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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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地味顔の魔女が知らない、ジリアンの躍動

 ドラゴン姉妹のライメイとウミナリは、その美しさと圧倒的な存在感(オーラ的なやつ)で、多くの誘いを受けてた。


ライメイは妹のウミナリを部下のように使い、いつも女王のように好き勝手していた。

あれほど頻繁に呼びつけていたキャラウェイも、彼の弟子が増えたことで接触する機会は減っていた。


もっとも新婚であるキャラウェイは喜んでいるが。

それでも彼は、キツいスケジュールで国外に連れ出されて行くことが度々あった。

やはり各国でのキャラウェイの知名度と影響力は強いようだ。


「もう俺じゃなくても良いだろ? それも丸々1か月とかキツいって」

「もう少し辛抱してくださいな。貴女の弟子のラーミャが、素晴らしい称賛を受けているわ。程なく彼女に貴方の代わりをして貰えると思うから」


「そうかよ。じゃあ、それまでの辛抱だな」

「ええ。よろしくね」


ラーミャは人間界で暮らす魔族だ。

人間よりも長寿な彼女をキャラウェイの弟子として送り込み、メイクを学ばせたライメイ。

当然の如く、ライメイの正体を知る者1人だ。



ライメイは仕事(殆ど趣味)? の間を縫って、グリッドイメロディ国の山頂にある巣へ戻る。

そこは自分が許可した者だけが入れる結界が張ってある。

ウミナリと行動を共にするライメイは、ジリアンのことを内緒にしているので頻繁には魔界に来られない。


下手に招待を受けすぎて、単独行動が出来なくなった形だ。


それに伴って生んだ卵が傷まないように、保管場所には温度を低めに設定することも忘れていなかった。



ラリサ達と敵対する立場になるジリアンの存在を、妹であるウミナリにも、未だに内緒にしていた。



しかし、ライメイ一人勝ち状態は続かなかった。




◇◇◇

「な、なんでないのよ。卵は月始めに用意しておくように言ったのに。ジリアンったら、人間の癖に私に逆らう気なのね!!!」


月の半ばにドラゴンの巣に現れたライメイ。

人目を避けて大量の魔法を使いここまで来たのに、目的の卵がなくて怒り狂っていた。


「良いわ、それなら。ドラゴンの報いを受け入れなさい!」


彼女はジリアンのいる場所の気配を探り、標準を定めた。

「あんなところに居たわ。良い度胸じゃない!!!」



それは魔界でジリアンが根城にする巣穴だった。

硬い岩をくり貫いた、奥に行くと天井が広いダイヤが埋まる鉱山。

くり貫く際に削られたダイヤで、内部はキラキラと煌めいていた。

朝夕に活動をするスネークには、最適の場所だ。



ジリアンとガールナはそこにいた。

人間形態のままで。


「貴女達、約束はどうしたの? まさかもう呆けたなんて言わないわよね。人間が私に逆らう気なのかしら?」


怒りを抑えて余裕に話すライメイに、ジリアンは笑いが込み上げる。社交界では馬鹿な振りで可愛さをアピールした彼女だが、他者を蹴落とす為に執拗に相手を見てきたことで、暗い感情は手に取るように分かるのだ。


隠していても声色や顔の筋肉の強張り、表情と全身の力の入れ具合などから、おおよその予測がつく。

かなりの怒りがライメイに漲っていることを。


それでも、ジリアンとガールナは怯まない。



「ああ、卵ですか? ありますよ、遮断空間に。でも………。私達はもう面倒になってしまって。ドラゴンの巣は遠いじゃないですか? 要るのなら、貴女が取りに来てくれませんか?」 


恐怖など微塵もない様子で、ジリアンはライメイに伝えた。卵をあげても良いけど、取りに来いという感じで。



「お、お前ぇ。私がどれだけ譲歩したと思うの? 私の可愛い『ネル』まで犠牲にしたというのに。………そんなに死にたいなら、お前達も飴玉にしてあげる。他に忠誠を誓う者などたくさんいるのだから!」


