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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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32/77

ドラゴンの姉たちは・・・・・

 ある日、ドラゴン3姉弟で一番年下の『カザナミ』の気配が消えた。

いや、正確に言えば薄くなったと言っても良いだろう。


あの子(カザナミ)、まだ死んでないよ。 生きてるよ姉さん!」

そう叫ぶのは、カザナミの2番目の姉『ウミナリ』だ。

カザナミが卵から孵った時から、側にいて成長を見守ってきた。

姉なのだが、実質の親代わりでもある。

狩りの仕方や魔法の使い方を教えたのも、ウミナリだった。

カザナミは『バカにされた』と言うが、ウミナリから言わせれば叱咤激励でお尻を叩いて『頑張んなさい!』と発破を掛けただけだった。

全ては愛情である。


更に最強のドラゴンでありなまじ強かった為、他の竜種からの妬みも買っていた。

「男の癖にいつも姉に怒られて、プライドってものがないのかのぉ」

「俺の見立てでは、魔力も随分と(姉達から比べると)少ないな、可哀想に」

等々と言われ、ケタケタと笑われた。



姉ドラゴンと比べれば確かに魔力は少ないが、リザードマンやワイバーンから比べれば遥かに強大だった。 でも数の力で言われると、過保護なウミナリに守られていたカザナミはたじろいだのだ。

「うっ」と、言葉が詰まり言い返せない。

そこで竜の吐息(ドラゴンブレス)の一つも吐けば皆閉口しただろうが、根が優しいので威嚇も出来ない。


そしてそんなカザナミを姉は叱る。

「あんな奴等に軽口叩かせるな、八つ裂きにしてこい!」と。


しぶしぶ先程の場所に戻り、威嚇の意味でドラゴンブレスを吐く。

すると思った以上の威力で、リザードマンやワイバーンを炎で包んでいく。

「え、え、えーーーーー!」

俺そんなに強く吹いてないのに?

そう考える間に奴等は逃げ出した。


転んでも竜種、火傷等も生きていれば魔法や薬で再生出来る。

リザードマンは脱皮も可能だし。

そんな訳で1体も死ぬことなく、カザナミの配下に下ったのだ。


「すまねえ、俺達あんたを嘗めてた。 まさかあんなブレスを見れるなんて! これからは兄貴と呼ばせてもらうぜ!」


カザナミからすると、何だかよく(わか)らないうちに解決したのだ。

「うん。まあ良いか」と、楽天的だった。



ずっと気配を隠し後方から様子を見、ブレス上乗せしていた一番上の姉『ライメイ』は、怒っていた。

「何納得してるんじゃあー! うん、まあ良いかじゃないだろが。 わしが力貸さんかったら、しょぼしょぼブレスだったのに!!」

人前ではクールだが、1体の時は感情表現が激しいライメイ。

ふうーと深く息を吐き、瞳が光る。

「本当にこの威力が出せるように、特訓しないと」

わくわくが止まらない顔のライメイ。


その根幹は怒りではなく、やはり強き者になって欲しいという親心のようなもの。

父親的な感じの。



ブラックゴルゴノプスドラゴンは、現在3体のみ。

古代には多くのドラゴンが存在したが、魔素の減少と共に巨体の魔力維持が難しくなり、人化や小型化して人間界へと渡っていた。

ドラゴンの存続が出来るように、弱い者から人間界に行ったのだ。

最後まで残った3体はドラゴンの王家とも呼ばれる血筋で、優秀遺伝子を持つ者だった。


ただ3体の母親である『ウズリュウ』は、寿命を迎える前にこう言い残した。

「生き物はいつか寿命を迎える。 あなた達の父『ヒバナ』も先に天寿をまっとうしたわよね。 今日は私の番。 魔界もこれから変わっていくわ。 ドラゴンの多くは人間界に行った。 それも時代の流れね。 ブラックゴルゴノプスドラゴンもここで潰える定めなのかも。 でもそれでも良いのよ。 何処へ行っても、何になっても、あなた達があなた達であることに代わりはないもの。 残された責任なんて感じなくて良いのよ。 寂しくないように苦しくないように、楽しく元気に過ごしてくれれば良いのだから。 無理して魔界に残らなくて良いの。 同胞と一緒に新たな世界を楽しみなさい。 特に最後に産まれたこの子(カザナミ)は、魔力が著しく少ないわ。 それは魔界の魔素のせいで、この子が弱いわけじゃないのよ。 ドラゴンとしてではなく、物心がつく前に人化させて人間界で暮らさせた方が良いと思うの。 離れがたくて引き留めてしまった私が、言うことではないのだけどね。 みんな愛してる、幸せに生きてね」

