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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

金の髪が生える女の子

掲載日:2020/05/19


 私は子供の頃から金の髪が生える。

 どこへ行っても奇異の目で見られ、気味が悪いと石を投げられた。

 それを、赤毛の伯爵様は可愛そうに思ってくださり、私に部屋を与えてくださった。


 窓が1つもあり、ベッドもついてる石造りのお部屋。

 伯爵様は部屋に入った日『危ないから一歩も出てはいけないよ』とニッコリ笑ってくれた。

 朝昼晩と食事は頂けるし、働かなくて良いなんて。

 私はきっと、この世で一番の幸せ者に違いない。


 窓から一望できる小さな森は、季節ごとに色を変え、その中央にある泉は毎日見ていても飽きることはない。

 時々だけど、鳥さんが窓に遊びに来てくれる。

 私は取っておいたカケラを窓際に置いて離れると、鳥さんは嬉しそうに食べている。


 いいなぁ鳥さんは。

 私もアナタみたいに黒い髪だったら、空も飛べたのかな?

 うわっ……鳥さん私の顔をつっつかないで。

 それはまだエサじゃないの。


 私は、早く伸びて欲しいと願って毎日眠る。



 肩まで髪が伸びた頃、伯爵様がお部屋にやってきてくれる。

 それは、私にとって一番嬉しい日。

 忌々しい髪を、根本からスッパリ切ってくださるのだ。

 おかげでしばらくは頭がスースーするけれど、大嫌いな髪を見なくて済む。


 伯爵様は『もう全然伸びなくなってしまったな』と苦々しい表情で部屋から出て行ってしまった。

 最近は忙しい、とよくおっしゃられる。

 前は絵本を読んでくださったりしたのに、もう何年もしてくださらない。


 でも、私は平気なんだ。

 あんなに危ない外の世界に生きるのは、とっても大変なのだろうから。

 きっといつか平和になったら外に行こう、と言ってくださったのを、今でも覚えている。

 だいぶ前だから、あの時のお顔は忘れてしまったけれど。

 笑顔だったことだけは覚えている。



 ある日、外を見ると雪が降っていた。

 どうりで寒いはず。

 こんな日はいくら待っても鳥さんさえ来ない。

 ベッドに潜り込んで、じっと耐える。

 

 まぶたの裏でしか覚えていないお母さんも、よく言っていた気がする。

 耐えていれば、きっといつか、いいことがありますよって。


 ありがとうお母さん。

 耐えたおかげで、伯爵様に拾われて、私はとっても幸せ。

 冬でもパンとスープが食べられるのだもの。

 お腹が空かないって素晴らしい日々よ。



 春になろうかと言う日、伯爵様がやってきて、私をぶった。


「髪が伸びなくなったお前なぞ、もう外に出て行け!」


 私、毎日寝る前にお祈りをかかさなかったのよ。

 早く髪が生えて、伯爵様に会いたくって……

 きっと明日になったら生えてくるからって、一生懸命頼んだ。

 お願いだから、天国のようなここにいさせて欲しいって。


 それでも、外に出されてしまった。

 怖い……また石を投げられてしまうんじゃないかな。

 じっと待っていたけれど、誰も髪が生えていない私を見て石を投げてこない。


 なんてステキなんだろう!

 髪がなくなったおかげで、お散歩をしても怒られない。

 こんにちは、と声をかければ返してくれる。

 お婆さんなんて『そんな手でどこに行くんだい?』なんて優しい言葉もかけてくれる。


 行く場所は決まってる。

 お母さんと住んでいた、あの家だ。

 もう何年も飢え知らずで眠ってばかりだったから、ちょっと食べなくても平気。

 ちょっと眠らなくても平気。


 私は3日3晩、歩き通して住んでいた村に帰ってきた。

 でもお家があった場所には、お母さんと同じ顔と髪をしているはずなのに、太った知らない人が住んでいた。

 

「なんだい、この丸坊主で気味が悪い子は。金が生めないヤツは用無しだよ!」


 きっと思い違いをしてしまったのだろう。

 私は他に覚えていることはない。

 歩いた道を戻って、窓から見えていた森を目指した。

 エサをあげていた鳥さんなら、きっと優しくしてくれる。

 でも、森のどこを歩いても鳥さんは見つからない。

 森の奥で見つけた泉を見ると、私じゃない私が映っていた。


 髪がないって、こんなに怖い顔になるのね。

 片目がないって、こんなに不気味なのね。

 片腕しかないって、こんなにみじめだったのね……


 涙が泉に落ちると、美しい女の人が出てきた。

 わあ……初めて見たけど、金の髪ってとっても綺麗なのね。


「ごめんなさい、私の可愛い娘。さあ、もう悲しいことはないよ。こちらにおいでなさい」


 その女の人の手を取ると、泉に引き込まれていく。

 頭がふわふわすると思ったら、長く長い綺麗な金色の髪が伸びている。

 潰れていた目も、落ちてしまって鳥さんのエサにしていた腕も、元通り。

 すごいわ、この人は神様なのだろうか。


「泉で溺れ死んだ少女の代わりに、人間に差し出してしまったばっかりに……辛い想いをさせてごめんね」


 どうして謝るのだろう。

 私は幸せな記憶の方が多いというのに。


「汚い人間に育てられたけれど、とても綺麗な心を磨き上げたのね。アナタが戻ってきたのなら、もうここには用はないわ。この大陸一帯の泉も川も、なにもかも枯らして、天に帰りましょう」


 きっとこの人の言うことなら、大丈夫なのだろう。

 私はニッコリと笑みを返し、ずっとずっと一緒に幸せに暮らしました。

 

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― 新着の感想 ―
[一言] ざまぁではあるけど、誰にも救いがない! 幸福タグが空しい……これだとフランダースの犬もハッピーエンドじゃないですか(笑) 醜い娘が沼に引き込まれました。あと皆死にました。みたいな感じ、昔の童…
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