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夜も更けて、空を見上げれば星がよく見える。場所が場所だからか、家のベランダで見るよりもよっぽど綺麗だ。おかげで星が探しやすくて助かる。
「大三角……ちょっと下に行って……あれか。えーっと……こう、こう……うん、割と近いかも」
島長の墓から見えるであろう星空は、きっと近い。明日の朝から捜索〈ティザー〉で探してもいいかもしれない。
「思ったよりも早く見つかるかもしれないねえ」
すぐ近くに座るウィルフに声をかけると、「そうか」と返事をしてくれた。
「……よく星座なんて分かるもんだな」
わたしが星を見ていると、ウィルフの方から話しかけて来てくれる。それがなんだか嬉しくて、わたしはウィルフのすぐ隣に座り直す。それを嫌がられるわけでもなく、わたしの話を待っているかのような様子のウィルフに、思わずにやけてしまった。
「分かりやすい簡単なのしか見つけられないけどね。たまーにわけの分からない星座とかあるし」
その辺は前世も異世界も一緒なのか、全然違う星空と星座ではあるものの、ただの三角や四角が動物になったり、ちょっとした繋がりで人を表したり。どうしてそう決めたの? と、決めた奴に問うてみたくなる。
「……あそこにさ、同じくらいの大きさで等間隔に四連になってる星があるの分かる? すぐ近くに、大きな赤っぽい色の星があるやつ」
「……ああ、あれか?」
わたしが星を指さすと、ウィルフも同じように星を指さす。わたしの手とウィルフの手、全然違うのに同じ星を指し示していた。
「そう。で、あの四連の星を底辺にして、三角形を作ろうとしたとき、頂点になりそうな位置にちょっと青っぽい星があるでしょ」
「……? ……、……ああ、あれ……か?」
うろうろとさまよっていたウィルフの指先を、目的の星に定まるように動かしてあげると、ようやくウィルフも見つけたようだ。
「あれ、導き星っていうの。どの季節でも、絶対に北にあるんだよ」
前世でいう北極星みたいなものだ。いや、シーバイズでは導き星って呼んでただけで、実際に別の国では、この世界でも北極星と言われていたかもしれない。
「四連の星も、季節によってはちょっと見える角度が違うから分かりにくいかもしれないけど、一年通して見えるから。帰り道が分からなくなっても、あの星を目印にして、絶対、帰ってきてね」
前世では南半球から北極星が見えなかったように、よっぽど遠い国に行くことがあれば導き星も見えなくなってしまうかもしれないけど、この街や、その周辺に出かける程度なら、空さえ晴れていれば絶対に見えるだろう。
ウィルフがもう、皆を諦めてしまうことはないだろうな、と思いながらも、わたしは彼に、導き星を教えた。
わたしの言いたいことが分かったのか、ウィルフは少し驚いていたようだったけれど、「ああ」と言ってくれた。
その声は優しく、でも、はっきりとしたものだった。




