第一話
はじめましての方ははじめまして、知っている方はどうも、すやすやおじさんです( ´ ▽ ` )ノ
昔の事はまだ覚えてる。
チキュウという星のニホンという国に生まれ、そこには美味しい食べ物、便利な道具がそこら中に溢れ、俺はダイガクセイという身分で何不自由のない生活を送れていた。
俺は多分そこで死んだ……死んだんだろう、気がつけば前世の記憶をもってこの世界に生まれてきた。不思議な事に死んだ時の記憶はない、そういうものなんだろうか。
この世界の最初の記憶は、冷たい雨が降る夜、周りは森で近くには馬車のような物が大破し、ローブを着た人達が倒れていた。
俺は身体の不自由さと、何が起きたのか理解出来ない状況に酷く混乱したのを覚えている。
……
……………
………………………
〜レノアの薬屋〜
「ばーちゃん、薬草摘んできたよー」
俺の名前はクリス。
十五年程前、生まれたばかりだった俺をばーちゃんのレノアに運良く拾ってもらい今日まで生きてこれている。
六歳の頃からはばーちゃんの薬屋の手伝いをして少しでも恩を返そうと頑張っているけど、まだまだその恩は返せそうにもない。
この世界は前とは全く違い、パソコンもスマホもテレビも、当たり前だった娯楽も何にもない世界だけど、俺はそれなりに楽しくやっている。
「ほう、盗賊がこの近くに? 何やら物騒じゃな」
「でしょ? 気をつけないとね」
「怖いですね……」
趣のある木で造られた十五畳程の空間に所狭しと並べてある商品の間を通りながら俺は奥のカウンターを目指す。
ばーちゃんまた店の事ほっぽりだして近所の仲の良い友達と話してるな?
「ラミさん、レミさん、こんにちは。ばーちゃんってば、薬草摘んできたよ」
「クリス、帰ってきたのか。どれ摘んできた薬草を見せておくれ」
ばーちゃんは俺が渡した薬草を手に取り、まじまじと薬草を見やる。
「じゃあクリス君も帰ってきたことだし私らも帰るね」
「クリス君、さようなら〜」
そういって帰っていくラミさんとレミさんを見送る。
二人は双子の姉妹で歳は二十二歳と聞いているけど、なんでばーちゃんと二周り以上も歳が離れてるのに、あの二人は仲がいいのか……不思議だ。
「よしよし。若すぎでもなく、成長しすぎた薬草でもない、しっかりと良い薬草を摘んできたようじゃの」
「ばーちゃんがいつも煩いからだろ? おかげで薬に使う素材は大体分かるようになったけどね」
ばーちゃんの薬屋の仕事を手伝い始めた頃は薬草と毒草の見分けもつかなかったけど、今となっては一般的な薬の材料になる素材の見極めは、そこら辺の薬師より正確に把握できる自信がある。
「そういえばクリスや、今日は教会で月に一度の“鑑定の儀”を行う日じゃろ? お前ももう十五歳になり成人した事じゃし、自分のスキルを鑑定してもらって、将来の為に学校へ……」
「ばーちゃん分かってるって。鑑定はしてもらいにいくよ。けど前から言ってるけど学校には行かなくていいだろ? 俺はばーちゃんの店継げばいいし」
その言葉を聞き、ばーちゃんはため息をつく。
「クリスや……お前には一般的な教養は教えたつもりじゃが、学校で学べる事はまだまだ沢山ある。儂も若い頃は学校なんか行く必要ないと思っていたが……やはり学びは必要じゃぞ? 儂は歳を取ったあと入学したがそれはそれは……」
「ばーちゃん、その話長くなる? そろそろ教会に行きたいんだけど」
「……まったく可愛げが無い子じゃの、とにかく学校には行っておいた方がいいからの」
俺は「はいはい」と適当に返事をして家を出た。
確かに学校には興味あるけど……学校に行くって事はお金も沢山かかるし、家から学校は距離もかなりあるから歳を取ったばーちゃんと離れて暮らす事にもなる。
これまで育てて貰った恩もまだ返せてないのに、万が一の事があってからじゃ遅い。
やっぱり俺はばーちゃんの薬屋を継ぐのが一番いいと思う。
……
…………
……………………
そう考えて歩いている内に、俺は人だかりが出来てる教会の前に着いた。
「凄い人だな、やっぱり月に一度だとお祭りみたいになるな」
月に一度の“鑑定の義”には、始めて鑑定してもらう人以外にも、たゆまぬ努力により新たにスキルを獲得したかを確認する為に見てもらう人もいれば、特に努力はしてないけど何かの間違いで新しくスキルが増えていないかなと、半ば冷やかし程度で鑑定してもらう人や、面白い事が無いかなと来る野次馬もかなりいるので、教会前には毎回沢山の人だかりが出来る。
「それではまず、今回始めて“鑑定の義”を受けられる方、どうぞ中へ」
丁度、教会の中から鑑定を行う司祭が扉を開けて出てくる。
今回始めて“鑑定の義”を受ける人は俺を含めて四人いる事が分かった。
“鑑定の義”を受ける人は十五歳から二十歳程でマチマチではあるが、大体二十歳以下の人が受ける。
十五歳になると普通に働くようになるし、仕事が忙しいからと“鑑定の義”をすぐ受けない人もそれなりにいるらしい。
いつもは着いていない壁の蝋燭の火が、今日は全ての蝋燭に着き、豪華な装飾品が飾られ俺が知っている教会とはまるで雰囲気が違う事に戸惑いつつも司祭の後ろに並び、祭壇の方へ案内される。
「ではこれより“鑑定の儀”を行います。そちらの方から前へ……」
司祭が左端から順にと手で促し、指名された人が前に進む。
俺は右端だから一番最後だ。
「貴方の名はなんと?」
「お、おいらエンデと言います」
司祭は短いやり取りを終えると祝詞の様な言葉を紡ぎ始める。
「……。至高神セルスよ、この者、エンデの資質を教え給え」
司祭は祝詞を言い終えると、司祭とエンデの間に光と共に一枚の紙のような物が現れた。
「これが貴方の資質です、どうぞ」
突然現れた紙に恐る恐る手を伸ばしエンデは内容を確認する。
「やった! おいら“中級鍛冶職人”のスキルだ!」
そういって拳をギュッと握って喜びを顕にする。
司祭は笑顔で頷き、それから言葉を発する。
「次の方、前へ」
「は、はい!」
粛々と“鑑定の義”が進んでいくのを見て、思ったよりも早くスキルが分かるもんなんだなと感じていると、すぐに俺の番がやってきた。
「では次の方、前へ」
「はい」
俺は前に出て、司祭と相対する。
「貴方の名はなんと?」
「クリスといいます」
司祭は頷き、前の三人の時と同じ祝詞を始める。
「……。至高神セルスよ、この者、クリスの資質を教え給え」
そうして俺と司祭の間に光と共に一枚の紙が現れる。
「これが貴方の資質です、どうぞ」
司祭に促され、現れた紙を手に取ると俺は書かれている内容を確認する。
「あれ、これって……」
“薬師寺 善行
固有スキル……ジェネリック
獲得スキル……初級野草鑑定”
そこには懐かしい名前と見覚えのある文字が並んでいた。
「おや、貴方の鑑定紙の文字は私が見た事が無い物ですね。この大陸の出身では無いのですか?」
紙に書かれた内容は、俺の前世の名前と医薬品関係でよく耳馴染みのあったジェネリックという単語がニホン語で書かれていたのだった。
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