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06

 ほとんど絶滅しかけた人類だが、ほとんどの文化を失いながらも、今なお細々と生き残っているようだ。ただし、見つかり次第、王族や上流貴族、豪商へ嫁ないし婿に取られるため、ほとんどの平民が人と接したことがないのだとか。遠くから眺めるだけ、近くで見れたら、一生分の運を使い果たした幸運。たとえ話さなくても、向こうに認識されずとも。


 そんな暗黙の了承があるからか、人に近ければ近いほど異性にモテるらしい。


「イナリは耳もですが尾が大きく酷く目立ちますし、フィジャは鱗が顔にある上にまだらですから」


 長い説明で落ち着きを取り戻したのか、噛んだりどもったりしなくなってきたイエリオさんは言う。


狐種こしゅはとにかく尾が目立つので、狐種自体が好まれません。蛇種じゃしゅは服に隠れる範囲に鱗があるか、均一な色味の者が人気です」


「イエリオさんは? 最初、普通に人間かと思ったくらいだし、やっぱモテるんですか?」


「んぐっ……!」


 イエリオさんは、わたしの質問に答えることなく、謎の呻き声をあげて机にふせってしまった。随分と勢いよくいったが、大丈夫だろうか。


「ずるーい……」


 小さな呟きが隣から聞こえる。よく分からなくてフィジャの方を見たが、さりげなく目を反らされた。普通にショック……。


「……人間に強い憧れと好意を抱いているって言ったでしょ。その人間に、人間に見えたなんて言われたらこうなるよ」


 じと、とイエリオさんを睨みながら、イナリさんが言った。

 大ファンの国民的アイドルに面と向かって素敵だね、って言われたらって考えたら……まあ、そうなるか……?


「ちなみに、イエリオは見た目で女の子寄ってくるけど、中身が分かると皆散ってくから」


 敬語が苦手なのか、フィジャの態度と口調がいつの間にか戻っていた。やっぱりこっちのほうがいいな。


「中身?」


「前文明の話ばっかなとこ」


 それは……確かに分かるかも。初対面でこれだけ話すなら、気が知れたらもっと話題に出すのだろう。さっき、べらべらと一方的に話してるときに気配を消すのに努めていたイナリさんを見ていれば察するものがある。


「ま、ここでもまごついててもしょうがないし。……あ、あんたには悪いけど、適当な貴族のところに行ってもらうよ」


 あんた、と言うイナリさんの声が少し震えている。

 ツンツンしているけど、この人もこの人で緊張しているのだろうか。

 しかしお貴族様か……。


「あの、無理だと思います」


「無理? 我儘は……」


 わたしはイナリさんの言葉を遮るように理由を告げる。


「いえ、我儘ではなく。嫁が欲しい、って希望〈キリグラ〉を使ったんですよね?なら、その人としか結婚出来ません」


「しないとどうなるの……?」


「いえ、出来ません。とにかく邪魔されます。希望〈キリグラ〉は強力ですから、普通に死人が出ますよ。願いが遂行されるまで、とことん強制力が働きます」


 死人、という言葉を聞いて、イナリさんはサッと顔を青くした。


「イエリオ、イエリオ! 君、なんてことを……!」


 イナリさんは、いまだ机に突っ伏しているイエリオさんの肩を激しく揺さぶる。されるがままのイエリオさんから、小さく、「本当に成功すると思わないじゃないですか……」という声が聞こえてきた。

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