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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ブロディ、頭を抱える

 ライメイが自分の部屋に戻った後、ウミナリは今いる場所に遮音の魔法をかけた。


そして今回、パートナーを持つに到った経緯を説明した。決して愛だけで、遥か遠方に住むベイスタートを呼び寄せたのではないことを。


「実は、この度は姉がとんでもないことを仕出かしまして………………」



既に顛末を知るベイスタートはウミナリの肩を抱き寄せ、気持ちを落ち着けさせながら話を促した。


ここに集まったのは全員で8人。


カザナミ、ラリサ、キャラウェイ、ランラン、ブロディ(ニール)、アナスタシア、タルハーミネ(ヘルガ)、ウィリアム(イリヤ)だ。ゼフェル達は王城で政務を熟している。と言うか、ウミナリの判断で城からは国王と王妃だけを招待したのだ。


マンションの中だし、ドラゴン達と特に親密な者だけの会として、周囲に羨ましがられていた。


それがとんだ暴露大会に。

ウミナリのパートナー紹介という、キャキャウフフの内容だと思って来た一同なのに。



「え、ウミナリ、それ本当のこと? あのキラキラ着飾っていた第二王妃が、ブラックゴルゴスネークになったって。それにネルは基本不死だろう? なんで贄になんて?」

「ネルは以前食べた人間の魔導師に、輪廻転生の呪いをかけられたらしいの。既に致命傷だった魔導師が死んでしまい、解呪出来なかったみたい。だから忠誠を誓うお姉さまには伝えていたみたい」


「そうか……。あのネルが」

「ええ。いつも若々しい彼女が、老婆の姿にまで変化していたそうよ」

「なら、その姿でいるのも辛かっただろうね」

「たぶんね。だからこそお姉さまの馬鹿らしい話に乗ったのかも?」


姉弟で分かりあっているが、そもそも人間なんて食べるから、なんて言えはしない空気だった。強者の前には等しくそれ以外は無力なのだ。


人間の身でここにいるのは、本当なら異常なことなのかもしれない。


まあ、ネルのことは置いておき、話は進む。



「そしてお姉さまは偶然に、グリッドイメロディ国でコールドスリープ状態の魔族を2体見つけ、素材(構成体の一部)にしたらしいの。何でも監視もいなくて楽勝だったから魔が差したって」


「!!! (え、僕の体がなくなったのは、ライメイのせいだったのかよ。同族の仕業でなくて良かったと思えば良いのか? それに2体って? 他にも僕と同じようなことをした者がいたのか? 可哀想なことになったな)」

声を出さずに堪えたウィリアム(イリヤ)だが、動揺は抑えられない。

(僕の体が姉上(ラリサ)と敵対するかもしれないなんて。なんてことだ!)

その後も黙々と、一人思案に暮れていた。



そして顔を蒼白にしたブロディ(ニール)が呟いた。

「僕のせいか? 確かにここ数年は彼女を構わず、クリンアンパーン国からの使者が来た時も、魔石のネックレスのことで叱責した。それにあの後は、ロビンまで隣国に婿に行って落ち込んでいたんだ。……それでもロビンのことはあまり擁護せず、馬鹿やって仕方ないとも思ってたし。


多忙にかまけて、蔑ろにしていたよ。

完全に僕のせいだ。

ジリアンがロビンにかまけて僕の方に来なくなり、僕に関心をなくしたと思って放置していたんだ。



申し訳ないことをした。

ジリアンが人間を辞めたくなるほど悩んでいたなんて。

僕は碌に見舞いも行かなかったし、真剣に向き合っていなかった。


僕はなんて愚かなんだ」


涙して跪くブロディ(ニール)に、誰も何も言えなかった。彼は国王として頑張っていたし、熟年夫婦の問題は微妙なことだから。

心が離れることは仕方がないし、ジリアンもブロディ(ニール)を放置し、第二王妃の仕事も放り投げていたのだから。

全てをブロディ(ニール)のせいには出来ない。



アナスタシアも同じ王妃として、ジリアンに構わなかったことを後悔していた。けれど彼女は思考が女々しくなく竹を割った感じなので、今一つ彼女に同情出来ずにいたのだ。

「私は結婚したロビンには頑張って貰うだけだし、彼はもう大人なのだからと思っていたんだ。ジリアンは悔しいだろうが、しっかり泣いて前に進むしかない。遠くから見守ることが、私達親に出来ることだと。ただ私は同じ王妃として、寄り添うことはしなかった。落ち込んだ際も声もそれほどかけなかった。ただ手紙と贈り物を送っただけなのだ……」


それに何かと(向こうから一方的に)敵視してきた彼女に、この時とばかりに近づけば、見下しているのかと思われそうだったし。多忙な国務を放棄したジリアンに会う機会もなく、そのままにしてしまった。その後に部屋に籠るようになっても、足を向けるのを躊躇ってしまった。

けれどそれでも、真摯に向き合う必要があったかもしれない。もう今さらだが。




カザナミは思った。

きっと平和で退屈だったのだろうと。

「でもライメイが負けたんじゃ、ジリアンは相当強いな。

それにもう1体同じのがいるんだろ?

