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 その日の夜。フィジャの店じまいを手伝った後に、わたしは二階のバルコニーに出て、空を見る。こちらに来てから星空を見上げるようなことはなかったが、結構綺麗に見えるものだ。


「星なんて見て、分かるものなんですか?」


 わたしの隣に立つイエリオが、問うてくる。


「うん。島長の墓って、初代島長が生まれた日の星座がよく見える場所に作られるんだよ」


 死んだら一番の慰めは空を眺めること。それならば、生まれた日の星座がよく見える場所にしよう。そういう考えのもとに作られたものだ。同じような理由で、シーバイズの墓島には、墓より高くなるような樹木はそうそう植えられない。植えられるとしても、霊園の外側だけだ。


「生まれた日の星座、ですか……」


「十二星座ってやつだねえ」


 前世と同じ名前、形の星座、というわけではないが、考え方自体は一緒である。


「まあ、ちゃんと全部が全部、分かるわけじゃないんだけど……」


 今回の文献で分かったのは、隣の島の、初代島長の細かい誕生日。流石に今の時代や先代くらいならば日付まで分かるけれど、初代の島長ともなれば、生まれた年くらいしか知らないので。

 星座自体は、分かりやすいものであれば見つけられる、くらいなので、今回の島長が分かりやすい星座の時期に産まれていてくださって助かった。さらに幸運なことに、生まれたのもちょうどいまくらいのようで、そこまでしっかり考えなくても、おおよその方角は割り出せそうだ。


「えーっと、あの辺が大三角だから……ちょっと下に行って……ああ、あった。あれがあそこにあるから……んん?」


 星空は千年程度で変わらない。そう思って星座を探し始め、本当に変わらない夜空ではあったが――ふと気が付く。

 シーバイズにいた頃と、全く同じである、ということに。


 ……もしかして、ウィルフの部屋に飛んだのって、時代の座標は失敗したけど、位置的にはわたしの家があったところで間違いなかったんだろうか。国、というか、土地すらも別の場所に飛んでしまったと思ってたけれど、案外そんなことはない……?

 この国はシーバイズにいた頃よりも随分と陸地が広いけど……。……もしかして、この間調査した塩湖って、元々シーバイズの周りにあった海だったりして……。


 師匠の魔法の威力に、改めて、ちょっと、怖くなった。


「……ま、まあ、でも、この分ならそう遠くはないかも? 方角的にはあっちかなあ」


 仮にウィルフの住んでいた部屋のあった土地が、千年前わたしが住んでいた場所だとするならば、隣の島、に相当する場所はそう遠くはないだろう。この街自体が、わたしが住んでいた島よりちょっと大きいくらいだし。


 そう思って指をさすと、下の方で声がする。

 下にはイナリとウィルフがいた。途中で帰りが一緒になったのかもしれない。


「おや、もうそんな時間ですか」


「まあ、もう星が見えるくらいには夜だしねえ。……おーい、おかえりー!」


 わたしが大声を出して手を目一杯振ると、二人は気が付いたようで、こちらを見上げてくる。イナリは軽く手を上げてくれて、ウィルフは特に何もしてくれなかったけど……分かりやすくしっぽが揺れていたので、良しとしよう。

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