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大きな光・大きな陰 笑って 生きてちょうだい

2011年8月 信一


 2か月前、あの日イシと白紙にもどして楽になると確信していたが、その後イシの発言で怒りが収まらない、今だにだ、

何処で消化出来るのか、またイシと向き合うのか、それはない、じゃあ、おれが、まともな歌詞書いて、母さんに謝まれば良いのか、それも無理だ。

 このイライラの原因は何処だ、やっぱりイシだ。あの時、見下されたんだ、逆をすれば気が収まるのか、、どう逆をするといいんだ。

 あぁ、おれがイシを、見下すと気が収まるのか、

なんで、そう言う考えになるんだと、違うおれが言う。

 3カ月前は引退して、好きな音楽を趣味で作って、ドクの個展を開き、イシと楽しく暮らす、長年の夢が叶う目前だった、突然おれがイシに飽きたんだ、イシもそれに気づいた。元々、イシのおれへの想いは聞いていない、全ておれが強引に進めた。おれがイシを振り回した。わかっているが、

夢が無くなって、逃げる予定だった世界にいる、どうする、やっぱり逃げるか、それもわからない、

 わかっているのは、おれの商品価値が下がっている事だ、

 もうひとつ最近体がだるい、飲み過ぎだろうと思ってもアルコールはやめられない。

 

 イシが東京で個展をやるのをさっきネットで知った、

未練はないはずなのに、ドク 個展 で時々検索していた、時間があったら見に行くかぁ、やはり絵は見たいと思った。

チューリップの男が全部やってやるんだろうな、なんでおれ、イシに飽きたんだろう、おれが隣のはずだったのに。

 毎晩、支離滅裂の考えで疲れた、でもやめられない。次の日の朝、起きられなかった。



2011年 8月 維士


 ひと月前の夜、大ちゃんが、

「イシ、個展会場決めた、東大前の歯科医院だ」

「もっと、詳しく、教えて、、今、東京から帰ってきたの」と、僕が聞いた。


 昨日大ちゃんが、明日東京の歯医者に行ってくるって言っていたので、帰りだろうと思った。

「今帰った、俺が通っている歯科医院のロビーだ、東大の赤門前で、3階建ビルの2階、1階の駐車場も使っていいって、イシが思っている歯科医院とちょっと違うと思う、1日2人しか見ない、自費診療の歯医者だ、2階ロビーも広いし1階の駐車場って言ってもロビーみたいな駐車場だ、」

「えっ1日2人って、どんな金持ち相手にしているの、凄いね、そう言う歯医者あるんだ」

「俺みたいな金持ちだ、冗談だけどな」

「えっ大ちゃん、自費診療の歯医者に行ってたんだ」

「あぁそうだ、イシにこの前、ひと月の撮影で10年契約のモデルした事話だろ、イシに話た少し前に契約切れたんだ、契約中は俺がモデルだって喋れなかったんだ、切れたから言えたんだ。10年間の仕事が、おれがイメージモデルだって言わない事と自分の管理だった。毎月、金が入っていた、結構な金額だ、だから歯も定期的にメンテナンスしていた、小金持ちなんだ」って笑って教えてくれた。

「そうだったんだ、へぇ」と、大ちゃんの違う一面を初めて知った。


「ところで、イシ、今後の事、話合おう、、、どうする、一切イシは表に出ないか、それとも、顔を出して宣伝するか、どうしたい」

「うん、僕は、顔を出して宣伝するのも良いかなって最近思うんだ。自分がしっかりしていれば、周りに流されないし利用されないと思う、

もちろん、大ちゃんにはたくさん助けてもらいたい」

少し考えてた大ちゃんが、

「うぅん、そうか、そうだな、2人でガンばっか」って変な日本語言ったが、

「宣伝方法どうする」って僕が言うと、「新聞広告、前の10万じゃあなく30万で、行こうと思っていた」

「それで良いよ」

「急だけど明日午後から東京行こう、場所見て直ぐ帰ってくるだけだけど」

「ありがとう、良いよ、チューリップ大丈夫」

「今日頼んだ人に、明日の午後も頼むつもりだ、大丈夫だよ」


 次の日、歯科医院の先生を紹介されてロビーを見せてもらった。思っていた以上に豪華で広かった、借りる期間とか金額とかの契約を簡単にした。

「私も自分でかっこいいと思ってたけど、君達2人は、別格だね、大さんの事は知っているから見なれてたけど、イシくんはどう表現していいか、別格の5乗くらいだよ、ついでにうちの歯科医院も宣伝してね」って先生は、冗談を言った。


 会場を見て絵は60枚くらい出す予定だ。

多いかなと思ったが、会場に合わせると丁度いい、前の時と同じく入札方法にした、

今回は、14時から21時の時間帯で1週間だった。アルバイトは頼まないで、僕がいる事にした、大ちゃんは、アルバイトを頼んだ方がいいと何度も言ってくれたが、大丈夫だと強く言ったら、大ちゃんも一緒にいるって事になった、

「チューリップ大丈夫かな」

「人頼むよ、2日おきに17時に上がってチューリップ見に帰る、次の日14時までには新しいチューリップ持って、戻るよ」

「僕、ひとりで大丈夫だと思うよ」

「ダメだ、」と、大ちゃんが頑張ってた。


 今回もチューリップとコラボなので、2日おきが、丁度良いという。

チューリップは、個展終了後発送とした。

信ちゃんの母さんに、個展やる時教えてと言われていたので、迷ったが、メールで簡単に教えた、(ありがとう)との事の返信だった、おばあさんを見ているから忙しいんだろうと、それで良い、会っても話方がわからなかったので、ほっとした、 


 8月になって、2人は正装して初日を迎えた。

前回はアルバイトの人に座っていてもらうだけだったが、2人にとっては初めての個展会場案内だった、

「なんか、ドキドキする」

「大丈夫だ、誰も来ない時は2人でお茶飲んで、おしゃべりしよう」と大ちゃんが笑顔で言ってくれて、少し落ち着いた。

 開催お祝いの花を歯医者さんが、大ちゃんのチューリップを100本買って、大ちゃんがレイアウトしてくれた、

 耳の後ろがキリキリ痛いが気にしない事にした。


「こんにちは、お久しぶり」と、信ちゃんの事務所の社長が来た

「来て頂きありがとうございます」と僕が挨拶すると、飾ってあるチューリップを見て

「このチューリップ何処で作っているの」と、チューリップに興味があるようだ

「あっ、あそこにいる彼が作ったます」と、大ちゃんの方を向いて教えたら

「あっ、モデルだ、えっどうして」

と驚き「ちょっと、聞きたいけど、信一あの方の事知ってるの」と続けて聞いてきた

「はい、知ってます」と僕が答えると

「そう」と、曇った顔で社長が言った

大ちゃんの方に行って何かを喋り名刺を渡していた、僕の方がにまた戻り「信一が宜しくって、じゃあ伝えてたので帰るわ」と、言って帰ってた。



 最終日の前日、ドクの絵のファンが画家ドクの写真をブログに載せ、世界的モデルがチューリップを作っていると載せたらしい、最終日会場は騒がしい、加えて大学の卒業式の後、東京駅でたまたまTVに映った僕達を探していた、局の人まで、カメラを持ってきてた、

絵をゆっくり見てもらえる状態ではないので、

15時には閉めた。大変な1時間だったが、外がまだ騒がしが、公共の場所なので直ぐおさまるだろ。遠くからパトカーのサイレンの音がした。


 全て片付け帰宅後、大ちゃんと打ち上げだ。


次の日は絵の購入者達との連絡等で、忙しかった。


2011年 8月 維士


 個展の次の日、信ちゃんの母さんからメールがきた

(個展終了おめでとうございます

昨日、17時ごろ会場に行ったら、最終日は終了時間早く、間に合いませんでした、残念です、

次回開催の時は是非また教えてね

 信一のおばあちゃん、3日前から施設で生活をしています

気が向いた時には遊びに来てね

お元気で   )

あぁ来てくれたんだ、おばさん施設かぁ、信ちゃん知っているのかな、と色々一瞬に頭に過った、

おばあさんの様子が全然書いてないので、どういう状態なのか気になった、もう会いには行くまいと決めていたのに


(連絡ありがとうございます

わざわざ来て頂き、会えなくて僕も残念です

 おばあさん施設ですか、僕が施設に行って会える状態ですか、会えるのでしたら、近いうちに行きたいと思います。)と送った


(お気持ちありがとう、

痴呆症が酷くて、イシくんの事わからないかも、そうな状態だけど、会える事は可能、だけど無理しないで、気を使わなくていいの、

お気持ちだけもらいます、ありがとう)と、返信だ、


 何回かのやり取りで、今度の日曜日に一緒に、おばあさんに会いに行く事にした。大ちゃんに言うと、当日チューリップ持ってけと言ってくれた。


 日曜日施設に行った、おばあさんの部屋はテーブルと僕の描いたたんぽぽの絵が飾ってあるだけだった、またひとまわり小さ苦くなった、おばあさんと面会した。持ってきたチューリップは施設の人に飾って欲しいと渡した。