ジリアンの挑発にライメイは怒りを抑えられない。普段の交渉ごともウミナリに任せているのだから、付け焼き刃では底が浅いのはすぐ露見してしまう。



その言葉にも、ジリアンは口角を上げてライメイを見つめるだけだ。


そしてとうとうライメイが人化を解き、怒りを載せてドラゴンブレスを吐いた。

「死になさい、愚かな人間達!!!」


瞬間、辺り一面が熱い炎で包まれた。

ジリアンもガールナもその高温の炎で、ライメイの思惑通りに、肉体が石のように凝縮されたかと思われた。


でも数秒後、2人は先程と同じように立っていた。

勿論服も全く乱れておらず、何も変わらない綺麗なままで。


「な、なんで。なんで死なないのよ。可笑しいでしょ!!!」


「なんでと言われても、ねえ?」

「そうよねえ。私達を作ったのは貴女(ライメイ)なのに、今さら何を言うのですか?」

「っ………」


ライメイは2人を睨み付けるが、戸惑いを隠せない気持ちでいっぱいだった。何となくそれを感じるジリアンは、言葉を綴る。


「ねえ、ライメイ様。先程言ってましたよね、私達の命を摘み取ると。もう攻撃はされないのですか? もしかしてお疲れですか?」


余裕たっぷりで言い募り近づくジリアンに、ライメイは後ずさった。

「こ、来ないで! 来るな、バケモノ!」


今度こそ焦り顔で余裕の欠片もないライメイに、2人は楽しげに顔を見合わせる。


そして同時に両手をライメイに向けて、直径2メートル程の氷の柱を突き刺した。


「ぐ、ぎゃああああああああああ!!!」


その刹那、彼女のドラゴンボディーの腹部に大穴が二つ開く。堪らず身を捩るライメイは、洞穴をのたうち回る。


「あらあら。防御もしないなんて。ドラゴンは無防備なのね」

「本当にね。私達のような小虫には、防御は不要だと思ったのね」


「それにしても、痛そうね」

「そうよね、天下のドラゴンなのにね」


「ふふふっ」

「ほほほっ」



痛みで気を失いかけたライメイは、力を振り絞って転移魔法を己にかけた。

「はぁ、はぁ、お、覚えていなさい。ジリアン!!!」


精一杯の強がりを言い、その場を去るライメイ。

けれど2人は、元よりライメイを追うつもりはなかった。


「ねえ、お姉様。この体は存外に強いわね」

「そうね、ジリアン。瞬間的にバリアーの呪文も頭に浮かぶし、思いのまま攻撃も出来るわ」


「確か体は、魔界の王子と宰相の息子だったわね。自慢げにライメイが話していたもの。誰にも知られずに、入れかえて持って来たとね」

「そうだったわ。それに頻繁に名前が出てくる『ネル』だっけ? 私達にスネークの体をくれた人? 魔獣? その彼女も強かったのでしょうね」


「きっと、そうね。そうじゃなければ、喧嘩しただけで死んじゃうもの。ライメイは強いわ。人間だった時は彼女の抑えたオーラにも震えたものよ」

「そうだったね。あの時は半分くらい自棄っぱちだったから、堪えられたのかも。普通の精神なら、絶対近づかなかったよ」


「本当にね~。でも今は確実に私達の方が強いわ。きっと魔族の体が素晴らしい素材だったんだわ。ライメイは『ネル』の力は知っていたはずだもの」

「そうね、きっと。彼女は自分達と仲間以外を弱者だと思ってるわ。私達2人で『ネル』の体を分けると弱くなると思って、足しにしようくらいの雰囲気だったんでしょ」


「ドラゴンって以外と頭が悪いのかしら?」

「どうだろうね。ライメイだけじゃないかい? 年長だからと言って、何でも人任せみたいだし」


「そう言えば、いつもウミナリと言う妹が一緒だったわ。彼女、疲れた顔をしていたわね」

「そうなの? 最悪な時、ドラゴン2体相手だと勝てるかね?」


「う~ん、どうかな? それより彼女(ウミナリ)は人間のことが好きみたいだったわ。キャラウェイやエリザベートと仲が良かったわね。それに彼女達の弟、カザナミは人化したままだから、あの国を守りたいと思うわよ」

「姉のライメイとは違う考えなんだね。人間の国を守りたいなら、人間の脅威となる私達を作り出そうとは思わないだろうから、案外単独行動かもよ」


「うん、そうかも。卵もライメイだけで食べてたし」

「じゃあ暫くは安全だね。プライド高そうだから、妹に負けたことは話せないだろ? だってドラゴンは、生物の最強種なんだろ? くふふっ」


「もう、お姉様ったら。でもそうね。私達って、ドラゴンを越えちゃったのかしら?」

「そうかもね。さっきだって、全く負ける感じはしなかったし」


「間抜けなドラゴンね。自分より強くしたら、言うことなんて聞かないってことも分からないで。まあ、自分以外は雑魚だと思ってたら仕方ないか?」

「でもジリアン。身の安全は図るに越したことはないよ。出来る限りオーラを隠して、ライメイに見つからないように人間に紛れて過ごそう」


「分かったわ、お姉様。潜みながら味方を増やしましょ。ここにいる間に、魅了で従う魔獣を多めに産んで増やすわ。数が居れば、ライメイの隙も付けると思うの」


「そうだね。それは良いね。私もたくさん産むよ、ジリアン。人間の子は1人だったけど、仲間を増やすと思えばたくさん産めそうだ。私は自分の卵子を使ってそのまま魔獣を丸のみして産んでいくよ。あんたは魔獣同士を組み合わせて産んでいきな。強い仲間を作れるように」


「そんな………。私だけ自分の身(卵子)を使わないなんて!」

「それは違うよ、ジリアン。魅了はあんたの方が強いんだから、これから存分に力を使って貰うんだ。それに私があんたを守りたいんだから、気にするんじゃないよ。この身であんたを守れそうで、それはもう満足なんだからね」


「お祖母様………。私、幸せよ。きっとドラゴンと闘って死んでも、満足して逝けると思うわ。生かしてくれて、愛してくれてありがとう」

「私の方こそだよ。こんなに愛しい存在を持てて、毎日幸福なんだ。私に生きる糧を与えてくれて、感謝しているよ。愛してるよ、可愛いジリアン」


「お祖母様ぁ、おばあ、さま、うっ、ぐすっ」

「たくさん泣きなさい、ジリアン。ずっと我慢してきたんだろう? 私は可愛い孫を抱きしめられて、それが幸せなんだから」

「ああぁ、お祖母様ぁ。ぐすっ」



ジリアンの慟哭は暫く続き、ガールナもまた泣いていた。この日2人はドラゴンの呪縛から解放され、さらに守りも固めていくのだった。





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