9.悪役令嬢のお茶会
テンプレな“真実の愛”のイジメ疑惑追求から始まった、エリザベスと周囲のお話—
エリザベスが幸せになってほしくて書いた連載版です。
これで10歩目。
引き続き、ゆるふわ設定。R15は保険です。矛盾はお見逃しください。
夕食と呼ぶには豪華な晩餐—
三組の夫妻と私が囲む食卓。
とりあえず、ルイス様がいなくてよかった。
とても美味しい食事を、会話と共に味わう。
午後のお茶会の成果か、歓迎ムードが強い。
次男妻のお母さまへの感情は、さほど強いものではないようだ。
ただ妹を溺愛していた伯父様を前に、出せないのかもしれない。要注意だ。
次男はお茶会で褒めあげたのが効いたのか、友好的だ。
嫡男にも『お疲れ様です』モードを前面に出し、領地運営にさらっと触れたら、私の印象が変わったようだ。
食後に出た、我が家のレシピのハーブティーも好評だった。
「実は、母アンジェラの創意工夫によるものなのです。
エヴルー伯爵領でも研究を続け、『天使の聖女修道院』の方々とも協力、研鑽を積んでいた、とアーサーや院長様が、記録簿を見せてくださいました。
ラッセル家でも父の慢性的な胃痛のために、かかりつけ医に相談の上、レシピを考え、父は今でも愛飲しています」
「まあ、そうだったのね……。
そういえば、アンジェラも精神的な苦痛のせいか、頭痛や胃痛に悩んでいたわ」
「そうか。苦労をかけた。ラッセル殿とは本当に想いあっていたのだな……」
伯父様と伯母様は感無量といったところ。
早速、胃痛に効能のあるレシピのハーブティーを、と伯父様から求められ、かかりつけ医にお許しを得ていただいた上で、帰領次第に、とお約束した。
晩餐でもなかなかな収穫だ。
マーサのケアを受けて、ころんと熟睡した。
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翌日—
さすが公爵邸。
飲食物が本当に美味しい。食器も価値のある品をさりげなく日常使いしている。
マーサから、サイズが変わるので、少しお控えください、と警告が出た。
帝都では領地ほど動けない。節制しよう。
今日は仮縫いの日。
男子禁制にしたサロンで、私はただ指示を聞くトルソーとなる。
マダム・サラは、お針子さん達を引き連れ、風のように現れ、仕事を見事にこなすと、風のように去っていった。
予定が詰め詰めのところに、(伯母様が)無理を言ってごめんなさい。
マーサと相談し、マダム・サラのお店へ、帝都で評判の焼き菓子を差し入れてもらうよう、公爵邸の執事にお願いする。
もちろん費用は私持ちだ。
祝賀会には、伯父様と伯母様と一緒に入場し、一番最後に謁見させていただく、という段取りだ。
執事長に頼んで、公爵邸の大広間で練習しておく。
1回目でOKが出た。これは慣れだ。念のため、数回行っておく。
問題は誰とダンスを踊るかだ。
現在、最も妥当なのは、伯父様となので、本番までに、一度は踊らせてください、とお願いしておく。
踊れるけれど、一度くらい合わせて癖とかを確認しておきたい。
帝都の新聞を借りて、叙勲・叙爵の面々を暗記する。
しっかり次男の名前もあった。
必死だったんだろう、と改めて思う。
傷ましくも、戦死による叙勲もある。
これは遺族が受け取るのだろう。名誉だけでなく、遺族恩給も上がる。せめてもの償いだ。
と同時に、まだ婚約者だったころ、公務で慰問した救貧院に、ずいぶん昔の戦乱で、片足を失った元兵士のご老人がいたことを思い出す。
一歩間違えれば、死と隣り合わせ。
交流のなかった従兄弟とはいえ、無事に帰って来れてよかった、と改めて思う。
新聞記事を何度か確認しても、叙勲・叙爵の欄にルイスの名前はなかった。
あの頬の傷は、古くはなかった。今回の紛争で負ったものだろう。
どうして彼の身分で、と思うが、何かしらの事情があっての結果だろう。
首を突っ込まないに限る。好奇心で殺される猫にはなりたくない。
