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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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地味顔の魔女は、ドラゴン姉妹に歯噛みする

SNSでバズったと記載した部分を変更しています。 調子に乗って世界観がずれてました。 ここは携帯電話やスマホがない魔法世界です。 すみません。

 「ちょっとキャラウェイ! こっち来て下さらない?」

ラリサは、王場で行われる訓練に来たキャラウェイの耳たぶを引っ張り、説明を求めた。


「イタタッ。 ちょっと待て!」

耳の痛みと、引っ張られてバランスが崩れ転びそうになる。


口元は笑ってるが、目が座っているラリサ。

極力口を開けず、低い声でキャラウェイに詰め寄る。


「なんでここに、ブラックゴルゴノプスドラゴンがいるの? カザナミなんかより全然強いし、普通に人語喋ってるよね? それも2体! 変化してるだけなんでしょ? あんた脅されて連れてきたの? バカなの? 何とか言えーーー!!!」


ほぼ口を開けないのに、程ほど大きい声出てる。 防音魔法掛けてないと丸聞こえだ。 唇も読まれないようにこんな喋り方だが、不自然さは隠せない。


一方的なラリサの口撃(こうげき)だが、そんな2人にドラゴン姉妹が声を掛ける。


「あの~、お取り込み中申し訳ないのですが?」


防音魔法を掛けているのに、構わず会話に混じるウミナリこと、ミナ姉さん。


ああ、そうだ。 いくら防音魔法を掛けても、あまりにも魔力に差があれば高魔力者には効かないこともあるのだった。 ここまで差のある者と暫し戦闘していなかった為、こんな単純なことを失念していた。 大ピンチである!


真っ青な顔のラリサを余所に、特に変化のないドラゴン姉ウミナリ。 そして言葉を続ける。

「えーと、ラリサさん? 貴女が考えていることは解ります。 でも私達姉妹は、人間を滅ぼすために来たのではないのです。 カザナミが、人として幸福に生きられる手助けをしていくつもりなので、カザナミが生を終えるまでは手は出さないことを約束しますわ」


「ええっ!!」と、ラリサと思わず話を聞いていたブロディ、アナスタシア達は声が出た。


ドラゴン姉妹の放つオーラは、強く禍々しく周囲を威圧していた。


そんな中平気だったのは、数日間共に暮らしていたキャラウェイくらいである。


「勿論、ラリサ・ブロディ・キャラウェイの3人が、愛する弟を一度殺してなおかつ食したことは知っています………」

サングラスを外し縦長の瞳孔を開いて話し出す、もう一人の姉ライメイ。 表情のない美形は周囲(の雰囲気)を、一瞬で凍らせる。



『ああ、こんな日が来るとは。 この2体を見たら、美味しそうなんて言えない。 圧倒的強者達を前にすれば、何もかも無意味………… 次に生まれる時は、是非美人にして下さい、神様!』


目を瞑り、胸の前で手を組み死を待つも、いっこうに痛みは来なかった。


「?」 ラリサは薄く目を開けるも、そこには呆れ顔のドラゴン姉妹とカザナミとキャラウェイがいる。


「まず話を聞けよ、ラリサ。 全然前に進まないから」

キャラウェイが仕切り、その場の空気が緩む。



まあそんな訳で、キャラウェイ、ドラゴン姉妹、カザナミ、ラリサ、ブロディ、アナスタシアは、談話室に移動した。

訓練中だったアナスタシア班は一瞬不穏な空気を察したが、ドラゴン姉妹の妖艶なスリットドレスと、隙間から溢れる色白な素肌にたわわな巨乳、艶やかな赤みの強いストロベリーの髪と、神秘的な金の双眸に心をトキメカせた。 男女関係なく魅了されていたのだ。

美しさはキャラウェイのメイクで完成しており、美の化身と言っても過言ではなかった。 少なくとも、この訓練の場にいる者は満場一致で同意見だった。


なので、細かいこと(圧倒的な威圧オーラとか)はスルーすることにした。 考えても無駄と判断し、化身達が移動するのを見守ったのだ。


「綺麗な人達だったな」

「ああ、眼福だ」

「なんかすごい気だったわよね」

「うん。 なんか一瞬冷えたね」

「誰かな?」

「たぶん、キャラウェイと一緒に来てたね」

「「「「「何! キャラウェイの恋人か? どっちだ!!」」」」」

「いや、まだ決まった訳では…… もしかしたら、親戚かもよ」

「そうだな。 あんなだが、キャラウェイの(つら)はなかなかだしな」

「お、俺。 紹介してもらおうかな?」

「お前じゃ、相手にならんよ」

「なんだよ、ひでぇ奴」

「私、お姉さまって言いたい。 年下の人かも知れないけど、なんかお姉さまって話かけたい」

「わかるよ! なんか美容のこととか聞きたーい」


なんて、恐怖を忘れてわきゃわきゃしている隊員達。

そこに恐怖はなかった。





そして談話室。


「………と言うことで、私達はカザナミの為に今は手を出しません。 その代わりと言っては何ですが…………」


停戦の交換条件として、住居の保証とキャラウェイの無償貸与の要求が、ドラゴン姉妹から出された。


「え、俺? ああ、メイクくらいなら良いけど、仕事あるんだよな」

『ちょっとあんた、生殺与奪握られてる相手に何言ってくれてんのよ』は、大多数の意見。


ここの責任者となるアナスタシアは悩む。

『キャラウェイ1人の犠牲で済むなら安いけど、ストレスで奴が倒れたり死んだら代えがきかん。 ここは(奴が倒れても大丈夫なように)弟子を育てつつ、適度に付き合わせるか』


