今日の当番は、カザナミ?
なぜか今、最強竜種(カザナミは元ですが)3体が、キャラウェイの部屋に居た。
「カザナミはしょうがないけど、ワタクシとアナタは人間に真名を知られてはダメよ。 解ってる? 人間はすぐ呪い掛けてくるから。 カザナミ、アナタもワタクシ達を真名で呼ばないように。 解ったわね」
キャラウェイを睨みつけながら、多弁なドラゴン姉ライメイ。
俺の部屋で、なんでそんな態度なの?
誰かタスケローーーと心で絶叫のキャラウェイ。
まさに『混沌!!!』
そんな姉に、カザナミもウミナリもウンウンと頷いている。
「じゃあ、姉さん。 どう呼べば良いかしら?」
「俺はカザナミのままとして、2人とも姉さんじゃあ困んない? 大きい姉さん、小さい姉さんで良い?」
適当な言い分に、姉たちはすかさず反論する。
「「ダサイ!!!」」
「そんなんじゃ、人間に舐められるじゃない!」
カザナミは困惑気味に「そんなことないよ」と、呟くも強くは言えないのだ。
ライメイは、人差し指と親指を顎にあて暫し思考。
そしておもむろに、
「名前の中を呼ぶのはどう? アナタは『ミナ』で、ワタクシが『イメ』。 解りやすいでしょ?」
ウミナリは、ウンウンと頷き、良いですねと言うが。
カザナミは、ウゲッ面倒くさっと心で呟く。
「はい、じゃあ言ってみましょ。 良いかしらミナさん」
「了解です。 イメお姉さま」
ここで空気を読まない末っ子発動。
流されれば、ずっと呼ぶ時面倒くさくなるからな。
「あのさ、イメ姉さんは姉さんで良いんじゃない。 ミナ姉さんだけミナって付ければ。 俺バカだから間違えそうだし、慌てて真名叫んじゃいそう」
姉達2人は顔を見合わせ、頷く。
アイツならやりかねないと。
折角折れてやったのに、2人してバカにしてくるのムカつく!
でも面倒だから我慢じゃ、俺。
2人は、暫し話し合った結果をカザナミに伝える。
「ワタクシのことはお姉さま、ミナさんのことはミナ姉さまと呼びなさい。 解ったかしら?」とライメイ。
頷くカザナミ。
もう良いよ、いちいち格好つけるんだよな。
人間にマウントとってんのかな?
そして、突然呼ばれるキャラウェイ。
「そこの人間。 聞いてましたか? これからお姉さまのことはイラお姉さま、ワタクシのことはミナさまと呼ぶように!」
「はぁ」とヤル気のないキャラウェイ。
「別に良いですけど、『ミナさま』だと周囲に呼び掛けてるみたいじゃないですか?」
言われてみればそうですねえと、悩むウミナリ。
「じゃあ、ミナさんで」と、ウミナリが言う。
「それの方が良いですよ。 実際にミナさんって名前可愛いし」と微笑み答えるキャラウェイ。
「そうですか? ありがとうございます」と、美形顔に言われ気分の良いウミナリ。
ちょっと、頬も緩んでいる。
たぶん猫かぶってんだと思うけど、魔界とずいぶん言葉遣い違うよな。
すぐにボロ出ないと良いけど、と心配する弟だった。
『ちょっとウミナリ、人間に懐きすぎ! そして生意気だわ、人間風情が!』と、お怒りライメイ。
部屋を眺めていたウミナリは、キャラウェイのメイクアップの道具を目にする。
「すごいわねえ。 こんなにたくさんの化粧品! アナタ男なのにメイクするの?」
興味津々のウミナリ。
「そうねえ、仕事に行くときはするわね。 普段は肌が痛むから化粧水と乳液と日焼け止めだけね」
若干口調が……
「へえ、人間ってオスでもちゃんとしてるね。 ワタシなんてドラゴンボディの時は、水浴びるくらいよ」
「まあ、ほら。 ドラゴンなら皮膚丈夫そうだから良いんじゃない? 逆に、巨体に化粧品とか無理でしょ」
「そうよねぇ。 でもワタシ、人化してメイクするの好きなのよ。 すごく印象変わるじゃない? 自分の顔じゃないみたいで楽しいわよね」
完全に無防備で微笑むウミナリに、『カチッ』とスイッチの入ったキャラウェイ。
『可愛いこと言うじゃない。 いっちょやってやりますか!』
鏡台の前の椅子に腰掛けさせ、仕事モードになるキャラウェイ。
「行くわよ! そのドレスに似合うように、妖艶な女にしちゃうわ~」
化粧水、乳液、複数のベースメイク、本メイク、シャドー、コンシーラー、口紅、アイシャドウと、腕に持てるだけパレットを抱えて、気合いの入るキャラウェイ。
「え、え、えー、なんでおネエになってんの?」
「ダメー、お口チャックよ。 色ムラするから~」
口を閉じ、頷くウミナリ。
「そしてお姉さまには、コレ~」
はいと、カザナミが手渡されたのはサングラス。
カザナミはもうほぼ人間だが、人化して窓辺にいるライメイには
太陽の光はキツイ。
竜や蛇は、瞳孔が縦長で夜行性用。 光を感知しやすくなっている反面、日中は眩し過ぎて動きづらいのだ。 いくら薄いカーテンをしても、窓際のソファーは眩しいはず。
キャラウェイは、心遣いの人なのだ。
「あ、ありがとう」と、素直にサングラスをかけるライメイ。
頷きウインクを飛ばすキャラウェイ。
前世と融合し最近はほぼクールガイだが、メイクアップ中はおネエになってしまうようだ。
ハーハーと、忙しかった動きを止め、やっと深い呼吸をするキャラウェイ。
「完成よ!!!」
元々美しい人化したウミナリだったが、傾国のごとき女性に変貌を遂げた。
「こ、これがワタシ」
「そうよ。 でもアタシは、隠れていた素材を引き出しただけ。 元々ミナさんが美しいのよ」
「そ、そんな。 どうも……ありがとう……」
だんだんと、照れで声が小さくなるウミナリ。
「どういたしまして」と、満足げなキャラウェイ。
そして失礼なことを考える。
『ラリサの顔なんて、それこそ特殊メイクだし………』
その頃、爆裂にくしゃみを連発のラリサ。
「ハクション、ハクチョン、ヘブシ、チキショー」
「大丈夫ですか?」と、心配する弟のウィリアム。
「うん、大丈夫だよ。 でも無性にキャラウェイ殴りたい気分」
『きっと、あいつだ』と、するどいラリサ。
そして、ゼーゼーしているキャラウェイに向かって、「ワタクシをミナさんより美しくなさい」と、サングラスをチャッと外し命じる女王様。
息切れをものともせず、命じられ動くキャラウェイ。
そして美の姉妹神が、独身男の部屋に降臨したのだ。
傍らには、横たわる虫の息のキャラウェイが……………
そして、人間界に馴染んできたカザナミが、キャラウェイの代わりに突っ込む。
「叶◯妹かよーーー!!!」と。
『グッジョブ、カザナミ!』と、横たわったまま親指を立て腕を上げるキャラウェイだった。 そして気絶したのだ。




