地味顔の魔女は、やっと肉を食べる
アナスタシア様と相談し、私の前世を誰に話すかを決めた。
まずは王様と王妃様。
次に第一王子ゼフェル様。
まずはこの3人に話すことになった。
この段階で私が魔女であると言う噂が立てば、情報コントロールはほぼ無理だろう。
これ以上は誰にも真実は話さず、現時点で秘密を共有した者で、討伐対策を立てていくつもりだ。
それはアナスタシア様とも共有認識だ。
一番の敵は、強敵ではなく愚かな部下味方だと言う。
どこの組織も一枚岩ではないのだから。
そして、以前にアナスタシア様に追われた離宮で、肉祭りを開催することにした。
参加メンバーは、私の前世を話した方達だ。
私の今の親であるブルーノとメアリーは、私がブルーノの祖母だった記憶はあるが、討伐時のことは話していない。
余計な負担はかけない方が良いと思い、アナスタシア様とも相談し打ち明けるのは止めたのだ。
私のラリサ(祖母)だったことを秘密にするのも骨が折れるのに、これ以上は無理強いさせたくない。
秘密を守るのは、案外負担になるものだから。
そんなわけで肉祭りである。
私の空腹は限界で、お腹もなり、ブロディ(王太子ニール)も食べたがっている。
場所も人も最高のセキュリティだ。
肉を焼くならいつ? 今でしょう状態だ。
ブロディ(王太子ニール)は、自分の前世の生い立ちを含め今回のオンボロぶりを振り返り、本当に申し訳ないと両親(王様と王妃様)と第一王子様に深く頭を下げて謝罪した。
3人に信じて貰えなければ、今後の作戦や親子の関わりは絶たれるからだ。
ブロディ(王太子ニール)は、誠心誠意の気持ちを込めた。
己のせいなので無理強いはしない。
駄目なら駄目で、影ながら討伐に力を注ぐだけだと決めた。
だが決死の思いは、あっさり受け入れられた。
まずゼフェル様が、ブロディ(王太子ニール)に抱きついた。
「父上すごいです! まさか父上が伝説の勇者様なんて。 俺にいや私に、剣術を教えていただきたい。 お願いします」
と、羨望の眼差しだ。
ブロディ(王太子ニール)は一瞬に涙腺が決壊し、泣きながら我が子を抱きしめた。
「ごめんな、ごめんな。 僕頑張るから。 ずずっ、ぐじゅ、ふぅぐぅ・・・」
詰られて許されないと思っていたので、これには驚きと愛しさと切なさと心強さで、自制が効かなくなっていた。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃである。
そんな父を嫌がりもせず、初めて強く抱きしめられた幸せを噛みしめたゼフェル。
でも片隅で鼻水だけは拭きたいなと思う、子供心は正直だ。
それを見て王様も王妃様も許すことにした。
彼はこの国の救世主。
そしてゼフェルが許すなら、もう良いかと。
勿論腹に据えかねていることもたくさんある。
仕事しないわ、ギャンブルするわ、女遊びするわ、極めつけに第二王太子妃!!!
家の孫に暗殺とかマジ無理!
滅すジリアン、滅すジリアン、滅すジリアン・・・・・・・
そこにいた全員が、黒い気配で王妃様の方を見る。
王妃様は心では許すと決めて、顔もにこやかにしているつもりだった。
真実そうなっていた。
しかし、ジリアンのことを考えた時点で、顔は歪み黒いオーラを放っていたのだ。
だが皆が顔をガン見していることに気づき、コホンと1つ咳払いして許しますよと呟いた。
王様もにこやかに許すと伝えた。
アナスタシアと王妃が許すなら従うまでだ。
内緒であるが王は、イライザの地の表情が大好きである。
泣き顔も好物だが、歪んだ顔はご褒美だ。
長年周囲に気持ちを悟られないように、無表情で過ごさなければならない王宮。
いつも歪んでいてはいただけないが、稀にでるこれはレアケースで尊い。
因みにゼフェルは(今の所)健全だが、第二王太子にはがっつり遺伝している。
それを知るアルバートは、(勝手に心の友にしている)ロビンのことも可愛いのである。
ジリアンのことは煩いだけなので、苦手としているが。
困惑の中、離宮の厨房でブラックゴルゴノプスドラゴンの肉を少量取り出す。
少量と言っても、牛1匹程度の大きさはある。
蜥蜴の鱗のような背中から尻尾に向けてのチョイス。
「ふおぉーーーーー!!!!!!」
ゼフェルのテンション爆上がりである。
すごいすごいと大喜びだ。
アナスタシア様は毒はないの?と不安そう。
僧侶が解毒しているので大丈夫ですと伝え、輪切りにした尻尾肉に塩コショウとニンニクスライスをまぶし、広い調理台のグリルで高火力で焼き始める。
数分すると、室内中に香ばしい肉とニンニクの臭いと煙りが充満する。
ジュージュージュージューと、肉汁が溢れては鉄板で蒸発し濃縮した薫りが胃を刺激した。
米は焼き始める前に、炊飯器にセット完了だ。
まずは一口と、お試しのコンガリ焼けた肉を私がナイフで切って頬張る。
「何これ! 旨い。 熟成とかしないはずなのに、300年前よりうまーっ!」
皆も美味しそうに見ている。
言葉遣い悪いですが、ここは無礼講で許してね。
ブロディ(王太子ニール)も「僕も毒味行きます!」と、わりと大きめに切り頬張った。
「これこれこれこれ!!! う~ん、ずっと食べたかったよ~ ドラゴンちゃん。 マジ旨」
もう語彙が王太子じゃないね、うん。
しかし、美食の前では誰でもそうなるのだよ。
その後は、毒味終わりと言うことで全員で解禁。
「何だこれは! こんな濃厚でジューシーな肉食べたことないぞ!」と王様。
「この肉汁。 これ本当にドラゴンなの? 身は締まっているのに硬くなく、数回噛むとほぐれていくわ」と王妃様。
「お、美味しい。 辺境地の猟でもこんなに美味しい肉食べたことないわ! ちょっと、何の肉って。 ドラゴンだったわね。 ドラゴン美味しいのね」とアナスタシア様。
アナスタシア様もドラゴン肉にロックオンです。
目が物語ってます。
これからの討伐にも力が入りそう。
「これが伝説のドラゴン・・・・・ 美味しい美味しいです。 すごい俺ドラゴン食べてるんだ」とゼフェル様。
そしてポツンと、ロビンにも食わしてやりたかったなと小さく呟いていた。
その声は小さくて誰にも聞こえなかったが。
大盛況で肉祭りは終わる。
(内緒の宴なので片付けも自分達でしてます)食器を洗いがてら、アナスタシア様がお皿を拭きつつ話かけてきた。
「あの、あのね。 貴方は、前世でブロディさんを好きだったのかしら?」
もどかしそうに、聞いて良いか戸惑うように。
もう時効だから聞かせてと。
「私は・・・・・・」