そう考え、ドラゴンに向かう。

「キャラウェイと同じマンションの部屋は確保できます。 ただキャラウェイも人間なので、仕事やプライベートな時間も必要なんです。 ですので、1回/週の貸し出しでどうですか?」

アナスタシアとて、「はいはい」とただ言うことは出来ない。

こう見えて、他国との交渉技術は大阪のおばちゃんなみ。

出ることは、出るよ。


「何でよ! その男1人で暫く許してやるといってるのに! 死にたいの?」

先程までの優しい口調は成りを潜め、威嚇のオーラが渦巻き口調も乱れてきたウミナリ。


恐怖で背に汗が伝うも、呑まれる訳にはいかない。

気を振り絞り、交渉を続ける。

「では、2回/週では。 人間にはドラゴンの強いオーラは毒なのですよ」


「えー、こいつ何ともなさそうなのに。 本当? う~ん」

不服そうなウミナリだが、自分達が強いことは自覚している。


「どうでしょうか? 貴女様達が強者であることは、ここにいる全員理解しております。 そしてドラゴンに対しての非礼もです。 どうか」

そう言い、全員が全霊で頭を下げる。


ウミナリが「うん」と言いそうになった時、手招きでライメイがウミナリを呼ぶ。 そして、ひっそりと耳打ちする。

頷くウミナリ。


「貴方達の誠意は解りました。 ですが姉より最低でも3回/週でしか譲れないと言われました。 姉の意見は絶対です、私が何を言っても変えることはないでしょう。 どうします?」


そう言われたら断れない。

人間側は、圧倒的に戦力不足なのだから。


アナスタシアがキャラウェイを見ると、頷いている。

交渉成立だ。


ドラゴン姉妹も満足そうにしていた。

キャラウェイもメイク映えのする姉妹を、変身させることを楽しみ始めていた。


そして、カザナミの身辺警護をつけることになった。

カザナミに何かあれば、ドラゴン姉妹は暴れ狂うだろう。


そして選ばれたのが、ウィリアムだった。

キャラウェイが一緒の時はキャラウェイが、別行動時にウィリアムが同行することになった。


「面倒くさいよ。 1人で大丈夫だって!」

言い終える前に、ウミナリが是非と言って警護を願った。


カザナミも、こう言われては断れない。


当初は、付ききりで守ろうとしたドラゴン姉妹だったが、キャラウェイと一緒に写された写真がメディアに取り上げられ、人気が爆発した。 その為多忙となり、常に一緒に居られなくなったのだ。



凄まじいオーラを抱える美人姉妹。

オーラを隠さずワイルド系姉妹として、雑誌にも引っ張り出された。


…………と言うことで、国に支援されずとも大金持ちになっていた姉妹。 反面、弟に関われないジレンマ。


カザナミはキャラウェイに感謝していた。

『死ぬまで姉達のオモチャにされるとこだった。 あんたには頭上がんないよ』と。


キャラウェイはちょっと考えてから、楽しそうに答える。

「ああ、良いのよ、良いのよ。 最初は怖かったけどメイクするの楽しいし、ハッキリしてる女は好きだから。 何だかんだで軽い女性不振もあるし、結婚する予定もないから気楽だし。 まあでも、カザナミは良い人出来たら結婚してみれば? せっかくの機会だしさ。 失敗したら戻ってくれば良いし」


まるで弟にでも言うようなキャラウェイ。

結婚? 付き合うだけでも姉達に邪魔されそう。

でも、カザナミの幸せの為と言われたら譲りそう?


何もかも始まったばかりだが、取りあえずドラゴン姉妹による蹂躙は何となく回避されたのだった。




今日のラリサは、ただ恐怖に戦くのみ。


アナスタシアの交渉術は、あえて相手の望みの下を設定してお得感を持たせる戦法。

「だって最初から3回/週と言ったら、相手はもっと増やせると思うでしょ? 最初少ない日数を設定して満足させる、これが交渉なのよ。 でも…………………」


そう、ドラゴン姉ライメイは解っていた。

解っていて、あえて交渉を楽しんだのだ。


アナスタシアも薄々解っていたが、声に出さなかった。

周囲の人に不安を与えぬように。




不安定な形だが、ドラゴン姉妹は現状を楽しんでいた。



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