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受付の人に言われた通りに進むと、外に出てしまった。でも、器具が置かれていたり、剣の素振りをしている人や走り込みをしている人がちらほらと見えるから、ここが訓練場、ということなのだろう。かなり広い場所だ。
でも、確かに、剣とか振り回すような戦闘訓練をしているなら、このくらいの広さがないと危険なのかもしれない。
「お、ウィルフ発見」
訓練場を一瞥して、フィジャがすぐに声を上げた。人数はそこそこいるが、皆人間ベースで、ウィルフのように獣に近い獣人は他にいないから、すぐに見つけることが出来る。
多分本人はいい気がしないだろうから、絶対に言わないけど、パッと見て見つけられるのって結構メリットだとわたしは勝手に思っている。探しやすくていい。
おそらく筋トレをしているのであろうウィルフに、「おーい」と声をかけると、すぐに気が付いたらしい。こちらに向かってきている。
しっぽが少し、揺れて見えるのは多分、気のせいじゃない。
でも、それを指摘するとウィルフは照れているのか嫌なのか判断が微妙な顔をするので、わたしはあえて黙る。イエリオ辺りはたまにからかって頭をはたかれている。あれはあれで、二人のコミュニケーションのような気もするけど。
ウィルフの好意は、行動にでるよなあ、と思いながら、こちらに来るウィルフを見る。言葉には少し棘があるし、絶対に好きとか言わないけど、行動を見ていれば、わたしのことを嫌っていないのがすぐわかる。
フィジャのように、いちゃつくようなスキンシップをしてくることもないけど、でも、行動の端々に愛情を感じるのだ。
「なんでこいつまでいるんだ」
やってきて開口一番これである。でも、流石にここまで一緒にいれば、これが拒絶の言葉じゃないことは、なんとなくわかる。口だけ、ってやつである。
「マレーゼも暇そうにしてたから連れてきちゃった」
わたしですら分かるのだから、もっと付き合いの長いフィジャは分かり切っているのだろう。特に突っ込むこともなく、会話をする。
「暇そうにって……おい、待て。なんだその紙袋のサイズ。おかしいだろ」
作りすぎちゃった、で笑って済まされない量になったが、これでも結構考えて入れたのだ。家にまだ残りがある。
二人で作っていると、量も作れるので、こうなる。わたしも、フィジャ程ではないけど、それなりに料理を一人で作れるようになったので。
「二人で作ったら思ったより凄い量になっちゃって……ごめんね?」
わたしがそう言うと、ウィルフは分かりやすく溜息をつき「頼んだ身で悪いが、次からはもう少し考えてくれ」と言いながら、馬鹿でかい紙袋を受け取ってくれた。




