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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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23/77

地味顔魔女の師匠タルハーミネ(ヘルガ)は、覚悟を決める

 あれから月日は流れ、6年が経過した。

ラリサは12才、ゼフェルは14才になった。


 すぐに魔界の進攻が始まるかと構えていたが、いつになっても状態は変わらなかった。 

 時々中程度の敵(オウギワシ等)や小物の魔物が飛ぶが、偵察程度のようだった。

 向かってきた魔物は6割が王家の騎士団が仕留め、2割が冒険者が、2割は這う這うの体で魔界戻りしているようだ。

 

 どうしてこんな状態かと言えば、単純に魔界と人間界の時間の流れが違うとしか、言いようがない。

 相変わらず魔界王家のお家騒動は続いており、あーだこーだと揉めてはいるようだ。


 しかし、飽き性な魔族達の大部分は一旦(王位簒奪が)停戦状態になると、その後は今まで争っていた事を頭から消して、保留にしていた物事を再開し始めた。


 取りあえずは大規模な戦闘は回避されている。

魔族だって寿命こそ違うだけで、好奇心の元に学んだり、恋をしたり、遊んだり、家族が好きな者はそちらを優先する方が楽しい。

 国家が停戦で安定し直近の危険がないなら、自分達の生活が大事に決まっている。

というか、その間隔が人間よりかなり長い。

 魔族にとっては少しの瞬間でも、人間にとっては数年となった感じなのだ。



 今か今かと待つ中、ラリサ側の軍事力は着々と向上した。

まず懸念されていたブロディ(王太子ニール)が、王位を継ぎ新王となった。

 勿論王妃は、アナスタシアだ。

そこに行き着くまでに、ブロディは濃い交遊(お付き合い)?の有った女性と、誠意を持ってお別れし(大体がお金で解決)、ごねた相手にはアナスタシアも同行し、頭を下げる力業も使った。