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午後は、伯母様主催のお茶会—
招待客のリストを前もって見せられた。社交界に影響を持つ方々がずらりと並ぶ。
采配が実に見事で、お母さまの“天使効果”の被害関連者はいない。
挨拶をして、自己紹介を受けると、すぐにハーブティーの話題になった。
『天使の聖女修道院』のハーブティーを手に入れたいとのご希望で、「院長先生にお話ししておきます」と答えておく。
しかし遠くない将来に、品薄になるのは目に見えている。
ハーブ専門栽培地を作らないといけないと、受け答えをしながら考える。
ファッションの流行関連の次の話題は、私の婚約解消についてだった。
隣国とはいえ、なにぶんにも王太子がお相手である。
皆さま興味津々で、尋ねてくるが、公式見解に合わせて答えるのみだ。
「殿下とは6歳からの婚約で、10年以上のお付き合い。家族に近い存在でした。
そこに新鮮な市民感覚を持った女性と王立学院で出会い、お気持ちが傾いていきました……。
王家に輿入れすれば、側室や愛妾の方々とのお付き合いもあり得ます。
私も覚悟はしていたのですが、それだけではなく、その女性の新しい感覚を、これからの政治にも取り入れていきたいと仰せで、話し合いの末、殿下の有責で婚約解消となりました……。
ただ……。そのお相手の言動が、不敬に該当する場合も多く、国王王妃両陛下は婚約に反対なさり……。
殿下は、為政者としてのご判断に、より磨きをかけるために、さらなるご修養を命じられ、女性は残念ながら、放逐されたとのことです。
これ以上は、療養していた私を気遣い、父は教えてくれませんでした」
「まあ。引き裂かれた悲恋と言うよりも、若き日の過ちといったところですわね」
「恋は盲目とも申しますもの。一時の気の迷いで、こんなに美しく貞節なエリー様を手放すなんて、王太子殿下ももったいないことをなさいましたわ」
「本当に噂はあてにはなりませんわね。エリー様はこのように、優しく心が広いお方ですのに」
「いえ、十年と言う歳月の間に、あまりにも慣れすぎて、殿下にとっては私は、空気のような存在になったのかもしれません…。
殿下こそお優しく、解消の際の有責をお認めになり、また賠償金を王都の病院に寄附するとご報告しても、お許しくださいました」
より同情してもらうには、相手を絶対に責めない。
いいところもあったんですよ、と言うに留めるのが無難だ。
「まあ、そうでしたの。
でもお力を落とさないでね。事実と異なる風聞は、消しておきましょう。
王国との関係は良好に保たなければなりませんもの。
ねえ、皆さま」
「本当ですわ」
「さようでございますこと」
「ありがとうございます。皆さまのご厚意、ありがたくも嬉しく存じます。
今は皇帝陛下に謁見を賜り、エヴルー伯爵領を豊かにしたいと考えています」
ここで思わぬ返しが入った。
「こんなに素敵なお嬢さんなんですもの。
どこかに良いお相手はいらっしゃらないのかしら?
公爵夫人?」
「本当ですわ。失恋の痛手は新しい恋が最高の良薬、と言いますものねえ」
いやいやいや。今はそういうの要らないです。
領地でのんびり平穏に暮らしたいんです。
「そうでございましょう?
エリーなら、どんなお相手でも遜色はないと、身内ながら思いますの。
エリーの優しさや賢さは、『天使の聖女修道院』の院長様ご推薦ですもの」
伯母様に裏切られた…。それともポーズって思われてたのかな。くっすん。
推薦って、院長様もか〜。
まだまだ、貴族階級の女性の幸せ=結婚って根強いものね。
「伯母様、ご推薦とはどういうことですの?
母アンジェラからのご縁もあり、奉仕の心でお手伝いはしておりますが……」
「まあ、エリー。謙遜して。
あちらは、帝室もご支援されてますが、身寄りのない子ども達を多く受け入れてますでしょう?