おばあさんは僕を見て

(夕、今日の学校どうだった、手も、足も傷だらけだね、なにが、そんなに辛いの、お母さんに夕の辛さ全部くれないかな、

ここが嫌なら引っ越しても良いよ、お母さんの仕事より、夕、あなたに笑顔になってもらいたい、生きて欲しい

お父さんがいない事で、こんなにあなたに不憫にさせるなんて、若い頃のお母さんは考えなかった、

それともお母さんが、夕を辛くさせる原因なの、厳し過ぎた、誰にも負けない夕になって欲しかっただけ、

お母さんの言葉が夕を辛くさせた、、、全て言い訳になるけど、仕事も大変で忙し過ぎて、お母さんの心に全く余裕が無くて、言葉で夕にあたっていたのね、

1人でも、夕をちゃんと育てて、2人で笑って生きようと思ってたのに、お母さんが悪かった、辛くさせてごめんね

お願い夕、笑ってちょうだい、笑って、夕、ごめんなさい、ごめんなさい 笑って生きてちょうだい)って僕に言って泣いていた。信ちゃんの母さんも、僕の横で泣いていた。


(なにも、辛い事ないよ、お母さんは、笑っていれば、いい、それが、願いだよ、お母さんを守るから)と僕は、おばあさんに言った。


10分くらい、手を握ってあげ、落ち着いたところで、また来るからと、お別れした。


帰る途中駅でお母さんと休んだ。

「イシくん、びっくりしたでしょ、夕は私の名前なの、私の中学時代のお母さんになってたのね

さっきおばあちゃんが、言っていた事、当時は言った事ないの、ずっと何十年言えない事、後悔してたんでしょ、、、辛いね

 そうね、母1人子1人、当時は辛かったかな、

同級生とも母とも上手くやれない、元々人が苦手で友達もいなかったの、勉強だけ出来る子供だったから周りから浮いてしまって嫌われたの、いつも何かがなくなっていた、、、

母は仕事が上手くいってないようで忙し過ぎていつもイライラしてた、学校も家も居心地が悪かったわね、あんまり思い出したくないけど、これを見ると心の中で涙が出てくるの、なんでだろうって今だに思うの」と、母さんは腕の傷跡を見せてくれた。

「気持ち悪いでしょ、信ちゃんが私を嫌いなのは、これも原因のひとつだと思う、、、

 施設の部屋のたんぽぽの絵、痴呆が酷くなっても、これは、私と夕が歩いて来た道標だから一緒だって、持ってきたの、踏まれも何度でも起き上がって泣き笑いしながら、来たでしょと、私に言うの、

お母さんであってお母さんでないよう感じね、でも生きていてくれるだけでいいの痴呆が進んでもお母さんなの、素敵な絵をありがとう

今日はありがとう、イシくん、また会いましょ」と母さんが僕に言った、

かける言葉を見つけれない、何十年苦しんでいる人に、かけれる言葉を僕は知らなかった。

「また、来ます

今日は、母さんとおばあさんに会えて良かったまた、来ます」と繰り返した。




2012年 春  信一

 

 朝、目が覚めると、いつも通り真っ白だ、

「あァぁ、今日も生きてた、」と、独り言をいい、ほっとした、

「検温の時間です」看護士が入って来た、

今日も一日いつも通りの流れがまっている。

 入院が陰の部分今なのか、光の部分なのか、たぶん陰だろう、陰とか光を考えると、ばあちゃん元気だろうかと思う、1年前会ったきりだ、

考えるの事は、全て過去の事だ、寂しい気もするが、未来は見ない、。

 

 昨年夏、仕事に来ない俺を社長が呼びに来て、起きないおれに異変を感じ救急車を呼んでくれてから、もう8か月くらい入院している、

内蔵が、悪いらしい、説明は受けたが、多すぎて面倒なので、まとめて内蔵だと思った、今日、明日死ぬ事はないが、そんなに長くもないような気もするが、一応先生は、治療次第だと言ってくれた。

 事務所と契約していて良かった、全て面倒をみてくれる、後1年契約は残っている。

実家に連絡は必要ないと言った、世間には病気入院とは発表せず、ただ単に仕事を入れていない状況だったので、自然引退の様だった。

 暇なので、いつも同じ事を考える、イシを飽きた理由は、そうするといつも子供の頃を思い出す、おれの顔色伺う、気を使った言葉をよこされても、無視をするおれがいる。

 無視をする事が悪いと思わない、なぜ、わからない、

最近、人がどう思っているかを考えればと、わかったが、おれが考れば、おれの考えだ、

内科医だけじゃなく精神科医も必要だな、呪術師もだなと、いつもの堂々巡りが頭の中で言っている

 

 珍しく社長がきた

「信一、そろそろ退院だって、先生からよ」

「あぁ、おれ、もう長くないって事かな」

「静かに暮らせば、20年、30年、大丈夫だって」

「そうならいいけどなぁ」

「で、これからの事、どうしたい」

「おれが決めれる事なんてない、引退か」

「そうね、丈夫な体と心じゃないと、無理だね、どおぅ音楽は作れそう」と、おれに聞いた

「低く音なら、なんとかなるけど、無理かな」

「このまま引退する方向でいいの」

「ずっと考えていたんだけど、おれ最後に画家ドクと対談したい、雑誌の方が時間気にしないでやれる、

雑誌見つからないなら、おれが出す、あっ悪い、おれとドクの対談でおれが出版する」

「そう、信一が出すなら、なにも言う事ないわ、全部信一が仕切れるの、」

「カメラマンと場所とドクの交渉頼む」

「全部じゃない、まぁいいわ、今、信一調子良さそうだから、退院早々に対談出来るように、ドクさんに聞いてみる、ちなみに何を対談するの」

「ドクの絵にドクはどう思うか、かな」

「ずいぶん、曖昧だけど、ドクさんと話したいだけじゃないの、振ったか振られたはどうでも良いけど、対談どうでもしたいの」

「おれの最後の区切りにしたい」と、おれは言った。

「ドクさんの返事次第ね、聞いてみる」と言って社長は帰った。


 ここの病院に退院後も通うなら、今まで通り後1年は事務所の上に住むつもりだ、ゆっくり引っ越し先を探そうと思った。仕事も無く、ひとりで生活だよな、急に退院って、おれ大丈夫かな、まあ全てゆっくりだよなぁ


 看護士と担当医がきて、退院の説明をして行った。1週間後に退院が決まった。


 退院の日、社長が来てくれた

「ドクさんは、了承してくれなかった、何度頼んでもダメだった。結局直接は無理だったので、

大さんに間に入ってもらったの、お金の力でなんとか頼み込み、相当2人で話し合った見たい、やっと了承してもらったからね、

1週間後、信一の部屋に決めたから、それと、明日までに対談の流れ寄越して欲しいって、ちゃんと話しの流れ作ってね、支離滅裂に話が飛ばないでね、

当日12時から14時まで、プライベートの話なし、絵の事だけの対談で、事前の流れからそれたら途中でも終了の契約だからね、」

「わかった」


 久しぶりの我が家だった8か月前は汚い部屋がすっきり綺麗になっていた。

1週間後、ドクが、来てくれる、対談をお願いしない限りもう一生会えない、と思う

会えるわけがない5年間執着して毎日苦しんだのに、手を取った瞬間たったひと月しないうちに飽きた。

 入院中考えたが、なぜ飽きたか、わからない、このまま一生考えたくないが答えがない限り考え続けるだろう、ドクにあったら、答えが分かりそうだ、と思い対談を思いついた。

 無理矢理対談かぁ、6年前も無理矢理会ってもらった。すべておれの我儘だな、、ため息が出た。アルコールが飲みたいが、飲めない、

 対談の流れ今日中に出来るか不安だ、他の事考えないで、まず作ろうと思った。


まず挨拶、

他の人の絵に興味があるか、(信一、ドク 返答次第で掘り下げ)

いつ頃から描いた( )

何を思って描くのか( )

信一ドクの絵 掘り下げ その返答 ドク

今描きたい絵はあるのか、( )

今どんなところで描いていてのか( )

これからの夢 ( )

