地味顔の魔女は、まだ恋も知らない
「私は・・・・・・・」
どう思ってたんだろ?
家族みたいなものだとは思ってた。
あの頃は私もブロディもキャラウェイも、辛い場所からやっと抜け出せて、自分達で狩って食べて素材を売って人並みに暮らせるようになってきたところだった。
恋も愛も考えたこともなかった。
ただいつも3人一緒にいた気がする。
皆とバラバラになって、寂しくて寂しくて何日も何日も泣いたけど、それがどんな感情かは解らない。
ただただ寂しかった。
「私は生きる為にいつも2人と一緒に居て、急に1人になった時は寂しくて苦しくて辛かった。 でもその後も1人で狩りをしてお金も貯まって食べるには困らなかった。 2人のことを思い出してもだんだん悲しさはなくなったから、そんなに好きじゃなかたのかな?」
言っているうちに涙が出ていた。
思い出は風化したが、気持ちは一瞬で当時に追いつく。
恋じゃなくても好きだったのかもしれない。
ずっと一緒に居たんだから、絶対嫌いではなかった。
全ては今さらである。
過去には戻れない。
「あれ、変だな。 なんで涙が・・・・・」
アナスタシア様が、ハンカチで涙を拭いて下さった。
「ごめんなさいね」
と謝るアナスタシア様。
私は何故謝られるのか解らなかった。
ただそれ以上聞かれることもなく、なんとなくニュアンスは伝わったかなと思った。
それから皆の所へ戻り、気分を切り替えて今後の対策を立てることにした。
まず王家の伝承として、ブラックゴルゴノプスドラゴンの復活と共に、他の魔物も溢れることになればカオス(混沌)と化すだろう。
既に魔物は増え始めている。
王は言う。
このタイミングで、勇者と呼ばれていたブロディ(王太子ニール)と魔女の私が出会った。
きっと僧侶のキャラウェイも転生しているはずだと。
強い因縁で結ばれる者は、期せずして巡り会うのだと。
ブラックゴルゴノプスドラゴンの結んだ呪いの縁は、中々に強い。
きっと今生では既に巡り会っているだろうと。
キャラウェイらしい人物を皆で考えてみる。
まず、キャラウェイがなりたくない人物になっているはず。
・兄弟姉妹が多くて、寺院に預けられた
・先輩や貴族から苛めを受けていた
・お姉口調の男の僧侶が一番嫌い
・貴族に逆らって逃走しないといけない立場になった
こんな感じの人物をそれぞれ探す。
兄弟姉妹が多くて、平民で、お姉で、貴族に逆らうとか喧嘩っ早い?
喧嘩っ早い平民騎士はいるが、お姉言葉の人は表面上ではいない。
商人で言葉遣いがお姉ぽい人はいるが、喧嘩っ早い人はわからない。 商売をする相手には粗っぽい面は見せないだろうし。
寺院関係は解らない。
そもそも王族や貴族が接する人々は限られているのだ。
皆が意見を出す中、私はある人物を強烈に思い浮かべる。
あの時は、化粧や香水臭くて気配の察知なんてしていなかった。
というか、戦闘中じゃないからする必要もなかったし。
でもなんか色々当てはまるんだよね。
無意識でデスってくるし、見るからにお姉だし。
おずおず手を挙げおもむろに、
「もしかしたら、私のメイクをして下さった方がそうかもしれません。 まだ気配を確認していませんが、たぶん」
そう言うと、流石引きが強いね。
きっとその方ですわ等とワイワイしてきた。
うん、あんな強烈キャラ他にいないしね。
私は一度泣いてメイクが取れ、ブロディ(王太子ニール)とアナスタシア様に素顔を見られている。
その後アナスタシア様に、軽くメイクをしていただいたが、来た時と顔が違うのだ。
たぶん皆(ブロディとアナスタシア様以外)は、?となっているはずなのだ。
それほどのメイク。
詐欺と言っても過言ではない。
もう面倒くさいので、顔を拭いた状態を見てもらうことにした。
だって緊急時に一々メイクなんて出来ないし、顔が変わる度混乱するだろう。
そしてそして、こんなに地味ならいくらなんでも王太子妃なんて外されるでしょ?
笑えば笑え精神で晒す。
すると皆一瞬ポカンとなったけど、
「その顔良いな、なんか落ち着く」と王様。
「別に美人が王太子妃の条件じゃないし。 アルバート(王)は知ってるけど、私化粧してこれだから。 幼馴染みから結婚したけど、私も充分地味顔なのよね」
「私はイライザの顔が大好きだよ。 ニールは私に似てしまったが、もし女の子がいればいれば、君に似たんだろうな? 可愛いかったろうなぁ。 もっと頑張れば良かったな、ねぇ」
「もう、何言ってんですか」
王様と王妃様が、なんだかにこやかになってます。
「え、そんな顔変わったかな? うん、化粧しない方が白粉臭くなくて良いな。 なしで良いんじゃない」とゼフェル様。
面食いじゃないのね王子。
ブロディ(王太子ニール)が笑っただけで、わりと受け入れられたのだった。
(毎回メイクに2、3時間かかってた)今までの苦労とは?
明日からギリギリまで寝られるわ。
もっと早く言えば良かった。
まぁ、言うタイミングなんて無かったんだけども。
「そうと決まれば、すぐその方に連絡いたしましょう」
アナスタシア様は、手をパンと打って話を戻す。
「明日も私のメイクに来てくれるはずなので、その時にお連れします」
そうですかと皆頷いてくれた。
「でも記憶を呼び戻すのは、どうしたら良いか私には解りません」と皆さんに問うと、
アナスタシア様が即答した。
「そんなのニール(王太子)様と同じでいけるんではないでしょうか? まずお話をしてからですね。 ふふふっ」
私は思わず息を飲んだ。
と言うか、アナスタシア様以外『え~物理で!?』と反応。
でも誰も何も言えませんでした。
だってこの中で一番強いのは、間違いなくアナスタシア様だから。
まぁいざとなったら、魔導師のおばばさんに協力してもらう手もあるよね(物理の前に)。
だから私は、心の中で祈った。
『生きろ! キャラウェイ』と。




