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食事を終えた二人がそれぞれの部屋に戻っていくのを後片付けをしながら見送って――約一時間。そう、まだ一時間くらいしか経っていない。後片付けを終え、部屋に戻ってから、ある程度時間が経ったら様子を見に行こうかな、なんて考えていたのに。
それなのに、わたしの部屋の扉がノックされた。
最初はフィジャかと思ったのだ。今日は出かけるって言っていたのに、と思いながら扉の前に立って、ふと、違和感に気が付く。
フィジャだったら、声をかけながらノックをすることが多いのだ。いつもそう、ってわけじゃないけど。
そっと開けてみれば、そこにはイエリオとイナリが立っていて。
「どうしたの? 何かあった?」
「いえ、もう休んだので、是非、服の色変えを見せてもらおうかと」
絶対嘘じゃん。にっこりとイエリオは笑っているけど、イナリはどこか気まずそうに目線をそらしている。
まだ一時間しか経ってない。仮眠だとしても短すぎる。
「――……身体強化〈ストフォール〉。えぇい!」
わたしは二人を担ぎあげて、そのままわたしのベッドへと放り込んだ。ダブルベッドなので、二人が乗っても問題はない。……まあ、もとより二人で使うことがあってもいいように買ったものだし。
「ちゃんと寝て」
休息と睡眠は重要なのである。特に、イエリオとイナリはおざなりにしがちなので、取れるときにしっかり取ってほしい。
「六時間経ったら起こしてあげるから。その後までちゃんと待ってるから」
わたしが言い聞かせるように言うと、「だから無理だって言ったでしょ」とイナリがあくびをしながら言った。
「無理って分かってるならなんで来たの」
「イエリオがしつこいんだよ……。イエリオに根負けした君が、ワンピースに色つけるかも、って思ったら……僕だって、服がどうなるか見たいし」
眠そうに目をこすりながら、イナリがベッドから降りようとする。
「どこいくの」
「自分の部屋だよ。なんで最初にダブルベッドで一緒に寝る相手がイエリオなの。イエリオは嫌いじゃないけど、普通に嫌でしょ。君とが――なんでもない」
イナリは言葉をもごもごと濁したものの、なんとなく分かってしまった。
そう言われてしまっては引き留めることは出来ない。イエリオはともかく、この要すなら、イナリもちゃんと寝てくれそうだし。
しっかり睡眠を取って休んでくれるなら、ここで寝てくれなくてもわたしは構わないのだ。
なんて思っていたら――。
「……では、私はこのままここで休みますね」
イエリオがそんなことを言い出すものだから、「は?」とイナリが低い声を上げて立ち止まった。




