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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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ジリアンの悲しみ

「おはようございます。イグナンシェ陛下、王女殿下。よくお休みになれましたか?」


「おはようございます。ゆっくりと過ごさせて頂きました」



ジャームンサンド国の侍女に案内され食堂に移動したショートニン達は、軽く頭を下げブロディ(ニール国王)に感謝を述べると席に着いた。


「とても快適で、晩餐にも舌鼓を打ちました。魔獣の肉は絶品ですね」

笑みを浮かべるショートニンからは、心からの満足さが窺える。


それを見るブロディ(ニール国王)やアナスタシア達も、頷いて微笑んだ。

((掴みはOKね!))


「それは良かった。食の他にも珍しいものがありますから、是非楽しんで下さい」


魔獣肉が受け入れられたことで、ブロディ達以外の使用人も心でガッツポーズを決める。あの肉を味わった同士として。

(私達だってはじめは戸惑ったわ。だって魔獣なんて食べられるものと思っていなかったし。全身に瘴気を纏っている、禍々しい姿を知っていたから)

(実際に多くの国民が躊躇した。この俺だって。それを他国の者が、すぐに食したのはすごいことだと思う)

(さすが武道の国の国王陛下だ。あの可愛い王女様も頷いているから、食べたんだよな。俺が作ったものを信じてくれたのは、単純に嬉しいぜっ)



料理を配膳した調理人も、説明を求められることを想定して侍女の横に直立している。昨夜の下げられた食事後の皿を確認し、朝食を準備していたのだ。

本日の朝食は、オウギワシの照り焼きサンドや肉団子のコンソメスープなどの魔獣肉が使用されている。勿論玉子サンドやフルーツサンドもあるし、サラダには新鮮な野菜にスクランブルエッグとウインナーが載せられていた。牛乳やジュースも好みを聞いて侍女が注げるようにスタンバイしている。


ショートニンの食す顔を見ていると、満ち足りた様子で質問などはないようだ。ただ咀嚼するペースが早いようで、準備していたおかわりの分が瞬く間に消費されていく。ローゼはさすがにゆっくりと優雅だが、オウギワシの味をお気に召したようで、幸せそうな顔をしていた。


侍女と護衛は彼らの後ろに立ち様子を見ているが、何となく羨ましそうにしているのは、気のせいではないだろう。



「ほお。魔石が多量に販売されているのですか? それは興味深いですな」

「ええ。今までは魔獣にずいぶんと苦しめられて来たので、棚からぼた餅のようなものですよ」


聞くところによると、魔獣討伐が活性化したのはここ十年以内のことで、それまでは這う這うの体で逃げ出すかなんとか駆除したと言う。

魔獣の中にあった魔石にも、討伐が活性化して偶然に発見したらしい。それまでは自然死したり討伐後の死体が土に還った後に、稀に見つけられることがあった程度だそう。


「ほほう。それは素晴らしい。多くの魔力が宿る魔石の使用方法は、多岐にわたりますからな。便利な魔道具も、魔力を込めなければ動きませんしな」


「そうですね。まあお恥ずかしながら、この国が魔道具を使いはじめたのも最近なのです。とても便利なものですよね」


何気ないように言うが、以前の生活レベルはかなり遅れていたジャームンサンド国。ショートニンの知る以前の情報は、決して間違えたものではなかった。ようするに田舎くさい国だと馬鹿にされていたのだ。



食事の席にはブロディ(ニール国王)、アナスタシアの他に、ジリアン第二王妃、ゼフェル、ロビンが同席している。



「ときにローゼ王女は、アクセサリーはお好きですか? この首飾りは魔石で作られたものなのですよ」


ジリアンがローゼに向けて発言すると、彼女の瞳は首飾りを見つめる。

「綺麗ですね。いろんな色が煌めいています」


「ええ、そうでしょう。私がデザイン致しましたのよ」

「まあ、素敵です! デザインの才能がおありなのですね」

「ほほほっ」


楽しげなジリアンを見て、ブロディ(ニール国王)とアナスタシアは顔をひきつらせた。

(あの馬鹿。なんであの魔石を組み合わせたんだ! あの大きさで赤(炎属性)と透明(風属性)を寄せたら、火事になる可能性があるぞ!)

(説明書も読まないし勉強もしていないのね、ジリアンってば! 子供だって知っている常識なのに!)


