地味顔の魔女は、スカウトをする?
「来たわよ、みんな元気~」
陽気なキャラウェイを、うろん気に見遣るラリサ達。
「ほら~、これ見て。 氷属性の魔石に魔力を込めると、あら不思議! 冷たい風で心も体も潤しちゃうのよ。 素敵でしょ?」
明るいキャラウェイに対し、ラリサ・アナスタシア・ブロディは半目で頷く。
反応の薄い返答に不満げなキャラウェイは、「ノリが悪いわねー」とか言っちゃうんで切れちゃった。
゛アナスタシア様〝が。
「貴様、さっきからうるさいぞ! 幸せそうな顔できゃぴきゃぴと。 お前も注文書類の調整手伝え!」
「ちょっと、いきなりなんで切れてんの? 腹減り? 腹減りなのかしら?」
怒気なんか平気のキャラウェイは、さらにアナスタシアを怒らせた。
「お前に広報を頼んだのは私だ。 だが、こんなに反響が起こるまで宣伝しろとは頼んでないぞ! ………もう、やだー」
張り詰めていた気力が切れたのか、今度は泣き出してしまったアナスタシア。
自分のせいか?と、おろおろしだすキャラウェイ。
「ええっと、大丈夫? ちょっとなんで泣いてんのよ?」
「うるさい、うるさい、お前嫌い、うわーん………」
ブロディも慰めるも、収集はつかない。
取りあえず、アナスタシアとブロディには別室で休んでもらい、その間にラリサが事情を聞くことにした。
魔石は王家預かりで公に他家に仕事の依頼は出来ないし、軍で魔石を磨いていれば磨く者の魔力に反応して暴発・誘発するし、加工する前でも良いから雑誌の姉妹が着けているアクセサリーが欲しいと注文が殺到するし、魔石の集積所(ゴミ捨て場)にある昔の魔石が、魔素駄々漏れで混ざってて収集つかないし、売買で得た資金がうちの国の財務部でキャパオーバーだと泣きつかれるし……………………
うん、大変です。
でも、もっと早く言って欲しかったです。
「大丈夫ですよ、アナスタシア様。
だってうちの国、優秀な人材の宝庫ですよ。
全部分担すれば良いんですよ。
取りあえずは…………………」
手始めにファンブル公爵家。
生け贄みたいで申し訳ないが、皆優秀だからね。
「まず元当主ヴァルモンと、現当主ブルーノとメアリー。
この人達の財産管理と宝石等の加工等により付加価値をつける商才は秀逸。
特にブルーノとメアリーは、タルハーミネに散財された公爵家を盛り返した手腕もあるし。
どんな物にも需要をつけますし。
会計処理だけなら、ウィリアムだってもう公爵家次期当主として教育を受けているし、いけます。
魔石拭きについては、まだ魔力の発現してない子供に手伝ってもらいましょう。 大丈夫、あの子達の『泥まんじゅう作り』本当芸術だから。 そしてその対価は、子供の貯金にしましょう。 出来高制でやれば、やる気も起こりますわ。
取りあえず臨時で大きな寮みたいのを作って、希望する全土の子供達を集めましょう。 そして魔石の影響を考えて、仕事は1日置きで。 その1日は寮の横に大きな学校でも建てて、勉強させましょうよ。 折角の機会ですしね。
魔力が芽生えれば、それに応じた仕事に就いて貰えば良いし。 寮の職員は、孤児院の先生や現役を退いた教師達や魔導師で良いでしょう。 孤児院の子はここに集めれば、職員は確保出来ますし。
孤児院の既に魔力を持つ子は、この学校で経理の勉強をして即戦力となって貰っても良いし、希望があれば冒険者でも良し、魔力が高ければ魔法学校に推薦で行かせても良し。
どうせ魔石に関わる仕事は、誓約魔法を掛けるのですから秘密保持は出来ます。
他の仕事に就いていない、子供に依頼するのが揉めないと思います。 魔石は限りがあり臨時的なものです。
それを子供達にも伝え、お金と知識をためて将来に役立てて貰えるようにしましょう。
魔石景気の今しか出来ないことですもの。
ちなみに、お洒落大好きの家の妹達2人(イゾルデ10才、シーラ9才)も手伝い兼購入に来る予定です。
ドラゴン姉妹のアクセサリーデザインと広報は、タルハーミネとカザナミとドラゴン姉妹に依頼します。 大丈夫です、相手の欲しい魔石と魔石の加工を交換条件にすればいけると思います。 特にお洒落に命懸けてたタルハーミネに刺激させれば、何とか。 公爵家を揺るがす散財で磨いた宝石鑑定は、今使わなければ。
そしてドラゴン姉妹風のメイクアップアーティストとして、キャラウェイを貸し出します。 せいぜい、一国1ヶ月くらいでしょ。 弟子もいるんだから余裕のはずです。 これからキャラウェイへ弟子への指導を開始させます。
似ないとかブスとかそんな苦情があれば、ドラゴン姉妹が物理で火を吹いて炎上させますから。
命懸けで、特殊メイクの習得をさせます。
あ、キャラウェイ。 現時点で弟子の辞表は受け入れませんよ、たった今王命貰いましたから、ブロディに。 勿論、キャラウェイは抜けられないから、王命で。