うぅん、絵の事だけだとこんな感じか、後はドクにたくさん喋ってもらう、

喋るわけないよなぁ、本に残るし、やっぱりプロに頼むほうがよかったかぁ

どうにかなるか、ならないなぁ、、、

これで出そう。


社長に持って行った

呆れた顔したが「信一がいいのなら、これ大さんに送信するね」

「頼む」と言って部屋に帰った。



2012年 春  維士


 いきなり信一さんの事務所から、信一さんとの対談の申し出に困惑して、絶対にやりませんと、お断りした。

 信ちゃん呼びはやめた、田真信一とフルネームで呼びたいが、母さんと3か月に1回は、おばあさんに会いに施設に一緒行っているので、信一の名を呼ぶ時おかしくなるので、信一さんで落ちついた。

今度は、大ちゃんが僕を説得しだした

「絶対に対談はしない」

「イシ、少しは大人になれ、この金額だよ、個展を開くにも金はかかる、絵が売れるうちはいいが、未来はわからないだろう」と、お金の大切さをたくさん並べた。

渋々、

「わかった、絵の事だけの対談だからね、大ちゃんに細かいところ任せるよ」と了承してしまった。

 対談の流れを見せられたが、対談する意味がわからない、全て1人で発信出来る内容だ、

まぁ2時間座って居ればいい、気楽にと大ちゃんからアドバイスをもらった、心の中に絶対波風立てるなとの事だった。

 僕もわかっている、もう振り回されたくない。


日曜日、大ちゃんとスーツ姿で、信一さんの部屋へ行った。

 部屋の中は、ライト、カポック所狭しとたくさん並んで、スタジオになっていた。カメラマン、アシスタント、スタイリスト、信一さんの事務所の関係者、、、人だらけだった何か目的あるのかと思うほどだった。

 僕は失敗したと一瞬で思った、2人だけの対談のイメージで来てしまった。こんなに人がいるとは、想像していなかった。

 大ちゃんはどう思っただろう、

直ぐ、信一さんが挨拶に来てセットの椅子に案内してくれた。

 僕はビックリした、1年会わないだけで別人だった。坊主頭でピアスを耳にたくさんつけていた、元々痩せて背が高かったが、もっと痩せていた。何があったのか、と思ったが、関係ない事だと気づく、

 ありがとうと言っていたが、僕は頭を少し下げて挨拶した、

 


2012年 春 日曜日 信一


 流れ通りに、何回もおれは確認した。

他の人の絵に興味があるか、(信一、ドク 返答次第で掘り下げ)

いつ頃から描いた( )

何を思って描くのか( )

信一ドクの絵 掘り下げ その返答 ドク

今描きたい絵はあるのか、( )

今どんなところで描いていてのか( )

これからの夢 ( )


 朝早くからおれの部屋は次から次と人だらけだった。あれよあれよと言う間にスタジオに変わった、その隅での確認作業だった。

 

 ドクが来た、

ありがとうとおれは言った。

1年ぶりで会うと、凄い眩しい自信なのか、髪は伸びて肩のあたりだ。周りのスタッフも息を呑む気配がする、その隣のチューリップもドク程ではないが、凄いの一言だ。

2人ともスーツ姿で一流のモデルのようだ、

大丈夫かなおれ、霞んでないか、たぶん霞んでいるなぁ、大丈夫だと自分を励ました。


対談を初めてた、

「画家ドクさんと対談光栄です、田真信一です。今日は宜しくお願い致します。」

「宜しくお願い致します」


「気になっていたんですが、ご自分の絵以外で好きな画家とか興味のある絵とかありますか、おれは自分で絵を描いてCDとかで発表してますが、ドクさんの絵を2枚TVの前に飾って毎日話し掛けています。TVに出ているおれが、TVを見ないって言ったも同然ですね、

この絵は生まれて初めて、体が震えた絵です」と、言って椅子の絵を見せた。

「ありがとうございます、僕は他の人の絵に興味はありません。強いて言えばチューリップが好きです」

「ドクさんの個展とチューリップはセットでしたね」

「はい」

「チューリップについてもっと聞きたいですが、話を絵に戻して、いつ頃から描き始めましたか、おれはデビューのきっかけになった曲の投稿サイトように描いたのが始まりかな、

描きたくて描いたわけじゃないので少し微妙ですが」

「僕は、小3くらいです」

「それから、ずっとですか、ブランクは」

「ずっとです」

「凄いですねぇ、経歴を見ると2年前に東大卒業してその後画家で食べているのかぁ 凄過ぎて、高卒のおれじゃ話し、あいませんね」と、余計な事を言ってしまった、あっ周りの空気が変わった、何言ってんだ、元に戻せと別のおれが急かす、

「うぁ、申し訳ない、不甲斐ないので自虐が、でました」

「特に気にしません」と、ドクがどうでも良いように言った。あっまた上から来られた、思い出した最後の日と同じだった。


「小3の時、何かきっかけがあったのですか」

「何もないです、後で思い出すかもしれません」と、ドクがこの対談をやりたくないのを言葉で出した。

「じゃ思い出したら教えて下さい、今迄他人行儀でしたが、読者のみなさん、おれとドクさんはかなり親しかった、過去形ですが、」

「そうですか」と ドクは聞き返しの返答してくれた。

「毎日ドクさんの絵を見て、ドクさんの顔思い出すので、毎日会っているように錯覚してしまいました、親しかったではなく、親しいつもりだった、ですね、」と、おれは答えた、この茶番の対談で1年前の答えを見つける事は出来るのか、無理そうだ。

 残りの流れの台本を飛ばして、夢を聞いて終わりにしようと思った

「最後に、ドクさんの夢、教えて下さい、本当は対談なので会話が出来ればよかったけど、話しの組み立てが下手で、インタビューになってしまいドクさんには申し訳なかったです。

まずおれの夢からですが、

いざ夢って考えて思った事は、生きることかなぁ、、ドクさんも、読者さんも、おれを見て驚いたと思う、察してくれ、なんてカッコつけている場合じゃないくらい変わったでしょう、

今まで、脚光をたくさん浴びてきた、今は陰の部分かなぁ、おれのばあちゃんが、大きい光には大きな陰だよ気をつけろと、言ってたんだ、その意味が今わかるよ、後どのくらいか、わからないけど、夢は生きる事かな、少し大袈裟ですが、、でドクさんは」と、おれが言うと、ドクは何かを考えている顔で

「僕の夢は絵を描き続けたい、信ちゃんの、、、生きたいと一緒だよ、、

僕、数ヶ月に1回知り合いに、会いに施設に行くんだ、その人は痴呆で、僕を自分の中学生の子供だと勘違いして、いつも会うと、(笑って生きてちょうだい、お願い笑って、辛くさせて、ごめんなさい、)って言って泣くんだ。当時言えなくて後悔した言葉を今、言っているんだ。生きるって大変だよね、、、

 信ちゃん、性格悪いから友達いないよな、

僕がなってあげるよ、これから宜しく」と、ドクがおれの目を見て、ゆっくり言った。

「イシ、ありがとう、施設に入っている人はイシと出会えてよかった、ありがとう、おれはずっと寂しかった」おれは、思わず言った、泣いた。

おれの主催の対談に涙が止まらない。

社長がまとめてくれた、スタッフみんながもらい泣きしていた。撤収した。

 2人が帰るところに、おれが、

 「イシ、おまえからメールして欲しい、明日から毎日暇だ、いつでも良い、ばあちゃんの事ありがとう、メール待っている」と、おれはすがるように言った。

隣のチューリップは面白くなさそうな顔を

していた。

「わかった、じゃあ」と、イシは言って帰った。

皆んなが帰って1人だ、

寂しかった。



答えなんて悩む必要なかった、子供が欲しい物を手に入れるまで、駄々を捏ねて、手に入れた瞬間飽きるのと同じ事だった。本当に欲しい物ではなかった、あの椅子の絵を描いたドクが欲しかったのか自分の心が定かではないが、あの時は、イシではなかったのは確かだ、

イシはおれの家族を見ておれが隠してた部分を見抜いた、我儘な、はだかの王様のおれを知って、おれより悩んだ末の話合いだった、全て振り回していた。

 まだ20時だ。家に電話した、

「おれ明日昼に帰る、日帰りだよ」と言う

母さんが待っていると、言ってくれた。

電話を切った後、おれの事(待っている)人がいたんだって、泣けた、病気のせいか、涙腺が緩い、

 ドクの絵は今日の対談用に出したが、今のおれには、見れないのでしまった。

イシも大学3年までの絵は見ないって言っていたなぁと思い出した。絵はドクで実際の人はイシだった勝手に思ってた、

(早く売りたい)と言っていた事も思い出したが、今さらおれに売らせろなんて、言えないなぁ。

 母さんに会って何を言うか、その場で考える事にした。退院間もないので疲れた、寝れないが、横になって目を閉じた。



2012年 春 月曜日 信一


 昼に家に着いた。

玄関を開けると直ぐに母さんが出てきた、おれを見ても普通に、お昼まだなら一緒に食べましょうと言った、あぁと言って台所に一緒に行った。17年ぶりで一緒に食べた何種類もの惣菜があった、朝から作ってたんだ、おれの為に、、、

