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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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28/77

地味顔の魔女は、初恋を応援し隊

 ゼフェルは思った。


婚約者を決めるって何?

………………うん、理屈では解ってるよ


将来結婚し、この国を一緒に背負う存在で

あの3人の中から、将来の王妃を決めることだ


俺が?

う~ん

どうしたら良いか解らないな



『ラリサ(エリザベート)』は、一緒に闘っていて頼りになるしそこそこ賢いし、美味しい物を作ってくれる。

本人は顔がどうこう言ってるけど、さっぱりしてて俺は別に気にならない。

勇者一行だというのもすごく憧れる。



戦闘面で言えば、『ロールケイト・レンブルズ伯爵令嬢』も中々だ。 俺が魔物を討伐する時、直ぐ傍で剣に攻撃力増強や身体に強化の付加魔法を掛ける。

危ない時は、障壁(バリアー)を張って補助だ。

正直感謝しかない。

その上ロールケイト嬢だけでも、小物の魔獣なら簡単に捌ける実力者だ。

知力にも長けており、伯爵家の後継者教育も受けていると聞く。



『サマンサ・ビルガード侯爵令嬢』

ちょっとつり目のクールビューティー。

会話時も表情を崩すことなく、アイスブルーの切れ長の目で、俺を真っ直ぐに見据えてくる。 サラサラの銀髪(シルバーヘア)自分(ゼフェル)のような筋肉のないスレンダーな肢体。 普段は熱のない雰囲気なのに、戦闘訓練の際の真剣な眼差しや蒸気した頬、時折見せる年相応の愛くるしい笑顔。 

どんな話題にでも精通し、俺の苦手な宰相にも鋭い突っ込みを入れるクソ度胸(素敵だ)。 



ここまでの心の声で、ゼフェルがサマンサを好いていることは明確である。

その視線に、流石(さすが)のサマンサも気づいている。


と言うか、ゼフェル以外は全員気づいてニヤニヤを隠している所だ。


時々、笑いで吹き出す輩(タルハーミネやラリサ達)に、キッと睨むサマンサだが、照れ隠しなのが見え見えなので、ちっとも威嚇になっていない。

ただただ可愛らしい、子猫の威嚇程度なのだ。

まだ恋をしたことのないラリサまで、『甘酸っぱいわ♪ これが恋愛模様なのね』と、ゼフェル達の態度に呆ける始末。


第二王子のロビンだけは、『あんなキツそうな女より、断然エリザベートが良いだろうが! だが、エリザベートが選ばれないのは好都合だな。 傷心のお前を俺が癒してやるぞ! くっくっくっ』と喜色満面だ。



ロビンが怪しい妄想をしている時、ラリサに悪寒が走っていた。

嫌な予感! もしかしたら、魔族の急襲があるかも?

別方向の悪寒に気づくこともなく、警戒心に守備の強化を指示するラリサ。


しかし、予感も(あなが)ち違っていなかった。

若手魔族集団が、ブラックゴルゴノプスドラゴン(ラリサに竜玉を取られたドラゴン)を引き連れ、王城近くまで接近していたのだ。


数日経ち、今日はサマンサとゼフェルのお茶会日。

当然ながら、お茶会にラリサは居ない。

二人の邪魔が入らぬように、二人のいる庭園の警備だけは最小限である。


そして、第二王妃ジリアンとも連携が取れていない若手魔族達。

当初のラリサ(エリザベート)狙いの作戦をすっ飛ばし、「王太子殺せばはやいんじゃね」と、来ちゃったようだ。



その時、ゼフェルは決意していた。

いろいろ考え許嫁はサマンサにと、求婚するつもりなのだ。

周りも表情からそれを察していた。

『今日決めるんだな』

『頑張れ』

『グズグズしやがって、やっと決めたか』

『ダメなら骨は拾ってやるぜ』

『グッドラック!』等々、好き勝手な心の声である。



庭園は、城の中央部。

四方を囲まれており、守りは堅い。

もっとも襲撃を受けやすい、城背部の大森林に繋がる回廊をラリサは陣取っていた。


そこは大木に囲まれた自然を育む命の森。

多くの生き物が生息している。

その為、身を隠すにはうってつけの場所なのだ。

最も警備がし辛い場所を選択したのは、先日の悪寒と野生の勘。

勘と言っても適当ではなく、ラリサに宿る血が騒いだ。

いや、共鳴と言っても良いだろう。


ラリサの口元には(よだれ)が、僅か落ちる。


「アナスタシア様、今日は宴の予感です!」

気づかれぬように涎を拭き、近くにいるアナスタシアに告げる。

「ほお。 その様子だと、かなりの大物のようだが、機動力は不足してないか?」

獲物の期待に、アナスタシアも口角が上がる。


「今の所は何とも。 ただの勘の範疇なので」

落ち着いて言葉を返すラリサだが、数年前から森林に巣食う魔獣を撃退している彼女らに、今更普通の魔獣を宴と呼ばないのは明確である。


「ふむ。 それならば、タルハーミネ軍も呼ぼう。 彼奴らにも旨いものを食わせて、たまには機嫌を取らねばな。 此方はラリサの勘で、いつも大きくて旨い獲物を狩っているから、不満が出ているのだ」

