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公爵令嬢は顔が薄い  作者: ねこまんまときみどりのことり


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19/77

地味顔の魔女は、弟と登城する

 (ウィリアム)に論破され、アナスタシア様に相談することにした(ラリサ)


久しぶりの登城だったが、皆暖かく迎えてくれた。


顔に腕に見える肌には傷跡が残る、以前とは別人の雰囲気のブロディとキャラウェイ。

顔つきが凛々しくなってる気がする(当社比←なんの?)


そしてゼフェル様は、嬉々としてアナスタシア様と剣を交えていた。

ゼフェル様も見える所は傷だらけだし、衣装も鎧も泥にまみれているが、打ち合い中の顔は笑みが絶えない。

ぼろぼろ姿から、まだまだ対等ではないのかもしれないが、時に急所へ届きそうな一撃も繰り出せているそうだ。



『皆すごいな』

数日離れただけでここまで変わるなんて・・・・・

感動するラリサだが、ラリサが居なくてここまでに仕上がったのは、ある意味正解だった。



ラリサが登城出来なくなった頃、アナスタシアは言った。

「これはある意味良い機会ね。 今まではラリサがいたから、(わたくし)ちょっと猫を被っておりました。 ですが暫くお休みとのこと。 遠慮なくやらせて貰いますわね」


柔和な顔がキリリと変わる。

微笑みを湛えた目は見開き、口元も弧から真横に強く結ばれ、冷徹ささえ感じられた。


「お、おいアナスタシア」

ブロディ(王太子ニール)が戸惑い、声を掛ける。


「今から(わたくし)のことは、上官と呼んでいただきますね。 そして、呼び名が一律でないと有事の際混乱します。 ここではラリサの呼び方に習い、ニール様をブロディ、パーティーさんをキャラウェイと敬称略します。 勿論ラリサが戻れば、ラリサのことも、エリザベートではなくラリサに統一します。 ゼフェルもそう呼ぶように。 仲間に敬称は不要ですから」


戸惑いながらも頷く一同。

そして静まる雰囲気の中、ですが・・・・・とアナスタシアから続く。


「あくまでも仲間は実力差がない、若しくは認めさせる物を持つ者であると私は考えます。 なので、私が認めるまでは、必ず私のことは上官と呼ぶように!」


逆らってはいけない。 この時、ここに居る者の心は一致した。

ラリサが離宮で襲撃を受けた時のスイッチが、ここで再び押された瞬間だった。


訓練時王と王妃は、書類仕事や訪問客の相手を一手に引き受ける。

王妃はアナスタシアの訓練姿を見たがったが、全員でここに居ては政務が回らない。

本来ならアナスタシアもそちらの戦力なのだ。

王太子としてのニール(ブロディ)は、端から戦力外なので問題なしだが。



「では全員納得していただいたということで、この場を仕切らせていただきます」

携帯している鞣した鞭を取りだし、号令を掛ける。

まずは体力作りから始めるらしい。


「アテンション! 今から離宮の庭園を50周。 終わり次第腹筋背筋100回。 全員終了次第連絡を入れるように。 以上開始せよ」

厳しい口調の号令に、皆一様に固まった。

しかし次の瞬間、バシンッと地面が鳴った。

アナスタシアの鞭が地面を叩いたのだ。


「正式な軍ではないので、了解は『ヤー』で統一する。 上官からの指示は必ず『ヤー』で答えるように。 尚、反論は許可しない。 以上だ。 訓練開始!」


アナスタシアの言葉に、今度は全員『ヤー』で応じる。

しかし、再び鞭が地面にうねる。


「声が小さい。 返事は簡潔に大きな声で!」


「「「ヤー!!!」」」

「良し! 速やかに訓練へ迎え!」

「「「ヤー」」」


鞭を振るいこちらを凝視するアナスタシアに、異を唱える者はいない。

(訓練を)やらなきゃ、殺られる!!