 母さんは何も言わない、おれは

「ばあちゃん施設に入ったって、イシから昨日聞いた」

「そう」

「別に責めているわけじゃない」「、、、、、」

「何と無く帰りたくなったから、今日きたんだ」

「、、、、、」

「おれ、なんかよくわからないけど病気なんだ」

「、、、、」最初から、知ってたように母さんは無表情だった、玄関で直ぐわかったのであろう、

「8か月間、入院していた」

「、、、、」何かを、考えている顔をしていた、

「母さん、、おれ、、まだ死にたくない、どうしたら良いか、、、わからない」と、おれがボソボソ言うと、

「死ぬって決まったの」と、母さんがやっと口を開いた、母さんはおれが機嫌悪くなるのを恐れ、なるべく質問、意見を言わないように気を遣っている、なんか辛いけど仕方がない、おれがそうさせてきた、

「静かにしていたら10年20年は大丈夫だって、、気休めで言ってくれたかもしれないし」

「信ちゃんは、これからどうしたいの」

「仕事は後1年契約残っているが、辞める事になるので、引っ越しをする、

お金は、贅沢しなければ生きている間はなんとかなる、、、

出来れば、イシと暮らしたいが断られるはずだ」と、おれはまたボソボソ答えた、

「、、、引っ越し先とか、もう決めているの」

「まだ、なにも、決めていない、通っている病院の近くあたりになるのかなぁ」

「、、お願いがあるの、信ちゃんの通っている病院に行って、病気の事聞いてきていいかなぁ母さん1人でいいから、信ちゃんは来なくても大丈夫だから」と、遠慮しながらお願いされた、おれの事なのに気を使わせている、

「いいよ、担当の先生がいいって言えば」

「ありがとう、病院と担当の先生教えて」と言うので診察券を見せたらメモしていた。

「食事とかどうしているの」

「適当に」

「そう」

「そろそろ帰る、昨日イシと対談の仕事だった、それの仕上げみたいなのがあるんだ」

「イシくんと、そう」

「イシには、嫌われていて、対談でもしないと一生会ってもらえないから、、、おれがイシを振り回して嫌われてた、、、簡単に言うと、イシの事を嫌いだと言ったんだ、最低だよな、自分で自分が嫌になる、今さら一緒に住みたいなんていえないよ」

「、、、、」

母さんは何も言わない

(じゃ帰る)と言うと、(また直ぐ帰ってきてね待っているから)と言って、タッパに惣菜を詰めて

「帰ったら食べて、」と、よこしてた。

玄関を出る時、

「母さん、おれ26歳になった、子供の時から今まで子供だった、病気になって色々考える時間が出来た、、母さんがいた事忘れていた、、1年前、ばあちゃんに何度もお願いされたんだ、母さんを忘れないでって、、、

今ようやく思い出した(待っている)と言ってくれる人、おれにもいたんだ、、また来る、じゃ」と、言ったら、

「忘れるくらいで、丁度良いの、思い出してくれて、ありがとう、また待っているね」と、泣いて言った。


 滞在時間は短かったが、おれにとっては今までの人生で一番大切な時間だった、初めて他人との関係を母さんに言った、たぶんこれからは、自然に言えると思う、粋がって生きる程の人生じゃない、おれも、たんぽぽでいいんだ、、間違えた、踏まれても起き上がる、たんぽぽになりたい、、、思った。



2012年 春 月曜日 維士


 昨日の対談の後、大ちゃんと一言も喋らず帰った、

無人駅に着いた時、大ちゃんは何か言いたそうだったが「今日はありがとう、じゃあ」と、僕が言って家路に、その後ろ姿に「明日な」って声をかけてくれた。

 

 せっかく収まっていた信ちゃんが、僕の中で動き回る、あの変わりようは何なんだ、あの対談は何の為に、途中を飛ばしたのは何故、変わった姿を僕に見せたかっただけか、、、

「生きたい、、、そんな事、言うなよ」と、独り言が口から漏れた。

昨日の夜から、僕の中で信ちゃんが動き回る、メールの約束はしたが、今じゃぁない、もう少し収まってからだ、今度の日曜日母さんと施設に一緒行く日だが、信ちゃんは誘わない、僕と母さんとおばあさんの大切な時間だ。


 1週間経った、信ちゃんが、僕の中で収まっていないのでメールはまだしていない、信ちゃんからも何もこない

 

 母さんと施設の帰りは駅で休んで、お互いの近況を話して、それぞれ帰途につく、母さんはこの時間が楽しみだと、毎回言ってくれる、僕も楽しみなのでお互い様だよと言うが、ありがとうと感謝の言葉を毎回言っくれる。


 「1週間前、信ちゃんに会いました」と僕が言うと

「ここ1年くらいは、信一さんだったのに、信ちゃんって呼び方に戻ってくれて、ありがとう、、、

イシくんに会った次の日、家に帰って来たの、、1年ぶりで会って凄く変わって驚いたけど、どう変わっても信ちゃんだからね、イシくんには悪い事したって、、、」

「あっ、家に帰ってなかったんだ、信ちゃんの最近の生活知らないけど、1人暮らしは無理そうな感じがしたなぁ」

「2日前、信ちゃんの担当医に会いに東京の病院に行って来たの、上手く生活出来れば20年以上は、たぶん大丈夫かな、仕事は辞めるような事言ってたから、、内臓の病気は薬と食べ物、かな、後は細かい事たくさんあるけどね、」

「そうなんだ、」

「本当は、家に帰って生活したらって言いたいけど、嫌だろうし、難しいわね、」って母さんが言った

「そうですね」としか僕は答えられなかった。

次の約束をして別れた。


 信ちゃんがどうしたいのか、僕が考えてもわからない。

メールに何をかけばいいのか、わからない、何も言う事がない、

 ぼくは何も手につかない、対談から2週間経ってた、昨年の夏歯科医院で個展をやって以来やっていない、1年に少なくとも1度はやりたい、そろそろ準備を始めないと、夏の開催は難しい、大ちゃんは気にかけて声をかけてくれるが、僕自身が問題だった、間違えた、僕の中で信ちゃんが収まっていないのが問題だった


思い切ってメールをする

 (その後、お変わりなく、元気に過ごしてますか、対談は本になるのかな、中途半端な気がしますが、もし出版された時は、本屋で購入しますのでお気遣いなく、


本題です、

 この2週間、僕の中で信ちゃんが動き回って困ってます。

今迄の1年は角の角に収まっていました、

信ちゃんは狡い、いつもそうだ。僕の中に嵐と台風を起こす、静かに暮らしたいのに、

何も手につかない、

信ちゃん、あなたの事が心配なんだ、

どうして遠回りするの、対談なんて無意味なのに、

素直に僕に助けてって、言えよ。

僕の中の信ちゃんも早く収まりたいって)

送った。


元々は嫌われたんだ、今の気持ちそのままを書いた。



2012年 春 信一


 対談から2週間、やっとイシからメールが来た、長かった、もう音沙汰ないんじゃないかと、落ち込んでいた、

退院してからは3週間たった。

1週間目でドクと対談、次の日実家、その後はだいぶ調子が悪かった、体力がないのに動いたからだろう。

 

 イシからのメールを開いていない、1時間前にきたが、見るのが怖かった。2週間も経って、やっときた、いい事が書いてあるはずがない、どきどきしっぱなしだ、心臓も悪いのに、あぁとため息がでた。

