイスの小姓役の少年が、お使いで手紙と洗濯物を運んできた。



『愛するエリーへ


今夜も本部に泊まる。すまない。

一日も早く帰れるように努力する。

エリーは回復していて欲しい。

一緒に安らげる時間を心待ちにしている。

                ルイス』


 小姓の少年を、サロンで紅茶とお菓子を用意させ、もてなしている間に、私も手紙を(つづ)る。


『愛するルー様へ


厳しい職務に、心よりの尊敬を捧げます。

あなたの背中は、私と神様が護っています。

なさった無理を分かちあえるほど、私はもう元気です。

お帰りをお待ちしています。

               エリー』



 大袈裟な物言いかもしれないが、今日、明日の内に第二皇子の処遇は決まるだろう。


 彼はもう、二重の意味で、外で生きることを許される存在では無くなってしまった。

 今まで疑われていなかったということは、オレトスが供述で語った通り、“あそこ”に“誰か”を置き去りにして、自分は出てきた、“脱獄犯”だ。

 いや、“脱獄犯”にさせられた。

 としても、“アレ”の手駒で、隣国の王国まで巻き込んで動いていた。


 この“第一級秘匿条項”、すなわち帝室の秘密を守るには、最低限の人間にしか明かせない。

 となると、ウォルフ騎士団長とその周囲、だ。


 ここまでで思考を()め、小さく首を横に振る。

 私は少年に、ルイスの着替えと差し入れ、そして手紙を託し、お小遣いと「いつもご苦労さま。夫を頼みますね」という言葉を添えて、送り出した。



 一方の良い知らせは、エヴルーからの使いだった。

 個人的に頼んでいた試作品ができて、持ってきてくれたのだ。

 アーサーからの書類と共に。


 『“滅私奉公”癖抑制チーム』の副リーダーのマーサは、アーサーに文句を言っていたが、こちらの事情を知るには、タイムラグが発生するので仕方ない。


 気分転換にもなるし、私は喜んで受け入れる。

 今夜は泊まってもらい、明日、注文書と処理した書類を持ち帰ってもらう事にした。


 個人的な試作品は、大人が()けるような縦長の大きなぬいぐるみだった。


 懐妊中はお腹が大きくなると、横にしか眠れない期間がある。

 クレーオス先生も仰っていたが、仰向けに寝ると、重くなった腹部が大きな血管を圧迫し、血流を阻害し、母子共に危険になる。


 この横向きに眠らなければならない間、クッションなどで調整するが、眠ってる間にずれてしまうことも多い。

 そこで調整不要な、体重を分散させやすい大きなクッション、さらに肌触りがいいものなら、大きなぬいぐるみのようなもの、と思い、試作を依頼した。


 この()いて眠れるぬいぐるみは、大きな黒い犬で、瞳は青いサファイアを付けてもらった。


 ルイスがエヴルーに来られなくて、会えなくて、寂しくて、つい魔がさして、無意識に口に出して頼んでしまった、と気づいた時には、もう遅かった。


 皆の生温かい目線は忘れられないけど、こうして()いてると、肌触りといい、香りといい、本当に落ち着く。

 ポケットがいくつかあって、ハーブのサシェをいれているためだろう。


 『ルイスが見たら、どんな顔をするのだろう』『いや、見せない方がいいかもしれない』などと、帰りがさらに待ち遠しくなっていた。



 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜



 今夜の夕食は、伯父様もクレーオス先生も遅くなるとのことで、従兄弟夫婦と伯母様と私だ。


 話題は、今日の出仕についてだ。

 主に二人の皇女殿下について話す。


「じゃあ、そのぬいぐるみとかも注文が決まったのか?」


「ピエール。皇妃陛下のご注文ですよ。伯爵としても、言い方を心得なさい」


 伯母様のお言葉の鞭が、ピシリと飛びます。

 (しつけ)は、幾つになっても大切です。

 皇妃陛下と伯母様を見てると、本当にそう思う。

 諦めたら、そこでおしまいだものね。


「はい、母上。それでご注文はどうされたんだ?」


うん、合格。最初からそう言えばいいのに。


「無事に承りました。個人的な事柄ですので、これ以上は申し上げられません」


