慢心が生み出した最高にして最悪の幸運
初! 投! 稿! です!!
まだまだ未熟者ですので、あらすじと内容が若干違ったり等あるかもしれませんが、どうか生温かい目で見てくれると嬉しいです。
それではどうぞ!!
「ここまで来れば大丈夫でしょ・・・・・・・ふぅ―・・・・」
静寂に声が聞こえる。暗闇に人影が見えた。明らかに重そうな大型バックをドスンッと肩から降ろし、緊張の糸でも切れたのか、そのまま落下するかの様に勢い良く腰を下ろす。人影、もとい彼女、アトレア・ウォーミックの顔面は、危機から脱せた事による安堵と喜びで埋め尽くされていた。
死地、生死の境界線、その中で見つけた大穴の先、そこには洞窟、否、それは洞窟ではなく半壊した地下通路だ。旧人類文明特有の未知物質で構築された壁と床、そして天井、相当年月が経っているのか、そこらじゅうに亀裂が走り、表面はボロボロ、下手すれば一瞬で崩れそうにも見える。事実、一部の壁は崩れ道の妨げになっている為、案外ここも安全とは言い難いのかもしれない。
「まさかファイトエレファスの突発的大移動があそこまで大きかったとはね、ちょっと油断し過ぎたかな」
脳裏に浮ぶは大群、白き装甲と巨体を持つ、象を模した機械たち。人類圏外世界における覇者にして、旧人類が滅びた今も動き続ける亡霊、旧造機兵。アトレアの口から出たファイトエレファスもその一種であり、特に嫌われている個体の一種だ。何せ、巨体に似合わぬ運動性能と巨体通りの重さを合わせた攻撃は周囲に甚大な被害を与え、オマケに装甲も厚く、並大抵の攻撃は通らない。更に、搭載している人工知能の思考ルーチンが凶暴性の塊である為、積極的に暴れまくる。正しく害悪といえる様な存在だ。尤も、高い戦闘力を持つアトレアにとって,二,三体程度であれば余裕で叩き潰す事が出来るだろう。
そう、二,三体程度であれば,だ。
激しく感じる強い揺れ。ファイトエレファスの大群が、質量の大波となって数多を飲み込み、押し寄せてくる光景を想像する。
突発的大移動・・・・・・・・・原因不明の、大多数の旧造機兵による一方向への大進軍。一度起こったら最後、一匹残らず殲滅するか指揮個体を破壊しないと止まらないその現象は、小規模なものでも百を超え、中には十万に届きうる大群が突発的大移動を起こしたという記録もある。
もし前者・・・・・百体規模の小さなものだったのなら、アトレアはこれを殲滅することが出来る。実際そういった事に何度も出くわしたことがあるし、そして何度も殲滅(もしくは撃退)に成功してきた。
だからこそ、彼女は自信を持っていた。だからこそ、ファイトエレファスの大群が見えても彼女は逃げず、その場で臨戦態勢を取っていた。
しかし、その慢心故か、あるいは目測を誤っていたのか
どっちにしろ運命の女神は、今回に限って、アトレアを見捨てたらしい。
「しっかし大丈夫なのかなアレ、割と洒落にならない規模だったんだけど・・・・・」
三万弱。戦場を飛び交う中、パッと見で見えたファイトエレファスの合計。それ以下かそれ以上かは兎も角、分かった頃には既にド真ん中、ジリ貧になりつつも何とか活路を模索し続けた結果、こうして今に至っている。
「・・・・・・とりあえず、まずは装備の確認からね。さっきの戦いで結構消耗品使っちゃったし、余ってるかな・・・・・」
そう言ってバックに手を伸ばし、中を確認し始めた。いかにも頑丈そうな大型のバックは、その外側に何個かの機具道具をくっつけている。よく破損しなかったものだ。
それはそれとして、肝心の中身なのだが・・・・・予想通りというべきか、大きさに反して、バックの中身はすっからかんであった。僅かに残っている物を、彼女はその手で掴み取る。
「治療用ナノマシンが三本、手榴弾と閃光弾がそれぞれ一つ、それから・・・・・・・・・」
出しては戻し、出しては戻す。やがて、バックの中身全部を見終えたアトレアは、今度は視線を手前に移す。
「・・・・・うわ、めっちゃボロボロじゃん、これ最後までもつかな?」
片手で掴まれ、彼女の目の前まで引っ張り上げられたそれは、黒く、大きい、戦斧であった。
相当雑に使っていたのか傷が多く、刃に至っては少し欠けている。今の今までアトレアを支えてきたこの武器は、現代で生まれたにも関わらず、力場操作や超音波振動といった特殊機構を積んでいなかった。
