古き記憶
焼土と化した市街地。
暗黒の瘴気に覆われた空。
その中心に、少女は立っていた。
特筆すべきは、その雪のような純白の白き髪。全身がボロボロで血にまみれてはいるが、少女自身には傷は無い。異様に片方だけ短くなった袖に通された手には、青白い細く長い剣が力なく握られていた。
やがてポツリポツリと、緩やかな雨が降り始める。
強力な瘴気を含んだその雨粒は、地面に落ちるなり、ジュウと小さな音を鳴らし白煙を上げた。
「……ぉねぇちゃん」
少女は俯いたまま、掠れた小さな声でそう呟いた。その視線の先には一人の女が、崩れ残っていた壁の一部に背を預ける形で、力なく横たわっていた。
女は少女同様、全身がボロボロであり、手には一振りの刀が握られていた。そして、腹部の半分が無く、そこからてらてらと赤い内臓が見えていた。
女は死んでいた。
少女は呆然と立ち続ける。
「……逃げないと」
数分後、ようやく少女は動き出す。
剣を鞘へと納め、近くの瓦礫に埋もれていた刀袋を力任せに引き抜き、フラフラとした足取りで手に握ったまま引き摺り歩き、去って行った。
その場にはただ、自らの姉の遺体と、巨大な黒龍の死骸が残されているばかりであった
ー幻想都市ー
幻想都市は、第一~第五までの五つの区域が結合し形成されています。