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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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29/77

王太子妃候補は、バタバタする

 「ゼフェル様、避けて!!!」


ゼフェルの死角を狙い、大型のオウギワシが急降下してくる。


サマンサは咄嗟に席を立ち、両手を広げてゼフェルを庇った。


「危ないサマンサ!!!」

ゼフェルはオウギワシに気づき、サマンサを抱き締め(オウギワシ)に背を向け身を竦め守る。


「駄目、貴方が死んじゃうわ! そんなのイヤー!!!」

ゼフェルの胸を叩き逃げるように叫ぶも、サマンサをさらに強く抱き締めるだけだ。


「カキーン!」

弾く音が聞かれ、オウギワシが吹っ飛ばされた。


「えっ」と驚くサマンサだが、それを解っていたゼフェルは、そんな状態の彼女(サマンサ)を見詰めて頷く。

「やはり貴女だけしかいない。 俺と結婚してくれ」


澄んだ碧眼が、アイスブルーを捉えて逸らさない。

先程の死の恐怖と、今まで適切な距離でしか過ごしていないのに、抱き締められたままの近距離に混乱していた。

サマンサは言葉がなかなか紡げず、ひと時沈黙が支配する。


流石のゼフェルも、断られると思い沈んだ声で尋ねてきた。

「やはり俺のような武骨者では、貴女に釣り合わないだろうか?」

ぽそりと言われ、サマンサは我に返った。


「違います。 そんなことないですわ。 武骨なんかじゃないですよ。 少なくとも私は好きですよ」

慌てて早口で捲し立てるも、頬が真っ赤になるゼフェルを見て失言に気づく。


『あ~っ、この状態で好きとか、告白ではないですか。

ゼフェル様にも、好きとかは言われてないのに。 恥ずか死ぬ』

腕ごと抱き締められているので、顔を耳まで真っ赤にしたまま目を瞑り誤魔化すも、ゼフェルは逃がしてくれない。


耳元に顔を近づけて囁く。

「告白の後に目を瞑るなんて、キスを強請ってるみたいですよ。 良いんですか?」 



サマンサは活きの良い魚のように、バタバタと体を動かし腕から逃れた。

余裕な発言にムカつき、睨んでゼフェルを見ると顔を真っ赤にして俯いている。


「あ、れ?」


あんな台詞を言った本人が照れているとか。

ん?


ゼフェルは片手で両目を覆い、手の隙間からサマンサを見遣る。

「えーと、怒った、かな?」


予想外の照れ顔に怒りも消沈していく。

「怒ってませんわ。 でも何故そんなに真っ赤になってるのですか? 先程の台詞を言う人が、照れるのは変な感じなのですが・・・・・」


やや落ち着いたので、いつも通り率直に聞いてみるサマンサ。


言われたゼフェルは堪らない。

もう誤魔化せないとばかりに、サマンサの方を見詰めた。

「変だよね。 かー、やっぱり聞いただけの知識じゃ隠しきれないよね。 ごめんね、これ父上の受け売りなんだ。 でも、貴女が好きなのは本当だよ。 死ぬかもしれないのに、俺を庇ってくれる勇気にもう感動で。 直ぐ結婚したい!」

一気に言い募ったゼフェル。


必死な様子に、もう良いかと心がほんわかする。

「もう、解りましたわ。 婚約お受けします。 これからよろしくお願いいたしますね、ゼフェル様」


「良いの、良いの! やったー、ありがとう。 絶対幸せにするからね!」

鼻下を指で擦っての満面の笑顔に、サマンサもつられて微笑んだ。


『あの時の独り言で、ずっと気になっていたエリザベート様のことを知れたのが決めてでしたが。 杞憂でしたわ。 でも・・・・・』

「あの~、ゼフェル様。 ゼフェル様は国王様のことを尊敬なさっているのですよね」


「うん、すごい人だよ。 全盛期は過ぎたけど、剣技の腕はそれほど衰えていないよ。 俺、ずっと教えを受けて来たんだ」

嬉しそうな顔で語るゼフェル。


サマンサも微笑んで聞くも、1点だけ譲れない所もある。

「そうなんですのね。 その、ゼフェルは国王様の女性のお付き合いも見習いたいのですか? たくさんの女性を側室にしたい、とか?」

聞きにくいが、聞かないといけない。

この返答で今後の関わり方も変わるのだ。

王太子妃、その後王妃になるとしても、嫉妬せぬように一線を引かねばならぬ。

出来れば自分だけを愛して欲しいが。



「側室なんて持つ筈ないよ! 生涯貴女だけを愛すると誓う。 父上に学んでたのは、女性に対しての会話術というか、そんなのなんだ。 俺の周りには、男か戦士しかいないから。 勿論女性と付き合ったことなんかないし、若い頃の父上のようにふらふらしたこともないよ、信じてくれ!」

先程より必死なゼフェルに、サマンサは声を出して笑ってしまった。


「ふふっ、解りましたわ。 今後はどうか解りませんが、今は信じてます」


「いやいや、今後とかもないから」


そう言って、その後も席に着き、穏やかに会話が続けられた。



先程、側近達の障壁(バリアー)で飛ばされたオウギワシは、ひっそりと引き摺られその場を後にした。


「サマンサ様も、意外と肝が座っておる。 案外似合いかもしれん」

うんうんと、頷く側近達。

念の為、護衛人数を増やしこの場を見守ることにした。


『この雰囲気は壊せん。 我々は空気と化す。 頑張れ王子!』

一切の感情を消し、側近と護衛達は2人の壁となるのだ。



オウギワシに意識を移し、ゼフェルを襲った魔族イートンは呻いていた。

「ぐわー、く、苦しい。 殺れると思ったのに、気取られていたなんて。 人間のクセに!人間のクセに!人間のクセに!」

バリアーで弾かれた後、もう一度攻撃する機会を狙っていたが駄目だった。 

体が痺れ動けなかったのだ。

もう元の体に戻ろうとしたが、それすらも上手くいかない。

障壁(バリアー)が強固で、精神体も通り抜け出来ない程だった。


オウギワシは今では食用鳥。

解体され民間に卸される。

両羽が縛られて、毒を浄化する為に倉庫に移動された。

鮮度を保つ為、屠殺されるのは出荷直前だ。


毒を浄化しなければ食せない獣達は、専用倉庫に入れられる。

浄化前の肉を盗む者はおらず、警備は人員だけでバリアーは張られていない。

オウギワシに憑依していた魔族イートンは、そこに移動されてから何とか脱出したのだ。

だがその場で討伐されていたら、いくら憑依していた精神体だとしても、衝撃(ショック)で瀕死は免れなかったであろう。


「くそっ、以前の障壁(バリアー)はあんなに強くなかったのに!」


この国のバリアー、延いては魔力の上昇は(間接的には)魔界のせいなのだが、その為に苦戦を強いられる魔族達。



そして民間には卸されない超高級食材否、大型危険魔獣ジャイアントキングスネーク、キングヴェノムスパイダー、ブラックゴルゴノプスドラゴン達が、大森林を目指して移動を始めていた。




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