戦斧――――アトレアによって、"グリュスレイ"と名付けられたその武器の、唯一にして最大の特徴。
それは、余りにも重過ぎる質量だ。
大量の鉱石を限界まで圧縮して一纏まりにする、という力技によって作られたグリュスレイは、斧の形をしたビルともいうべき重量を持つ。生身の人間が持ち上げる事はまず不可能。仮に持ち上げられても、足の骨が重量に耐えられず、木端微塵になることだろう。そんな物を片手で持ち上げられるのは、何より彼女が人間ではない機械の体を、その身に纏っているからである。
「さてと、確認もこれくらいにして―――」
今の自分の状態は把握した。であれば、次にやる事は一つ
「―――こっから、どうしようか」
それは、今後の方針についてだ。揺れを感じるあたり、突発的大移動はまだ過ぎ去っていない。であれば、しばらくはここで待機し、揺れが収まった後、外へ移動する、というのがこの場におけるセオリーな行動だ・・・・・・ただ、もう一つの選択肢を除けば。
「やっぱり気になるよねーー」
菫色の瞳をおもむろに向ける。視界に入るは、自分が少し前に通った出口へと続く道・・・・・・・・の、反対方向。光無き暗闇に包まれた、更なる先へ繋がる、下降りの階段。頭に浮かんだ何かの顔は、女神かそれとも悪魔なのか。
「うーん・・・・・・・」
先へ進むか出口に戻るか、突き付けられた二つの選択。
そもそも、だ。死神の鎌が常時展開してるような所たる人類圏外世界に来たのにはちゃんとした理由がある。それを話すにはまず、人類圏外世界について説明しなければならない。
人類圏外世界。旧人類の遺産、星の大部分を占める古き世界。鋼鉄の死神が闊歩し、数多の法則が書き換えられたこの地は、生命が暮らすというには余りにも過酷だ。
大地に積み上がった旧人類文明の残骸。かつての遺伝子操作と進化により鉄を食い破る程の変貌を遂げた植物。未知の有害物質によって汚染された極彩色に濁る死んだ海域。こうして言葉を並べただけでも、人類圏外世界が天国とは逆方向のものだということがよく分かる。だが地獄でないことは確かだ。でなければ目を輝かせながら、その地にズカズカと踏み入れる荒くれ者が、存在するはずないのだから。
彼らは決して自殺願望者ではない。ただ目の前の財宝の為、命を賭けようとしているだけだ。
人類圏外世界は死の世界であると同時に、宝石の詰まった宝箱でもある。滅びてもなお残った旧人類文明の品々はアーティファクトと呼ばれ、たった一つだけでも物が物なら相当な金額で売れてしまう。その為、それらを狙い目にし、一攫千金を図ろうとする輩がこの世界には滅茶苦茶いる。
アトレアも、その一人だ。彼女は現状信用できてる情報屋から、この場所の情報を得た。最近収入がよろしく無く、生活費もキツくなってきた為、今回の探索は成果出すぞー!!と意気込んでいたものの、結果はご覧の通り。このままだと利益を出せずに今日が終わってしまう。最悪、旧造機兵を狩って剝ぎ取った部品を売れば大丈夫っちゃ大丈夫だが・・・・・・・恐らく、ここら一帯の旧造機兵たちは、突発的大移動によって全滅している。あったとしても、それは潰れて使い物にならないガラクタだろう。
「・・・・・・・・・・・・・・」
先へ進むか出口に戻るか、突き付けられた二つの選択。
答えは既に決まっていた。
「よっこらせっと」
腰を上げて立ち上がる。バックを背負って、グリュスレイを持ち、アトレアは一歩踏み出した・・・・・先へと続く階段へ。
コツンッと段差を降りる音が、静寂の中、響き渡った。
「・・・・・・・・・・・・・・」
慎重に、慎重に歩を進める。されど瞳はただ一点、階段の奥、果て無き暗闇を見つめていた。
深淵、否、それは未知だろうか。湧き出る好奇心が、先の何かに近づこうと体を引っ張る。
何があるかは分からない。輝かしいお宝か、鎌を持った死神か。だがどちらでも変わらない。
欲しいものへと突っ走り、障害物は鉄屑にする。それが彼女、いや彼女たち
スクラッパーなのだから。
変なとこがあったり、こうした方がいいよー的な事があったら、遠慮なくコメントしてください!
あと次に投稿する日時は未定です。私はマイペースですから・・・・・・。