やはり財政的には厳しいものがございますの。
その窮状を知ったエリーが提案をしましたの。
院長様曰く、お菓子の魅力的な品目増加、ハーブの香辛料や入浴剤、シスターの方々による刺繍やレース編み、これは将来を考えて、子供たちに教える授業の一つにしたんですの。
ハーブを使った染色も、目下研究中とか。
とても上品な色合いで、私、驚きましたのよ。
是非、ご覧になって」
ここで伯母様が封筒から、小さな糸束を数種類取り出し、テーブルに並べる。
あれは、先々週、上手く染め上がりました、と報告があった色だ。
伯母様、いつの間に?
ただ招待客の反応は上々だ。
貴婦人は、外しすぎない差別化が大好きだ。
流行を取り入れつつも、“皆と違う何か”を求めてやまない。
独特の優しい色合いは、興味を引き、順番に回覧される。
「確かに素敵な風合いですわ。どういう布地や使い方をするか楽しみですこと。
そういえば、クッキーも美味しくなり、他の焼き菓子も風味豊かと聞きますわ」
「エヴルー領は、牛乳だけでなく、チーズやバターがとても美味しいんですの。
先日、領地に行った時、堪能してきました。
エリーは酪農もテコ入れしてますの」
「本当に領地運営の才能がおありなのね」
「恐れ入ります。若輩の身ではございますが、できることからと思い……」
「もう、エリーは本当に可愛い努力家さんなんですから。
ウチの主人も目に入れても痛くないほど可愛がっている姪っ子ですのよ。
そんなウチの人が胃痛に悩まされていると知ると、お父上のラッセル公爵閣下ご愛飲のハーブティーを、かかりつけ医が許してくれれば、送ってくれると申し出てくれました。
帝都で噂のハーブティーも、販売を提案したのはエリーですの」
「まあ、そうでしたの」
「あの、エリー様。私にも悩みがあって……」
「私も実は……」
ここからは、招待客の体調相談、美容相談となり、『第一は医学で』と念押しした上で、かかりつけ医に許可を得ることを条件に、お悩みを聞き取る。
圧倒的に美肌が多いが、他にも色々あった。貴婦人も大変なのだ。
帰領後にお返事を差し上げることを約束した。
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お茶会の後、公爵夫人の部屋で、人払いの上、少し報告と相談をする。
夫人は話を聞いた上で、同意してくれた。
これでひと安心だ。
客室で休んでいると、侍女が私を呼びに来る。
訪問客で、ルイス様と伝えてくる。
約束もしてないし、先触れの知らせもない。
「ピエール様とお間違いではなく?」
「いえ、エリザベス様との仰せで……」
侍女も困っている様子だ。仕方ない。
「では、用意してから参りますと、伝えてくれますか?
それと、このことをすぐに伯母様に知らせてください」
「かしこまりました」
ここからは、マーサと身嗜みを整える。お茶会のドレスをまだ脱いでなくてよかった。
失礼のない姿でサロンへ行くと、ルイス様が一人座っていた。今日は黒のフロックコート姿だ。
入室すると、はっと顔を上げる。
最初に会った時も黒を着ていた。確かに似合うとは思う。
「お待たせいたしました。エリザベス・ラッセルでございます」
「ああ、急に訪ねてすまない。座ってくれ」
「ありがとうございます」
お辞儀を深々とした後、所作に気をつけて座る。マーサは壁際に控え立っている。
絶対に二人にしないでね、と堅く約束した。
パーラーメイドが紅茶を入れ、同じく壁際に控える。
「今日は、先日のハーブティーをお願いに来たんだ。母がとても気に入って、飲みたいと言ってるんだ」
やはりそうか。
私は丹田に力を入れ、貴族的微笑でゆったり答える。