 思い切って開いた。

何なんだ、これは、こんなに思ってくれてたんだ、あんなに酷い事したおれなのに、

10年分くらい、泣いた、涙が止まらない、

イシ、お願いだ、おれは孤独で、病気だ、1人で寂しい、誰もいない、、、たすけて欲しい、手を引っ張って生かして欲しい、もう少しだけ生きたいと、独り言を言った。


だいぶ時間が経った、イシに返信した、

(イシからメールがきて1時間は開けられなかった怖かった、やっと開けたら、

2時間泣いた、ありがとう、

イシ、おれは裸の王様だ、孤独だ、

8か月も入院していてお見舞いに来てくれる友達もいない、退院しても同じだ、話し合い手もいない、

8年も仕事頑張ったつもりでも、商品のおれには誰も本音でこないし、おれも周りを見下していた。

おれは凄いって自惚れていた、周りもチヤホヤしてくれた、おれが望んだ異常な世界だった、

1年前、イシと一緒になる為に辞める予定が、未練に引っ張られた。呆れるだろう、スポットライトを浴びたいと思ったんだ、もう充分だったのに、

 イシの手を離して全ての歯車が狂った、毎日頭の中は、イシだけになった、

イシの手を離した後悔で、自問自答だった、

対談でもしない限り、一生会ってもらえないと思った、

 今までの事、忘れてくれ、なんて虫の良いことはいわない、


 おれを助けてくれ イシしかいないんだ

おれが一緒に居たいのはイシだ、迷惑だよな、

いつも、イシを振り回してごめんなぁ

おれが側にいて、イシは、幸せになれるのか

イシの幸せを願うなら、おれは離れた方がいいのか、教えてくれ

お願いだ、近いうちに、おれの東京の家に来てくれないか、話がしたい、日時はイシに全部合わせる、おれは毎日、寝るのが仕事だ、いつでも良い。)送信した。


(明日、昼に行く)

(待っている)

明日は、絶対失敗出来ない、おれは自分に言い聞かせた、(カッコつけんな、本音を言え)と、


次の日 イシが1人でおれの部屋に来た、チューリップはついて来ていない、良かったと安堵した。

「駅で、弁当買ってきた、僕、食べるけど、信ちゃんどうする、信ちゃんの分もあるけど、食べ物、気をつける病気だって母さんいってたから」「イシ、おれの母さんに会ったのか」

「何で信ちゃんの母さんってわかったの」

「イシ、自分の母さんの事は、おを付けてお母さんと呼ぶだろう」

「あっ知ってたんだ、この前一緒におばあさんに会いに行ったんだ、その時信ちゃんの主治医に会った話をしてた」

「ふぅん、そうか、そうだなぁ外食はダメだ、弁当も外食だな、半分もらうよ」

「そう」って言ってイシは弁当を寄越した。

「今日わざわざ来てくれて、ありがとう、この前の対談は悪かった、、おれが最後の仕事にと、頼み込んだ、本は出す、おれが、スポンサーなんだ、、

 どうしてもイシに会いたかった、会いに行っても絶対に会ってくれないだろう、、、1年前の事ちょっと話してもいいか、、、おれは、イシと一緒になりたくて、仕事を辞めるつもりだったが、仕事はが入っていた、。写真集の写真撮りだった、裸の写真も撮った、音楽で勝負なのに、写真集、裸、、変だろ、イシならどうだ、絵を売る為に裸の写真集出そうって言われたら、断るよな普通は、

写真集の表紙(天才 田真信一)だ、

 一般人には戻りたくないと、思ったんだ、笑えるよな、

 この仕事の前に、イシとばあちゃんに会いに行った時に(裸になったら、直ぐ消える)と言われた、まあ言われなくても、誰でも分かるよな、、、、


 イシの大学の卒業式の後、東京駅でTVカメラの撮影覚えているか、おれの囲み取材だったんだ、イシがTVに映った瞬間に全部イシに持っていかれた、その後も、盛岡からの帰りにホテルに泊まる時、動画撮られてTVに映り、日本中がドイシ探しだよ、、

 おれは終わった、イシはスターだった、おれ自身、自分が見切りをつけるのは良いが、付けられるのは嫌だった。


 おれは、イシがドクだった頃の暗澹さと共鳴していた、守るつもりだったが、イシがおれより、大きな存在になっていた。

 高校生のドクのままだった、成長したドクはおれは知らなかった、、

 最後の日にも言われたよな、ドクはいないイシだって、、、


 病気になって、連絡する人がいないんだ、苦しい助けてくれって言う人がいないんだ、、寂しなぁって、

おれ今まで、何してたんだって、誰もいないんだ、

イシと繋いだ手をあっさり手放した、、、なんでだろうって、、毎日考えてた

この前対談の後、やっとわかった、子供の我儘だったて、1年かかったおれは、、、」続けようとしたら、イシが話しだした。



2012年 春 維士


 2週間前と打って変わって、信ちゃんの部屋は、何もない、僕の絵もない、

ソファとテーブルだけ生活感がない、寂しい部屋に顔色の悪い信ちゃんがいる、何も感じないふりをして弁当を、促した。

 信ちゃんが弁解を喋っている、延々と話が跳びながら、続きそうなので、

「信ちゃん、1年前の事メールでも書いてくれたから、もういいよ、

僕は、これからどうするか考えてた、信ちゃんと一緒だと幸せかどうかは、わからないんだ、

でも、離れると心配なんだ、、、

このまま、毎日寝ているの、少しは動いた方が良いよね、、、、

 僕、昨年の夏以来個展開いていないんだ、前にも言ったと思うけど後500枚くらいは早く売りたい、

昨年夏は僕と大ちゃんで、1週間会場にいたけど、無人駅のようにアルバイト頼んでも良いし、、、、信ちゃん僕の個展開いてくれないか、

一緒に住むかは、、、、信ちゃんが僕の言う事を聞いて体調管理するなら、、考えるよ」と、僕が言うと

「イシ、ありがとう、おれにとって全ていい話しだな、イシ後悔しないか、おれがいても、

自分勝手に迷惑ばかりかけた、間違えた、傷付けた、本当なら顔も見たくなかっただろうな、

 病気になったおれ、邪魔じゃないか、、イシより長生き出来ないと思う、、、ごめんなぁ、、、いつのまにか出来ない事だらけなんだ、、、、、、、助けてくれって言ったが、気にしないで、全て白紙だって、言ってくれて良い、おれはイシがまた話してくれた事だけで感謝しているんだ」と、信ちゃんは言った。

 たしかに、全て信ちゃんにとっていい話しだ、

「信ちゃん、僕も信ちゃんに感謝しているだ、

母さんとおばあさんに出会えた事は、僕の宝物なんだ、この前母さんと会う時、信ちゃんも誘えたはずだけど、3人の時間を邪魔されたくなかった、僕にとってはお金では買えない大切な時間なんだ」

「おれは、、、、母さん、ばあちゃんにも感謝だな」って言って泣いていた。

 


 2か月後の夏、昨年の歯科医院で1週間個展を開く事が出来た。

 信ちゃんと対談後再会して個展開催を頼んだら、昨年と同じ所に掛け合ったらしい。大ちゃんには話し通さないで、直接相談して

「田真信一さんから頼まれて断れないよ、昨年も、おかげ様でうちの歯科医院も有名になったからね、まぁ、だからって患者を増やさないけどね」と歯医者さんに言われたって笑って教えてくれた。直ぐ、僕は大ちゃんに

「昨年大ちゃんが紹介してくれた歯科医院でまた個展開くことにした」って言ったら

「はぁ、なんでそうなるんだ、この前おれが聞いてもまだって言ってたよな、、、また信一か、、、、会いに東京に行ったもんな、、あぁ対談しなきゃ良かったのかな、、、おれが説得したんだな、、、、そう言う事か」と独り言のように結論までもっていった。

今回は80枚出品して、対談した本も置く、

15時から20時まで1週間、

チューリップも20本単位で1週間後発送予約のみ販売する。開催期間中は、僕が信ちゃんの部屋へ泊まり、アルバイトは頼まないで2人で交代でいようと話してたら、大騒ぎで購入したい人が入れない事が予測され、一週間ホテルの宿泊付きでアルバイトに母さんを頼んだら、喜んで引き受けてくれた。今回広告はなし、前回の購入者に案内状を送った。きてくれる人がいるか、不安だったが、大騒ぎになるよりは、気が楽だ、もし怪我人でも出たら、今後個展開催が難しくなる、

開催日当日昼に4人と歯医者の5人で、お昼を食べ軽く打ち合わせをした

 前日絵のセッティングをして、午前にチューリップと対談雑誌をセットした

歯医者さんと大ちゃんは、僕と母さんが似てるとそればかり大騒ぎしている。信ちゃんは何も言わないでニヤけている、。

 歯医者さんは午後1人の患者さんを見ると言って仕事に戻り、大ちゃんも2日おきにチューリップ持ってくると言って帰った、信ちゃんと僕は初日なので最初の2時間だけ会場にいる事にした。母さんには1週間受け付けお願いした。


 開催期間中の1週間は、信ちゃんの部屋に泊まってた、僕達の関係は恋人未満家族のような表現の仕方がない、体は信ちゃんの調子が良い時はいつでも繋げた、信ちゃんは僕には甘い、セックスがこんなに気持ちよくておかしくなりそうだなんて知らなかった。信ちゃんが上手くいのだろう、僕は信ちゃんのいいところを突くだけだから僕ばかり気持ち良いのかも、いつか聞こう、