「お前も大変だなあ」


「あら、伯母様の方がもっと大変よ。

新作を考えてらっしゃるんだもの」


「エリーと話していると、色々思い出すのよ。

あなた方を育てていた時、どんなものを、どんな風に喜んでたかしらって。

二十数年後に役立つなんて、わからないものねえ」


 息子達二人は照れくさそうで、伯母様はその後はもっぱら、お嫁さん達二人から聞き取っていた。



 夕食が終わり、眠る前までにアーサーからの書類の再確認をしていると、帰邸した伯父様に執務室に呼ばれた。


 伯母様はおらず、私一人だ。



「陛下は処断された。今夜、執行される」


 言葉は少ないが充分だ。

 “アレ”に操られ、今はその主人(あるじ)もいなくなり、糸が絡まり合っていた、残忍で哀れな人形が断ち切られる。


「わかりました」


「執行役は騎士団長殿に一任された」


 これをわざわざ伝える目的は、ルイスのためだろう。

 そして、ルイスの妻である私のためだ。


「教えてくださり、ありがとうございます。

ルー様をお迎えする時の心構えになるかもしれません」


 私は貴族的微笑みを浮かべ答える。


「エリー。今更と思うだろうが、知らせたのは、エリーがヤツに殺されかけたからだ。

命じられた実行犯役とはいえ、ヤツは(たの)しんでいた。

今でも絶対に、私は許せない。

できることなら、私の手で八つ裂きにしてやりたかった……」


「伯父様……」


 机の上で、両の(こぶし)を握りしめる伯父様は、若き日は帝国騎士団に所属していた。

 そして今はタンド公爵騎士団の団長でもある。

 鍛えた腕は、一閃(いっせん)で仕留めるだろう。


「命には命を持って、と主張する私を抑え込むために、ルイス様と我が家の事情さえ利用された。

受け入れたエリーとルイス様の関係を考え、何とか飲み込んだが、正直、陞爵(しょうしゃく)されても、喜びは薄かった。

愛する姪の生命と引き換えに得た爵位なぞ、このタンド公爵家にふさわしくないと、何度叩き返したくなったことかわからない」


 伯父様のプライドは深く傷ついていた。

 膝を付き合せ、駄目元でも説得の姿勢を見せれば、少しでも慰撫できただろうに。


「……あの方は、人のお気持ちがわからないのです。

最初から根回しも瀬踏(せぶ)みもなしで、ルー様を使者にして伝えてこられた。

側近としてのご苦労、お察しします。


ただ私は気持ちが軽くはなりました。

お母さまの事情とはいえ、ピエールには申し訳なく感じていたので、そこはとても大きいです。

つけ込まれたとはいえ、大きな栄誉は得ました。


伯父様。それも今夜で終わります。

あ、いえ。嫡孫のためのリド子爵位を、しっかりいただかなければなりません。

あと一働き、よろしくお願いします」


 私は()えて悪戯っぽく微笑む。

 伯父様は苦く微笑んだが、したたかだった。


「ああ。数年後かもしれないが、もぎ取って見せる。絶対に忘れさせない。

次世代をまともに育てるためにも、過去の(あやま)ちを忘れないことは重要だ」


「エヴルー“両公爵”も、見守っています。

私とルイスも、絶対に忘れません」


 私の眼差しは、伯父様を通り越して、今ごろ、“第二皇子だった存在”と対峙(たいじ)しているかもしれないルイスを見つめていた。


 〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜〜〜*〜〜〜


【ルイス視点】


 ウォルフから、この第一級秘匿条項に関わったメンバーの招集がかかった。


「処分が決まった。

このチームで、“ヤツ”を始末する。

やりたい者がいれば、一歩前へ」



 俺は自然体で足が動いた。


 愛する者を、それも俺の目の前で、二段構えで殺されかけた。

 しかも、その罪を握りつぶす使者に立たされた。

 俺の立場を守ってくれたタンド公爵に、借りた恩を返す機会であり、何より俺と“ヤツ”の決着を付ける時だった。


「ルイス以外に希望者はいないな。

俺が立ち会う。見届け役だ。

早く済ませるぞ。

終わったら、救出せねばならないからな」