「お母様思いで、お優しいのですね、ルイス様。
ただ、私はまもなく正式に、エヴルー伯爵を叙爵されますが、元は隣国の者。
そんな私が、ルイス様のお母様のお口に入るものをお作りしてよろしいのでしょうか?」
ルイス様の顔に抑制された驚きが見える。
さすがに帝都では、身分らしい振る舞いをするようだ。
声が少し低くなる。
「……いつから知ってたんだ。
院長もだが、公爵家内にも昨日の内にピエールを通して、口止めはした」
「やはりそうなのですね」
ルイス様がガタッと音を立てて立ち上がりかけ、また座る。
「……試したのか?」
「とんでもございません。尊いご身分の方に、失礼があってはなりません」
「いつ知った?いつからなんだ?」
「最初から、お召し物やお振舞いで、上級貴族の方だとは思っておりました。
確信したのは、ルイス様というお名前と、騎士団の階級章でございます。
帝国の第三皇子殿下が騎士団に所属されているのは、聞き及んでおりました。
また、あちらの修道院はよほどの繋がりがないと、関係者以外の埋葬は、難しゅうございます。
元々、帝室とは篤い保護を受けてきたご関係。
念のため、タンド公爵夫人にもあなた様のことは、お聞きしました」
王妃教育の賜物だ。
近隣国の王族と上級貴族・外交官については、叩き込まれましたとも。
まさか頬に傷作ってるとは思わなかったけど。
皇族の騎士団所属は、名誉職がほとんどだ。
「口止めは役立たずか……」
「公爵夫人が仰らなくとも、時間の問題でした。
侍女に帝室の方々の姿絵を購入してきてもらう予定でしたので」
「そこまでやるのか?!」
「はい。いたします。
私は新参者の女伯爵です。後見役のタンド公爵家にご迷惑はかけられませんし、領地も領民も守らなければなりません。
軽々しく、帝室の方々に近づいていい立場ではございません」
あなた抜きの皇妃陛下なら、大歓迎だったけど、あなたが付いてくるなら、差し引きでマイナスだもの。
紛争の隠れた英雄。人気の皇子様に訳ありの新参者が接近なんて、絶対嫉妬の嵐だわ。
せっかく悪役のイメージを払拭しつつあるのに。
「たがが第三皇子だぞ。スペアのスペアだ」
ルイス殿下がぷいっと横を向いて答える。子どもか。
「ご自分をそのように仰るものではありません」
「本当のことだろう?」
ここで私は深呼吸する。はっきり言わないと通じないようだ。
「ルイス皇子殿下。不敬をお許しいただけますか?」
「不敬?構わん。戦場では一々言っておれん」
「では、恐れながら申し上げます。
皇族の方々にはなすべきことがございます。
お生まれになって以降、そのお身体も流れる血汐も、国民の血税からできていらっしゃる、誠に尊い御身でいらっしゃいます。
かしこくも、皇帝陛下の御位にお座りになる方以外にも、藩屏としてのお役目がございます。
ご自分でも分かってはいらっしゃるのでしょう?
戦地での獅子奮迅のご活躍による、叙勲も叙爵も全てご辞退なさったと、タンド公爵夫人にお聞きしました。
これも皇位継承を巡っての、無為な争いを引き起こさないためのお考えかと存じます。
ふんぞりかえる必要はございませんが、どうか、卑下はなさらないよう、お願いいたします。
ルイス皇子殿下の部下の方々が、不憫でございます」
「私の部下達が不憫だと?」
眉尻が少し上がる。自分はともかく、部下は悪く言われたくないようだ。
「はい。皇帝陛下に忠義を誓い、知将である皇族のお一人が上官となり、実に誇らしくお思いのはず。
号令一下、生命も恐れず、お働きになる大切な方々でございます。
先ほどのような物言いをされた時、部下の方々は同意されましたか?
