地味顔の魔女の妹は強い?
《魔石の効能として》
炎属性は、赤色に近く、
水属性は、青色に近く、
地属性は、緑か茶のどちらかに近く、
風属性は、透明に近く、
氷属性は、灰色に近く、
闇属性は、黒に近い。
魔石の組み合わせ研磨係のジェド5才は、懸命に業務に熱中していた。 既にここの第1号研究員である。 2号は、なし崩しに管理者の1人カリナ25才だった。
ジェドは歩合制の魔石磨きから月給制に変わったのだが、意欲は落ちず熱心だ。
「ぼくの研究で、エリザベート様が喜ぶならば」と。
5才にして社蓄気味だ。
非常に心配である。
もしかして転生者?と疑う所だが、違うようで安心した。
ただ物凄く頭が切れる。
次々と魔石の組み合わせを完成させて、実験結果を記載していく。 ある程度の組み合わせが終了してから、ジェドはグラム数での再実験を提案してきた。
例えば、灰色と青の魔石。
氷属性+水属性=一面の温度が下がり白い靄の発生。
日本で言うドライアイス。
これは、1度目にジェドが偶然に持った物を併せた結果。
グラム数の調整で、効果範囲や冷却温度の調整も可能ではないかとの予測をしてきた。
片方の量を多い物と少ない物と同量にしてみて比べた結果で、販売時も同じ効果の物を提供できるのではないかと言うのだ。
魔石は切り離しが出来ないので、大きさの仕分けをしてグラム毎に調べる方法を提案してきたのだ。
それというのも、赤と茶の魔石。
炎属性+地属性=強めの炎の発生。
特に炎は役に立つが、危険も伴う。
魔獣に対して有効だが、それは人に対しても言える。
悪人に渡る危険もあると言うこと。
売却する際は身元を確認し、大量売却を避ける。
軍に品下ろしする時も、1日毎の使用記録を付ける等の規制や管理があると良いのではないかと言うのだ。
納得だった。
新しい道具の発売では、いつも問題対処は鼬ごっこで規制が間に合わない。 それを先取りして阻止するのも、発売元の責任なのだ。
ジェドは危機管理能力が高い。 それは孤児院で自分より幼子(時には大人)に、根拠を示して納得させる為なのだろう。 幼子は納得しないと従わない。 いつもの圧倒的な理論武装が仕事に役立った形だ。
と言っても、身ぶり手振りで一生懸命説明してくれたので解ったことだ。 さすが言葉は拙いからね。
もし直ぐに売却するなら、黒以外の小さい魔石を単品でくらいだ。 勿論署名付きでね。 大人の親指の爪位までなら、それほどの威力はないので、御守りやアクセサリーとして売ることは可能だ。 それ以上の大きな物は身元と用途がはっきりしなければ、売らない方が良いだろう。 売却したとしても勿論危険なことに使えば、違約金の発生する契約書も交わすことになる。 商売にすると言うことは、そういうことだ。
それにしても、先にジェドから提案されたのには驚く。
ジェドも勿論、私達が検討していることも予測していただろう。
だとしても、自分も理解出来ていることを伝えてきたのには驚く。
ジェドにはしっかり勉強して、将来の幹部入りを目指して欲しいものだ。
「ねえ、ジェド。これこの間磨いた魔石なの。どうかしら?」
ラリサの妹シーラ9才は、小さな魔石の光る赤いスカートをクルリとひらめかせてジェドの反応を窺う。
シーラは生粋の金髪碧眼の美少女だ。
ラリサと違って天然物である。
どうやら魔石磨きの場から、いなくなったジェドを探していたらしい。 元々孤児院の慰問で出会った時から、シーラはジェドが気になっていた。 この間の魔石の磨きの時も態々隣に座ったのだが、照れて話しかけられなかったのだ。
理屈っぽいが面倒見が良く、黒髪黒目でややつり目の眼鏡だが結構人気があるのだった。 頼れるお兄ちゃん的ポジションか。
かく言うシーラも孤児院で転んだ時に、ジェドに助けられた1人だ。 確か当時4才だったらしいが、手を差し伸べてハンカチで患部を拭いてくれたそう。 今と変わらず紳士だったらしい。
やっぱり中身オッサンかも知れない。
でも、眼鏡を取ると超格好良いんだって。
本当かな?
ジェドは令嬢に失礼のないよう、聞かれれば丁寧に返答はする。
「お似合いです。御令嬢」と、表情も変えないで言う。
それでもシーラは、
「ありがとうございます。嬉しいです」と、頬を染め満足げに去っていく。
「エリザベート様と似てお美しいが、やはり子供だな。落ち着きがない。エリザベート様を見習って欲しいものだ」と首を左右に振るジェド。
まあ、エリザベート(ラリサ)は14才というか実質314才でババア。
それでもシーラは9才で、ジェドより4才も年上なのだが。
管理者のカリナ25才がジェドに使われている辺り、既に年齢は関係ないのかもしれない。
普段女性に興味のないジェドが、無意識でエリザベート(ラリサ)を褒めたのをカリナに聞かれ、この後冷やかされることになる。 が、それが凄まじい姉妹喧嘩(シーラが一方的)になることは知るよしもないことだった。
「わ、私の方が、いっぱいジェドのこと好きなのに。お姉ちゃんのバカー」と、泣き叫ぶシーラ。 何か言えば10倍返されるので、言い返したいがギリギリで我慢し飲み込むラリサ。
短気なラリサが爆発するのも、もうすぐ。
『私が何才だと思ってるの?いい加減にしてー!!!!!』
まだ我慢してるのだった。




