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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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31/77

地味顔の魔女は、ドラゴンの悲哀に涙する

 「グワワー!!! ホゲー!! ピーチーボー!!! ハゲハゲゴー!!!(姉さん達に馬鹿にされるのは、お前らのせいだ!!! コンチクショー)」


巨体を揺らし唾液を飛ばしながら、激しく訴えているブラックゴルゴノプスドラゴンは、こちらに突進する途中に転んで意識を失っていた。




俺は、全長8mの黒いドラゴンだ。

300年前以前に人の世界に現れた時は『絶望』と呼ばれ、人々を嘲笑いながら薙ぎ倒して踏みつけ、通った跡には草の1本も残らぬと言われていた。

そう、魔界でも上位種に位置するドラゴンは、強者だったのだ。



それがあの戦いで、3体いるドラゴンの中で一番年若い俺『カザミナ』は負けた。

いくら姉ドラゴンには敵わないと言っても、相手は最弱の人間なのだ。

俺を可愛がる?姉達の罵倒は止まらない。


「あんたのせいで、栄光高い竜種の威厳は丸潰れよ! まったくどれだけひ弱なのよ。 リザードマンにさえイヤミ言われたのよ。『そろそろ、竜種の最上位も交代の次期ですかねぇ』ですって! きー悔しい。 ワイバーンなんか足しかないくせに、『数も少なくて殺られちゃうなんて………ご愁傷さまです』とか、ムキー、アンチクショー殺す!!!」と騒ぐ2番目の姉。


1番目の姉は、俺を見てタメ息しか出さない。

そして時折、「甘やかし過ぎたかしら?」と。



いやいやいや。

元々の潜在能力(ポテンシャル)が違うのだ。

姉達が生まれたのは、大量の魔力渦滾る混沌の時代。

大気には(おびただ)しい魔力が、地中から溢れ出していた。


俺が生まれたのは、その3000年も後だ。

魔素は次第に薄くなり、取り込む上限値だって随分と下回っていた。

だから姉弟の中で弱いのは確かなのだ。



それでも、……………………もう耐えられない。 

死ぬ程の苦痛を受けても(実際1回死んでます)、再びまた元のドラゴンに戻ってるし………………そして更に弱くなってるし………… 



もう既に、全て嫌なんだよ! 

だからもう、お前らだけは絶対殺す!!!!!!(逆恨み?)と、

ドラゴンの叫ぶのを、ここにいる4人は聞き入っていた。


キャラウェイ:「お前も苦労してんだな」

ブロディ:「家族が毒って、最悪だよな。 わかるよ」

アナスタシア:「うむ、ドラゴンに戻りたいわけでもないのか? じゃあ、別に人間を襲いたい訳でもない? 私怨か?」

ラリサ:「……………なんか、ど根性ガ◯ルみたいだね」



なんだか憐れみの声が、俺に向かって話されているような気が。



「あのね、混乱してると思うんだけど、あんたの声さっきから駄々漏れだよ。 きっと体(ドラゴン本体)から離れて、竜玉に吸収されたから?なのかな」


うん? なに言ってんの? これは憎きラリサの声か? でも何にも見えないな。 まあ魔素感知でもしてみっか。


「えーーーーーー、なんで俺倒れてるの?????」


ふと気づくと、目の前に俺のらしい体が横たわっていた。

じゃあ、ここは何処だ?


「うん。 たぶん、私の中にある竜玉の魔力の中かな? 臍の下の丹田って言う部分かも」と、ラリサの声が上の方から聞こえた。



それから(ドラゴンのカザミナ)は、憶測の話と言う前提で、この国の王妃アナスタシアからの説明を受けた。

今の俺は戦えもしないし、仕方ないから聞いてやる。


「だから、思ってることも駄々漏れだって」と言う声が聞こえたが、自分では制御できないのだ。


そう思っていると、「そうか、すまん」と聞こえてくる。



話が進まないので、話を続ける。

さすがに、王妃と名乗ってから語る口調は丁寧だった。

さっきも、別の女王様と言えばそうかもだが。

「ごほん、ごほん。では。 恐らく竜玉の魔力は、生きてきた記憶も蓄えられているのではないかと。 魔獣を倒し1つづつ蓄えた生命エネルギーなので、離れていても細い魔力の糸で本体と繋がっているのだと思うのです。 本来強い竜種は、消滅する程の攻撃を受けても竜玉から再生されます。 だから強さは変わらない筈なのです。 ですがラリサが食べて吸収してしまった。 なので残った骨や皮に残った魔力と、周辺に飛び散った魔素から、外見だけ辛うじて再生したのでしょう。 再生する時の核が竜玉なので、今のドラゴンの体が弱いのは当然なのかと」


そう言われると、そうなのかもしれないな。

今のドラゴンの姿になる前の精神体状態の時も、ラリサの存在を感じていた。 厳密に言うと、ラリサに宿る竜玉の気配か。


と言うことは、このままここに居ればラリサを吸収して元の状態に再生できるのだろうか?