複雑な表情をなさっていませんでしたか?」
「…………」
「ルイス皇子殿下は子どもの時はいざ知らず、もう成人なさっていらっしゃいます。
どうかいじけたり、ひねくれたりせず、彼らの誇りを大切に遇し、ふさわしいお振る舞いをなさいますよう、臣下の一人として、深くお願い申し上げます」
私は黙礼し、そのままの姿勢を保つ。
長い沈黙が流れる。マーサとパーラーメイドの緊張が伝わってくる。
巻き込んでごめんなさい。
「ふう……」
ルイス殿下の大きく、深いため息が響く。
「……悪かった。俺の悪い癖なのだ。もうこの年なのにな。
エリーの、いや、エリザベス嬢の言う通りだ。
こちらこそ、すまなかった」
私に頭を下げるルイス殿下に、心中慌てる。
分かってくれたらそれでいいのに。
ついでに身分に相応しく、私にちょっかい出すの、止めて欲しいだけだ。
「ルイス皇子殿下。臣下に謝るものではございません。
先ほどのお言葉と、これからのお振る舞いで充分でございます」
「そうか……。
君、悪いが、公爵夫人を呼んできてくれないか?」
ルイス殿下がパーラーメイドに命じる。
怒ったり不快感はないようだが、なぜ伯母様を呼ぶ?
不敬に問わないって言ったのに!
「は、はい。かしこまりました」
依頼を受けすぐに公爵夫人が現れ、同席する。
「どうなさいましたの、ルイス様」
「夫人。もうバレていた。いつも通りでいい」
「まあ、殿下。お早かったこと。それで何かありまして?」
「いや、まあ。俺の悪い癖で、ついひねくれた、卑下した物言いをしたら、エリザベス嬢が、諫言してくれたんだ。
もちろん不敬の許可をとった上でだ」
「……さようでございましたか」
伯母様はこちらを心配そうに、見遣ってくれる。
巻き込んでごめんなさい。伯母様。
「夫人。俺は納得したし、謝罪をしようとしても、気持ちと振る舞いで充分と言ってくれてるんだ。
ただそれでは俺の気がすまない。
エリザベス嬢は、皇城祝賀会で、陛下に謁見するのだろう?」
「さようでございますが……」
「その時のパートナーを務めよう。
公爵と夫人の付添う予定なんだろう?
正式には、男性がエスコートするはずだ」
え➖➖➖?!何言ってるの、この方。
どうして、何があって、そうなるの?!
「まあ。殿下がエスコートを?
皇帝陛下と皇妃陛下のお許しがあれば、後見人の我が家としても、不服はございません。
ふふふ。美しいエリーのエスコート役となれば、叙勲を譲られた方々も、ご納得されるでしょう」
「とにかく、よろしく頼む。
諫言がなくても、元々申し込みに来たんだ。
皇妃陛下に督促されてね。パートナーを申し込みついでに、ハーブティーの茶葉をもらってこいってさ」
「まあ、皇妃陛下もお望みですの。
マーサ。すぐに持って来てちょうだい」
「かしこまりました」
「エリーもよかったこと。
あの人は喜んでたけど、本当はどちらかのふさわしい男性のエスコートがマナーですものね。
おめでとう、エリー」
「……伯母様」
涙目で見ても、うんうんと頷くのみ。
申し出を受けなさいって意味ですね。
皇族だから、いくら公爵家の縁故でも断れませんよね。
このために伯母様を呼んだのか。
外堀どころか、内堀、埋められた。
ハイ、ワカリマシタ。
「……ありがとうございます、ルイス皇子殿下。
帝国の輝ける星たる第三皇子殿下のお申し出、臣下として誇らしくお受けいたします」
私は貴族的微笑全開で、右手を心臓の上に当て、皇族への忠誠を誓いながら、了承する。
ものすっごく不本意だけど、仕方ない。
このポーズは、臣下として承ったって意味だからね。通じてるといいけど。
その後、段取りの練習やダンスの打合せの日程まで、伯母様がさっさと決めてしまった。
分かってるけど、八方塞がりだ。逃げ道無し、やられた。
ルイス殿下は、マーサが持って来た、茶葉を喜んで受け取り、皇城に帰還する。
私は伯母様同行で、伯父様にも説明する。
伯父様はしゅんと肩を落としてた。私もがっかりだ。
客室に戻り深いため息をつく。
「ふう。どうして、こうなっちゃったんだろう……」
またもやベッドの枕相手に、愚痴をこぼす破目になった。
ご清覧、ありがとうございました。
エリザベスと周囲の今後を書きたい、と思った拙作です。
誤字報告、感謝です。参考にさせていただきます。
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