魔石の集積所は、現時点のままでお願いします。 ちょっと、薬草や毒草の解析したいので。 あ、そこの発生魔獣は、新人冒険者に丁度良いようです。 軍も在中してますから、指導の元狩れます。 治癒魔法者も居ますから、御安心を。
売買の資金については、隣国にならって銀行にしましょう。
貸し付けや、投資部門も作りましょう。
他国への資金分散もすれば、この国で災害があっても多少持つでしょうし。
他国の外貨設定の交渉と、各国との交渉は困難な道ですわ。
ですがこれが出来れば、どんだけ儲けても大丈夫です。
そのトップは、ゼフェル様とサマンサ様。
どうせ嫁ぐなら手伝っても良いでしょう。
もし別れても、お金ある方が慰謝料も多くなるだろうし。
サマンサ様は4か国が楽勝だとか。 銀行にして支店を出すなら、後主要国5つ学んで貰えばバッチリですし。
ああ、ゼフェル様は3カ国でしたか。 2人とも優秀で良かった。
そう言えば、ゼフェル様の弟ロビン様も秀才ですわね。 語学など余裕でしょう。
トップが3人居れば余裕ですね。
勿論総合責任者は国王のブロディですけど。
レンブルス伯爵家のロールケイト様には、協力を得られる手はずになっております。 家門全体でも協力に同意とのことで、どの部門でも良いそうです。
そう言うことですので、アナスタシア様。
貴女様にはこの叩き台を検討し、まずは急ぐ子供達の寮と学校建設、教師の選定に入っていただきます。
よろしくお願いいたします」
一気に言い切って、ラリサは息を吐いた。
そして、書いてきた草案をアナスタシアに渡した。
さっそくアナスタシアは執務室に戻り、ブロディや国王付き文官達に説明を始めた。
すると文官達は案件を聞き感動していた。
「何と言う立案力、そして王族や家族を部下のように配置する大胆さ。 それでいて実行可能と思わせる話術。 すごい人が居た……………」
「人を物のように、感情無視でやったな。 でも良い案だぞ、ラリサ」
「まあ、原案だし。 何かあれば王命で何とかして」
この草案、勿論ラリサの案ではない。
タルハーミネ(ヘルガ)と、相談した結果である。
魔界の王妃の経験は伊達じゃないのだ。
人使いの荒さとか、やっぱ上の考え方だよね。
そして転生の記憶が戻るまで、贅沢に慣れたタルハーミネには本当に宝石の良し悪しが解るし、公爵家で購入した物もいっぱい保管してある。
そして魔界の記憶があるタルハーミネとウィリアムは、魔石に詳しい。
ラリサに、王妃とか魔界の元住人だと伝えていないタルハーミネとウィリアムは、魔石についてあまり口は出せないけど、カザナミが言ってたとか言っていろいろ手助けするつもりである。
まあ、今すぐ全てどうこうできないくても、展望が見えるだけで大違いであるから。
何よりアナスタシアが気にしていた、孤児達への支援が大っぴらに出来るのが嬉しい。 いくら王族と言っても、有力な貴族の反対を押しきって、孤児を優遇出来ないからである。 何より国は国益を重視しなければならない。 正しくても行えないこともあるのだ。 例え一部貴族が重税をかけ、民を虐げても著しく悪事がなければ手を出せないと同じで。
落としどころを見つけ平和を保ち、国営運営をしなければならないから。
ここでアナスタシアが、王妃になってやりたかったことが1つ叶いそうである。
皆が幸福になる国にしたい。
王妃の矜持、いやアナスタシアの夢である。
一応、計画に関わる人に話はしたラリサだが、
アナスタシアがやることだから、きっともっと過酷にはなる筈。
「ありがとう、ありがとうラリサ。 命懸けでやらせてもらうよ。 よし、まず学校だな。 早速、設計士と大工を集めよう」
キビキビ動きだす、喜色のアナスタシア。
今一、着いていけない感の現場職員。
そしてキャラウェイは、突然話が脳に繋がり死んだような顔に。
「なんだよ、遊びに来たつもりが! 特殊メイクは俺しか出来ないのに。 出来なきゃ炎上って何だ? ドラゴンブレス吐くってこと? 弟子死んじゃうだろ? 全員集めなきゃ、間に合うのか? いや死ぬ前にやらなきゃ!!!」
素に戻り動揺。
小声で呟いたと思えば、魔石を落とし走り去っていく。
落とされた魔石は、焦ったキャラウェイに握り込められ魔力が暴走し、部屋を一瞬凍らせた。
「「「「「うわっつ、何だ!!!!!!」」」」」
「「「「「あ、すぐ収まった」」」」」
ひっちゃかめっちゃかな現場だった。
そしてラリサは、草案にしれっと自分の名を入れなかった。
仕事をしたくなかったからだ。
『優秀な人にお任せします』と。
アナスタシアがラリサを使わない選択肢なんてないことを、未だに解っていないのだった。
『何処でもOKってことか。 さすがラリサ、頼もしいぞ!!!』
関係者一同、寒気しかしなかったと言う。