 イシは綺麗だから心配だといつも言う、何が心配なのか聞くと、誰かと何処に行きそうだと、心細いのか、僕の側にいたがる。最近やっと側にいられるのに慣れた。まずまず、体調管理も上手くいっている、個展を開くと耳の後ろがキリキリ痛い、なんでなんだろう今回もだ。


 無事個展も終了して、全て売れ発送とか後仕事を信ちゃんがやってくれた、

 次は信ちゃんの引っ越しで、事務所との契約も後、半年くらいで切れるので事務所所有の部屋をでる事になる、


 2人で相談して、おばあさんの家に住む事にした。

 信ちゃんは母さんの大事さにやっと気づき、何かと話しかけているが、母さんは少し遠慮が見えるが、たぶん母さんにとってはそれが普通だろう。

 信ちゃんの病気を考えると、食事が大変だった、僕も絵を描いていると信ちゃんの食事がおざなりになる

信ちゃん自身も作るが、体調の悪い時もある。母さんにも助けてもらって1日2品位のお惣菜を毎日作ってもらう事にした。

 信ちゃんの体調管理は約束通り僕の言う事を守ってくれた、僕が絵を描いていると側で本を読んだり、軽く曲を作って遊んでいた、

 一緒に住み初めて1年くらいたって、「信ちゃん聞きたかったんだ、ドクが好きだったよね、僕、大ちゃんのおかげで、イシになれた、イシは嫌いだったはずだけど、なんで僕だったの、ずっと引っかかってた、」

「今さらだな、おれはドクの隠していた優しさとか思いやりを出せたイシが大好きだ、ドクは若さだったんだろう、おれ達は、大人になった

イシがおれの全てだ、そうか、チューリップには感謝だな」

 大ちゃんには世話になったので、引っ越しの時は、辛かった。



  信一 37歳


2023年 夏 信一


 イシとばあちゃんの家で暮らして11年たった、37歳になったおれの病気は体調管理のおかげで現状維持だ。

 春に、おれが、惣菜を貰いに実家に行ってる間に、世界で活躍しているピアニストが訪ねてきたらしい、本人だったとイシは教えてくれた、

なんで、おれのいない間にと、軽く嫉妬した。

 「僕の絵のファンで、絵に乗せて音楽を作りたいとプロのピアニストがきた、オーラを隠しているつもりの様子だったけど、凄いよ、プロの音楽家の自信に満ち溢れていた、彼は隠しているつもりだろうがね」と、

「おれも仕事でプロのピアニストに会った事ある格が違う、俺の大衆音楽との違いを見せつけられて勉強不足で恥ずかし思いをした。

 まあアイツらは ハイハイ終わった2歳辺りから1日何時間も、それこそ命削って音楽に携わってきたからなぁ、

 それこそ途方もない天才達でふるいにかけられ残った大天才だからな、俺の大衆音楽の時代の乗って、たまたま売れたのとは、同じ音楽でも土台が違う、滲み出る自信が半端ない」と信ちゃんも絶賛した。

「だね、プロとプロが友達には絶対になれないなぁ、表面上の友達にはなれるけど」

「なんで」

「えっ、信ちゃんわからないの、、、、理由は、簡単でしょ 命を削って作った作品が、片方の人だけ脚光浴びたら、片方は(認められて良かったね)、と口で言っても心の中で悔しいからだよ、心が病むょ」

「あぁ、そうだなぁ」

「信ちゃん前に同業者と音楽対談の、

仲良しごっこしてたよね、同業者で親友だと言っているのはどちらかが、プロじゃないからだよ、それか2人ともプロじゃないかもね」

 「仲良しごっこって、仕事だよ、おれら仲良いんだアピール、売れている方に乗っかるの、裏で金動いてんだ大衆音楽は商品だから、命削って作品生み出さない、今だ1番2番って繰り返しじゃないと、ついて来れないで売れないからなぁ」

「プロ同士の親友は、片方生きていけないね」

「まぁなぁ」

「曲は断った、彼に軍配上がっても嫌だし、それに僕の個展だよ、」とイシが言った

「おれも昔、イシの絵に曲乗せたいと思ってたよ」

「2-3年後でも10年後でも、いつでも作って軽くで良いよ、信ちゃんとならコラボするよ」

「おい、おれはプロじゃないのか、、、まあなぁ、、、」と、おれは病気で音が苦手になったが、もし出来たら個展会場で流したい。


信ちゃん、僕達は一心同体だ、もし片方が脚光浴びても、直ぐ手放す、何の意味もないよ、脚光の無意味さを僕達は良く知っているから、もっと大切な物を僕達は壊したくないからね」と、おれは目を見開き、涙が溢れるのを我慢して「ありがとう」が出た。


脚光を浴びるのは維士だけだ、おれは無理だ、それを軽くいらないと、おれの為に言ってくれた、、

昔のおれに聞かせたい、おれは大馬鹿野郎だった、

 ダメだ、オイオイ涙が出て止まらない、、、、。


 毎年夏に歯科医院のロビーでの個展が続いている、

相変わらずチューリップともコラボして年1回は会って近況報告しあっている、ドクだった頃の500枚の絵は5年くらい前に売り切った。その後も年60枚くらい出品した。ゆっくりペースで描いているようだが、在庫で200枚くらいはまだある、

 殆どの収入は子供達の施設、孤児院等に寄付している、それも11年前に話し合った、昔、、イシと一緒なる前1人で想像した通りになった(僕は生活出来だけのお金があれば良い、お母さんのおかげで大きくなった、親のいない子供達に寄付しよう)のような事だった、もちろんおれの印税とかの収入も寄付している、


 梅雨が終わりごろ、寄付している先の孤児院で2歳から知っている少年が先日おれを訪ねて相談してきた。小さい時から誰にも懐かずおれの子供の頃のような少年だ。

中国人の子供だ。

13歳、見た目はどこの芸能事務所でも欲しそうな外見に育った。ひねくれて、生意気な子供だが、おれにはまとわりつくので、相談したい事があったらいつでも言えって言ってあった、芸能事務所が全て面倒見たいと言って、金額も提示され13歳の少年には大金だった。

「直ぐ捨てられるぞ、おまえバカなんだから勉強して知識で勝負しろ、何も出来ないのに外見だけで勝負できる殆ど甘い世界じぁない、若いうちは、歌え、俳優やれ、写真集出せ、ラジオに出ろ、作った事のない歌までほら、おまえの作った歌だって渡されるぞ、あらゆる事で金稼げと言われる、

売ってもらっているうちは良いが、スピードの早い世界だ、次から次と後ろからやってくる、図太い神経のやつでも病気になる、おれでさえ、右手に精神科医、左手にシャーマン後ろに美容家って本気に悩んだ、

おまえ将来の事真剣に考えろ、勉強する大事な時期に歌って踊るか、まあな華やかな世界に憧れる気持ちもわかるがなぁ、まず勉強しろ、おまえを助けるのは、おまえしかいない」とおれは言って「イシおまえはどう思う」と他の意見を聞きたかった

「そうだね、13歳かあ、僕も信ちゃんと同じ考えだよ、直ぐまでいかなくても、捨てられるよ、君は親がいない、後ろがスカスカだから捨てやすい、親がいない事を責めているわけじゃない、これはばかりは自分の力でどうこう出来ないからね仕方がない、親がいなくても孤児院の仲間がいる羨ましいよ、僕は友達いなかったからね、仲間は一生君を助けてくれると思う、君も仲間を助けなければね、今貰えるお金は大きいけど、一生じゃない、一生自分の生活支えるのは自分しかいないのはわかるよね、知識と教養は君を助ける、まず勉強しよう」とイシが言ってくれた、あぁ同じ考えなんだ、18歳のおれにも言ってくれたら違う人生だったか、、、、少年は勉強してするって言って晴れ晴れとした顔で帰った、子供ながらも胡散臭さを感じていたのだろう、簡単に寄付って言っても人の人生にも関わる責任を感じる。


 2人とも、金が幸せにしてくれない事を痛い程知っている、生活が回る程度の金があるのが幸せだ、それ以上でもそれ以下でも不幸だ、残念だけど、やっぱ ばあちゃんの言っていた禍福の法則は凄い、生きてきて全て当てはまる、人の生き様は大体平等に出来てる、不思議だよなぁ、

 夏の個展になると耳の後ろがキリキリ痛いとイシが言う、毎年病院に行けと言っても絶対に行かない、1週間くらいで治るらしいので、おれも直ぐ忘れて、毎年改めて思い出すのであまり気にしていないが,さっきも痛いって言っていたが直ぐ治るだろう。