なんて考えていると「恐らく吸収されてしまう」かと、なんて恐ろしい発言が降ってくる。


アナスタシアは言う。

「ものの本に書かれていたのですが、やはり体を持っている者の方が強いそうです。 何故だか貴方は竜玉に引き寄せられた。 このままなら、永久にラリサの魂と融合しますね」


エエーッと俺は焦る。

そんなの嫌だー!!!

「こっちだって嫌だよ」とラリサ。


回避方法はないのかの問いに、アナスタシアは答える。

人化(じんか)してみては如何ですか?」

「? 人化ってなに?」


「え、知らないの?」と、怪訝な顔の彼等。

何か失礼だな。 そう思っていると、説明してくれたのだ。


遥か昔から、龍族と呼ばれる竜種の上位種は、人化ができるそうです。

魔界に住むには力が弱くて戦えなかったり、人に惚れてつがう為に、人化する者が増えたとのこと。 それにより龍族が減ったとのことです。


そうなの? そんなこと俺知らないよ。 だって弱いと責め続けられるくらいなら、ちょっと強い人になって生きた方がマシだ。

って言うか楽しそうだよ。


「ブラックゴルゴノプスドラゴンの体に未練はないの?」

戻せるか試すこともできると言ってくれるが、俺は断った。

きっともう、今がイヤになってその体から離れたのかもだし。

ドラゴンの搾りカスなんだろ?

俺が今求めてるのは竜玉だし。


元々強くない俺だ。

ここにいればわかる、この中で一番俺が弱いってこと。

もう既に人に倒されそうな俺が、元に戻りたくなんかない。


俺が人化すれば、姉上達もきっとイライラしないはず。

でもどうして姉上は、人化のこと教えてくれなかったのだろう?

まあ、今さらどうでも良いか。


アナスタシアは続ける。

「竜玉の全ての力を、貴方に注ぐことはできないでしょう。 でも元は貴方のものだから、人化に支障ない力は確実に取り出せるとは思います。 それで良いのでしょうか?」


良いよ、やってくれと頼む俺。


「お腹から声出るの楽しいな。 しばらくこのままでも良いのに」と呑気なラリサ。

その声に、いつ吸収されるか不安な俺はプンプンだ。

俺の気も知らないで、酷い!!!


因みにブラックゴルゴノプスドラゴン本体は、マジックバックに保管してもらうことにした。

未練はないが、腐ったり食べられるのを防ぐ為だ。

「ちょっともダメ?」と不穏な声が聞こえたが、無視した俺。


因みにラリサからドラゴンの呪いのことを聞かれた。

ラリサの顔がずっと同じ(地味顔)なのは何故なのか?と。

たぶん竜玉を食べたから、竜玉が探す為の目印として固定したんだと思う。 エネルギーの糸だけじゃわかりづらいもんな。

まあ、食べた奴見たことないし、そもそも毒あるし俺。


そんな会話だけで、少しラリサは安心していた。

念の為、これ以上固定しないように、もうドラゴン食べんなよと言えば非常に悔しそうだった。

やっぱ食う気だったんか!恐ろしい子!



それから腹をさすり、人化をすると念じて魔力を送ってくれた。

ラリサは俺に、「元々あんたの魔力だから、できる限り持っていきな」と言ってくれた。

俺はどうしたら良いかもわからないから、取りあえず『サンキュー』と言っておいた。


30分程魔力が練られ、人の形になれた。


「あれ? 弟にそっくりだわ。 私の魔力が混じってるから?」

「ああ、ウィリアムの10才くらいの姿だな」

「おお、イケメンで良かったじゃん」

「魔力もアナスタシア様くらいありますね」

「ラリサの魔力も、あんまり減ってないね」

「うん。 変わりなかったよ」

「それより、10才かあ?」

「ああ、10才くらいだね」

「どこかの家で預からんとな」

「そうですね」

「このまま、放り出せません」

「この中で独身で、すぐ引き取れる家は・・・・・・・」

「なんだよ、独身って。 ちょっ待てよ!」


ドコドコドコドコドコ♪♪♪♪♪♪

「発表します。 キャラウェイさんの家に決定しました!」

「え、どう言うこと?」と、キョトンなカザミナ。

「俺、独身だよ!」

焦るキャラウェイと、にやにやなその他。


「うん知ってる。 でもさあ、世間知らずのチビッ子元ドラゴンを放り出せないでしょ? 色々なんか危ないし。 と言うことで養子縁組よろしくね!」と、ラリサ。


「任せておけ」と、アナスタシア。 さすが王妃、権力使い放題!


「ちょっと待て、本当に!」とキャラウェイは叫ぶが、その日から元ドラゴンのカザミナとの同居が始まった。


「まあ、良いか」

「よろしく頼むぞ、人間」

「キャラウェイで良いよ」

「俺もカザミナと呼んでくれ」

精神年齢は高いカザミナ。

案外悪くない生活かもしれない。



その頃、カザミナの気配が消えたことに気づいた姉ドラゴンは、半狂乱だった。

「まさか、また殺られたんじゃあ」

「嫌ー、帰ってきてよ!!! カザミナー」


姉なりに弟を愛していた2人は、泣きながらカザミナを探し始めたのだった。



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