ここが年齢を越えた、仲間意識が芽生えた瞬間だった。


結局、庭園を走り腹筋背筋を終えたのは、日も暮れかかる頃だった。

昼食休みは1時間だったが、他の時間はほぼ動きっぱなしだ。

体力のある方のゼフェルでさえ、へばっていた。


その間アナスタシアは、書類仕事を手伝っていた。

『3日は基礎訓練。 それまでに少しこちらを整理しないと』

王太子妃は、多忙だった。


訓練を終え、ゼフェルがアナスタシアを呼びに来た。

王城では、「母上。訓練が終了しました」と母上呼びだが、離宮に着いてからは上官へと変える。


ブロディ・キャラウェイ・ゼフェルは整列し、アナスタシアの指示を待つ。

アナスタシアは全員を観察し、その状態からサボることなく訓練を行ったことを確信した。


「皆ご苦労。 今日の訓練は終了する。 明日も同じメニューを命じるが、今日より早く終えるように。 以上解散!」


汗や涙や涎、鼻水で、ヨレヨレのぐにゃぐにゃになった3人。

重い体に渇を入れ、指示に答える。

「「「ヤー!!!」」」


アナスタシアが去ったのを確認し、全員仰向けで地面に寝転んだ。


はーっはーっと荒い呼吸を繰り返し、暫くの静寂が続く。


「ゼフェル、大丈夫か? キャラウェイ生きてるか?」


「はい、父上。 俺は大丈夫です」

「俺も何とか生きてるぞ。 お前はどうだ?」


「生きてるけど、死にそうだよ。 前世含めて、こんな思いしたことないよ」


ふははっとキャラウェイが笑い、ゼフェルもつられて小さく笑い声が漏れた。


「母上は監視もせず訓練を指示しただけでした。 これくらい俺達なら軽いと思ったからでしょう。 その信頼に答えたいです」

と、良い表情で語る。


思わずゼフェルを見る大人2人。


そう言う見方も出来るのか・・・・・

辛くて苦しくて、恐怖から行った訓練だったが、基礎体力を付けるのは正道だ。

強く実績のあるアナスタシアだ。

効率の良い訓練なのだろう。


「そして俺は嬉しいんです。 勇者様達との訓練もそうですが、何より父上と一緒に過ごす機会が欲しかったので。 俺には良いことばっかりですよ」

「・・・・・うっ」

ブロディは起き上がり、ゼフェルの頭をわしわしと撫でた。


「父上?」

「僕も頑張る。 うん頑張るよ」

泣きながら、ゼフェルに微笑みを向ける。


ゼフェルは少し驚くも、すぐ微笑み返していた。


そんなブロディ達を横目にし『こういうの良いわね』と、うんうん頷き眦に涙も滲む。

前世を思い出しても、今世の自分だってなくならない。

今のブロディとキャラウェイは、前世と今世が融合している最中だ。

口調はちょいちょいお姉言葉も出るが、根本の気持ちは変わらない。

2人とも仲間思いの良い奴等なのだ。


なので3日間の基礎訓練を終え、ブロディとゼフェルは剣技。

キャラウェイは主にアナスタシアと魔術の訓練を磨いた。


ある程度の向上毎に対戦させたり、訓練をつけたりして月日は流れた。

ラリサが休日を取り8日が経った頃、ラリサからの手紙がアナスタシアに届く。


アナスタシアがラリサの(ウィリアム)に会ったことはないが、ラリサからは本当(マジ)天使と聞いていた。

軽い訓練を見せるのも良いだろう。

何れは次期公爵家当主となるものだ。

多少訓練をつけるのも吝かではないと。

そしてその旨を、手紙でラリサに伝えたのだ。



そしてラリサ再登城の2日目、ウィリアムも同行が許された。


アナスタシアの第一印象は、『とんでもないのを隠していたな公爵家』だった。

ラリサには及ばないが、多量の魔力に満ちていたのだ。

また単純に疑問に思い、耳元でラリサに問うた。


「ラリサ、ウィリアムはすごい魔力持ちだ。 何故隠していた? 弟可愛さからか? まだ幼き者ではあるが、この魔力は今後の戦力になる」

そう言ってラリサを見るも、ぽかんと呆けている。


「え、ウィリアムに魔力? 気づかなかったです」

ラリサはウィリアムを見ると、気づいたウィリアムは満面の笑みを浮かべる。


しかしアナスタシアは表情を曇らせた。

そんなに近くにいるのに気取らせないとは。

魔力関知に優れるラリサが気づかないなんて、ありえるのか?


アナスタシアはウィリアムを凝視する。

幼きながら端整な顔立ち。

礼儀作法も洗練されている。

魔力の形はラリサと同じ形状だ。

ラリサの魔力は、本来のラリサの物とブラックゴルゴノプスドラゴンの魔力を溜めた、竜玉からのものだ。

それがウィリアムにも見られるなんて。



竜玉の力は本来魔の物だ。

それが見られるということは、ウィリアムも魔の者?

いやいやいや、ウィリアムは間違いなくブルーノとメアリーの子だ。

顔立ちだって、ブルーノそっくりだ。

であれば、ラリサの魔力がメアリーに残っていて、年子のウィリアムに渡った?


