表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/77

地味顔の魔女は、猫が好き?

 魔法師団の訓練所に、突如10体のヴェノムタイガーが現れた。

白い毛並みに黒い斑が入った、愛らしい表情の虎だ。 黒真珠のような黒い大きなまんまるの(まなこ)。 子猫のような黄金率の三角な輪郭。 肉球はタフィーピンク。


端的に言うと、猫好きには攻撃は無理。



でも攻撃力は、えげつなかった。

体長は縦に2m、横に4mの巨体。

口からは粘りのある猛毒を唾液線から3m程飛ばし、爪にも麻痺毒が分泌されている。 爪は1指20cmはあり、前足の一振りで大木が10本がなぎ倒される。 人間なんて楽勝で吹っ飛ばされる。

但しここは魔法師団のテリトリー。

障壁(バリアー)である程度は防ぐことが出来る。

その間に攻撃すれば、倒せない相手ではない。


だが今、ほぼ全ての団員が防御に徹し、一心に願っている。

『頼むから帰ってくれ』と。


猫好きにはと言ったが、可愛過ぎて躊躇してしまうのだ。

勿論ヴェノムタイガーの獰猛さは知っているので、生半可な攻撃も出来ない。


そこで我らが(非情と恐れられる)タルハ―ミネ軍に救援要請を行い、防御体制で待機しているのだ。


でも、動揺したのはタルハ―ミネ軍も同様だった。



「なんだよ、あの可愛いのは。 なんで俺達に倒させようとするんだ。 悪魔達め!!」

この悪魔はヴェノムタイガーではなく、魔法師団に言っています。


確かに可愛いが、この数を放置すれば王城に向かうだろう。 それだけは防がねばならない。

タルハ―ミネは号令を掛ける。

「全員魔法で防御膜を自己に掛けろ! 2,3回爪か毒を受ければ即瓦解するからな。 無理せず一旦離脱し、後方の(役立たずの)魔法師団にかけ直させて再戦しろ。 魔法盾(マジックシールド)を併用し、剣で後足を狙え! 弱らせないと拘束バンドは破壊されるからな、頃合いを見極めろ。 毒を受ければ即退き、治療だ! 総員作戦開始(オペレーションゴー)!!!」


「「「「「「「「「「了解(ヤー)!!!!!!!」」」」」」」」」」


タルハ―ミネとゼフェルが組み1体ずつ孤立させて、部隊員がヴェノムタイガーを剣や魔法で傷つけて弱らせていく。


「キュイ~ン、キュイン」

攻撃毎に切なげな声で、こちらの罪悪感を刻む。


その声で意欲を削がれた隙に、強靭な前足を振り落とされる。

「ぐわぁ、やられた。 くそっ」


いくら防御膜で覆っていても、振り上げられた前足の衝撃は凄まじく、倒されたり飛ばされたりしている。

あちこちから呻き声は聞こえる。 防御優先の攻防なので重症ではないが損傷(ダメージ)は少しづつ蓄積されていた。


1体2体と、弱らせたヴェノムタイガーは捕縛されていく。


後2体にと迫った時、上空に水着型鎧(ビキニアーマー)を着た魔族が現れた。 20代後半とおぼしき若々しい肢体に、毒々しい化粧をした女魔族。

女魔族は、高圧的にヴェノムタイガーを叱咤した。


「何をしているのよ。 この馬鹿猫野郎が! さっさと殺っちまいな、屑!」

その途端ヴェノムタイガー達の目が赤く光り、一斉に走り出してきた。 拘束されているタイガー達も、拘束バンドを無理矢理破壊し、血を滴らせながら向かってくる。


30名の精鋭部隊(タルハ―ミネ軍)も疲労困憊。 その為、魔法師団が広範囲障壁(バリアー)で、味方を覆い尽くす。 それでもヴェノムタイガーの鋭い爪は、何度も何度も障壁(バリアー)を傷つけて破壊しようとしている。 遥か上空に浮かぶ女魔族は、タイガー達を操っているせいか何も仕掛けては来ない。


