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第零話 「命」

 真っ白な天井にアルコールが漂うベッドはきっと病室だろう。

目を覚ますとただ頭が痛く、熱く、嫌になるほど耳鳴りが響き、視界が疾いていた。

耳鳴りは半分は頭の所為だったが、段々晴れてきた視界でやっと認識ができた。

片方の耳から聞こえるのは隣の女から鳴る啜り泣きの音だった。

大層耳障りだったから鈍い動きで掛け布団を顔までかけた。

女は動いた手を握り締め、泣きながら訳の分からない事をぼやき始めた。

「っなんで生きてんのよ、ぅっお前なんか死ねば良いのにっ、ぅっ」

こいつは誰なんだろう。

「発症した馬鹿は殺して、殺して、、なんで?お前は大人しくそのまま死ねば、、ぅっ?」

殺した?

誰を?

発症?

死ぬ?

回らない頭には疑問だけが残り、頭がまた変に痛み始めた。

声は喉に付き、取れないまま知らない奴の声が耳に抜ける。

「おい、いつまで騒いでる!」

怒鳴り声が啜り声だけ響いていた病室に五月蝿く鳴く。

今度は堅いの良い男のようだ。

動かない頭からは顔が認識できず足音だけが女に近づく。

違う奴もまた数人来たらしく複数の足音が扉の前で止まる。

堅いの良い男は女に近づくと罵声と暴力を振るった。

他の人は何もせずにただ黙って立って同じように自分もそうただ目を薄ら開けてぼんやりと見ていた。

女は座っていた椅子から傾れ落ち、濡れた床に難なく崩れる。

男は何回も蹴り殴りを続けて、女の喚き声に嫌気を刺したのか、無言で部屋の扉を叩き閉め、出て行った。

女は俯いた顔をあげ、不気味な笑みを僕に向けた。

よからぬ事を考えたのか高笑いを初めて僕を殴り始めた。

「…死ね。私の手で殺せばあんたはもう痛くなくなるからな。あはは!」

痛い。全身が踏みつけられ、殴られ、意識がどんどん曖昧になる。

扉の前の連中は何をやっているのだろう?

熱くなり、耳まで引きちぎろうと引っ張り始めた。

だが、耳を引っ張っていた手は直ぐに離れ、代わりに落ち着いた声が女を慰めていた。

その後、時間も感じない程朦朧としているといつの間にか騒ぎ声と共に女は連れ出されて行った。

体は重く、頭はもう動こうとしない。

この現状を把握したい感情は快楽な眠りと共に埋められ、視界はまた真っ暗な闇へと放り出された。


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