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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ローゼ、成長を喜ばれる

「ずいぶん遅かったな、ローゼ。それに仄かにニンニクの臭いがするぞ。さては既に旨いものを食べたのか? 全く食いしん坊じゃな」


約束の時間に遅れそうで、走ってやって来たローゼ達。その為、ニンニクのことを完全に忘れていた。


(ああ。失敗しました。何時もならガムや飴を食べて誤魔化していたのに!)

(スミマセン、姫様)

(私もすっかり、ラーメンの余韻で気がまわらず)



泣きそうなローゼだが、ショートニンは嬉しそうだった。

(まだまだ色気より食い気だな。なんか安心したぞ!)


元より政略に、娘を使うことは考えていないショートニン。娘の見聞を広めるだけで満足なのだ。

ただウィリアムと待ち時間に話をしていると、彼の賢さを感じることが出来た。

この国の産業などをかいつまんで説明し、有用性を分りやすく伝えてきたのだ。


(国の事業内容を的確に把握し、アピール出来る能力はたいしたものだ。全ての物流の流れを把握しなければ、物の値段に対してかかった経過を話せないだろう。次期公爵とは言え、ここまで優秀とは。確かまだ14才だったはずなのに)


ローゼの嫁入りは別として、ウィリアムの聡明さに好感を持ったショートニンだ。


勿論、噂のシスコン疑惑についても、確認を忘れない。


「時にウィリアム殿、貴殿の姉上は王太子妃候補に上がった程優秀と聞いた。ずいぶんと鼻が高いであろうな」


軽く聞いただけなのに、ウィリアムの瞳がキランと輝いた。

「そうなんですよ。噂が隣国にまで届いているなんて、さすが姉上。姉上は幼い時から優しくて、可愛くて、笑顔が素敵で、料理が上手くて、勤勉で、魔法も武術も強くて、弟妹の面倒も見て、いろんな発想で商業を立ち上げて、国の貧困を救う女神のような方なのです。少しは僕にも頼って欲しいのですが、いつも前で導いてくれる存在なのです!」


一息で言い切る笑顔のウィリアムに、百戦錬磨のショートニンも若干引いた。

そして 「うむ、素晴らしいな。息子の嫁に欲しいものだが、この国が手放さんだろうな。ワハハハっ!」 と誤魔化した。

社交辞令的に言った 「嫁に…」 の言葉に、その場の空気が冷えた気がしたからだ。実際魔法が漏れだして下がったのだろう。金属のボタンに霜が付いていた。


(ああ、これは駄目なやつだ。もし結婚まで漕ぎ着けても、エリザベート殿と死ぬまで比較されるだろう。諦めさせるしかないな。不幸な未来しか見えん!)



まあニンニクの件で落ち込むローゼだったが、その後も屋台の店で射的やくじ引きをしたり、ヨーヨーすくいをして楽しんだ。

さすがに満腹だったので、りんご飴やクレープなどは購入して城に持って行くことになった。


まだ食事をしていない男性陣は、レストランに入って魔獣肉のステーキセットを頼んだ。ローゼ達は飲み物だけを飲んで、お喋りに花を咲かせる。


今日まわった場所の話や、一番お金と時間を使った衣類と生地屋についてだ。

ローゼの荷物は侍女が持っていたが、それを見るだけで幸福感で満たされる彼女達。明日はローゼと年の近い貴族とのお茶会だが、終了すれば外出が出来ると聞いていた。お茶会より、最早観光がメインになっていた。


「明日は何処に行きたいですか? 姫様」

「私は魔石工場が良いですわね。実際にどのように加工されているか見たいのです。魔物の中にある時は血液で赤黒くなっていて、内臓に紛れていたと聞きました。それを見分けて磨くと、宝石のように輝くらしいのです。色で用途が違うので、選別がとても大切らしいですわ」


クリンアンパーン国でも魔物や魔獣はいて時々討伐をしていたが、体内に魔石があることは知られていなかった。今後の参考になるかもしれないと思ったローゼだ。


「さすが姫様です」

「立派におなりになって」


大袈裟に涙ぐむランランとリンリン。

「もう、すぐに馬鹿にするんだから」 と、笑いながら話すローゼに、侍女達は優しく微笑んだ。


(馬鹿になんてしていないのに。感動しておりますよ)

(ついこの間まで我が儘ばかりだったから、ちょっと寂しいです)


なんて話が聞こえてきて、ホロッとするショートニン。中年の護衛達も泣きそう。

クリンアンパーン国の多くが、ローゼ姫の成長を見守っているのだった。


ウィリアムも微笑ましそうに、彼らを見守っていた。

(悪い人達ではないみたいだ。後はローゼ姫を僕に勧めてこなければ、もっと良いんだけどな。まあ断りますが!)


それなりに和やかな午後の一時だった。




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