 案内された客室で、ブロディ(王太子ニール)の隣に座し、

「私の目が届かず、貴女様にはご迷惑をおかけしました。 もう二度と過ちを犯さぬよう目を光らせますので、どうか潔い決別をお願いできないでしょうか?」

そう言って、ブロディ(王太子ニール)と共に頭を下げたのだ。


 一国の王太子と王太子妃が、自宅まで訪ねての謝罪だ。

最初は憤って、絶対別れないと思っていた令嬢や夫人も、流石に冷静になり受け入れることが出来た。


 本来なら、王家や辺境伯家に闇討ちされてもおかしくない状況。

ましてやアナスタシアの剣技で、手が滑ったと言って切り捨てても、誰も文句も言えない。

 実家に圧力をかけて、取り潰せる経済力も権力もある。


 一番悪いのは勿論ブロディ(王太子ニール)だけど、相手を続けていた女性にも咎はある。

アナスタシア側が個人的に軽く敵視すれば、良くて慰謝料請求、悪ければ社会的に死んでしまうだろう。 実家だって余波受けまくるし。



 即ち、王太子妃(アナスタシア)が来た時点で、詰んだ訳だ。

流石に逆らう愚か者はおらず、無事1人も命を落とさず済んだのである。

アナスタシアが同席する荒業は、効果絶大であった。



 娘や夫人(未亡人)とその場に同席した親や兄弟姉妹は、土気色をして女性達の座るソファーの後ろに起立していた。

 娘や夫人(未亡人)達が言葉を発する度に、青くなったり白くなったりして、最終的に血の気が無くなっていたのだ。


 『生き残れた・・・・・・・・』


話し合いが終わったアナスタシア達を見送り、姿が見えなくなると、当主や夫人・兄弟姉妹は力なくその場で横たわった。

もしくは気絶していた。

 家が潰れるか否かの決戦日だった。

倒れているべくもなく、土下座してでも自分の命と引き換えでも没落は避けたいと願い同席した席だ。


 その日寛容な王太子妃(アナスタシア)に、忠誠を誓った家紋は堅実に生きていくであろう。


 夢から醒めた令嬢や夫人(未亡人)達も、後から今回のことを振り返り震えたと言う。

 「10回死んでても、可笑しくないよね」

 「なんであんなに強気だったの私」

 「みんなごめんね~」などなど、涙ながらに家族に謝り倒し心を入れ替えた。


 我の強い、我が儘な女性達だったが、ショック療法?で真人間に生まれ変わったと評判になった。

 その後良縁にも恵まれ、家族はアナスタシア様のおかげだと拝む日々だ。


 そんなこんなで、今や新王・王妃となった者への表だった不満は少なく、纏まりは見える。


 ラリサ(エリザベート)、ブロディ(王太子ニール)、キャラウェイ(パーティー)の魔法や剣技レベルも、300年前よりも向上をみせた。

ただブロディとキャラウェイは、アラフォーとなる為、魔族が来るなら早めに来て欲しいと思っている←体力的に。

 来ないなら来ない方が良いが、きっと来ると思うから。



 ゼフェルも直属の軍を持ち、若輩ながら副騎士団長として、皆を率いている。

 騎士団長はなんとタルハーミネだった。

ラリサがアナスタシアと共に修行をしていた時、魔界はラリサの竜玉を狙うべく、生家に魔物を放ち始めていた。

 ラリサの弟(次男)ジョージが5才になった頃だ。

庭でウィリアムの真似をして、木刀を振り回していたジョージに

ジャイアントキングスネークが接近していた。

 スネークに見分けの知能はなく、手当たり次第に捕食して回ろうとするまさにその時、それをみつけたタルハーミネは叫ぶ。


「ジョージ。 逃げて!!!」

 

 声に振り向くジョークだが、足がすくんで動けない。

叫んだ声が大きく、全身に響きスネークの癇に触る。 

スネークは、尾で岩を持ち上げてタルハーミネに投げつける。

   

岩を避けられたも、地面で砕けた岩のつぶては、タルハーミネの頬や額を強く打ち付けた。


 「っう、痛っ! 舐めたことすんじゃねえか! はぁ、このヒモ野郎が!!!!」

頬から流れ落ちた血を袖で拭い、衝撃で切れた口内の血液も吐き出した。


 怒りに満ちた瞳は、標的を捉える。

 直後、右手から巨大なファイヤーボールを作り出し、ジャイアントキングスネークに投げ放った。


 「何しくさんねん! 死ねやオリャー!!!」


 ファイヤーボールは命中し、焦げた臭いが庭に充満した。

一瞬で焦げた為に、暴れることもなかった。


 「大丈夫かい? ジョージ」


 ジョージは腰が抜けて、尻餅をついていた。

その場で『うんうん』と頷き、「かっけー婆ちゃん!」と目をキラキラさせていた。

 どうやら恐怖よりも、魔法の好奇心が勝ったようである。


 近くにいた家族は、騒ぎを聞きつけ集まってきた。

ジャイアントキングスネークが現れたことも衝撃だが、ジョージを庇って魔法を放ったタルハーミネにも、驚かれていた。


 「おまえ、魔法なんて使えたのか? 体大丈夫か?」


 いつもは極力関わらないヴァルモンも、自然と声を掛けていた。

たしか影の調査では、魔法など使えないはずだったが。


 「ああ、大丈夫よ。 それよりジョージを見てあげて。 ショックだったと思うのよ。 ここにも魔物が入り込んでいるようだし、警備を強化した方が良いわね」


いつもなら、『なんでちゃんと警備してないのよ! 危ないでしょ! 怪我したらどうするのよ!』等、罵詈雑言が聞かれていた所だろうが、それが全くない。

 真っ先に、孫の心配をしているではないか。

なんか悪いモノ食ったかと言いそうな所を、そうだなと応じるヴァルモン。


 その後、シーラ(2才)のおやつを食べさせていたメアリーも飛んできた。


 「あ、ありがとうございます、お義母様。 本当に、命の恩人です」

 ジョージを抱きしめて泣き崩れるメアリー。

対してジョージはけろっとして、タルハーミネの魔法に興味津々でワクワク顔だ。


 ちょうどそこに、仕事終わりのブルーノと訓練を終えたウィリアムが同じ馬車で帰宅した。


 ブルーノは、ここまでジャイアントキングスネークが・・・と驚いていた。

ジョージがあまりにもあっけらかんとしてるので、魔物の心配が先に口をついていたのだ。


 「ありがとうございます、義母上。 感謝します」

と深々と頭を下げる。


『たまたま近くにいたんだから、あたりまえよぉ』とか言い返すタルハーミネ。


 ん?と、ブルーノの違和感。

いつもなら、『大変だったのよ』とか『もっと感謝して』とか、怒ったり騒いだりするパターンなのに。

 それに魔法って?

口調もなんか変だし?

本人かな?と疑惑のブルーノ。


 

 もっと衝撃を受けたのはウィリアムだ。

この魔法の気配?

