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 帰り道。ウィルフをちょっとからかいすぎたかな、なんて反省しながら歩いていると、ふと思い出す。


「そう言えば、ちょっと聞きたいことがあるんだけど……」


 わたしは辺りを見回して、人通りを確認する。すぐ近く、少なくとも会話が聞こえてしまうであろう距離には誰もいない。

 獣人文化について聞きたいことがあるときは、一応、周りを確認することにしている。常識中の常識とか、世界共通のこととかだと、旅をしていて無知なの、という言い訳が通らなくなってしまうので。

 それをフィジャも分かっているようで、「なあに」と首を傾げて、こちらを向く。


「その、耳が欠けているのって、なにか意味があるの?」


「耳? ……ああー、さっきの、ウィルフの先輩か」


 フィジャが納得したような声を上げる。


「それでさっき、あの人の耳を熱心に見てたのか」


「う、分かる?」


 自分でもじっくり見てしまった自覚はある。ああやって軽く流してくれたことに、今更ながら感謝した。人によっては不愉快だって、怒られても仕方がない。最近では、気になるところをじろじろ見るの、減ってきたと思ってたんだけど……。


「耳をああやってかけさせるのは、今だとファッションでやってる人、たまにいるよぉ。単純に怪我かもしれないけど」


「ファッション?」


 耳に切れ込みをわざわざ入れてまでするファッションなんて、と不思議に思ったが、よくよく考えればピアスだって、耳たぶに穴を開けてアクセサリーを通す。あれだって、多少緩和する方法はあれど、痛いことに違いはないだろう。


「発祥は罪人と一般人の区別だったらしいんだけど、今じゃ完全にファッションだね。ボクは興味ないから詳しくないけど、悪っぽいのに憧れた人が罪人の真似を初めて、それが時代と共に変化したんじゃないかな?」


 なるほどなあ。刺青みたいなものなのかな。


「あーでも、昔やんちゃな子供だったりすると、度胸試しでザクっとやることもあるみたい。でも、ボクみたいな蛇種とかはやらないなあ。折角人に近い耳を持ってるのに、あんなことしたらもったいないじゃん」


 話しぶりからすると、そこまで珍しいものでもないようだ。わたしがたまたま見かけることが少なかっただけで、探せば意外とあちこちにいるのかも。聞く限り、耳を欠けさせているのは男性の方が多そうだ。

 まあでも、ただのファッションなら、見かけても気にしなくていいのかな。今の罪人はああやって耳を欠けさせることはないらしいし。言われてみれば、ジェルバイドさんの耳も、別に欠けてなかったし。


 そんな話をしていれば、あっという間に家についた。

 少し遅い昼食になったが、お弁当の残りであることは言うまでもない。

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