表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

443/493

437

 その悲痛な叫びに、わたしは驚いて思わず足を止めてしまった。


「い、今の……何?」


「マレーゼさんには関係ないもんっすよ」


 バッサリと言い捨てられてしまった。気になる、けど、でも、今はイエリオの安否が一番だ。流石にあの悲鳴がイエリオのものだとは思っていない。明らかに、なにか、動物のような声だった。……この世界に、動物はいないけど。


 すたすたと先に行ってしまうオカルさんの後を、わたしは小走りで慌てて追った。……少し前まで、わたしはオカルさんのことを明るくて気さくな、イエリオの同僚だと思っていたけれど。今のオカルさんは、そんな印象を抱かせた雰囲気が、欠片もない。


「さて、ここっす」


 長い廊下の行き止まり。そこに、扉は何もない。

 ふざけないで、と言おうとすると、オカルさんがしゃがみこんだ。彼が床に手をやると、淡く一部が光る。……魔法陣だ。


 その淡く光った魔法陣の部分にオカルさんが手をつけ、持ち上げるように腕を動かすと、それに床がついていくように、一部分が扉となって、床が開く。……師匠の家の地下室で見た、仕掛けと一緒だ。


 特定の人物が触れると、魔法陣が現れ、その魔法陣がドアノブのような役目を果たし、さっきまで何もなかったように見えた場所が扉のように開く魔法。複数の魔法が組み合わさっている、魔法使いが編み出した魔法だと、師匠は言っていた。


 ……なんだか、酷く、嫌な感じがする。さっきから、見かける細部が、どうも師匠の家の地下室を思い出させる。あの人の家にこんな場所がないのは知っているけど。

 そのせいか、薄気味悪い場所なのに、なんとなく、懐かしさのようなものも少し感じていた。


「どうぞ、降りてください」


 開かれた床の穴を覗き込むと、梯子のようなものが下に伸びている。


「……オカルさんは、降りないんですか」


「自分はここまで連れてくるのが役目なんで。実験体の様子を見たら、自分は調査班の方に戻る予定っす。そろそろ点呼の時間ですし、『イエリオたちがいない~』って一応報告しておかないと」


 ……点呼の時間は十八時だったはず。今はもう、夕方なのか。早く、イエリオを連れて早くここを出るか、安全な場所を探さないと。夜になったら流石に簡単には動けない。

 それにしても、演技がかったような報告の言葉が妙に腹立つ。


 降りるのは怖いが、この先にイエリオがいるかもしれないのなら、ひるんでなんか、いられない。

 わたしはおそるおそる、梯子を使って降りる。


 その先は部屋になっていて――すぐ目に入る位置にあったベッドの上に、イエリオが横たわっていた。


「――イエリオ!」


 わたしは声を上げながらベッドに駆け寄る。拘束はされているが、怪我らしい怪我は見当たらない。……、脈はあるし、息もしっかりしている。意識はなさそうだが、表情は苦しそうでもなんでもないし、眠っているだけ……だろうか。


 手を握ると、ちゃんと温かい。――大丈夫、生きている。大丈夫。

 安心して、息を深く吐き――。


「ぼくに気が付かないなんて、酷いなあ」


 背後から聞こえてきた、懐かしい声に、わたしは思わず、勢いよく振り返っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