魔法師団の魔法師も女魔族を狙いに行くが、如何せんタイガー達が邪魔して襲いかかってくるので、防御で手一杯である。


「キュ…イ~ン、キュ、イン……」


時折苦しそうなタイガー達の呻き声が漏れてくる。

操れていても、バンドを無理矢理引きちぎった傷は痛むのだろう。


「くそっ。 折角最低限の攻撃で捕縛しようと頑張ったのに!」

「俺だって」

「本当はあんなめんこいの、闘うの嫌だった」

ヴェノムタイガーの切ない声に、タルハ―ミネ部隊員の心の声が吐露されていく。

部隊員の声に、タルハ―ミネも顔を歪める。

「私だって、私だって! くっそう」


一斉攻撃され、防御一辺倒の王国軍。


「まずい。 このままでは力を削られる一方だ」

広範囲障壁(バリアー)により、魔力がそろそろ尽きそうになって切羽詰まった時に声が聞こえた。


「遅くなりました。 大丈夫ですか?」

諦めの気持ちが強まってきた時、救援が現れたのだ。


アナスタシア軍、ラリサ達だ。


上空の女魔族をアナスタシアが、鋼鉄の鞭で捕縛し電流を流す。気配を気取られぬように現れたアナスタシア達は、女魔族の後方から拘束したのだ。


「くそおぉー いつの間に! ぐわあぁぁぁ」

苦痛にもがき、衝撃(ショック)で地面に落下していく。

背部から体を打ち付けた女魔族は、痛みに悶えながら鞭から抜け出そうともがいている。

「離せ、人間風情が!」

悪態をついても、鞭は肌に食い込んで痛め付けるだけだ。


「お前達の狙いはなんだ。 何故人間界を攻めてくるのだ。 理由があるなら答えてくれ」

アナスタシアは女魔族に問うが、返事はなかった。


「アナスタシア様、これ以上、障壁(バリアー)維持できません」

魔法師団員の叫び声があがる。


アナスタシアは女魔族に、ヴェノムタイガーの支配を解くように言うが顔を背け応じなかった。


「残念だ。 敵だからと殺すつもりはなかったのだが」

そう言うと、キャラウェイの顔を見つめ頷いた。


キャラウェイは頷き返し、魔法杖を天に掲げて祈る。

浄化(ピュリフィケイション)

「ひいぃぃぃ」


次の瞬間光の粒が女魔族を取り囲み、短い悲鳴と共にサラサラと砂が舞っていた。


ヴェノムタイガーも力の限界だったのか、女魔族が死んで洗脳が解かれたと同時にその場で蹲った。 その証拠に目の色は透き通る黒色へと戻っていたのだ。


どうやら女魔族は、吸血して操っていたようだね。

首もとに咬み跡ような2つの穴が残っている。

女魔族が死んでも砂にならない所を見ると、もう影響はないだろうと言うタルハ―ミネ。 長年の冒険者の経験なんだけどと付け加える。


問題はこの(ヴェノムタイガー)達をどうするかだ。


するとキャラウェイが、アナスタシアに発言の許可を貰い話を続ける。

「私の浄化魔法でヴェノムタイガーの毒を抜いて、ホワイトタイガーに戻して森に帰すのはどうでしょう?」

「それは可能なのか?」

「たぶん。 いつもは死肉にしか掛けたことはないですが、気絶している今なら抵抗もなく可能と思われます」

「毒はなくてもこのサイズでは、森の生態系は崩れないか?」

「発言よろしいでしょうか?」

ラリサも許可を得て、話に加わる。

「私の魔法であれば、縮小化が可能です」

「そうか。 だが、毒もなく体も普通のホワイトタイガー並みになって、この個体は生きていけると思うか?」

「大丈夫だと思います。 たぶん魔界は、人間界よりも過酷な環境だと考えます。 このサイズで毒持ちと言うことは、その必要があったからでしょう。 この地であれば大丈夫だと思います。 ただ生存競争はありますので、それにより生き残れない個体が出る可能性は否定できませんが」

「そうだな」

じゃあ、そうしようかとアナスタシアは決断した。


魔界にタイガー達を戻す術はない。 かと言って殺すことは忍びない。 ラリサ達とて、こんな可愛いのを食する気にもなれない。 飼うことも出来ないなら、野生に帰すしかない。


ヴェノムタイガーとて野生の獣だ。

状況を受け入れて生きていくだろう。


寝ている間に、毒浄化と縮小化の魔法を掛ける。

本当は1体くらい手元に残したい。

何故かと問われれば、可愛いの一択でしかない。


でもただでさえ魔界から離された(連れてこられた)種族だ。

一緒にいる方が安心だろう。

ハンデの中生きなければならないのだから。



そして一刻が経ち、ヴェノムタイガーはホワイトタイガーとなり森を目指した。 彼らも敗北したことが解っていたらしく、こちらに向かってくることもなかった。 ただ一番小さい個体が、ウィリアム(イリヤ)に寄り添い離れなかった。


「お前は行かないのか?」

ウィリアム(イリヤ)が頭を撫でてやると、キュインと鳴いて側を離れない。


その子は、他のタイガーと見つめ合い別れを決めたようだった。


「アナスタシア様、僕が責任を持ちます。 飼わせてください。 お願いします」

ウィリアム(イリヤ)は、頭を下げてアナスタシアに懇願した。


そして了解されたのだ。

「側を離れないようだから仕方ないな。 しっかり養育せよ」

「ありがとうございます」


ウィリアム(イリヤ)は、何度も頭を下げて感謝をした。

その子は魔界にいた時のイリヤの臭いを覚えていたようだ。

だから1体でもここに残ることにしたのだ。

同時にイリヤも勿論覚えていた。


他の部隊員達は、うらやましそうに見ている。

何故そっちに行っちゃうのかなぁと。

結局一番優しそうだからとの結論に至ったのだ。


ラリサの家族もきっと喜ぶだろう。

ラリサも眦が下がる。


だが、この後イリヤにしか懐かないことが発覚するのだが。

まあ、それはさておき。


作戦終了の前にアナスタシアの激が飛ぶ。

「まずは御苦労。 ただ今回の体たらく、明日より正さねばならんようだ。 今日はゆっくり休め、怪我の重症者以外は明日より訓練メニュー変更だ。 以上だ。 作戦終了(ターミネーション) 」



今回強面の部隊員も、可愛い魔獣には弱いことが判明。

アナスタシアもきっと…………





 ヴェノムタイガーを操っていたのは、ジリアンの高祖母(ひいひいおばあちゃん)だった。 その結果を聞き、ジリアンは落胆した。 「偉そうなこと言っても失敗じゃない、ガッカリよ」と。 身内に情けもない、怖い女になっていたジリアンだった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