 救出対象は、身代わりだった男性だ。

 クレーオス先生が診てくださる手筈になっていた。


「はっ!」


 俺は短く返事をし、地下牢へ降りる。

 “ヤツ”は薬切れで(わめ)こうとしたようだが、猿ぐつわで叶わず、目も塞がれ、後ろ手に拘束され、飲食物も与えられず、疲労困憊していた。


「好きなようにしろ。後始末なぞ考えるな」


「はっ」


 俺は短く答える。

 しかしできれば、おぞましい血で、エリーが優しく触れてくれた騎士服を汚したくなかった。

 立哨していた二人を地下牢に入れ、寝ていた“ヤツ”を立たせる。


 ウォルフから、予備の剣を受け取る。

 最初から、自分の剣を使う気はなかった。


 一、二回、剣を振るうと、その音で気付いたようで、何とか逃げようとするが、二人がかりで抑制され逃げられない。



「うぐッ!」



 一瞬だった。

 心臓をひと突き。

 剣を抜かないため、出血も最小限で吹き出さない。


「しばらくこのままにしておけ。地下牢を汚さずにすむ」


 むしろの上に横たえさせる。


 全て脱がされ、遺体袋に入れられ、共同墓地に投げ捨てられる手筈だ。

 これでやっと終わった。


「ルー。断ち切れたか?」


「たぶん。実感が湧くのは、もう少し後だろう」


「そうだろうな。長かった。やっとだ、やっと。

後始末は任せろ。家に帰るか?」


「いえ、エリーは嗅覚が鋭敏なんです。

血の匂いはさせたくない」


「了解。さっぱりしてから、お前は寝ろ。

捜査は続くが、大役は無事に果たせた。

明日は家に帰れ」


「“あの人”には何と?」


「『騎士団で処理した』。それだけだ。

事実だろう?」


「そうですね。では失礼します」


 俺は自分の部屋に行き、シャワーを浴びる。

 南部の紛争時の方が、ずっと(あや)めているのに、血の匂いが取れない気がする。

 半分とはいえ、血が繋がっているためか。

 自分にそういう感覚が残っていたことに、少々驚く。


 髪を乾かしながら部屋に戻ると、テーブルに置かれていた、差し入れのバスケットに気づく。

 着替えと軽食、手紙に、そしてミントウォーターが入っていた。

 俺は爽やかな匂いのする液体にタオルを浸し、身体を(ぬぐ)う。


 今夜の何もかもが、浄められた気がした。


 エリーからの手紙を読む。

 なぜか涙が出てくる。


 愛する妻を迎えに行って帰ろう。

 明日は我が家で過ごそう。

 安全な我が家で、エリーと共に過ごすんだ。


 俺はそう思うと、今ごろはもう眠っているだろう愛妻からの、心尽くしの差し入れの軽食に手を伸ばした。


ご清覧、ありがとうございました。

エリザベスと周囲の今後を書き続けたい、と思った拙作です。


作中でエリザベスが練習している曲の参考にしたのは、

ベートーヴェン『ピアノソナタ第14番“月光”』

モーツァルト『2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448』

ショパン『エチュード作品25ー1“エオリアンハープ”』

です。


誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。

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悪役令嬢エリザベスの幸せ
― 新着の感想 ―
元皇太子妃は仕方がないとしても、皇妃にも皇太子と第二皇子の真実を教えないというのはどうなんでしょうね?王妃教育を受けたからという理由で主人公が色々と協力させられているのに、皇妃教育を受けた皇妃が何も知…
[良い点]  月光、最高♬ エオリアンハープ、好き♪ [気になる点]  愛犬。このタイトルに、愛でたいし愛でられたい、撫でくり回したいしそうされたい、身繕いしてあげたいしして貰いたい、というエリザベス…
[一言] エリーさん、寂しくなり過ぎてついにダ○チワ○フを注文か!?(笑) ルイス様、早く帰ってきてあげて下さいね。
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