地味顔の魔女は、妹に逃げられる
翌日パーティーさん(キャラウェイ)が公爵邸に着くと、今日は移動先でメイクして欲しいからこのまま来てと馬車に突っ込む。
今日のパーティーさん(キャラウェイ)は、1日公爵家で貸し切ったので時間の心配はないのだ。
「何なのよ、急に。 ちょっと貴女、まさかその顔でお城へ行く気? 入れて貰えないわよ。 それにその格好、まるで侍女じゃない。 どういうことなの~」
パーティーさん(キャラウェイ)が顔を近寄せて、私に詰め寄る。
化粧をすれば、女性と言われてもそうかなと思うくらいに美しい顔。
化粧を落とせば普通に美形男子だと思われる。
ただ声が(閻◯大王様の補佐官的な)バリトンボイスで、190cm近い大柄なスラッとした体躯。
特殊メイクの(運動量的な)弊害なのか、二の腕だけが発達しており顔とのアンバランスさが目立つ。
口調は勿論お姉言葉である。
そこを適当に宥めすかして何とか王様と王妃様達が待つ離宮へ、腕を引っ張りながら連れ込んだ。
この国の支配者達を前にし、流石のパーティーさん(キャラウェイ)も顔を真っ青にしている。
「は、初めまして。 わ、わたくしエリザベート様のメ、メイクを担当させていただいております、パーティーと申します」
思いきり頭を深く下げ、自己紹介をしたまま震えながら俯いて動かない。
王様は苦しゅうない面をあげなさいと穏やかに微笑み、よく来てくれたと言葉をかける。
腕を腋にぴったり寄せ、縮こまり恐縮しまくりのパーティーさん(キャラウェイ)。
パーティーさん(キャラウェイ)でも緊張するんだなと、ぼんやり考えているとアナスタシア様が問いかける。
「初めまして。 私アナスタシアと申します」
華麗なカーテシーを見せ、パーティーさん(キャラウェイ)を正面から捉える。
ビクッとする彼は、それでも目線を外せずアナスタシア様を見やる。
「時に貴方。 前世等を信じるタイプかしら?」
突然の問いかけに?となるパーティーさん(キャラウェイ)。
まあ、そうなるよねと見守る(ラリサ達の前世を知る)一同。
「えーと、前世ですか? 私はあんまり。 今を生きる女なので」
え、あ、うん。
女・・・なのね。
仕事できるし、優しいし、トークもばっちりで格好良いのに。
残念な女子は多いだろうな。
王様達の前での発言だもの、ビジネスお姉じゃないのね。
うん、いろんな生き方ありよ。
きっと今の状態のパーティーさん(キャラウェイ)だから、特殊メイクができるんだと思うし、女の子に寄り添えるんだと思うから。
そうしみじみと思う私を横目に、アナスタシア様の闘気が上がっている気がする。
気のせいじゃないわ。
「あ、あのさパーティーさん(キャラウェイ)。 貴方はキャラウェイっていう名前に馴染みがないかしら」
私はわりと真剣に尋ねた。
だってすんなり前世を思い出さないと、大変に痛い目に遭いそうだから。
それも思い出すまで。
う~ん。 そうねえ。 どうだったかしら? お付き合いや仕事関係でそんな人いたかしら?
悩むパーティーさん(キャラウェイ)。
そうだよね、前世なんて普通思い出さないよね。
私だって子供にしたら痛い目にあって思い出したし、ブロディ(王太子ニール)だって、私に思いっきり踏まれてたし。
やっぱり物理なのかな?
