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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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グリッドイメロディ国、異変

 イリヤ(人間界のウィリアム)の親、グリッドイメロディ国王ハイルリヒは、何も変わっていなかった。


逆を返せば、この300年何も改革をしなかったのである。


イリヤやジェダイが、国の未来を憂いて転生までしたのに。結果的に失敗したが、彼らはそれほど真剣だったのだ。



それが外務大臣となるサーシャルが、王位を改革派に渡そうとしている理由の一つだった。


それでも300年前は、下手に動くより何もしない方がマシだと思っていたがさすがに限度がある。彼も国王が嫌いな訳ではなかった。


けれど………。



人間界との商売は昔と同様で植物や毒草の売却しかしていない。

農村地域だから、食べ物には困らないがそれだけ。

他の魔国とは明らかに経済的に遅れていた。

他国と言っても、元は遥か昔にグリッドイメロディ国から離れた王族達が作った国々だ。


魔力優勢な国から弾かれた者達が、一から作り上げたものだった。

そのせいか未だに、グリッドイメロディ国の王族は太古から残る自国が一番尊いと思っている。


コールドスリープ装置は同じ魔界の国《ダンフェバランス国》から買い取ったものだ。元はグリッドイメロディ国の流れを組む国だからと、細々と交流は続いていた。


魔力の多くないダンフェバランス国は、魔法に依存しない生活を目指し、人間界とも深く交流していた。魔力が乏しいと言っても、グリッドイメロディ国よりも少ないだけで生活にはそれほど支障はない。


けれど近年近くになり、魔素の低下と共にさらに魔力が低下し魔界で暮らしづらい者が現れた。症状としては多少息苦しい感じに近い。

そんな症状がある者達は、人間界での生活基盤を整えることになった。


そして魔力の低下により、自己の生命エネルギーを用いることで、寿命も人間に近い状態になった。見た目は人間と同じなので、「頑張って長生きしたね。お爺ちゃん」くらいで受け入れられ、子孫達も人間として生活を重ねていく。


だからこそ、ダンフェバランス国や他の数国の魔力が乏しい者がいる国は、人間と友好的なのだ。


勿論、グリッドイメロディ国以外にも太古からの国はある。

その国々は目立たずも他国の様子を観察し、乗り遅れないよう、侮られないように暮らしていた。

旨みがあれば人間世界の支配も視野に入れながら。


寿命が短いながらも逞しく進化する人間達は、魔界でも注目されている。


便利な物や娯楽を楽しむ気持ちは、魔族も人間も同じなのだ。

そしていつしか、人間と共に商売をする魔族も増えていった。


ただ人間を見下すグリッドイメロディ国は別として。


今の状況は正に、傲慢さが招いた結果なのだ。


一度完膚なきまでに失敗し、現状を知った方が良いのかもしれないと思えるほど。


ただだからと言っても、完全に愚かな者だけではなく………。

宰相アイドステルだとて税金を上げようとしたり、他国との外交を増やすようにハイルリヒに進言するが、平民の暮らしが厳しくなると容認しない。税金を上げることや輸入により、自国民に不満を持たれることを嫌ったのだ。


だが平民達の方が社会情勢によっぽど詳しく、この国の税率はおかしいと思っているし、上げて良いからきちんと国作りをして欲しいと思っている。


それなのに一方的な偏見でハイルリヒは動き出さず、逆に止めようとさえした。

こうなってくると、平民達を侮っているようにも見える。


宰相(アイドステル)だとて、次期王に相応しいイリヤや自分の息子ジェダイまで人間界に転生させた手前、内政には力を入れたい。彼らが戻ってきたら、もう危険なことはしなくても良いと言ってあげたいのだ。