今まで気づかなかったけど、間違いない。


 なんだか疑われているタルハーミネは、咄嗟のことで自分でもなんで魔法が使えたのか解らないと、一生懸命話している。

でも最終的に、皆に怪我がなくて良かったと話は終わった。

 後日アナスタシア様に相談してみようと。



 そしてウィリアムは、ちょっと憔悴したタルハーミネに近づきこう尋ねた。

 「僕のこと解りますか? イリヤです」


もし宛が外れれば、何をふざけてるの?で終わる質問。


 対してタルハーミネは瞬いてウィリアムを見つめた。

「嘘、何で気づかなかったんだろ? 私が解るのね、イリヤ。 また会えるなんて、ああ神様」

 そう言うとすかさず、ウィリアムを抱きしめた。


 そこに、後から帰宅したラリサ(エリザベート)が合流した。

何で祖母がウィリアムを抱きしめてるんだろ?


 家族で?????が飛びかうなか、ウィリアムの側に来たラリサはタルハーミネに腕を掴まれた。

そして小声で「ラリサ、アタシがヘルガだって言ったら信じる?」

口角を片方上げて、亡き師匠の仕草で笑うタルハーミネ。


「っう。 本当(まじ)すか?」


「うん、マジ」

今度は満面に笑うタルハーミネ。


ラリサはウィリアムごと、タルハーミネ(ヘルガ)を抱きしめた。

嬉し泣きだけど泣いているラリサに、やっぱりみんな困惑していた。



 因みにヘルガがイリヤ(ウィリアム)の母ということは、ウィリアムが魔族とばれてしまうので内緒である。


 ラリサは、タルハーミネ(ヘルガ)が前世の師匠だと、王やアナスタシアに話して良いか尋ねた。

タルハーミネ(ヘルガ)は、確実に戦力となる頼れる人だからだ。


 しかし、タルハーミネ(ヘルガ)からは少し考えさせてと、快諾は得られなかった。

 それもそのはず、タルハーミネは前世の記憶が蘇り魔法が使えるようになった。

人間の時なら使えなかった魔力だ。

きっと、魔族寄りの魔力と認定されてしまうだろう。

今は危険なしと判断されたウィリアムだが、2年位は監視下に置かれていたのだ。


 ヘルガは魔王の元妻、前世はイリヤの母で、今はウィリアムの血の繋がらぬ祖母だ。

後ろ暗い所は全くないが、立ち位置は微妙なのだ。


 それに、ここに息子のイリヤがいることも謎だ。

じっくり話をしてみないと。

人間界にその魔力で過ごすのは、危険だと思われたからだ。


「ラリサ、アタシが思い出したのさっきなんだよ。 ちょっと頭の整理したいんだ。 まだだいぶん混乱してんのさ」

そう伝えると、ああと頷くラリサ。

暫くの猶予は出来た。


 ずっと会いたかった師匠に、今の近況を是非聞いて欲しいと嬉しがるラリサだった。



 その後ウィリアム(イリヤ)とも相談し、ウィリアム(イリヤ)の所属しているゼフェルの軍に入隊することになった。

ラリサとアナスタシアと相談し、姿を中年の女性に変身させての一般兵だったのだが、対戦を繰り返していくうちに、あれよあれよと騎士団長に登り詰めていた。

名前をどうするか考えたが、タルハーミネで良いんじゃないのと変更しなかった。

下手に変えると混乱するし、今の姿とオババの姿では誰も同一人物とは思わないだろう。


 今まではゼフェルが団長だったが、本人納得の降格であった。

またワクワクした顔だった。

好敵手と書いてライバルが現れたと言ってたし。

敵ってアンタ・・・・・ ホントにもうねぇ、やれやれ。

精神的に暫くは副団長で良いのかも・・・・・と思う。


 魔力の型で疑われると思っていたが、過去に魔族の女性との血の繋がりがあれば、そういうこともあるのだろうとの結論に至ったのだ。

 昔の貴族は愛人もたくさんいたそうなので、魔族や魔族とのハーフの女性の子がいても不思議じゃないということにしたのだ。

というか、身内を疑うのも限界だったから止めたのだ。


 ましてラリサの師匠なら、救世主の師匠だ。

アナスタシアの認識では、神にも等しいらしいので。


 タルハーミネ(ヘルガ)もウィリアム(イリヤ)と話す時間が出来て、都合が良かった。

 ラリサはアナスタシア直属なので離れる時間が多く、ウィリアム(イリヤ)にゆっくり現状が聞けたのだ。


 ただ、嬉しいことと魔族のきな臭い話とで、いろいろやらなければならないことが浮き出てきた。


 「ラリサを殺させたりしないよ」

ウィリアム(イリヤ)もラリサを守りたいと告げ、作戦を考える2人だった。


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