「母さん、逝かないで!」

「嫌だ! 死なないで!」


微笑みながら、息を引き取った母ウズリュウ。

傍らには何も知らずに、母にしがみついているカザナミ。


母の竜玉が空高く上がり続け、遂に見えなくなる。

残された姉妹と、まだ幼い生後10年程のカザナミ。


可愛いカザナミを人間界に……………

それがこの子の幸せなの?


理屈は解っている。

弱肉強食の世界でこの子は弱すぎる。

でもでも……………………

姉妹は思った。

魔界には既に、3体しかいないブラックゴルゴノプスドラゴン。

そして3体だけになった肉親。


いつか限界が来るまでは、姉妹でこの子を育てていこうと思うのだった。

限界とはいつ?

人化や小型化のことはいつ話す?

そもそもこの子は、魔界で生きていけるの?


様々な葛藤を抱え、カザナミを守ることを誓った姉妹。

最後まで残ったドラゴンとして、種を守りたいプライドもあったかもしれない。

でもそれ以上に、愛する弟と姉妹との生活が楽しかったのは言うまでもない。


愛するカザナミが消え、動揺する姉妹。

「何処にいるの? どうして戻らないの?」

「落ち着いて、ウミナリ。 まずはカザナミの気配を辿ってみましょ」

ウミナリは頷き、姉と共に気配を絶ち人間界に向かう。


さすが最古に近いブラックゴルゴノプスドラゴンは、気配絶ちも完璧だった。

魔力が強いラリサが住む国でも、誰にも気取られない。


そしてキャラウェイの住むマンションの窓を覗く。

そこにはコーヒーをカップに入れ、キャラウェイに渡すカザナミの姿があった。


「あ、あ、あ、何で人間になってるの?」

「何よ、その姿」

「「それにその人間、あんたを殺した奴等でしょ!!!」」

憤り怒鳴りまくるドラゴンの姉妹。


姿は見えぬも、どこからか大声が響いてくる。


「えー! なんでこんなとこに居るの姉さん達?」

きょとんなカザナミと、姿の見えぬ大音量に戦くキャラウェイ。

「なに、なに、なに、これ? え、姉さん? ドラゴンが居るのか!!!」と、違う恐怖に辺りを見回す。



カザナミが窓を開けると、ドラゴン姉妹は体を小さくして部屋に現れた。

それも人化した姿で。

「よくここが解ったね。 すごいよ姉さん達」

呑気な感じで感動しているカザナミ。


姉妹達も呆気に取られ、怒りは霧散していた。

「無事で良かった」

「それにしても、なんで人化を。 まだ教えてない技なのに」


魔素の強い魔界のブラックゴルゴノプスドラゴンの本来の力を使えば、人化や小型化等はお手のもの。 変化しても直ぐに元にも戻れる。

ただ今のカザナミはドラゴンの能力が薄れ、ほぼちょっと魔力が強い人間程度の状態だった。

???で混乱する姉達にこれまでのことを話すと、固まっている。


「そ、そんな、それじゃあもうドラゴンに戻れないじゃない!」

驚愕の表情を浮かべる姉妹。

「まあ、俺弱いし丁度良いじゃん」

あっけらかんとするカザナミに、カザナミの腕をつかんで泣き出した2人。

「なんでそんなこと言うのよ。 あんた私達のこと嫌いなの? あんなに可愛がっていたのに!」

「酷いよー、いつも一緒に居たのに」

わーん、わーんと、泣くので収拾がつかない。


え、俺嫌われてないの? 可愛いがわれてた???かな?

でも心配して来てくれたんだ。 嬉しいな!

なんてほっこりのカザナミだが、


胸とスカートの裾にスリットのがっつり入った、大胆な深紅のベルベットドレスを纏い、ナイスガイ(カザナミ)?にすがる巨乳美人姉妹。



「叶◯妹かよ!」と、思わずツッコミを入れたキャラウェイだった。






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