 この時期になると思い出す、歌って踊ってたのが自分かと思う程実感がない、たぶん地に足が着いていないまま動いていたからだろう、裸の王様で周りにチヤホヤされだいぶ生意気だった、

 大きな反動が今なのか、この先に反動が起こるか考えると怖いと思う、

今幸せだ、イシは可愛い、愛しい、うぅん言葉で表現出来ない、愛しているとか、、好きだとかじゃない,そんな軽い言葉じゃなく、1番しっくりくるのは(おれの全てだ)だろう。イシと繋がると一心同体で愛しい可愛い、いつまでもずっと一緒だと思う、、イシもおれの事を大切にしてくれる,おれもイシには甘い,11年間色褪せないどころか、ますます仲良くなる。自分の人生がこうなると若い頃は思わなかった。色々病気の為の制限あるが、イシが居るから良しとしよう


 イシと母さんはおれ達がここに住んでから,週一回ばあちゃんの施設へ2人で行く。毎日11時頃惣菜をもらいに、実家に取りに行くのはおれの仕事だ。 (おれの体調管理のひとつだ)

 母さんとの蟠りも消え,最初の頃「なんで,おれを誘わないんだ」と母さんに聞いた

「そうねぇ、、、イシくんに聞いて、私はどっちでもいいから,,,,毎日一緒でしょう、週1回ぐらい解放してあげたら、」って言って笑ってた、、

イシに聞けないから母さんに頼んだようなものなのに,遠回しに断られた、寂しいが仕方がない,前に大切な時間だと言われてた。

 まぁ、ばあちゃんのところへは、イシと2人でおれも週1回行っているしなぁ、


 この個展の前に,初めて3人で行こうと誘われた、この前イシと2人でいった時はばあちゃん普通だった,何が起こったんだろう、

「おれも,良いのか,何かあったか」聞いたら,「何にもない,なんとなくだよ」

「ふぅん、、そうか」と,おれもなんとなく腑に落ちないが、、。


 いつもは、おれとイシが行ってもベッドに横になっている。側に15分くらい、居て帰ってくる。殆ど喋ることはしない。寂しけど、生きているだけで良い、長生きしてほしいと思う。

おれ,ばあちゃんより長生き頑張るよ、とばあちゃんの顔見ながら、心の中で色々会話している。おれも大切な時間だった。


 3人で初めてばあちゃんの施設に行った。

ばあちゃんはゆっくりと起き出した、

イシを見て

「夕,結婚したの,素敵な人ね、良かった,,良かった,,,大人になれたのね,良かった,,、、生き続けてくれて良かった,,私は良い母親になれなかった、、夕,あなたは大丈夫ねぇ、、こんな素敵な人が一緒だから、、、夕、、、私の元に生まれてくれてありがとう、生き続けてくれてありがとう、、、、

これからもは,2人で 笑って 生きてちょうだい」と,おれが母さんの夫だと思ったらしい、イシは母さんだ、部屋の隅で母さんが泣いていた。

イシは、ばあちゃんの手をずっと握っていた。

 こんなに喋る元気があったんだ,ばあちゃんは母さんの事ずっと心配しているんだなあぁ、

生きるって,難儀だなぁ、、、。

 帰りは3人とも放心状態だった。

イシ曰く、母さんの匂いが、おばあさんに母さんがいるって分かるらしい、人間も動物だと言う事かぁ、、。

 

 昨日個展が終わって、今年の大仕事が終わった感じだ。

いつも通り11時にお惣菜とってきて,お昼に2人で食べた。



2023年 夏 維士


 夏になり初めのころ、信ちゃんに孤児院の少年が訪ねてきた、相談があるようだ、芸能事務所にスカウトされ、どうしたら良いか悩んでいるらしい、

中国人の少年だ、中国人の俳優で世界的大スター似ている、あっ大ちゃんにも似ている。

孤児院育ちの陰が良い味を出した少年だった、これだけの見栄えで陰があり、孤児院育ちを出せばあっという間にスターになるだろう、でも同じ早さで落ちるだろう、陰は暫くは同情を引くが、お金を払っていつまでも陰を愛でたい人は少ない、世間は次から次を待っている、気晴らしの気分転換要員を待っている、

早さに敏感な人達に直ぐ捨てられる、その後生きていけなくなる人が多い、それを信ちゃんは肌で経験したので、違う世界で輝けと言っている、僕も同じ考えだ、信ちゃんに聞かれたので同じような事を少年に言った。

帰る際

「君は幸せだな、相談出来る人がいる、それも元トップスターだ、僕が君の年齢の時は誰もいなかったよ」と言ったいら

『ありがとう」とはにかんでた。


個展期間中,信ちゃんは大ちゃんに

「今年も1人か,もうおじいさんに片足突っ込んでいるんだから、誰でも良いから相手見つけろよ,チューリップは話し相手に何ねぇぞ」って揶揄って楽しんでいる、

「イシ,あいつ家でも、うるさいのかぁ、」と、大ちゃんは面倒そうだが、2人は結構仲が良い、良いコンビに見える。

 さっきまでお母さんもいたが、帰った、

今は東京に住んでいるので,個展は必ず見に来てくれる。信ちゃんとお母さんも仲がいい

「イシの言う事聞いて、長生きしてね」って会うといつも言われて、「はい、はい」っていつも返している。

 信ちゃんは体調の波があって辛そうな時が最近多いような気がする、イシの管理のおかげで体調が良いと,誤魔化すが僕の前で無理する事ないのに、寝てろと言われるのが嫌なようだ,信ちゃんが、いなくなると、僕は寂しい,,絶対に長生きしてほしい、、こう言うことは考えたくないが、顔色が悪く辛そうな時は,僕も辛くなる。

 この個展の前,3人で初めておばあさんに会いに行った,3人でどうしても会っておかないと、後悔しそうな胸騒ぎがした。怖かった,何が怖いかわからないが、気持ちnが落ち着かなかった,おばあさんに3人で会ったら、大きななにかで,3人を包んでくれた,胸騒ぎが収まった,きて良かったと思った、

 まさか信ちゃん、死なないよねと心の中でおばあさんに聞いたら、大丈夫って聞こえた。

絶対大丈夫だよねって,心の中でもう一度聞いたら、返事が聞こえなかった。

さっきは聞こえた,だから大丈夫って自分に言い聞かせてたなぁ、、、、個展最終日の今日も一緒に会場にこれたから信ちゃんは大丈夫だ。

 

 次の日は,大仕事が終わった感じで,全てがゆっくりしていた。

お昼ごはんを信ちゃんとゆっくり食べた、

つもりだが、座っている僕の体の動きが悪い,音の聞こえが悪い,しばらく座って様子を見た、信ちゃんが,うまいなぁ,どうしたって言っているようだ,すごく遠くから聞こえる、たぶん僕は座ってたまま動けない,動きがスローモーションのようだ、なにが起きたのか,地球が止まったようだ、ゆっくりテーブルにうつ伏せになったようだ、

力が入らない、何か信ちゃんが言っていた、

 そのまま,気を失ったらしい、


起きたら病院だった。

瞼をゆっくり動かせる、体もたぶんゆっくり動かせる,信ちゃんが僕の手を握って泣いてる、

「イシ,大丈夫か、、、」遠くから聞こえた。


 難聴からくる全身麻痺の難病で,僕のような外見の人が多い別名マネキン病というらしい、急な病気に見えるが、生まれた頃から耳の後ろの神経が敏感で原因不明だが予兆はあったと思う、、、残念だが日本では症例が少なく治療が出来ないと説明を受けた,僅かに聞こえた。

 しばらくはこのまま入院して,手続きが済み次第ここのドクターと渡米して治療する事になった、この難病を日本でも治せる足掛かりにする為ドクターも一緒との説明だった。

 

僕はこれからどうなるのか,信ちゃんを残して先に行くのか、、、無念だ、、、

 信ちゃんは面会可能な時間はいつも来て,僕の隣で寝ている、

僕は殆ど動けないがゆっくりと絶えず動いている,そうしていないと床ずれで痛くなる、

 やっと上げた手で信ちゃんの顔を撫でる、見惚れる程良い男だ、信ちゃんは気持ち良さそうに撫でられ、目から涙が出ている、

 もう少しでこの時間もなくなる,,治療をしないとあまりもたない、、、がこのままでも良い、、かと弱きになる、

 脳も麻痺して何もかもわからないほうが、幸せかなぁと思う時がある、あまりのも辛い現実だ、数日前まで、信ちゃんの長生きを願っていた、今も願っているが、僕の方がが急に弱った、、、信ちゃんには迷惑かけたくない、

