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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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魔国(グリッドイメロディ国)の王、ハイルリヒ

「大変です、ハイルリヒ様。本日コールドスリープ装置を確認したところ、イリヤ様とジェダイ様の体がなくなっておりました。代わりにジギタリスフロッグ(全長2m程の毒ガエル)に入れ替わっておりました。ただ機械に損傷はない模様です」


「な、なんだと! 体がなければ、もうイリヤ達が戻って来られないではないか! なんて日だ!」


現王ハイルリヒは、今500才の半ば。

イリヤが人間界に転生したのが300才前半なので、十数年が経過していた訳であるが、その間ハイルリヒは何もしていなかった。


ぶっちゃけるとハイルリヒの女癖の悪さで、グリッドイメロディ国が謀叛の危機に瀕していた。そこでブラックゴルゴノプスドラゴンの竜玉を取り戻し、国力の増強などを行ってクリンアンパーン国を占拠し家臣達の不満を回収する為に、イリヤとジェダイを人間界に転生させたのだ。


その目論見が、完全に破綻したのである。



◇◇◇

この王(ハイルリヒ)には10人の王子と2人の王女が誕生しているが、イリヤは飛び抜けて優秀だった。

他の異母弟妹の数人と、その母らに疎まれる程に。



魔族の体の成長速度は遅い。

人と比べると、人の10年で魔族1年分位である。

ただ知識は、その年齢分で蓄積される。

体は子供、知能は年齢分となる。 

(人間にまぎれれば、姿のわりには賢すぎる子となるだろう)

魔界では50年や100年ではひよっこで、300年過ぎた辺りからやっと認められ始める。


年齢が上がるほど、狡猾になる者は多い。

子供達が全員大人と認められるのは、まだまだ先なのだ。



第一王子の王太子ジャスパーはどうしたのかと言えば、人間界の文化に触れて出奔していた。

当時文化の遅れていたクリンアンパーン国ではなく、同じ魔界の国《ダンフェバランス国》から手に入れた、人間界の小説を読んだ為である。


今は漫画の発信地である、ドンマイ家が住む国にいると言う。ジャスパーも挿し絵画家をしているらしい。


ダンフェバランス国は機械化と、人間界との貿易を行い文化を発展させ、魔界でも先進国と呼ばれていた。

魔法と機械の融合を成功させた便利な道具なのだから、人間も好んで購入していたと言う。

さすがに魔族だと言うことは避けて、遠方の国から来たことにして売っていたそうだが。


グリッドイメロディ国はクリンアンパーン国と隣に位置し陸路で人間界に近いが、ダンフェバランス国は空路を発展させ、飛行船の移動を確立させていた。


他国はまだグリッドイメロディ国を経由していたが、飛行船の料金がもう少し下がれば、今後はそちらが主流になるかもしれない。そうなれば通行料もグリッドイメロディ国に入らなくなるが。



いろいろ乗り遅れつつあるグリッドイメロディ国なのだ。


グリッドイメロディ国で、国王の右腕となる親友のアルファードは公爵位を持つ軍務大臣だ。


女癖は悪いが、弱者に優しいハイルリヒを気に入り追従している、数少ない彼の味方だ。


子供を孕むと次の女性に目をやり、次々と側室に落とすハイルリヒに嘆願し、娘アマリィが子を産まないで正妻に座り続けるように画策した宰相アイドステル。

長く続く侯爵位を持ち、国を支える影の王と呼ばれる者だからと、条件を飲んだハイルリヒ。


けれどその策は、多くの反感を買った。アイドステルは娘の為に、糾弾される窮地に陥ってしまった。


その状態に外務大臣となるサーシャル達が、王位を改革派に渡そうとしていた。国政を変えぬままに保守し、他国の文化を受け入れないハイルリヒや周辺の大臣達に、見切りをつけていたのだ。これもまだ、イリヤがコールドスリープ装置で眠っている時のことだ。


サーシャルは昔から王家に忠誠を誓うジャクリス侯爵家の当主だが、このままだと国の自然解体は免れないと苦渋の決断をしたのだった。彼も王のことは敬愛しているが、何度進言しても経済的変化を受け入れない姿勢には、付いていけなかった。 


魔力の多い者同士の結婚を繰り返した為、王族には強い魔力を持っている者が多いが、統率された軍組織の中には魔力が乏しい者も少なくない。

そこで武器の保持やバリアーなどの装置の購入、若しくは開発が必要な状態だった。


けれどこの国の脳筋達は、サーシャルの助言を聞き入れないのだ。


「大丈夫だ、サーシャル。何かあっても王子達が前線に出れば解決だ」

(イリヤ様ほど強い魔力を持つ者はいないですよね。甘やかされて訓練すら受けてないのに。今までの出陣、全部イリヤ様に押し付けてますもんね!)


「そうだ、そうだ。武器を買うより、軍隊の強化が必要であろう」

(魔力なしの剣技で科学に勝てるとでも? コールドスリープ装置だって他国から購入したものだぞ。家電だってそうなのに!)


「他国に頭を下げるなど、そんな真似出来るか!」

(頭くらい良いだろが。占拠された方が良いとでも? 無防備でも攻められないのは、農耕地帯だから見逃されているだけなのに!)


軍事では圧倒的に弱者な、グリッドイメロディ国なのだった。



ただハイルリヒ派閥ではない、改革派のサーシャル側には強い魔族が少ない。以前オウギワシに短時間の意識を移し(精神転移をさせて)、クリンアンパーン国に送った隠密イートンは、潜まずに交戦して狩られかけた。


「人間の国やべえ、めちゃ強いよ」と言っていた。


密偵、隠密、諜報。

どれでも良いから、意味を知っているのだろうか?


そうなのだ。

強い子は脳筋の者が多いのだ。

オウギワシなんてラリサの好物なのに、向かって行くなんて鴨ねぎである。寧ろ待ってるよ、彼女。



そんな状態で、イリヤとジェダイが戻って来ないことに絶望したサーシャル。


件のコールドスリープ装置に損傷はなく、一瞬で魔力の強い者の仕業だと思われた。


隣の魔国、ダンフェバランス国ならば、こちらの未知の装置で奪取も可能かもしれない。けれどさすがに、そんな危険を犯すとも思えない。


「いったい誰がこんなことを? 何処でこの場所を知り、潜入方法は?」 


悩むサーシャルだが、ドラゴンに法は関係なかった。

長くカザナミが味方をしていたので、余計にドラゴンが害して来るとは思わなかったのもある。


全ては後手に回ったのだ。



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