くつくつと笑いが漏れだすアナスタシア。


大きな獲物は攻撃力も高く、怪我の危険も高い。

だがこの国の軍は、大きい獲物を取られて不満を言う猛者が多いと言うこと。


数年かけて軍事力が羽上がった。

個々の訓練と、魔獣の美味しさの賜物である。

今まで食べてこなかった(捨てていた)魔獣も、ラリサのお料理レシピとキャラウェイ等の僧侶の浄化があれば、魔獣の毒も消えると言うダブルコンボで大人気である。


肉をお安く食べられて美味しい。

魔獣の肉は一般化し、その身に宿る魔力も知らずに補給され、国民の魔力量も底上げされていた。

一般化する前から食していたアナスタシアやゼフェル達も、既にかなりの恩恵を受けている。


魔力持ちの国に生まれ変わったのである。

勿論魔獣が来なければ平和だし、魔力もそれほど増えない。

ずっと魔獣を食さなければ、自然と魔力も減少していくだろう。

だが、魔界からの纏まりのない襲撃が繰り返された為、魔獣の肉を食べた国民の魔力量は上がり、学校も増設された。

幼い子でも、小型魔獣を捕まえることができるようになり、ギルドで売ることで賃金を貰え生きていけるシステムとなった。


孤児院には魔導師が通いで指導する。

手に職をつけた子供達は、労働力を安く買い叩かれて働くのではなく、頑張り次第で魔法で食べていける道も出来たのだ。


魔法の適正も様々で、攻撃・治癒・保護・付加等多岐にわたる。


魔導師、冒険者、治癒者、料理人、魔道具の加工等、本来の基礎にプラスなので、全ての希望は叶わない。 でも何も持たない孤児が得るには、素晴らしいギフトとなった。 仮になりたくない職業でも、お金を貯めて転職だってできるのだ。 全てに魔法が関わるわけでもない。 行きたい国にだって行ける。 お金があれば自由だって買えるのだ。


魔法を学ぶには、読み書きが必要である。

魔力を増やすには体力も必要である。

国は教育(それら)を惜しみ無く援助してきた。

将来の魔族との決戦に向けて。



逆に選民意識を持つ貴族達は、魔物を食すのを拒否した。 その為、その一族は何も変わらなかった。

反対に積極的に食し、魔力の多い者の登用を図る貴族(もの)も出だした。


何れ魔法が使えなくなったとしても、今ある機会(チャンス)を生かすことで、弱いと言われていた者が教育を得られ向上心を持つことが出来た。 希望を持てる国は発展するだろう。


そしてこの機会を逃さず、魔族が来ると諦めて国を捨てることに成らぬように、教育に力を入れた王達に国民は誓いを新たにした。



一方で、王達はここまで考えてはいなかった。 

国民の魔力量の増加を魔導師に聞いていた、アナスタシアとニール(ブロディ)は、暴発とか危険だから管理しないといけない。 そう思い、各所に魔導師を派遣して、情報の収集をしていったのだ。


その収集が大きな財産となり、側近として働く者にも繋がっていた。

魔力の上昇の恩恵は、拒否をする者以外に行き渡った。


そんなことを知らない魔族の襲撃者が、ラリサ達がいることを知らない森林と、庭園の上空の2ヶ所から攻撃を仕掛けるのはもうすぐ。



どちらが悲鳴をあげるのか?



そしてゼフェルは、サマンサを前にお茶会でタジタジしていた。

気配を殺し、無言で見守る側近達。


ゼフェルは、この時やや空想に逃げる。

「やはりサマンサは美しい。 ラリサはお祖母(ばあ)様みたいだし、ロールケイトはまんま部下だし、お母様は黄色いゴリラだし、俺にはサマンサしかいないよ」と、知らずに口に出していた。


「ブフォ!」と、勢いよくお茶を吐き出し咳き込むサマンサ。

護衛からも、何やら呻き声が聞こえた。


「大丈夫ですか? ビルガード令嬢」と、慌てるゼフェルだが。


サマンサは、ハンカチを口に当て「大丈夫です」と冷静に返す。


『なんなのこの人、影でサマンサ呼びなの? って言うかおばあさまだの、ゴリラだの、2人に聞かれたら無傷じゃいられないわよ。 本当に筋肉バカなんだから。 しょうがないわね、私が何とかするしかないか』と、覚悟を決めていた。

そして、笑って吹き出しそうなのを堪える為に、表情筋に力を加え、真面目な顔を維持した。


ゼフェルは、俺なんか変なことしたかなと、またタジタジ。


そして護衛から声があがる。

「超大型のオウギワシが現れたぞ! 皆配置につけ!」

「「「「「「「了解!!!」」」」」」」


上空からの魔物が、ゼフェルを目指し速度を増した。




ゼフェルも僕っ子から、一人称が俺になりました。

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