地味顔の魔女は、お肉を振る舞う
逢いたくて逢いたくて、焦がれた師匠がここにいる幸せ。
こんな時はもう、やるしかないよね肉祭り。
「師匠、実はどうしても食べて欲しいものがあるのです!」
ラリサは徐にマジックバックから、オウギワシを取り出した。
ちょっと顔がひきつるヘルガ。
オーノー、オウギちゃん!
前世では技を仕込み、共に戦った仲魔(魔獣)達だった。
人間って魔獣食べるの? 毒あるよね? へえ~解毒!?してあるんだ。
今は私も人間だけれども!
いや、まあ、鶏肉や豚肉だって、先祖を辿れば魔獣だけれども。
人間界に来た魔獣が、普通の鳥や豚と交配して今の形に。
逆にこちら(人間界)から魔界に渡り、魔獣化した動物もいるしね。
元は人間界原産?のタランチュラとかも、バンパイアスパイダーになって、一大勢力築いてたなぁ。
あの蜘蛛、巨大化するわ、毒あるわ、血を吸う毎に知能も高くなってるわで、誰も近づかないうちに、炎でも焼けない糸で巣を作ってわね。
流石にひいたよね。
新参者になのにさ。
でも、オウギワシが結構捕食してくれたのよ。
そんな思い出のオウギちゃん。
でも・・・・・美味しいんだって!
イリヤ(ウィリアム)も食べたって!
どうしよう・・・・・食べないとがっかりされちゃうよね。
ラリサの手作りだもんね。
人間達が食べるなら、今人間の私も(涙を拭いて)食べるさ。
今日の料理は、
1品目:さつまいもといんげんまめの手羽ロール。
手羽の骨を抜き、骨を抜いた部分に茹でたいんげんとさつまいもを詰めて、塩コショウを振って油で揚げる。
2品目:鳥もものからあげ。
塩、こしょう、酒、すりおろした生姜で、手のひら大に切り分けたお肉をつける。
でんぷん粉を軽くつけて、油で揚げる。
のお肉とパンと野菜サラダと鶏ガラスープです。
「え、もしや」と驚くヘルガ。
頷くラリサ。
師匠直伝のメニューだ。
こしょうや生姜、でんぷん粉(現代だと片栗粉)は、ヘルガが薬草として育てていたものだ。
でんぷん粉は、じゃがいもからわりと簡単に作れるが、その発想はなく、それを売り出してブルーノは一財産築く。
でんぷん粉が一般にはないと気づいたのは、メアリーだ。
300年前、ラリサはヘルガと死に別れて旅に出た際、畑にある野菜や苗、種、支え棒、植木鉢、ハッカ、鎌、鍬等を全てマジックバックに突っ込む。
そしてブルーノの祖母だった前世で、畑を作り薬草と一緒に調味料も作っていたのだ。
貴族家にいた時は調理人が料理を作ったが、隠居してからは自分で料理を作って食べていた。
ブルーノもメアリーも、「食べたことのない味だ! 美味しい!」と言って食べていたが、スパイスや下味の材料が見たことがない物だったことを、手伝いをしていたメアリーは気づいていた。
ラリサが亡くなった後に、でんぷん粉やこしょう、生姜等を大量生産することを提案し、資産にしたのは2人の商才だった。
ラリサにとっては食べなれた物だったから、珍しく思わなかったのだ。 (後から聞いて、自分の物が孫の為になって嬉しかったようだ)
まあ、それは置いておき。
ヘルガとラリサの思い出の料理(ヘルガがよく作ってくれた)。
鴨や鶏の数十倍あるけどね。
手羽用のさつまいもは切らないで、丸まんま1本を縦穴に3本だし、いんげんまめ10本くらいずつたばにして縦穴に3セットだし。
とにかく大きいの。
唐揚げだって、元が大きいからステーキくらいの大きさだし。
300年以上を経て、やっと念願だった親子というか師弟の晩餐が叶う。
覚悟を決めて口に入れるヘルガ。
「ん、おいしい・・・ね」
「本当に!」
「うん、ちょっとびっくりしたよ。 あんたけっこう大雑把だったし、生焼け覚悟だった」
ニヒヒと笑い、大きな口で食べるヘルガ。
からかわれながらも楽しそうなラリサ。
「私だって、たくさん作ってきたんです。 ちょっとは上達しますって」
ブルーノとメアリーには、ヘルガことタルハ―ミネと仲良くしてるのは、まだ見せられない(いろいろ疑われそうだから)。
だからこそ、秘密を知る人だけでの離宮の料理は、貴重な機会なのだ。
『おいしいなぁ』
思えば人間界に来てからずっと1人で暮らして、最後にラリサと僅かな時間を過ごし。 タルハ―ミネになってからは、ずっと誰かと比べられて自由がなくて、ひねくれて、それでも認められたくて……………(心の中で独りごち中)
ああ、今なんだか楽しいなぁ。
きっと信じられる者がいて、安心できるからなのかな?
もっと心を開いて、意地を張らなければ良かったのかなぁ?
まあ、記憶が戻って、今幸せだから良いか。
これからは、自分のしたいように生きよう。
イリヤ(ウィリアム)も嬉しそうに、微笑んでいた。
ーーーーー
そして再び12才のラリサに戻ります。
6年後の今、ジリアンのゼフェル暗殺計画は頓挫していた。
ジリアンの魔物使役レベルは確実に上がっていたが、いくら魔物をけしかけても倒される状態が続いていた。
なんというか、純粋に魔界からはみ出してくる魔物と一緒に討伐されていたのだ。
逆を言うと、一緒くたになっているので、ジリアンの犯行を割り出せないでいた感じに。
町や村には結界が張り巡らされ、所々の(結界の)空白地帯に騎士団や魔法師団を配置。 そして、王城に続く騎士団や魔法師団の訓練所、さらに王城にはあえて結界を展開していない。
漁で言うところの追い込み漁だ。
正しいかどうかは置いておき、今の所はこれでベストな状態である。
ラリサ達は、魔界がまだ本気を出して来ないうちに、さらに計画を進めたい所。
ジリアンを指導している祖母は、魔族のクォーター(1/4の魔族の血筋)で、祖母の母の母は現役の魔族だ。
残念ながら祖母の母は寿命で亡くなっており、祖母も70代に近い高齢者だ。
魔力以外は、ほとんど人間と変わらない。
魔法を使い魔物を操れば、直ぐに疲れてしまっていた。
ーーーちょっと前までは
でも最近は疲れも見せず、皮膚の皺も減ったようで、若返っているかのよう。
そして今日は、祖母がヴェノムタイガーを10体放つと言うのだ。
1体だけでもかなりの精神力と魔力を使うのに・・・・・
大丈夫だろうか?
術が失敗すれば、コントロールが術者から外れ、暴走や術者を喰い殺しに来るかもしれない。
でも、この頃の祖母は力が漲っている感じがするし・・・・・
お手並み拝見しようじゃないの。
もしかしたら、成功するかもね。
フフッ
思わずにやけるジリアン。
呑気に構えているが、祖母の力の漲りは当たっている。
そして人間は、そう簡単には若返ったりしない。
実際の祖母は、何も知らぬまま疲労が辛いと自宅で暮らしているのだ。
では、ここにいるのは誰なのか?
高祖母で、魔界の吸血鬼だった。
魔族は人助けなんてしない。
人間側を瓦解させようとする魔族の罠だった。
王達から見れば、内部から亀裂が入るようなものだ。
ジリアンはゼフェルやアナスタシアの命どころか、自分達の命も危機に瀕していることに気づけなかった。