そう考えていると、アナスタシア様が鉄扇片手にパーティーさん(キャラウェイ)に詰め寄っている。
ジリジリジリジリ・・・・・・・
ただならぬ闘気に、腕を前に出し構えるパーティーさん(キャラウェイ)。
「パーティーさん。 この犠牲はこの国にとって大事なものなの。 少し痛いけど堪えてくれるわね?」
目が据わって獲物を捉えるアナスタシア様。
アナスタシア様の勢いで行ったら、パーティーさん(キャラウェイ)は額が割れて(生命が)終わる。
だってもう猛獣を捕らえる勢いなんだもの。
たぶん思った以上にパーティーさん(キャラウェイ)の覇気が強いからだわ、きっと。
二人が睨みあっている隙に、私は勢いをつけてパーティーさん(キャラウェイ)に詰めより、額にデコピンをかました。
ぐわっと呻き声が聞かれ、パーティーさん(キャラウェイ)は数歩後ずさり尻餅をついた。
加速で駆け寄ったせいか、思うより威力があったみたい。
でも死ぬよりましと思って許して、と心で詫びる。
パーティーさん(キャラウェイ)は、痛たたっと額を押さえ起き上がる。
「もう、ラリサ。 いきなり何すんだよ。 いっつも乱暴だな、お前は!」
「!?」
「キャラウェイ、キャラウェイ!!!」
私はパーティーさん、ううん、キャラウェイに抱きついた。
「何すんだよ。 離れろラリサ! あ、あれ?」
「キャラウェイ、今の僕は王太子だけどブロディだってこと信じるか?」
「え、え、え~~~~~~~!!! マジか!」
「「うん。 マジ」」
そうか、そうかと涙を滲ませて、何度も頷くキャラウェイ。
そう言って、300年前メンバーは、ここに集まることができた。
おお~、なんか知らんがキャラウェイ(パーティーさん)の口調が男言葉だ。
昔の記憶が戻ったから、口調も昔に戻ったのかな?
掻い摘まんで呪いのことを伝えると、怒り出すキャラウェイ(パーティーさん)。
「あんのくそドラゴン。 陰険なことしやがってあったまくんな! 復活すんならぶっ倒までだ」
「うん。 ぶっ倒そう」と私。
「あいつ旨いからな!」とブロディ(王太子ニール)
「殺すのは駄目です!」とアナスタシア様。
「ブラックゴルゴノプスドラゴンは、死す時呪いをかけるんですよ。 殺さないで封印しないと!」
「「「おおっ!!!」」」
そうでした。
思わず目先の欲に負けるとこでした。
「で、でもですね。 尻尾くらいなら良いと思いますよ」
とアナスタシア様。
「「「それだ!!!」」」
結局、美味しいものには勝てないよね。
「時にキャラウェイさん? 貴方、僧侶の力は使えそうなのかしら?」
そう聞かれ、首を傾げるキャラウェイ。
「呪文は覚えているんだけど、パーティーになってから使ったことないからなぁ?」
そう言って浄化の呪文を唱えるも、全然威力が弱い感じだ。
その時、キランッとアナスタシア様の瞳が輝いた。
「そんなことでは、ブラックゴルゴノプスドラゴンの解毒なんて出来ませんわよ! 明日から王城で特訓よ!」
「えーーー」と、声を出し嫌がるキャラウェイ。
大丈夫よ、貴方の拘束時間は王家から賃金を出すからと、アナスタシア様。
そういう問題じゃねえーと叫ぶキャラウェイ。
お肉の力尊し。
外向きでは王太子妃然としたアナスタシア様が、素になってます。
修行キツそう、頑張れキャラウェイ!
そしてワクワク顔で、2人を見つめるゼフェル様。
「ふおぉー修行だあ!」
この時期の男子は修行大好きだから。
それに勇者に憧れてるしね。
その時は他人事だと思ってた修行は、私とオジサンと化したブロディ(王太子ニール)も加えられていた。
あ、あの~私、一応公爵令嬢なんですが。
知ってるわ、私は王太子妃よ。
な~んて、スルースキルで修行の日々に突入させられたのでした。
キャラウェイに治癒の呪文を頼んだら、自己回復しないと力にならないからと却下された私。
お陰で妹達に「お姉ちゃま湿布臭いでしゅー」と不評。
抱っこしようとしたら、逃げられました。
そんな中ウィリアムだけが「しょうがないですね、姉上は」と、撫でてハグしてくれたの。
良い子ね、ウィリアム。 お姉ちゃんは幸せです。




