表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第二部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/493

76

「なあ、あんな冴えない奴より、オレらにしないか?」


「は――」


 突然投げかけられた言葉が理解出来なくて、思考が止まる。動揺しすぎて、周りの音すらどこか遠くに聞こえるくらいだった。

 それなのに、どこかこの男の言葉だけははっきりと耳に残る。


「あんたみたいな美人、あんな奴にはもったいない」


 その言葉に、わたしは思わずカッとなって叫んでいた。


「フィジャを馬鹿にしないで! あんな奴、ですって? 貴方たちの性根の方がどうかしてるわ」


 フィジャは背中から落ちていた。それなりに高さがあったとはいえ、二階。よほど打ち所が悪くない限り、死ななかったかもしれない。

 でも、それは死なないだけ。

 もしかしたら、フィジャが料理人として生きられないほどの、後遺症を負ったかもしれないのだ。

 それなのに、こんなへらへらとナンパしてくるだなんて。信じられないにも程がある。


「絶対にあり得ないけど、万が一、フィジャと別れることになっても、貴方たちだけは選ばないから!」


 怒りで声が大きくなっていたのだろうか。周りからは、ひそひそ、くすくすと、妙なざわめきが聞こえてくる。

 でもそれは、どちらかというとわたしよりこの男に向けられていて。


「――クソッ! 美人だからって調子に乗りやがって! 後悔させてやるからな!」


「っは! 一昨日来やがれってのよ!」


 情けなくも逃げ帰る男の背中に、わたしは言葉を投げかけた。二度と顔を見たくない。フィジャに怪我を負わせたのも、それを謝らないのも、こうやって逃げ帰ってしまうのも、最高に情けない。


「はぁ……」


 なんだかどっとつかれた。早く帰りたい。

 わたしはいつの間にか握りしめてしまっていた地図を開く。


 先ほど、男が言っていた順路は果たして正しいのか。ちょっと信用出来ない。

 『オレ』ではなく『オレら』と言っていたし、もしかしたら、彼が言った道を進んだら残りの二人がいたりして……。

 流石に警戒しすぎな気もしたが、まあ用心するに越したことはないだろう。というかそもそも素直に彼の言うことを信じるのが、なんか嫌だ。

 かといって、騒ぎを起こしたすぐ後で、傍にいてわたしたちのやり取りを見ていた人に声をかけるのも抵抗があって。


 わたしは少し歩いて、先ほどの場所から離れたところで聞くことにした。


「ああ、ここのパン屋さん? ……あらやだ、道反対方向じゃない? もっと向こうよ」


「……ありがとうございます」


 気のよさそうなおばちゃんに声をかけて教えて貰ったが、フィジャの家を出て右に曲がらないと行けないところを左に曲がっていたらしい。

 方向音痴の自覚はないし、ただ場所に慣れていないだけとはいえ、これはひどい。

 全然フィジャに年上ぶれないし、まともにおつかいが出来ていない……とへこみながらも、わたしは今度こそパン屋へと向かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