ーーーー解らない。 今は保留にするしかない。 しかし要観察だな。 影に監視を依頼せねば。


そしてまたラリサの耳元に寄り、ウィリアムの魔力のことは誰も気づいてないのだなと確認し、そのまま内緒にするように指示した。


ラリサ的には同じ魔法使いができた。しかも弟で嬉しさしかないが、一先ずアナスタシア様の考えに従うことする。

何かお考えがあるのだろうし。

「解りました。 誰にも話しません」


私の言葉に、アナスタシア様は微笑んで軽く頷いた。

「ああ、頼むよ。 時期が来れば話すから」


この話は一旦終了し、ブロディとゼフェルの剣での打ち合いを見学する。

2人とも今日はウィリアムが見学することを知っている。

アナスタシア様から本気を出さないように言われているが、ゼフェルの剣が乗りブロディもつられて打ち返していた。


それをキラキラして見るウィリアム。

可愛い弟に胸が暖まる。

けれどキラキラの中、剣筋を追う目は真剣そのものだ。

その視線に気づき、ゼフェルはさらにヒートアップする。


「一旦ストップしてください!」

次の瞬間、突然アナスタシアから中止が告げられる。

不自然に感じるも、ウィリアムを呼び寄せる。


「折角ウィリアムが見学に来てくれているのに、挨拶もしないのですか? エリザベート(ラリサ)嬢に嫌われますわよ」

扇で口元を隠し、優雅に微笑むアナスタシア様。


ウィリアムは手を振り慌てる。

「急に見学に来たのに、お邪魔して申し訳ありません。 僕の我が儘のせいで、鍛練を中止させてしまうなんて」

そう言い頭を下げる。


「ああ、ごめんね。 ウィリアム謝らないでよ。 丁度休憩しようと思ってたんだ。 遅くなったけどいらっしゃい。 ゆっくり見ていってよ」

「ありがとうございます、ゼフェル王子。 こんなに強い方達が居れば、我が国は安泰ですね」

「僕なんてまだまだだよ。 でも誉めてくれてありがとう」


2人とも微笑んで紳士然としている。

側にいるメイド達は眩しそうに見つめているし、護衛騎士は将来の臣下になるウィリアムの丁寧な対応に、微笑ましい表情だ。


ここにキャラウェイはいない。

本日はお休みである。

秘密の訓練は他者には内緒なので、今日はウィリアムが来る為離宮に行かず騎士団の訓練場で剣の訓練をしているのだ。


そしてラリサとアナスタシアの剣の訓練の番となった。

普段は魔法攻撃が多い為、剣技は下手なラリサ。

でも、ウィリアムに見せるには、その方が都合が良かった。

ウィリアムには、ラリサが魔法が使えるのは秘密にしているから、魔法は発動させない。


それでも普段より訓練を積んでいるので、普通の令嬢よりは格段に打ち込みは出来てはいるが。

アナスタシアはほぼ実力は出していない。


「すごいですね、姉上。 さすがアナスタシア様です。 こんなに姉上が強いなんて。 改めて尊敬します」

「あはは、私は全然強くないよ。 ゼフェル様はすごいけど。 私は全然駄目」

その後も姉上素晴らしいと絶賛の嵐。

私が照れ隠ししていると、ウィリアムはアナスタシア様に声を掛けた。


「普通の令嬢がここまで強くなれるなんて。 やはりアナスタシア様はすごい方です。 不躾とは思いますが、僕も是非稽古をお願いしたいです」

緊張の面持ちで、頭を下げている。


アナスタシアは魔力の形に懸念が残り、即答を避けた返事をした。


ウィリアムも、多忙なアナスタシア様に無理強いは出来ないと、それ以上は頼まなかった。


ゼフェルは一緒に訓練がしたいと言っていたが、アナスタシアの勘が気を張らせたままだった。

何かが引っ掛かる。

この何かを解決せねば、前に進めない。


戦場で何度も死線を潜り抜けた勘は、ある意味命に直結するものだ。


そしてその勘は当たっていた。



魔界では失われた竜玉の気配を探り、転生後のラリサに行き着いていた。

竜玉の力をラリサを屠って取り戻す為に、次に生まれる赤ん坊に憑依し生まれてきたのがウィリアムなのである。


ウィリアムも転生という形で憑依した為、自我を取り戻すまでに時間がかかった。

自我を取り戻す前にラリサの優しさに触れ、すっかり好きになっていたウィリアムにラリサは殺せなかった。


しかしウィリアムは、魔界の王の命令により転生したのだ。

命令は絶対である。

なのでウィリアムは、まだ転生前の記憶を思い出せていないふりをしている。


いつまでそれが通じるかは不明であるが。


ウィリアムの元の名前はイリヤ。

魔王の次男。

魔界の第二王子だった。




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