だからいろいろと対策案も立てたのだが、変化を嫌うハイルリヒは許可を与えなかった。

宰相(アイドステル)が強く言おうものなら、(アイドステル)(アマリィ)と離婚すると脅してくる。


ハイルリヒを愛する愛娘(アマリィ)は父に泣きつく。


「ハイルリヒ様に逆らわないで。私はあの方を愛しているの。お願い、お父様………。ぐすっ」

「アマリィ………。ああ、どうしたら良いんだ」



子を作らないと言っても、性的な接触がない訳ではない。所謂避妊している状態なのだ。子を産んで魔力が低下することを避け、いつまでも王妃として残れるように。


だからこそ身動きが出来なかった。

娘のことがなければ、もっと強く提言できたのに。




外務大臣となるサーシャルはそれを見て、諦念していた。

さらにイリヤとジェダイの体が失われたことに絶望したのだ。


サーシャルは昔から王家に忠誠を誓うジャクリス侯爵家だが、このままだと国の自然解体は免れないと以前から懸念していた。何度意見を進言しても全く聞き入れない国王ハイルリヒと宰相アイドステルに、国を任せておけないと思った。



そしてずっと諜報員を送り、ジャームンサンド国を観察していたが、イリヤもジェダイも記憶が戻った気配がなかった。

それは2人とも、巧妙に隠していただけなのだが。


特にイリヤであるウィリアムは、遮音や気配を絶ち慎重に行動していたし、ジェダイであるジェドは生きるだけで必死だった。だから魔界に連絡を取っていなかったし、ラリサを探して殺す任務も果たしていないので、戻ることも出来ずにいた。


そんな中で、ライメイとジリアン達のやり取りを偶然に知った諜報員は、サーシャルにその旨を報告した。


ライメイはいつも内密な話の時、ウミナリに遮音や隠蔽をさせていた。今回単独で動いていたので、所々秘密が盛れ出していたのだ。


サーシャルに命じられジリアンの行動を探っていた諜報員達は、少し前のライメイとジリアンの戦いも目撃していた。


それを聞いたサーシャルは思った。

これは交渉をしてみるべきではないかと。


それはもう、グリッドイメロディ国の簒奪となり得る提案だった。



サーシャルは出奔以前に仕えていた第一王子の王太子ジャスパーに会いに行った。イリヤとジェダイの体がなくなったこと、ドラゴンの加護がなくなり国の存続が危ういこと等を伝えに。


連絡を受けたジャスパーは驚愕した。

確かに王太子である自分よりも、チヤホヤされるイリヤが嫌いだった。けれど今は、好きな仕事に就いて楽しく気ままに過ごしていた。死んで欲しいとは思っていなかった。肉体がない今、イリヤの記憶が戻っても魔界への帰還は不可能となった。


自由を知り、客観的に周囲を見られるようになったからこそ、イリヤがどんなに頑張っていたかを今さらながら理解できた。出来の良いイリヤに反発し、自分の役割さえイリヤに押し付けてきたことや、嫌みを弟妹と言い募っていたことさえ。それでも不満も言わない大人な弟を生意気だとさらに貶めたことも。


「ああ、俺はなんて子供だったんだ。………こんな形でイリヤとの繋がりも切れてしまった。そして今、国が危ういのか。……………じゃあ、俺も出来ることをしよう」


「ありがとうございます、ジャスパー様。一つ私に考えがあるのですが、聞いて頂けますか?」


「ああ、聞こう。そなたがどんなに国を思ってきたかは、俺が知っている。逃げて済まなかった。これからは出来ることをやると誓うよ」


「勿体ないお言葉です。私も命をかけてお仕え致します」



サーシャルは心震わせ、ジャスパーに平伏した。ジャスパーももう逃げないと、サーシャルの手を取ったのだ。




◇◇◇

軍務大臣の親友でもあるハイルリヒの右腕、アルファードは軍事訓練だけを続けていた。サーシャルの変化に気づくことは微塵もなく。


そして国王であるハイルリヒは、イリヤ達の体がなくなったと知った後も何もしなかった。


「誰がこんなことをしたんだ? 優勢な息子が1人、いなくなってしまった。でもまあ良い。まだまだ息子はいるからな」


危機感も悲しむ様子さえ最早なく、ただ妻であるアマリィを抱きしめていた。





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