最近までなかった首飾りは、この日の為にあつらえさせたものらしい。作製者もきっと忠告したはずだが、きっと聞いてないか無理強いしたのだろう。


((なんかあったらどうする気だ。この鳥頭!))


なんて苦笑いしている2人に気づかないジリアンは、優越感で口角が上がっていた。

(筋肉馬鹿(アナスタシア)は仕事ばかりで女磨きが足りないから、この首飾りは似合わないでしょうね。一番美しいのは私。綺麗な装飾品は、私が身に付けることでさらに輝くのよ)


確かに美しい顔ではあるが、アラフォーである。魔族の血が薄く入っているから若くは見えるが、それなりなのだ。


次期王太子妃サマンサ、公爵令嬢ラリサ(エリザベート)、伯爵令嬢ロールケイト、ラリサの妹達(イゾルデとシーラ)の方が美しさには定評がある(ラリサは化粧化けで評価されている)。


どう抗ってもゴテゴテ付け過ぎな、中年マダムだと思われていることには気づいていないジリアン。いつでも戦闘体勢に入れるように、邪魔になる物を身に付けないアナスタシアの方が評価されていると知れば、怒り散らすだろう。


アナスタシアの身に付けている魔石はピアスと指輪。組み合わせで炎や煙幕を作る、戦闘補助の役割を果たすものだ。


だからこそ、危険な首飾りは驚異だった。

(食事が終わったら、すぐに外させよう)



そんな思惑の朝食が、何とか和やかな雰囲気で終わった。





◇◇◇

「どうしてよ、ニール。これは私の作った特注なのに。あの女が羨ましくて、文句でも言ってきたの?」


ブロディ(ニール)に外すように言われた首飾りを、ジリアンは抵抗し掴んで離さない。


「魔石は危険なんだよ、ジリアン。説明書を見ただろう? 火事や火傷の可能性もあるんだ。賓客がいる時だから、万全にしたい気持ちが分からないのか? どうしてもそのデザインが好きなら、その大きさと色の宝石を代わりに買って付け替えて良いから。来客中だけは動かさないように閉まっておいてくれ。良いね!」


ブロディ(ニール)は、それだけを言って部屋を去って行く。実際に賓客を置いておけない状態だから、仕方がないことだった。


「何よ、何よ。ニールは怒ってばかりで、私の方をちっとも見ないで。こんな石が何だって言うのよ!」


首飾りを勢い良く外し、床に投げ捨てる。


「愛してるって、アナスタシアなんかより好きだって、若い時はいつも傍にいたじゃない! それなのに、何よ。いくら私がロビンを大事にしていたからって、子供を生んだら傍から離れて。今じゃアナスタシアとゼフェルにばかり構って。私には若さしかなかったってこと? 体だけが目当てだったの? もうお荷物としか思ってないの?」


ベッドに顔を伏せて、手足をバタつかせて泣きじゃくるジリアン。

彼女は甘やかされた為、苦労知らずに育った。第二王太子妃になる直前に妃教育を頑張りはしたが、それ以降はロビンのことや悪巧みしかしてこなかった。


けれどブロディ(ニール)には、いつも愛されていると思っていた。自分(ジリアン)が構わないからいじけているだけで、声をかければすぐに靡くと信じて疑わなかった。


でも実際はブロディ(ニール)は前世を思い出してからは真面目になり、王政を立派に行っているし遊び歩いていた過去を悔いている。

ジリアンのことは一度は愛した女性だからと、気を配りながら離婚せずにここまで暮らして来たブロディ(ニール)。


魔獣などで国の復興を掲げてからは、一層多忙となり関わりは薄くなっていたが、彼女(ジリアン)のことは嫌いにはなれなかった。若い頃の情熱は既になくしてはいたが。



認めたくなかっただけで、本当は気持ちが離れていることに、薄々気づいていたジリアン。首飾りの件は適切な指摘だったが、その態度に絶望を覚えた。


「私が好きだった彼はもういない。………どうして? 私のわがままのせい? だってそんなところも好きだって、可愛いって言ってたのに!」


この日からジリアンは部屋から出なくなった。

愛息子のロビンは、気にはすれど部屋に訪れることはなかった。ローゼに劣情を抱き、そのことで頭がいっぱいだったからだ。


「どうせいつもの癇癪だろう。すぐに機嫌は直るさ」


(ロビン)だけでも気にかけてあげれば、彼女の心は癒されたはずなのに。




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