コントロール出来ない手駒は、もう手駒じゃないよな」



ラリサは思った。

「むしゃくしゃしたから、強くなって仕返ししようと思ったんじゃないかな? でも人間まで辞めるとは思わなかったし、執念も感じるよ」



キャラウェイは思った。

「派手好きなオバチャンだったな。

あんまり接点なかったけど、服と顔が合ってなかった。

元は良いんだから、可愛い系から清楚系にシフトチェンジすれば良かったのにな」



ランランは思った。

(何かファッションが浮いていた印象しかないわ……。仕事の会談には参加してなかったし。

ニール国王の若かりし日の汚点と言われた第二王妃。

やはり努力しなければ、気持ちは離れていくのね)



タルハーミネは思った。

(イリヤの体は、ジリアンの体の一部になったのか? まあ縁者に奪われるより、嫌悪感はないかな。まあイリヤも戻る気はなかったから、それは良いとして。この国に攻めて来られるとやっかいだわね)





そんな風に落ち込む者に、ウミナリは声をかけた。


「みなさんが悩んでも仕方ないので、もう切り替えましょう。ジリアンと彼女と同じブラックゴルゴスネークになったガールナは、吸血鬼とインキュバス(夢魔)の血を引きますから、元々魔族寄りだったのです。勿論、人間界には人化した魔族もたくさん潜んでおり、共存共栄を望んでいますから、彼女が特別な存在でもないのですが。


(ライメイ)の話ですと。

ジリアンは体調を崩し死にかけだったところを、彼女の祖母であるガールナを通じて姉に助けられたそうです。

その条件の一つとしてブラックゴルゴスネークに変化して姉の配下となり、彼女らの産んだ卵や魔獣を提供するようにとの口約束でした。

ジリアンを侮っていた姉は、魔法契約はしなかったようです。そこをちゃんとしておけば、少なくとも支配下には置けたと言うのに。


まあ性格なのか、最初からの目論みなのかは判断できませんが、姉より強くなったジリアン達は反旗を翻したようです。


問題は彼女達が、ジャームンサンド国に攻めてくるかどうかです。

彼女達は空間転移は出来ませんが、人化は容易です。ですから魔獣用のバリアーを張っても、気配を絶てば行き来は自由ですし、人間界で見つけることは困難です。

近くにいなければ、顔も見られませんから。


だからこそ、彼女達と力の拮抗するベイスタートをお呼びしました。私と姉、そして彼がいて下さればたぶん戦力は同じ程度にはなるでしょう。でも姉は一度敗北した身なので、恐怖心が残りあまり宛には出来ないでしょうけど。


だからこそ彼女達に対抗できるように、戦力を維持していくことと、彼女達が産んだ強い魔獣達がバリアーを越えてこちらに来られないように、気を配ることです。


まあ油断しないようにと言うことですね。


魔界の監視は私の眷属(けんぞく)に任せますから、安心して下さい。


姉のやらかしで申し訳ないのですが、一先ずそんな方針でどうでしょうか?」




どうでしょうかと言われても、そうですねと言うしかなかった。


たぶんウミナリの考えた最適解なのだろうから。



パーティー用に用意された料理を食べながら、お酒やジュースを飲んで話を切り替える。



きっかけはどうであれ、ウミナリは幸せそうに笑っていた。こんなことがなければ頭を下げて(ベイスタート)に来て貰うこともなかっただろうし、好きでなければ彼も故郷を離れることはなかったはずだ。

ドラゴンは寿命が長いのですぐに行動に移すことはなく、長期的な思考で生きている気が長い生き物なのだから。



見つめ合う2人に、パーティーの参加者は微笑んで祝福した。ジリアンの脅威も一つだけ良いことをしたなぁと。


「おめでとうミナさん」


これが偽りない気持ちだった。




ただウィリアム(イリヤ)とタルハーミネ(ヘルガ)だけは、「グリッドイメロディ国、大丈夫かな?」と思っていた。心配よりかは薄い関心だった。



その後はラリサとタルハーミネが料理やツマミを作り、部屋の遮音のままみんなでカラオケを歌い、ライメイとスチアートのことはすっかり忘れて楽しんだのだった。



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