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 二人が帰ってきたので、わたしたちは食卓の席に着く。食べながら、わたしとイエリオがベランダにいた理由を聞かれた。わたしたちがベランダに出るときなんて、洗濯物を干すときくらいだから不思議に思ったのだろう。

 わたしたちは昼間師匠に言われたことを話した。島長に挨拶なんて、わたしは今更必要ないと思うのだが、イエリオがやりたいのなら付き合う他ない。

 他の三人はどうだろうか、と思ったら――。


「僕は絶対行く。休みが被らなければ有休取るから日程教えて」


 一番に食いついたのはイナリだった。ちょっと意外である。


「僕、あいつ嫌いだから。あいつが少しでも黙るなら、行く」


 そう言うイナリの語気は強い。師匠も嫌われたものである。でも、まあ、初対面が最悪だったし、わたしは師匠と付き合いが長いのでいいところも知っているけれど、イナリはそう言うところ、何一つ見たことがないだろうから、無理もないか……。


「二人が行くならボクも行こうかな。イエリオだけだったら、まあ、いつもの前文明のことねハイハイ、で終わるけどさぁ……。イナリがいるなら壁の外に出ても大丈夫だろうし。場所にもよるけどぉ」


 フィジャはイエリオとイナリほど乗り気ではないようだけど、特に行くことに異存はないようだ。


「そう遠くはないと思いますよ。どこまで行くことになるのかは分かりませんが、少し南よりの西ですから……花の洞窟がある方でしょうか」


「ああ、あっち。今年はそこまで大変じゃないかもね」


 イエリオとイナリの頭の中には、壁の外の周辺の地理関係がしっかり入っているらしい。当然と言えば当然かもだけど。


 花の洞窟とは? と、聞いたことのない土地の名前に、よっぽど不思議そうな顔をしてしまっていたのか、イエリオがどんな場所かを教えてくれた。何でも、洞窟の中なのに様々な花が咲き誇り、花畑のようになっているのだという。年によっては有毒な花粉をまき散らす花が咲くときもあるそうで、そのときばかりは危険度が跳ねあがるものの、その花が咲いていない年は比較的安全に散策できるという。

 今年がそうでない、というのなら、運がよかった、と言えるだろう。


「私達は行きますが、ウィルフはどうしますか?」


 イエリオやイナリ、フィジャばかりが話に参加していたことに気が付いたのか、ウィルフに声をかけるイエリオ。


「……行かねえとは言ってねえ」


「では貴方も参加、ということで」


 イエリオがそう言うも、ウィルフは文句を言わなければ否定もしなかった。彼なりの、参加する、という意思表示だったらしい。


 そう言えば、みんなと住むようになったからあんまり気にならなかったけど、五人で出かけることってなかなかないよなあ。

 島長の挨拶なんて、と思ってはいるけれど、皆でお出かけというのは、中々に楽しみである。

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