「信・ちゃん、僕は・大・丈・夫だ・から」

と信ちゃんの耳元で囁く、

「そうだ、大丈夫だ」って泣き笑いしながら言ってくれた、



僕は、病院の夜が怖い、ひとりぼっちだ。

いつからこんなに弱くなったんだろう、11年、信ちゃんといつも一緒だった、

信ちゃんが僕を守ってくれていたんだ、

僕が信ちゃんを守っていた、つもりだったが逆だった。

寂しい とっても寂しい、まだ、生きたい、、


頭の中で物語を作った。

 僕は黄色い帽子を被った小学1年生、信ちゃんはちょっと大きい小学3年生、僕の手引っ張り学校に行く、「イシ、意地悪されたらおれに言え、おれがイシを守るから、イシは、何も心配するな、笑ってろ」

小学3年の信ちゃんがパソコンで音楽聞いて椅子からひっくり返ってる、「信ちゃん、シェリーに口づけっていう曲だよ」って言って、

僕が信ちゃんに口づけをすると、またひっくり返っている、

信ちゃんはいつもかっこいい、

僕だけのヒーロー、、、、小学1年の僕は信ちゃんが大好きだ。


信ちゃん、僕、死にたくない、いつまでも信ちゃんと居たい。

信ちゃん、助けて、苦しい、、もう会えないの、、、寂しい、、

だんだん白いカーテンの外が明るくなってくる。



信一 37歳


2023年 夏 信一

 

 日中はまだ良い、イシと会える。

イシと、ついこの前まで一緒に暮らした、イシの気配が濃厚なこの家は、おれには辛かった、

寂しい、寂しくて気が狂いそうだ。

ひとりぼっちの夜、毎日回想している、

初めて会ったマック、あの時恋に堕ちた、恐怖を感じていたイシを、、、、悪かった。

何度か会って、断られた、卒業式後は眩しかった。大学受かった自信だろう、あの地平線は忘れない、ばあちゃんにも助けれた、

その後3年会えない、仕事もマンネリ、アル中

やっと会えて、

また1年会えない チューリップかぁ、、、

せっかくまた会え、繋いだ手をおれが、、離した。また1年後、会えた、、、、全て奇跡だ、、おれに奇跡が起きていた、夢の音楽の仕事でもスターだった、、、

大きいな光に大きな陰ってこれの事だ、おれの病気ぐらいだと、まだバランスが悪かった。

これの最後はどうなるのか、、、治って欲しい、、、寂しい、寂しくて、おかしくなる、、


生まれ変わったら、

同じ町に生まれ、ずっと手を繋いでいきたい、大きな光なんかいらない、

手は絶対に離さない、「笑って生きようぜェ」、、独り言を呟く。


涙っていつまでもでるんだな


あと何日かしたら、イシに会えなくなる、

寂しい、、、

外が明るくなってきた。



  維士


2023年 夏 維士


 渡米直前、入院中の病院にお母さん、母さん、大ちゃん、信ちゃんが来てくれた、

 1人ずつ短い時間だが、ゆっくりと小さな声で殆ど聞こえないと思うが、耳元で囁くように話せた、

 大ちゃんに

「大ちゃんの、おかげで、ドクがいなくなったありがとう、個展始められたのも大ちゃんのおかげだ、恩人で感謝しかない、本当にありがとう、年1回くらい信ちゃんの様子見てやって欲しい、これからも宜しくだけど、ありがとう、感謝している」と

 

 母さんに

「母さんの人生には尊敬しています、日本の宝だ、僕に優しくしてくれてありがとう、信ちゃん、言うこと聞かない時、イシが言っていたと言って体調管理お願い、母さん困った時僕のお母さんに相談して、僕元気になって帰ってくるまで、信ちゃんの事宜しく頼みます」と

 

 お母さんに

「お母さん、僕を守って育てくれてありがとう

元気でいてくれてありがとう、お母さんが居なかったら、僕1人では生きて来れなかった、これからも元気でいてね、何か困った時、母さんに相談して、僕、大丈夫だから心配しないで、ありがとうお母さん」と


 少しだけ2人で話させてと3人に席を外してもらう。

 信ちゃんはベッドに横になっている僕を起こして、両手で抱きしめてた、僕は信ちゃんの頭をゆっくりと抱いて耳元に口をつけて、ゆっくり喋った、


「夢見たんだ、

中学生の母さんが中学生の僕と笑って、たんぽぽを取ってるんだ、たんぽぽの絵2人で描こうって笑って言ってるんだ、

中学生の笑っている母さんが、だんだん笑っている信ちゃんに変わって、僕と信ちゃんが笑って絵を描いているんだ、


 信ちゃん 僕は少しだけ離れるけど、

笑って 生きていてね 、

 帰ってくるから、、、絶対に帰ってくるよ

信ちゃん、高校生の僕の絵、見つけてくれてありがとう、出会って良かった」


「おれはこんな別れは嫌だ、なんでこうなるんだ,

おれはイシがいないと寂しくて、生きていけない,寂しい、、

おれが病気じゃなければ付いていくのに、、イシは、おれの全てなんだ、、、

 ごめんなぁ、、本当は出会って良かった、良かった、、全てイシのおかげだ、一緒に住んでくれて、ありがとう、、、幸せくれてありがとう、、、いつまでも続くと思っていた、

 あまりに急で、おれ、どうしたらいいか、、わからない、、

 イシ、、おれは離れたくない、、寂しい、、弱音ばかりで、、、全部ありがとう、、、待っている、、元気になって戻ってこい、、愛してる」と

信ちゃんは僕を抱きしめた手に力を入れた、


「大丈夫だよ、別れじゃないよ、直すだけ、少し会えなくなるだけだよ、寂し事、言わないで

約束して欲しい、、絶対に約束だよ、、、笑って 生きていてね、,僕を待っていて、、

信ちゃんありがとう、ありがとう、大好きだよ、、愛してる」と、

囁くように言い、耳に、口づけた。

 信ちゃんは泣いてる、僕も初めて涙が出た。


(僕も、信ちゃんが僕の全てだよ、寂しい、寂しいよ、、、信ちゃん、僕を助けて欲しい、、)と心の中で言った。



何百人に1人の難病で日本に症例がない治る確率は5部5の治療の為、イシはアメリカに渡った。


信一は、実家で生活を送った。

イシの気配の濃厚なばあちゃん家は、信一にはきつかった。

毎日言葉達を、書いている、書かないではいられない、寂しい、、ただ、、寂しい。

 維士とまた暮らせる日が来ると信じて、その日が来たら、一緒にたんぽぽの絵を描こうと決めていた。

 次にする事は、明日起きたら、考えよう、

明日も目覚められるはずだ、、、

「約束した、、笑って、生きよう 、、、禍福があるなら絶対治るよなぁ ばあちゃん」って独り言を言って、日課の手紙を見た


 動かない手で、なんとか、書いた手紙がイシの居なくなった、病院の枕の下にあった。

どんな気持ちで書いたのか、、、置いたのか、

考えると、辛い、

大事な宝物だ、


 震えて、やっとわかる字を見ると、涙が出る

「イシ、苦しいか、おれがいるから、大丈夫だ」

と、手紙に話す。


(しんちゃん、17ねんだ。

ありがとう、ほんとうにありがとう、

11ねんは、いっしょで しあわせだった、

すこし はなれるけど さびしがらないで

おおきな ひかり くるから

わらって いきて まってて  いし)


イシに、会いたい、、、、


 手紙ともう一つ置いてあったのも見る、

11年前一緒に住む事になった記念に2人だけの為に作った5ページの写真集。

 

 全裸で、白い部屋の白いシーツに包まって撮った。

 見つめあい、背中合わせ、肩を抱く、抱き合い、、、全てのイシは芸術的で輝いて写ってた、

 最後の写真の2人は、楽しそうに戯れ合い、最高の眩しいイシの笑顔があるはずが、よく見えない、涙が邪魔した。



出会い、出会わない、どちらが、、


あなたと出会う、

生まれた時からの、人間の宿命、繋がり、

 

 一人で生きているつもりでも、体は、見えない何かに、見られ、縛れている、

 縛っている正体は、心の奥に隠れ居て、時々出て来る、

目に見えない繋がり、愛、憎しみ、嫉妬、妬み、さまざまな感情、

生きていく道の、出会いと言う、言葉が、始まりだろうか。 

奇跡、だろうか。

 

 知らない幸せに、

 知らないうちに傷つけ、

 人は気づいているか、

 

たんぽぽ 生きてきた道標

あなたは、闇とあこがれ だった


あなたにとって わたしは どうだったろう

出会えて 良かったと 気づけたら良かった


分岐点 口づけではじまり 口づけで

寂しい ただ寂しい 会いたい


37歳 信一が、走り書きした、言葉達。











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